ホラー小説の正しい楽しみ方

浅葱

とても怖がりなのですが

 怖いものが苦手なクセについ見てしまう。

 小さい頃から私はそんな子どもだった。

 そんな私が手に取った本は、鈴木光司著の「リング」だった。

 解説には、昼間に読んだのにあまりにも怖かったようなことが書かれていた。

 小説なのに昼間に読んでも怖いとはどんな話なのだろう?

 興味を惹かれた私がその本を読んだのは二十年以上前、中国の大学に留学していた時分である。

 確かあれは夏で、寮のエアコンが効いた部屋で読み始めたのは寝る前だった。

 怖がりなクセにホラー小説を夜に読むとか、今考えても正気とは思えない。

 けれどなんとなく、夜11時頃に読み始めてしまったのだ。

 確かに怖い。とても怖いと思いながら読み進め、そろそろクライマックス……と思った時、部屋の電気が消えた。


 今もそうかもしれないが、当時の大陸は常に電力不足であった。

 あとは寮の電気代節約の為だったのか、当時は夜十二時になるとブレイカーを落とされることが多かった。

 とても怖い場面で電気を消されたのである。

 がくがくと身体が震えた。

 でも電気が一斉に消されてしまったのならしかたない。このまま寝ようとがくがく震えながら布団に潜り込んだ。

 もちろんあまりの恐ろしさに眠れるはずもなく困っていたら、十分ほど経ってから電気が点いた。


「じゃ、じゃあ読もう……」


 中途半端に読むのが一番怖いのだと、エアコンのプラグを別のところに差してエアコンをまた起動させ、私は最後まで「リング」を読んだのだった。(一度ブレイカーを落とされた後、朝までエアコンのプラグがささっていたコンセントだけは落とされたままなのである)


 結論:とても怖かった。

 

 このままでは恐ろしくてとても眠れないと、続きの「らせん」を読み、なんとなく納得してから寝た。

 この話を後日友人にしたら、


「怖がりなのに、夜ホラー小説を読み始める時点でありえない!」


 と言われた。しかしその後に、


「まぁでも、ホラー小説をより怖く読めたんだから正しい楽しみ方だったんじゃないの?」


 とも言われたのである。

 心臓が弱い人は止めた方がいいとは思うが、無意識のうちにより臨場感のある読み方をしていたようだ。

 とても怖かったけど、あれはあれでよかったのだなと思うことにした。



おしまい。

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