第25話 魔法使いって横着だよね

 次の日の朝、アウルははっと目を覚ます。催眠で眠らされていたのでいい気はしない。


 いつもの癖で、コーヒーを持ってこようと指を動かして、そして魔法が使えなかったことを思い出す。


 アウルは舌打ちをして寝室から出る。すでにクロウが起きていてコーヒーを飲んでいる。


「あ、おはよー。結構早かったじゃん」

「テメェがあんなに早く寝せるからだろうがっ」


 機嫌の悪いアウルに、クロウはコーヒーを渡した。

「砂糖は」

「それくらい自分でやって」

「チッ」

 舌打ちしながら棚に砂糖を取りに行く。

「いちいち動かなきゃならねぇのは本当に不便だ」

「こうしてみると本当に、魔法使いって横着だよね」

 クロウはクスクス笑う。


「そういえば、作業部屋キレイに片付いてたねー。珍しい」

「ジャスがやったんだ」

「へー、反抗心丸出しかと思ったら、意外にそういう事してくれるんだね。どこに何があるか一目瞭然じゃん。頼んでた幻覚剤も出来てるのすぐに見つけれたよ」

「幻覚剤はもう出来てるってわかってんならすぐに納入してこい。期限は昨日だったろ。何で昨日持っていかなかった」

 アウルは非難するようにクロウに言った。案外アウルは仕事の期限に厳しい。


「んー、そうだったんだけど、アウル一人残すの心配で、期限の延長を……」

「大丈夫だろ。結界もあるし、昨日テメェがある程度蹴散らしただろうし」

「いや、どちらかって言うと日常生活が……」


 クロウの言葉に、思わずアウルはウ、と言葉に詰まる。


「多分、多分大丈夫だろ」

「多分ねぇ」

 クロウは疑わしい顔をしてみせた。


「ま、午前中には帰ってくるから大丈夫か」

「ああ。大丈夫だ。日常業務なんぞ全く何もしないで待っててやるから」

「偉そうに言わないでよ」

 クロウは苦笑する。


「じゃあ、水は樽にある程度貯めておくから、マッチの使い方は……いややめとこう。火事にされても困るし。半日くらい火使わなくても平気か」

「おいおい、何もしねぇからな大丈夫だっつってんだろ。余計な気遣いすんな」

「わかってるけど何もしないのは俺の気がすまないんだから」


 そう言ってクロウは家の中をイソイソと動き回り、魔法の使えない魔法使いを一人残すための準備をするのだった。






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