第58話 戦略

「皆、集まったな」


 円卓のテーブルを囲んだ勇士たちと顔を合わせ、合図を送る。普段の会議はユードラの部屋を使っていたのだが、あの惨状なので、今回は別の部屋で行う。


「それでは今から、インガー共和国撃破のための会議を進めたいと思う」


 ここに集まったのはざっと4人。まずはマサトシ。こいつの血液からは刀を駆使して戦う『薩美流』という部隊が生まれた。そしてソウ。ソウからは様々な種類の龍へと変身出来る者で構成された『東龍会』が発足。そして最後に無きシゲミツの後を継いで『神文鉄火隊』の長、ミツハシだ。


「今さっき、ステルス性の高い龍を持つ奴に偵察に行かせた。具体的な規模や建物なんかはそこでわかると思う」


「でかした。それまでは机上の空論のようになってしまうかもしれないが、話を進めよう」


 俺は皆に視線を向け、何か意見のある者の発言を促した。


「自分、一言よろしいでしょうか」


 ミツハシが手を挙げた。


「うん。よろしく」


「それでは……。もし、奴らの拠点がここの構造に近い、いわゆる城方式なら、まずヒロトさんの火炎弾で一網打尽にするのがいいかと思われます! その後、後の部隊で対処すると言った形で」


「うむ。それがいいだろう」


「じゃ、採用で。次は移動手段か……正直、敵の拠点はかなり遠いぞ」


 1番近いのは新谷だが、そこからでも徒歩で歩くと10日はかかってしまうだろう。奴らの人数が知れない以上、こちらも手を抜く訳にはいかない。


「うちの部隊を使えば、数百人規模で運べるよ。そこで仮拠点を用意すればいいんじゃないかな」


 ソウが自信満々な表情で口を開いた。


「そんなこと可能なのか?」


「うん。戦闘にはあまり向かないけど、とにかく大容量の奴がいてね。そいつらを使えば、多分いける」


「それはいいね」


 よしよし、固まってきたな。後は、ソウの部隊の偵察を待つだけ、か。


「ソウさーん!」

 

 お、都合よくきやがったな。


「報告を」


「そ、それが……奴ら、超大規模な拠点を建ててます! 恐らく、ここと同レベ。文化レベルは、この国を大きく超えているかと」


「「「「な、なんだって!?」」」」


 全員から思わず驚嘆の声が漏れる。こんな僅かな時間で、そこまでの拠点を作り上げるとは。


「た、ただ、俺たちの予想通りではあるな。城のような構成なのは。つまり、やることは同じ。そうだろ?」


「まぁな。その通りだぜマサトシ」


 そう、俺らは戦うしかないんだ。敵がどんなに強大だろうと、殺るしかないんだ。


「じゃあ、その計画で行こう。運輸はソウに任せるとして……拠点建設に関しては、専門家に任せようかな」


「専門家?」


「ああ。俺が出会った中に1人、短時間で拠点を作る天才がいるんだ」


 その人はまだ、新谷のトップとして日々奮闘してくれているはず。俺が頼めば、すぐに受けてくれるだろう。


「じゃあ、任せるよ。それ以外の者たちは修練でいいか?」


「ああ、構わない。それじゃあ、よろしく」

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