第弐拾伍舞

「ごめんね」


そう謝ってまいの身体に寸勁すんけいという簡単に言えば発勁はっけいの1種の技を打ち込む。


グォッ!


と苦しんで暴れるまいに振り落とされないようにしがみつく。


まい!戻ってきて!大丈夫!ここに敵はいないよっ!」


3年前と同じように呼びかける。


しかし私の声は届かず私を振り落とそうと必死に暴れる。


ずっと掴まっておくわけにもいかないので頃合ころあいを見てまいから飛び降りる。


3年前と同様まい自身の意識はなくただただ暴れるだけの獣のような状態になってしまっている。


あの時はまいに必死に声を掛けながら攻撃して疲弊させたら意識が戻ってきたからまいが自分で元に戻ったんだっけ…。


でも、今回も同じようにいくのかは分からない…。それに、できるならまいを傷つけたくなんて無い。


ただ今優先することは住民の避難であり時間稼ぎだ。


今無理にまいを刺激しすぎてしまえば被害が大きくなってしまう。


とはいえ、ずっと1人でまいを抑え続けるのは少々厳しい…せめてもう一人、誰かいればいいのだが…。


「うぉっ!これどういう状況なんだよ…」


とビニール袋を持って驚く男が一人。


どうやら買い物帰りらしい。


「あなた、避難勧告かなんか出たの知らないの!?」


「そーいやなんか言ってたな…」


軽いノリでそういう天宮あまみや


「っ!どうでもいいから避けてっ!」


まい天宮あまみやにターゲットを変えたらしく、まいの鋭い爪が天宮あまみやへと襲いかかる。


「そんな大振りなの当たるかよ」


余裕そうにそう言った後、天宮あまみやの姿が見えなくなる。


バカンッ!とまいが空振り、コンクリートが砕ける音がする。


「で、どういう状況なんだよ。これ」


いつの間にやら隣に立っていた天宮あまみやにそう聞かれる。


前に見た超スピードだろう。


「あのおおかみ、私の友達なの。ちょっと理性が飛んじゃってるから元に戻そうとしてるところ」


「なるほどな…手、貸そうか?」


ニヤ、と嫌な笑みを浮かべる天宮あまみや


「人手は多いにこしたことないからね」


と、遠回しに協力をお願いする私


「貸し1だからな」


「…考えとく」


こうして今晩限りのタッグを組むことになった。


「取り敢えず、どうすりゃいいんだ?」


「住民の避難が最優先!とにかく時間を稼いで」


「りょーかい」


お互いにヘイトを分散しあいながらまいの攻撃を避け続ける。


「ちょっと!今のわざとこっちに近づけてきたでしょ!?」


「んだよ!あのくらいよけれんだろ!」


「そういう問題じゃない!私はまいを助けないといけないの!真面目にしてよ!」


「へいへい」


とそんな軽口を叩けるくらいには余裕があった。


…というより、天宮あまみやとは息が合う。


何となくお互いにしたいことが分かるのだ。


パズルのピースがカッチリとハマったようなそんな感じ。


「…舞桜まお、避難はあらかた終わったぞ」


インカムからの阿津斗あつとの声。


「…そう。ありがとう、阿津斗あつと


避難が済んだならもう大丈夫か。


そう思い静かに頭に付けている桜の髪飾りを外す。

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