第8話 地球:運命に抗った英雄たち
アメリカ:アナウンサー アルマ
「1列目射撃用意!」
シャカシャカシャカ
「ウォーターガン発射!」
プシャー!!
海水入りの加圧式水鉄砲の放射を受けたシャークエイリアンは、浮遊ガスが焼失して次々と地面に墜落していく。人類の反転攻勢が始まっていた。
「よぉし戦車部隊、クソッタレの……ピー(自主規制)……ザメ共をミンチにしてやれ!」
地面に転がるサメ達が、あっけなく潰されていく。その様子を私達テレビクルーは最前線で映し出す。
「みなさぁん、見て下さい。サメせんべいのできあがりですぅ。もうシャークエイリアンは人類の脅威ではありませぇん」
人類の新たな武器、水鉄砲は利点の塊だった。高濃度食塩水はどこででも手に入る上に、水鉄砲は私のようなか弱く麗しき女性だけでなく、子供でも簡単に扱える。
しかも、シャークエイリアンにとっての脅威は人間にとってはただのしょっぱい水だ。誤射による問題もないし、さらに、一発ずつ撃つ銃と違って、長い放射時間があるから自由に矛先を変えられる。劣っているのは飛距離くらいのものだけれど、強敵相手には消防車の放水という手もあるそうだ。
戦時中でも中継を続けてきた私の人気はここに来て上昇中で、今日は伝説の英雄に招待されて、はるばるアメリカまでやって来たのだ。
彼はシャークエイリアンの巨大ボス、メガロドンを粉砕したと言う。
「マックス大佐ぁ、巨大な、巨大な、メガロドンにダイナマイトを持って特攻をかけたようですが、よく無事でしたね」
「俺様も命を捨てる覚悟で飛び込んで行ったんだがよ。俺様を飲み込もうとバカ口開けてるメガロドンの姿を見たら口がゴミ箱に見えてよ。ダイナマイトを放り込んでやったわけだ。直径7フィート(約2m)を超す大口だぜ。どんなノーコンピッチャーでもストライクよ」
「凄ぉ~い。でも爆風とか大丈夫だったんですかぁ?」
「やつの外部装甲が厚いのが幸いして、爆発はほとんどやつの中だけで片付いたんだ。でも、その後が最悪でよ。内部で融解したサメ肉のゲロをかけられちまってよ。ションベン臭い匂いが一週間は取れなかったぜ。がははははは」
聞きしに勝る人類の英雄マックス大佐。その風格はまさに「漢」と言ったイメージで、女の私はキュンとする。
「でも、嬉しかったですよぉ。まさか英雄が最前線の中継に私達を呼んでくれるなんて」
「最前線っても、もう危険はほとんどないしな。それに俺様があんたのファンだったのよ。クソッタレの戦場で見る、あの陽気な放送は楽しかったぜ」
「私も男らしい大佐は大好きですぅ」
「キッス! キッス!」
同行したクルーが呑気に囃し立てる。まったく、それしか知らないの?
私は厚い胸板に抱かれて、熱い口づけを交わした。
*****
アメリカ:考古学者 マー教授
地球連合本部で最前線の中継を見ていた俺等のもとに吉報が入る。
『緊急連絡! 緊急連絡! 地球を周回していたシャーク星が軌道を外れました。どうやら地球から離れていくもようです』
「そうか! あの星は惑星にして宇宙船。フライングシャークは宇宙船シャーク星号の乗組員だったんだ!」
エビハラ博士も興奮している。俺達の研究も地球史に名を残す大偉業だったわけだし、マジやべーわ。
「ウェイ! ウェ~イ! サメのヤツラ、さようなら人類ってかw 人類の勝利を祝って皆でパーリーしようぜ!」
*****
日本:コメディアン トオル
サメの脅威が去り、避難所の皆に笑顔が戻った。子供たちもはしゃいで外を走り回っている。
やっと、やっと皆で笑い会える時が来たんだ。今こそ僕たちコメディアンの活躍の時だ。
「子供たち集まれ! トオルちゃん、ぽ~ん!」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
おしまい
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