第2話
「それで、『失われた国宝』の所在を求めて私の所に来たと……。ちなみに、お客様は第二王女と第三王子のどちらに組しているのですか?」
お客様と呼ばれた人物は、首を横に振った。
「儂は、どちらも支持しない。第二王女は、浪費家で装飾品を集めるのが趣味の人物だ。第三王子は、臆病者だ。人前に出るのをとにかく嫌がる。どちらにも国王の座は任せられないと思っている」
店主は、笑って聞いていた。
「それでは、もし仮にですが、『失われた国宝』が見つかったら誰に渡すつもりですか?」
お客様と呼ばれた人物に、緊張が走る。
「……市政に落とされた人物が一人いる。廃嫡されたのだが、私は後見人として陰から支えて来た。その者に国王の座に着いて貰いたいと思っている」
店主の笑顔は崩れない。そして、一枚の紙を差し出した。
「なるほど、分かりました。それでは、これが、『失われた国宝』が眠っている場所になります」
お客様と呼ばれた人物は、驚きました。
「『失われた国宝』を知っているのか?」
「いいえ、知りません。でも、今日私に何が起きるかは知っていました。事前に用意しておいただけです。それと、お客様がこの店に来れたのは偶然ではありませんよ?」
お客様と呼ばれた人物が、紙を受け取りました。それと、中身の詰まった袋をテーブルに起きました。
「助かった。これでこの国も救われる可能性が出て来た。これが本物であればだが……。いや、事前に用意までしているそなたを疑う事など愚かだな」
「お礼を言うのは、早計ですね。『失われた国宝』を手に入れても、お客様の支持する人物が国王の座に着くまでには、かなりの困難を乗り超えなければなりません。でもそうですね。もう少しだけお手伝いをしましょうか。『恩恵』の意味を考えてください」
お客様と呼ばれた人物は、店主の言葉に驚いていたが、一礼して店を出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます