第26話 エントリー
「戦況は」
あれから小一時間が過ぎた。そろそろ、何かが動いてくるはず。出来れば何事もなく終わりたいが……
「ひとまず侵入はされていない。柵のギリギリで足止めをしているみたいだ」
「敵の数は?」
「着実に減っている。しかし、これがいつまで持つか……能力としてはこちらが上かもしれないが、何せ鉄砲の性能が違うからね」
確かに。向こうがルーブ本国から来たのなら、武器も最新鋭のもののはずだ。奴隷主が使っていたオンボロを流用しているうちとは、そりゃスペックが違う。
「いつでも行けるよう、準備だけ頼むよ」
「ああ、任せろ」
新技――成功さえすれば必ず奴らを一網打尽にできる。もしもの場合は、やるしかない。
――
「はぁっ、はぁっ! ユードラさん!」
あれから数時間後、突然勢いよく扉が開いた。開けたのは、銃を手に持ったガタイのいい男。多分、さっきまで戦闘をしていた兵だろう。
「どうした」
「神文鉄火の2人が撃たれました! 1人は肺、1人は胸で、両者戦闘不能! 一般兵も負傷で前線を退いており、もはや侵入は時間の問題です!」
「!」
まずいな。いくら再生能力があるとは言え、臓器の損傷はかなりの時間がかかるはず(シゲミツが一瞬で回復したのは、初めて力を使ったからだろう。実際、俺の方が軽傷だったのに、回復スピードは俺の方が遅かった)。その間、神文鉄火6人と一般兵で抑えられるか? いや、無理だろう。
勝負を、決めに行かなければならないかもな。
「なぁ、ユードラ」
「なんだい」
「俺らの領地、どの位までなら破壊してもいい」
俺の新技は莫大な威力と範囲を誇る大技だ。そしてその範囲は円状に広がる。つまり、発動する場所によっては自らの土地にダメージを与えることになる。
「柵から数十mは植林場と必須では無い作物の農場になっている。そこなら、最悪リカバリーが効く。くれぐれも、民間人の居住区だけは被害を与えるなよ」
「了解」
よし、それなら大丈夫。多少のコントロールは効くし、敵を一網打尽にするのも簡単だ。
「ちなみに今敵は何人? そしてどんな隊形だ」
「恐らく500弱。隊形は少し広がっていますが、基本は固まっています。侵入の際も基本的には1纏まりで来るはずです」
「ありがとう。じゃあ、全軍撤退の合図を出してくれるか」
「ふむ。皆を避難させないといけないようなことをやるんだな。準備は出来ているのか」
「ああ、この身1つあれば十分だ」
「わかった。すぐ手配しよう」
このフットワークの軽さよ。ありがたい。さ、俺の方も準備をするかな。
目指すのは物見塔。あそこを射出台とする。
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