第16話 衣服をまとって仲間入り
俺がロウヒから女神の名前を聞いてから2日後。
レオナの体力が完全回復したとの事で、俺はようやく【ドールカルト】の本拠地に足を運ぶことになった。
「似合ってます?」
「ああ。とっても似合っているよ」
そんな中、俺はエルさんのミシンドールが作ったある物を身に纏っていた。
そう、服だ。
レオナ、アルさん、エルさんと皆が来ていた黒いローブ。
【ドールカルト】の一員である事をしめす大事な衣装なんだそう。
「ありがとうございます。こんないい服作ってもらって」
「いいんだよ。これが僕の仕事だから」
エルさんはそう言いながら、ミシンドールを棺桶の中に戻した。
そういえば、ミシンドールはエルさんがアルさんにしたい事を考えた末に出来た傀儡人形って話だったよな。
俺達が帰ったら二人だけのファッションショーでも始まるのだろうか?
まぁ、それでエルさんの背負ったトラウマが癒せるなら安い物か。
「そう言えば、アルさんの傀儡人形って何なんですか?」
「あれ、彼女から聞いてないのかい?」
「はい。ここ数日はほとんどロウヒと歴史の話をしていたもんで」
そう言って苦笑いする。
俺がアルさんの傀儡人形について知っている情報は、エルさんの為になるスキルを持っているって事だけだ。
この数日でこの二人がどれだけラブラブな関係なのかと嫌でも見せつけられた。
それこそ、不死身の体を得たなら永遠に愛し合えるレベルだと思う。
まぁ、だからこそ、アルさんがどんなスキルを求めたのか少し気になったんだ。
「アルが持っているのは、A級傀儡アンチドール。一定の空間に外敵を寄せ付けないバリアを張るスキルを持ってるんだ」
「へぇ。道理でこの建物周辺が穏やかで安全な訳だ」
「実は、アルはずっとアンチドールを発動してるんだよ」
「え?!でも傀儡人形の姿なんて全然」
「アンチドールは基本透明になって見えないんだ。何があっても安全な場所を作るためにってすっごく努力して、バリアの持続時間も今やあってない様な物さ」
僕の妻は凄いだろう?と語りかけながらエルさんは笑顔を浮かべていた。
互いを愛し合い、支え合い、リスペクトしあえる。
そんなパートナーと出会えた二人を見てると、少し羨ましく思うな。
「それじゃぁ行こう。ダンテ君の晴れ舞台だからね」
「そんな大げさな」
エルさんの隣を歩き、皆が待つ外へ向かう。
玄関の扉を開けた先では、レオナがアーミードールで例の空を飛ぶ乗り物を作り上げている所だった。
「お、ダンテ君に合ってる~」
「これでダンテ氏も正式に我々の仲間になったという訳だね」
「ま、うちの旦那に任せればこんな仕事朝飯前ね」
なんだかこう、一斉に褒められると恥ずかしいな。
でも……悪い気はしない。
村では感じた事のない晴れやかな気分だ。
「待たせたな」
「良いの良いの。それじゃ、行こうか」
ロウヒのその声を合図に、俺達は乗り物の中に乗り込んだ。
バダバダと音を鳴らし、空を飛ぶ準備が始まる。
窓を覗くと、こちらに向かって手を振るエルさんとアルさんの姿があった。
「二人の平穏な暮らしが永久に続けばいいな」
二人に手を振り返しながら、ボソっとそんな言葉が漏れる。
「何言ってるの。そうなる様に、これから私達で頑張るんでしょ」
「確かに。そうだな」
後からツッコミを入れるロウヒにそう返事を俺は笑った。
ロウヒの傀儡人形があれば、スキルで苦しめられる人は居なくはずだ。
それを女神が拒むなら、俺は手に入れた力で戦うだけだもんな。
「ここから拠点までは4時間もかからない。今日中には着くだろう」
レオナの言葉に胸が躍る。
この中間地点だけでも想像以上の出会いがあった。
拠点にはどんな奴が居るんだろうな。
それが少し楽しみだ。
「それじゃ、レオナちゃんお願いね」
「任された。目標は我々【ドールカルト】の拠点、反逆の国ビレックへ」
レオナはそう高らかに宣言すると、アーミードールと繋がっている指先の紫色の糸を引き上げた。
俺達を乗せた鋼鉄の乗り物は大きな音を立てて空を飛び、次の目的地へと向かうのだった。
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