第2話 素人が短刀を購入 ・・・今度は何と兼光!!
前回は左文字の刀をビッダーズを使って購入、鑑定結果が違い購入先に返却した話でした
今回は二振り目の素人の無謀な買い物の話です
さて、前回の失敗に懲りていない私は次なるターゲットを日々ビッダーズ、ヤフオクで物色していました
ビッダーズは刀剣類の取り扱いがOKでしたが、この時点ではヤフオクはオッカナビックリの態度で刀剣類もようやくグレーゾーンに移った頃です
これ以前のヤフオクは模造刀しか出品が出来ない状態でしたからビッダーズの隆盛に押されて取り扱いを軟化させたのでしょう
何か事件や事故があったら直ぐに禁止ジャンルに戻っていたと思いますが徐々に出品されていきます
今のヤフオクは何でもアリ、な状態ですから以前の事を知っていると出品者は楽になったものです
二振り目の買い物です
まだビッグネームに拘りがある私は相伝備前の短刀の名手である兼光を購入する事になります
備前兼光、と言えばどのような刀剣書物にも間違いなく掲載されている刀工です
切れ味の鋭さを表す伝記や伝来が数多く残されていますね
敵を斬ったところ、斬った相手は川を渡って逃げてしまったが渡り切ってから二つに分かれて敵が倒れたとか、如何にも相手が斬られたと気付かない程の切れ味であったかを物語る逸話です
戦前、戦後の長い期間、兼光という刀工は一人ではなくて二代、三代と続いたと言われたものですが近年は一代説が主流になりました
古い書物を見ると必ず数代の説がありますがいずれ訂正されていくのでしょう
とにかく兼光です
検索していたら発見しました
短刀の兼光です
写真からも茎は振袖になっていて古雅な雰囲気を感じます
平成時代の特別保存の証書まで付属しています
金額を見るとビックリ! 開始金額が2,000,000円
特別保存が付いた兼光の短刀です
出来具合や状態は分からないにしても相当安い設定であったと思いますがド素人ですから先ずは設定金額に驚きます
数日迷いましたが質問欄から『品物を直接拝見したいのですが可能ですか?』と送信してみました
直ぐに出品者から了承がありました
フットワークが軽いのが信条なので、クルマを一時間半ほど走らせて相手の自宅に行きました
相手の方とは当然ながら初見でしたが感じの良い70代の動きの素早い方でした
出品者のご自宅の二階に通されて品物を拝見させて頂きます
短刀の兼光は素人目ながら写真以上に良い品物です
ジックリ見ていると相手の方が『他にもあるけど見るかい? 』と言われて
出してこられたのが二振りの小太刀と太刀でした
小太刀は備前真恒
太刀は豊後行平で太刀拵え付きでした
今思うと本物だったのだろうか?という気持ちは拭えません
何しろ真恒は国宝や重文になっている品物ばかりなのですから普通の民家にあって良い品物ではありません
小太刀の真恒は短く、大変に細身でしたが優美な雰囲気です
太刀の縮尺を変えた小振りな姿ですが良い品物ですし昔の貴重証書も付属していました
ただ気になった点はほんの少し微妙に刀身に捻じれを感じてしまいこちらは除外
刀の行平にも古い証書が付属していましたが、こちらはとてもボンヤリとした刀身の出来具合で何しろセットの拵えが物凄く金蒔絵や徳川の家紋が入り金具も出来が良さそうです
先週に数寄者から買い入れてきたばかりの品物で『拵えとセットで200で買ってきたんだよ』と言われます
更に『今ではこの家紋も作って貰うとしたら一つ一つの家紋に2万円は掛かってしまうから家紋の分だけで20万は踏めるし貴重なんだよ、伝来もあって良い買い物だった』とも言われました
証書も拝見すると(底銘 行平)となっています
こちらのセットは譲って頂けるとは一言も言われませんでしたが何とかなりそうな雰囲気でした
散々に迷ったあげくに出した答えは特別保存付きの短刀
相手のNさんは正直な話として特別保存と昔の古い証書のそれぞれの確実性について話され、古い証書付きの品物は除外したのですが、もしかしたら兼光を買うように
誘導されていたのかも知れませんね
当日は手土産と500,000円を持参していきましたから残り150万は後払いで品物も持って帰らせて頂きました
帰り際に玄関横の石が気になったので聞いてみると清水次郎長の生家の工事をする際に頂いてきたモノだよ、との事
そういえば、そこかしこにある品物も謂れのありそうなモノだったし、ご本人も剣舞を青年時代から今に至るまで継続して活動していて、昨年は中国まで披露に行かれた事もあるそうでご本人の動きの素早い理由も納得
刀に詳しくて色々な話も聞きましたが今にするともっとお付き合いしておけば良かったと思います
例えば清磨で有名な窪田清音の刀を過去に所有されていたり、武器講その弐の刀も見られた事があったり、と興味の湧く話ばかりでした
現在ご存命だとしても相当な高齢なハズです
何だか業者みたいな買い方をしてしまいましたが、こんな風に譲って頂けるならば、まぁ良いかと考えて帰宅しました
この兼光の短刀はその後つい最近まで長い期間、我が家にいました
昨年の大刀剣市で販売されていましたが、このあたりは改めて顛末を記します
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