第13話 特保の証書って・・・?・??

特保の証書付きの金無垢獅子、しかも乗真作だと聞かされた目貫の鑑定結果が返却されてきました


協会は先に封筒で審査結果だけを通知してきます


鑑定結果を確認の上、指定の振込先に鑑定料金を振り込んで、直接協会に品物を引き取りに出向くか、郵送を依頼するか選択するとそれぞれの方法で返却がされます


いつも思いますが、合格すれば嬉しくて直ぐに振り込み手続きをします

不合格や現状の場合ですと支払う料金がモノ凄く高く感じられるコト、この上ありません


封筒の端をハサミで綺麗に切り、中身の通知書をドキドキしながら引き出します


結果、この申請物件は全滅に近い形となりました

どういうことか?


①番 小柄

銘に研究の余地あり

②番 縁頭

銘に研究の余地あり

③番 目貫

鋳造か否か研究の余地あり

④番 鐔

現状


乗真の金無垢目貫は③です


繰り返しますが③です

頭がクラクラしました


特保の付けられた品物を特保証書を付けずに鑑定審査に出したのは(古後藤)から『乗真』もしくは『伝 乗真』に証書を変えて欲しかったからです


なのに鋳造?

意味が分からずに夜はモヤモヤしながら、翌日協会に確認しました

鑑定の先生は色々と理由を述べられましたが、

『鋳造に見えた』

『古後藤で特保が付いているならば添付してくれたら良かったのに・・』

『何か新資料があれば変わるかも知れないけれど覆らないと思います』

という回答でした


この回答も?です 


何故、既に取得済みの古後藤の特別保存証書(貴重小道具ではなく)を添付して再度審査に出すと思うのでしょう?

添付していたらきっと古後藤の[現状]という結果でしょう

という事は再び鑑定料金だけ二重に徴収されるだけの話だったハズです

そんな意味不明な事をする人間がいるわけありませんね


何をどうやっても覆りそうに無くて諦めましたが、特保の証書は令和発行の証書です

前回の話で業界の方が協会審査に愚痴を言う理由が分かった気がします

翌日料金を振り込み返送希望しました


一体全体、協会は自分たちの数年前の鑑定をどのように考えているのでしょう?

ただの保存では無くて、更にその上の特別保存の認定なのですから、厳しい審査をしたはずですし、その厳しい審査を通過する品物だったはずです

特別保存の制度も不思議ですが、審査員にも問題があります、そもそも後藤自体が根拠の無い区別をしている訳です


(後藤極めは本来の刀装具作成者が亡くなってから数十年も経過してから、後の後藤家の人間達が合議制で誰それの作品である、と勝手に推測して折紙を発行している訳ですから絶対確実な根拠ではありません 

研究者は鏨の打ち方や隠し鏨、手癖、彫りの高さ、金性の具合等々、実に色々と理由を探し出して作者を推定というか確定させていますが、後藤は祐乗から相当の時代を経過しないと自身銘を刻みません

幾ら上等の作品だったとしても、これが後藤から気持ちが離れるキッカケでした)



この話にもまだオチがあります


数日してから協会から油紙に梱包された箱が届きました

午前に受け取りましたが、不合格や現状という結果は変わらず熱も醒めてましたから夜まで放置してました

それでも開けてみよう、と思い開梱したところ何か違和感があります


あれ? 数が合わない?

一つ一つ箱を開けていくと見慣れた敗残兵たち

その中で、一番派手な金無垢目貫が見当たりません

こんな時は不思議なもので何もない箱を何度もひっくり返したりして見てしまいます

マジックじゃないから空き箱からコロリと目貫箱が出る訳もなく

翌日再び慌てて協会に連絡をする羽目になるのです


電話口で相手も少し慌てていましたがしばらく電話を繋げたままにしていたら奥から『ありました、こちらはどうしましょうか?』

当然返して貰わなければ!!!

返品する品物を忘れるものですか?

そのまま送料は相手持ちで返却することになりました


証書が気になったので

『特保の証書はありますか?』と聞くと

証書を忘れていたらしく再び奥に探しに行き、こちらも発見したとの事

ちょっといい加減にして欲しかったです


一旦ケチが付くとこういう事は続くものです

少し意地悪な事を言ってしまいましたが翌日返却されてきました


こうなると、この品物からは一気に熱が冷めます

理由を考えながら入手先に元通りに戻させて頂く事にしました


ところが、更に更に留めのオチが付くのですが、これは

自分の刀装具への向き合い方、考え方を転向させるものでした


購入先の方に連絡をして、

『実家の関係でどうしても手放さないといけない金銭的理由が出来てしまった』という当たり障りのない理由で返却を申し入れたところ、定期預金だと言われたハズなのに、40万ならば引き取ります、との事


僅か数か月前の事ですから最近の定期預金の逆金利は物凄いものです


こちらもそれならば鑑定結果で鋳造との話は言わずにそのまま戻させて頂きました

50万購入―引き取り40万で差額は10万円+鑑定料金が凹んだ訳です


50万は大金ですが、この短期間で実質38万くらいに目減りしてしまった訳で、相手がそもそも業者だったならばこのような事は無かった訳で、本来は文句の一つも言えますしそのまま返金を強く求めるタイミングです


ここから、学んだのは絶対にセミプロから品物を買ってはいけない事、どうせ買うならば所載品且つ、協会の最上の鑑定が付属したものに限って集めるようにしよう!

金額的に厳しいから一生懸命貯金をしていこう、と心に誓ったわけです














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