第7話 日本:生物学者 エビハラ博士

 私の研究所であるに一人の男が訪ねてきた。中国から来た考古学者だと言うが、ずいぶんと軽いイメージの男だ。


「ウェイ ウェ~イ! 研究所めっちゃ渋くない? まじウケんだけど。あ、俺は約束した考古学者のマーっすから、よろしこりん。ん? このべしゃり? もう、人類最後かも知れないじゃん? だから俺らしく生きるべきじゃねって? むしろ、そうじゃねって?」


 こんな軽い男が本当に世紀の大発見をした考古学者なのだろうか? 私はいささか疑いを持ち始めた。


「それで、私に相談というのは?」

「シャークエイリアン……いや、学名について新たな仮説を考えたので博士に見解を聞こうかなって」


 フライングシャーク……。なるほど、私としたことが見誤るところだった。この男は物事の本質を見ている。ちきゅ連(地球連合)の頭の薄いヤツラとは大違いだ。

 この男には十分な時間を割く価値がある。


「数万年前に地球に飛来したフライングシャーク。天敵となる大型の恐竜もいないのに、なぜ彼らは空を捨てて海に潜ったのか? 博士の学説を基に、ず~と考えていたんだけどさ、それ違くね? って気付いたわけ。地球の70%は海じゃん。だからほとんどが海に落ちたんじゃねって?」


 それは考えつかなかった。チベットに落ちたのは一部で、ほとんどは海に落ちた?


「海に落ちたものは陸に上がれない? だから島国の日本は比較的にフライングシャークの被害が少ない? 海に逃げたサメは海で生活せざるを得なかったから、そのように変化したとばかり思っていたが……」


 そう言えばちきゅ連の連中は地球の周りをシャーク星が漂いながら、サメの乗った隕石を落としていると言っていた。2万前の反省からやり方を変えた可能性があるのか?

 彼の仮説が私の灰色の脳細胞を刺激する。何かが頭の中に浮かび上がっては消えていく。あともう一押しで閃きそうなのだが……。


「水が弱点……いや、雨の中でもフライングシャークはフライングしているか」

「んじゃ、海水とか?」

「それだ! 海水! 多分塩分濃度の関係なのだろうが、海水がヤツラが空を泳ぐのに必要なガスを打ち消してしまうのではないだろうか? あれさえなければ、飛べないサメはタダのサメだ」

「それな! 紅のサメの襲撃はおしまいってか?」



 重い扉を開き、地下への階段を降りる。マー教授を生体実験室に案内するのだ。私はこの地下実験場を「契約の箱」と呼んでいる。意味は特にないが、なんとなく響きがかっこいいからだ。

 階段を降りると、私達をもう一つの頑丈な重い扉が待ち受ける。頑丈なロックを外し、一歩足を踏み入れると、センサーが私達を感知して自動で明かりを灯す。

 そして我々は中央に鎮座する大きな水槽の前で足を止める。


「マジぱねぇ! これが……」

「そう、実験用に捕獲したフライングシャーク(小さなネコザメだが)だ。さあ、じゃんじゃん塩水ぶっかけるぞぉ!」


 久しぶりの実験に私は興奮を隠しきれなかった。

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