第拾伍舞

「開きそう?」


じっと鍵穴を覗き込むようにして阿津斗あつとに聞くまい


「このくらいなら余裕だ」


そう言って普段は危険なため締め切っている屋上の扉を開けてくれた。


阿津斗あつと、相変わらずピッキング上手いよね」


「このくらいなら練習すれば誰でもできる。」


褒めたのになく返されてしまった。


まぁ阿津斗あつとは本当にそう思ってるんだろうけど…。


「ピッキングなんてできなくても困らないも〜んだ」


練習したのにできなかったらしいまいがプイ、とそっぽを向く。


「まぁピッキングって繊細さ求められるしね…」


「それって私が大雑把おおざっぱって言いたいの!?」


「実際そうだしな…」


阿津斗あつとまでっ!?」


そろそろ面倒くさいことになりそうだし、


「そんなことよりほら、お弁当」


まい風呂敷ふろしきつつんだお弁当を渡す。


「なんかごまかそうとしてない…?」


じと〜と疑う目を向けてくるので


「要らないなら食べなくていいよ。はい、これ阿津斗あつとの分ね」


と突き放してみる。すると


「わ〜!わ〜!ごめんなさい!食べる食べるから!」


と慌てて私のお弁当を受け取ってくれた。


まいって結構ちょろいから悪い人にだけは騙されないように注意しないと…。


「ん〜舞桜まおの料理美味し〜」


ほおに手を当てて喜ぶまい


「そういえばまい天狐てんこ何処どこに行ったか知ってる?昨日から帰ってきてないんだよね」


「ん?はへっへひへはいほ?帰ってきてないの?


「口に物入れたまま話さないの。行儀悪いでしょ」


「学校についたらどっか行っちゃったから知らないよ」


ちゃんと口に含んでいた分を飲み込んでから言うまい


こういう素直なところはまいのいいところだよね。


それにしても何処どこに行ったのやら…。


「まぁ天狐てんこのことだし、ふらっとかえってくるか」


うわさをすればなんとやら


ヒュッとまいの前を何かが横切った。


「きゅきゅ〜」


お弁当に入れてあった油揚げを口に加えた天狐てんこが嬉しそうな声を上げる。


「くぉうらぁ〜!!天狐てんこちゃん!それは舞桜まおが私のために作ってくれたやつだぞ!」


お弁当を置いて天狐てんこを追いかけるまい


体が小さいこともあってひらひらとまいから上手く逃げ続ける。


全く、何やってるのやら…。


やれやれと呆れる私をよそに1人黙々もくもくとお弁当を食べている阿津斗あつと


「どう?美味しい?」


「あぁ、美味いぞ」


「よかった。阿津斗あつとってほっとくとサプリメントとかで栄養補給しようとするもんね」


そっと視線をそらされた…。やっぱりそうする気だったんだ…。


「ロボット」なんてうわさされてるけど分かりやすいし素直なんだよね。


「別に悪いとは言わないけどきちんとした食事も大切だよ?」


「…そうだな。気をつける」


こく、と小さくうなづいて約束してくれた。


「こら〜!か〜え~せ〜!」


ドタバタと走り回るまい天狐てんこ


まだやってたんだ…はぁ仕方ないな


まい私の分を分けるから。それでいいでしょ?」


「ほんと!?わ~い!」


と両手を上げて喜ぶまい


「それで阿津斗あつと、調べ物の件なんだけどどうなったの?」


「あぁ、少しこれを見てくれ」


そう言ってパソコンの画面を見せてくれる。


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