第18話  ヤフオクの刀装具参加者はご注意を・・・

先回のヤフオクで気付いた点をもう少しだけ


最近は何でも商売にしてしまう方が増えました

利幅は薄くてもバイトより時間制限が無くて、自分のタイミングで動けるので人気のようです

例えば、昔からある方法で【せどり】を行います


私は(せどり)と聞くと、梶山季之(かじやまとしゆき)の小説で『せどり男爵数奇譚』を読んだのを思い出します

文学青年がバーテンのアルバイトをしていて、時々訪れる客が注文するセドリーオンザロック(架空の命名をした飲み物)に興味を持ち、それが縁でせどり男爵(あだ名)と仲が良くなり古書の世界を教えて貰い、古書が繰り広げる世界に入り込んでいく、という梶山チックな、綿密な取材とロジックで練り上げられた今読んでもとても面白い展開をする物語でした

古書はマニアの人間で無いと分からない価値があり、その価値を巡る幾つもの物語はとても勉強になりました

この本はこれ一冊で完結ですが、梶山作品はどれもとても面白く当時は夢中で彼の作品を古本屋で買っては読みました


最近で言うなら『ビブリア古書堂の事件手帖』でしょう

この本も(せどり)が物語を進める為の重要なファクターとなっています


(せどり)の意味をWikipediaで調べると下記のようになっています


せどり(競取り、糶取り)とは、「同業者の中間に立って品物を取り次ぎ、その手数料を取ること。また、それを業とする人(三省堂 大辞林より)」を指す。

古本用語を元にした「掘り出し物を第三者に転売すること。」を指す言葉 となっています


古本の場合には古書店の書棚に納まっている本の背表紙を見ながらその価値を瞬時に見透かして店から買ってきて、探している人との売買で差額を得るもので、背表紙を取る 背取りをするという語源だったかと思っていましたがWikiでは違いましたね


先週の土曜日にブックオフ巡りをしている時に(せどり)を実際に見かけました

若い女性でしたが、赤外線バーコードで書籍後ろのバーコードを次から次に読み取っていました

余りにも堂々と長時間作業をしているので店員だと勘違いしていましたが、後からそれが(せどり)だと気付きました

私の探している本が収まっている棚を全身でカバーしているので肝心の書籍が全く見えません

完璧なディフェンスです

小さく咳払いして、『店員さん教えて下さい』と言うと、ようやく『店員じゃありません』と言いその場を離れていきました


ブックオフで価値のある品物を見つけて買い出し、ネットで販売して差額を得ているのでしょう


私には理解がしづらいのですが、サラリーマンと違い、実に地道にあらゆる品物の(せどり)をしながら生活費として稼いで暮らしている人がいます

それが本だったり酒だったり、車だったり、ゲーム機器だったり、ポケモンカードだったり、今回のヤフオクの様に刀装具だったりする訳です


前置きが長くなりました


●ヤフオクで刀装具を買い集める外国人がかなりの数、いる事

●ヤフオクでは刀剣の外人の買い物は見かけない事


刀剣の世界は実に難解なカテゴライズがされていて高価な品物と偽物だったりした場合の落差が激しすぎますし、買う側にもある程度の目利きと勉強が必要とされます


刀装具ならば、現時点では町彫りが主流となっていて金工の数は刀剣界よりも遥かに少ないものです

少ない上に町彫りの品物で無銘の刀装具ならば簡単に買うべき品物から除外が出来ます

そうすると、少し勉強をすれば有名な金工の名前であれば覚えられますし、余りにも怪しい品物も除外できる訳です


そういった訳で、ヤフオクの出品物は、今日も大銘・ビッグネームの作者の刀装具が高額でセドリ業者が仲介に立ち、高い値段で落札されていく訳です

保存証書の紙が付いていなくても、無鑑の品物であっても落としていくのは度胸があるというか、何というか?


外人の買いっぷりの良さに驚かされますし、ネットでの相場を引き上げてしまう事が即ち実店舗での店頭価格にまで最近は影響を与えつつあります


例えば水戸金工で萩谷勝平の作品は少し前までは派手過ぎて味が無い、ゲテモノとして三流品の価格設定で値付けをされていました

ところが最近は派手で分かり易い図柄が外人受けをするらしく、人気が出てしまい元々刀装具は出会いの品物ですから出た時に買わないと次が無く、自然と勢い付いて現在では数倍の取引値段に引き上げられてしまっています


買われた値段・売買成立した値段がモノの相場となり実績が出来てしまいます

今後は余程の事が無いと値崩れしないでしょう


金工作家の場合、年齢を重ねる事で名乗る名前やセカンドネームを変化させたりする事もよくある話ですが、せどりを行う彼らは、まだそこまで知識が無いらしく、同じ作者なのに片方は高く、本人自作なのに片方の別名の品物は放置されていたりします


ですが、時間の問題のように思います

これから増々、町彫りの品物の争奪戦が行われていくと確信しています


ヤフオク参加者はくれぐれも高値掴みに気を付けて貰いたいものです


この流れは当分の間は続きそうな雰囲気です



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