第24話 ヤバい奴ら
「行っちゃったねー。アウルが変な事言い出してグダグダ帰るのが遅くなりそうになったのはちょっと焦ったけど」
完全にジャスの姿が見えなくなってから、クロウはアウルに話しかける。
「悪い、帰るのが楽しそうなアイツに少し苛ついてな」
「ヤバイ奴らが来る前で良かったね」
「ああ」
アウルは窓の外を見る。
人影が数個、アウルの家を狙うように睨んでいる。
「全く、どこから聞きつけてんだか……」
「もう御神木の件は広まってるみたい。アウルが死者を蘇らせた後は魔力が弱まるっていうのはもう有名だから」
「早えなぁ。まあ事前にこの家に結界は張っといたからザコ魔法は通じねえ」
「ザコじゃないのは?」
「テメェに頼む」
「いつも言ってるんだけど俺魔力強くないからね。大した期待しないで」
クロウもため息をつきながら窓の外の人影を見る。
「さて、大魔法使いの命を狙う悪い子達に、『説得』してこなきゃね」
クロウはニコニコ笑顔を携えたまま、堂々と玄関から外に出ていった。
そして後から何人かの悲鳴が聞こえてきた。
クロウが家に戻った。
「早かったな」
「まあ、そんなに強い魔法使いはいなかったからね。俺が行かなくても多分結界で弾けたんじゃないかな?今回結構強い結界張ってたよね」
そう言いながら勝手にアウルの戸棚からコーヒーを取り出す。
「俺なんか狙って何の得があるんだかな」
アウルはため息をつきながら言った。
「そんなの、大魔法使いアウルを倒した、ってなると魔法界から一目置かれるじゃない。魔法の依頼料も何倍にも釣り上げられる。それに」
クロウはそこで言葉を止める。その先を言うべきかどうか。
しかしクロウの言葉を引き継いで、アウルが事も無げに言った。
「それに、どっちかってぇと復讐が多いだろ」
「……そうだね」
「せっかく暗殺できた奴を生き返らせたりしてるからな」
「まあ、そういう依頼持ってくる俺にも責任あるけど」
「何を受けるか決めてんのは俺だ」
「ま、そうだね」
クロウは小さく微笑む。
少しアウルは考え込むように言った。
「今日みたいに魔法使いが狙ってくるなら手加減しなくて済むが……。人間が特攻してくんのが一番面倒なんだよな。毎回一人はいるもんな」
「んー、別に人間も手加減しなくていいでしょ。人間殺しちゃうのは禁忌だけど再起不能にさせるくらいは」
「手加減の問題だけじゃねえよ」
考えているだけでアウルはイライラしてきたようだ。
「あー、アウルもう今日は疲れただろから早休もう?何も考えなくてもいいから。俺がうまくやってあげるよ、いつもどおり」
イライラしてきたアウルを、クロウは慌てて寝せる準備をさせる。
「まだ明るいだろうがっ」
「イライラしてるアウル、超面倒なんだから、明るくてもなんでもとにかく余計な事考えないで寝ちゃって!ただですら考えるの苦手なくせに」
クロウは無理やりアウルをベットに押し込み、催眠をかける。
あっと言う間にアウルは寝てしまった。
「全く、いつもの事なのに、何をそんなに考える事あるんだか」
クロウはアウルの寝顔を見つめながら呟く。
「多分、花嫁の事考えてだろうね」
そっとアウルの頭を撫でなでる。
同胞である人間に害を与えるのを、花嫁に見せたくないのだろう。
「花嫁、かあ」
クロウはそれだけ呟くと、ベットの側を離れた。
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