第5話 そろそろ刀剣女子は刀装具を見て欲しい・・・

私が所属している日刀保(日本美術刀剣保存協会)支部も女性の参加者がとても増えて来ました

刀剣に興味を持つ若い方が増えるのはとっても良い事だと思っています

歴史好きが高じた男性がこの世界に入ってきてハマるものだと思っていましたが

支部の女性の比率は二割超になりました


女性の立場にしてみたら一括りに歴女、とか刀剣女子という風にカテゴライズされるのは好きでは無いと思いますが、今や刀剣の展示会や展覧会でも臆せず一人で入場している姿を見かけても当たり前になりました

単純に刀の持つ美しさにハマる方と、いわゆる刀を擬人化したゲームの影響で刀の世界に踏み込む方に大別されるようですが大多数が(見るだけ、鑑賞するだけ)から【手元に置く、コレクシションする】というところにはまだ至っていないようです


確かに彼女たちが見る刀はビッグネームの刀剣や名物刀剣が多く、仮に運よくご縁があって入手できる機会を得たとしても目玉が飛び出る金額を準備しないとならない訳でして入手に至らないのは至極当たり前の話です


以前岡山県の瀬戸内市が上杉家由来の一文字で有名な山鳥毛(さんちょうもう)をクラウドファウンディングで5億円集めて購入した事がニュースになったのを覚えている方は多いと思います


一般の人は、5億円ッ! ただの刀一本の値段で? という感想が私の周囲の大部分でも聞かれた素直な反応でした

でも、この金額で譲られた元の持ち主の方にしたら大盤振る舞いの金額であったと思います

あくまで公的な場所で山鳥毛由来の元々の生産地に住まう方々に喜んで貰いたい、という気持ちで安く譲られたのだと聞きました


これ以外にも名物の国宝や重文の刀剣はあります

きっと値段を付けるとしたらこれに近い金額かこれ以上になる事でしょう


であるならば、です


これらの名物に付属していた、或いは付属している刀装具はまだ刀剣ほどには脚光を浴びていません

大変に小さい品物が大部分ですから喫茶店で知人と持ち寄って楽しむ事も可能です

移動や持ち運びも簡単で何よりその美術性の高さは計り知れません

刀装具ならば名物でも刀剣の1/10以下、人気によっては1/1000以下でも十分に入手が可能です

ここに女性の皆さんが目を向けてくれたならばもっと活況になるだろうなぁ、と思っています


新型コロナ禍が収まった昨年、一昨年の大刀剣市に行くと分かりますが、大部分は男性のお客、更に言うならば外人の来場者数が異常なほど目立ちます

しかも彼らは冷やかしで来場したりしません

実際に即金でその場で買っていきます

それはそうですよね、今までの金額よりも為替の関係で四割引きに等しいのですから今買わなくていつ買うの? って感じなんでしょう


美術品としての価値を見出しているのは国内よりも海外の方なのは残念ですが、これは刀剣界が今までそうした若い目を育てる事をしてこなかったツケが回ってきているのだと思います


現在は東京の有名店でも外人だから、って売り惜しみはしません

先代、先々代ならば名品は売らなかったと聞きますが、今は寧ろ、有名な刀剣店でも若社長たちは実に流暢な英会話で接客して次々と高額品が売却されていきます


高いところから低いところに水が流れるように、お金のあるところに国内の美術品が流出するのを見ているのは余り気持ち良いものではありません


先人で明治時代の出版社の社長であった光村利藻(みつむらとしも)は刀装具の名品が国外流出しない為に自ら刀装具を相当数集めて国内に保留しました


それらの残された遺物が現在の根津美術館だったり、現代では元村田製作所専務だった村田理如(まさゆき)さんの手によって京都の三年坂美術館で守られています


村田さんが集めていくので幕末から明治金工モノの相場が暴騰したという方もいますがこの場合は良い意味で資産価値が高まる事で注目を集める訳で、興味の薄い方が刀装具の価値やポテンシャルに気付いて興味を持てば更に流出に歯止めが効くのではないかと思います


刀剣女子の皆さんは是非、まだお値打ち感のある刀装具に早く気付いて実際に購入してコレクションして欲しいと思いますし、支部でも啓蒙している最中なのです






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