第6話 刀装具の価値について少し・・
ちょっとだけ刀装具の価値について触れたいと思いますが
その前にモノの価値について、です
一般的に、工業製品の場合には値段が大まかに決まっていて仕入れや販売方法により細かく違いますが販売価格は大きくブレたりしないものです
大量生産品は減価償却されていき、やがてモノの価値は無くなっていくものです
これが美術品や絵画、焼き物や工芸品などの分野になると途端に基準が変わり、
例えば絵画の場合は、シルクスクリーンやジークレー、版画等の印刷された作品であったとしても人気のある作家の作品であるならば、減価償却されずにそれなりの値段を維持出来ます(一枚あたり、数千円から数十万が大部分ですがバックサイドワークスの作品のように異常な高値を維持する作品も一部あります)
この人気、というバロメーターが厄介なモノサシだと最近感じます
ひと昔前ならば無茶苦茶に値段の高い作家の作品は不変だと勝手に判断していましたし、その製作者がお亡くなりになると絵画作品は途端に値段が跳ね上がるものだと思っていました
ところが、美術の教科書に載っていたあまり詳しくなくても聞いたことがあるような作家の作品が令和時代の市場価値を調べると作家によっては随分な落ち込みをしているものも少なく無い事に気付かされます
高価値を担保するものは他人が欲しがるかどうか? というその点に尽きると思います
昔、流行ったブリキのおもちゃ、未使用のプラモデル、 田河水泡の漫画のらくろ等々、ノスタルジーに浸り、支援する人が欲しがる期間は価値を維持出来ますが、いずれ今のZ世代の若者達が社会の主流になった頃に価値を維持できるとは到底思えないのです
使い捨て社会で各種マニュアル、コンプライアンスに縛られた窮屈な今の時代の後継者達が繋いでいってくれるものでしょうか?
とっても心配です
テレビの【何でも鑑定団】では毎週、品物の本物・偽物を判断した上で、判定金額をハッキリと明示しますが、あれは業者側の希望価格であって、他人が欲しがる金額であるか?という観点からするとその金額には開きがあるようです
業者がズレた感覚のままでいるか、相場を作り出そうとしているのがヒシヒシと感じられます
値段・相場には色々な要素があります
〇日常生活に溶け込んだ品物を懐古する意味で出来上がる相場
〇大量製作でも人気作家による品物であるから維持できる相場
〇ワンオフ・一品もので美術芸術的に誰が見ても美観を伴う品物の相場
〇関係業者の意図する操縦された相場
〇歴史的な人間が所有していた特殊性から出来る相場
〇海外の政策によって出来た需要と供給のアンバランスが生み出す相場
等々
値段の付き方は様々です
6番目の相場でいうと最近の自動車の相場も相変わらず異常ですね
北米の25年ルールが撤廃すると更に加熱するかも知れませんが20年以上前のスカイラインGTRが6000万、7000万で取引されているのはどう考えてもおかしな話 、
今迄ならばそうした価値はフェラーリやブガッティなどに向けられるものでした
誰かがいずれは、ババを掴まされる日が来るのでしょうが海外動向が絡むので複雑に動くのかも知れませんね
ホントに前置きが長くなりましたが刀装具の値段について、です
刀装具【主に、鐔・目貫・縁頭・小柄・笄・拵え一式】が市場価値を持ち続けている事は大変に良い事だと思います
製作年からの経過年数は世界的に見てもダントツで時代を経ているモノが多くあります
本来は単なる武器の一部であり消耗品でもあった刀装具は、時代を経て他者との区分けやデザイン性を持ち、上級武士や貴族から人気を博する優秀な金工は親方になり派を興して隆盛を極めていきます
歴史的に有名な武将や武士、同じく上級な家格が収蔵していた品物には本阿弥折紙が付されて贈答品としても使われていきます
やがて平和な時代を迎える頃には刀装具の需要の中心は商人に移り常用の機能性、機能美から離れて美術芸術性を廃刀令が発布されるまでの長らくの間、技術は最高潮にまで引き上げられました
刀装具の人気と値段は
☆鉄製の鐔、特に味わい深い透かし鐔群
☆後藤や古美濃に拘り続ける方
☆肥後金工による鐔が大好きな方
☆鉄鐔の最上級に数えられる王者、金家・信家の作品群
☆安親や乗意といった奈良三作の作品群
☆技術が最高潮に達した幕末から明治の超絶技巧群
これらの数寄者により現在も維持されています
長くなりましたから次回あたりにしますが、プライスタグ・値段の高い安いの幅は普通の人の感覚では付いていけないものがあります
鉄鐔たった一枚買うのに国家公務員の方が退職金を全て投入するレベルもあったりします
全国には多くの博物館美術館がありますが、刀剣や刀装具に関する展示はここ最近のブームもあり入場者も増加しているようです
刀装具はまだそこまでの光の当たり方は無いのですが、刀剣と同じく近未来に繋いでくれる若者が増えていく事を期待しますし、そうなれば値段も維持し、引いては文化も守られていくようなボンヤリとした希望を持って収集を続けています
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