外伝 其の壱 罪滅ぼし

「世界の…崩壊、ですか?」


「うん。そう遠くないうちにね。見てきた・・・・から確実だよ」


男は淡々と世界が終わる、と告げる


「それで?貴方あなたはどうするというのですか?」


女は男にそう聞くと


「君の方こそどうするんだい?」


と逆に問われた。


「…一端いっぱしあやかしごときになにかできるとお思いで?」


「くっ、あははは、君がそれを言うのか」


女の発言が面白かったのか大笑いする。


「かつて朝廷ちょうていたぶらかし日本を滅ぼしかけた君、玉藻たまも御前ごぜんが」


「昔のことよ。もう十分反省したわ。石になるのはりだしね…」


苦い思い出を思い出し顔をしかめる。


「それで今は天狐てんこと名乗っているのか。まぁきつねあやかしはどれも似たようなものだし、名前を変えればバレることはないだろう」


「そんなことより、貴方あなたはどうするのです?」


「僕は何もしない。これが答えだ」


ニィと楽しそうに笑う男。


「未来で何とかなっているのを見た、ということでいいの?」


「いーや。君も知っているだろ?僕は現実、過去、未来を自由に行き来できはする。しかしね、私はネタバレが嫌いなのだよ。そんなのはつまらないだろ?知っている未来を、知っている通りになぞっていくだけなどクソ喰らえってやつだ。」


「仮にも神様である貴方あなたがそんな事を言うのね。地球はどうでもいい、ということかしら?」


「これからとある少女がこの世界に生まれる」


女の言葉の返答としては不適切な発言。


「…その子が世界を救うと?」


女は男の言いたいことを見抜きそう返す。


「いーや、その子が世界を滅ぼしかけるんだ。でも同時に世界を救うんだ。きっとね」


「矛盾しているようだけど?」


「彼女はいわば世界のバグだ。とはいえ、バグだって悪いものばかりじゃないだろう?世界を壊すのか、世界を変えるのかとても楽しみだよ」


まるでゲームでもしているかのようにはしゃぐ男。


「地球を掛け皿にしたギャンブル、ワクワクしないかい?」


「一つ質問なのだけど、その子が平和に暮らすという道があるんじゃないの?」


「あぁ、そんなこと?ありえないよ。言っただろう?彼女は世界のバグだ。世界の方が彼女を逃さないよ。彼女は生まれた瞬間から世界のことわりによって強制された人生を歩むことになる。彼女に自由何てものはないんだよ」


生まれながらに決められたレールの上を走らされて、さらには世界をどうこうしなければいけないだって?そんなの、あまりにも理不尽で、不平等で、不自由で可哀想かわいそうではないか。


彼女はただこの世に生まれただけだというのに…。


女はギリッと歯ぎしりをする。


「そんなに彼女のことが気になるのかい?」


「悪いかしら?」


「いーや、君の生い立ちから彼女に同情するのは無理はないよ。…そうだね、彼女を信じて待つ以外にもう一つ世界の崩壊を防ぐすべがある」


「…どうすればいいの?」


「簡単な話さ。彼女を殺せばいい。そうすれば世界のバグは消え今まで通りの生活が送れるだろうね」


「…貴方あなたはそんな終わり方で満足なの?」


勿論もちろん。そういう終わり方だって1つの楽しみではある。最も、君が彼女を殺すかは別の問題だがね」


1人の少女を殺して世界を元に戻すのか、少女を信じて世界が崩壊する危険性を伴うのか…。そんなもの選択する必要すらない。


「分かった。私が殺す」


少女に苦しい現実しか待っていないというのならそれを知る前に殺すのも優しさだ。


「いいね。その選択でどんな未来になるのか楽しみだよ」





これは、女が少女にししょーと呼ばれる前の少し前のお話し。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

緋眼の舞姫 神無月 蛍 @Kannazki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ