第弐拾陸舞
私が髪飾りを取ると同時にブワッ!と
それと同時に私の右目が緋色に変わった。
異名の通りとまではいかないがこの目は大抵のものが見える。…見えてしまう。
相手の筋肉の動き、感情、そして思考さえも見えてしまうのだ。
この桜の髪飾りはそんな力を防いで置く制御装置のような役目をしてる。
普通の人より膨大な霊力を持っているらしい私の霊力を普通の人より少し多いくらいの霊力まで抑えてくれる。
まぁ髪飾りをつけていても相手の考えというのはある程度分かってしまうんだけど…。
というのも経験則で分かるが無意識に霊力で防いでいるらしく、霊力が多い人ほど考えなどが見にくくなる。
それでも嘘をついているかどうかくらいは分かってしまうんだけどね。
「何だよそれ、ちょっとカッコいいな」
「…そんないいものでもないよ。ちょっと離れてて。巻き込まれちゃうよ」
そう言いながらブワッ!と私と
「うぉ、あっつ!」
生き物は本能的に火を恐れる。
それがたとえ百獣の王とも言えるジェヴォーダンの獣だとしても。
「
半分
「だから落ち着いて。ほら、私はもう攻撃なんてしないから」
声をかけ続ける。
「私は信じてるよ。戻ってくるって」
そう言いながら手を差し出す。
ガブッッ!!
反射的にか、意図的にか私の差し出した手に噛みつく
何本ものナイフを同時に刺されたような痛みに顔を歪ませる。
「大丈夫、大丈夫だから。落ち着いて」
そう言って優しく
「怖くない。怖くないよ」
何度も呼びかけ続ける私。
すると
それと同時にゆっくりと口を開き、ペロ、ペロ、と傷口を舐め始めた。
「ごめんね」とそういうふうに。
「おかえりなさい。
ギュッ、と空いている方の手で
「よく分からんが一件落着、ってことでいいのか?」
後ろから
「そうだね。協力してくれてありがとう。あなたがいなかったら少し大変だったかな?」
「素直なんだな…」
目を大きく開いて驚く
「感謝くらいちゃんとするよ」
全く、私を何だと思ってるのやら。
…にしても一件落着、ね。
この言い方だと2件目3件目があるみたいで嫌な感じだ。考えすぎなだけだと思うが。
そういう当たってほしくない予感というのは総じて当たってしまうようなものらしく。
「結構苦労したんだけどなぁ」
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