第21話 One×One④

○○○




「遭難してるみたい」


 背後にセナの気配がした。


「あー、ちなみにどの辺で?」


 作業が忙しくて、手を止められない。


「六合目くらい」


 セナが大きな溜め息をいた。


「あー、俺今、手が離せなくてよ。任せてもいいか?」


「……わかった」


 渋々頷いたセナであったが、ショートワープ(?)で目的地へと向かった。




○○○




 俺もそろそろ気配の掴み方が上達してきており、かなり意識を割けば、セナの位置くらいなら把握出来るのだった。

 セナの気配が六合目から少しいった所で止まった。ぼんやりとではあるが、二人の気配も感じるし、ちょうど今、合流したというところか。





○○○




 元々 《益荒男傭兵団ベルセルガ》の拠点はボルダフではなく、翼速竜イーグルドラゴンで行き来するほどに離れた街にあった。

 拠点が違うといえども、しかし辺境の街ボルダフの影響は決して無視することは出来ない。

 ボルダフ経由で仕事を要請されることもあるだろうし、また不足した人員もボルダフで募集すれば早い、なんてこともあるだろう。


 そういったわけで、必ず《益荒男傭兵団ベルセルガ》所属の団員がある程度の数、ボルダフに配置されていた。


 俺が山から降りて、ボルダフで練り歩いていると、三回に一回は団員と鉢合わせる。「兄貴ィ」だとか「ブラザー」だとか「ウェニキ」だとか好き放題呼ばれてる俺は、もはや慣れ過ぎて訂正することすらやめてしまった。


 彼らと出会うと必ずと言っていいほどに「かしらもこちらに来てますんで、すぐに呼んで来ます」だとか「団長が見つけたら連れてこいって言ってました」と言われ、当日かその翌日にはサガと飲む羽目になるのだ。


 それ以外にも俺と会う度に「狩りに付き合え」と、まるでモン◯ン狩りゲーで狩りに誘うくらいの気軽さで、俺を連れ出そうとするのだった。

 また、ミロとディーテから直接頼まれた結果、二人を連れてその辺の迷宮に潜ったこともある。


 そういった感じで、俺と《益荒男傭兵団ベルセルガ》との付き合いはそれなりに良好であった。





◯◯◯




 セナが合流したことで、彼女達の気配がこちらに向かう速度がとんでもない速さとなった。小屋に辿り着くまで半刻も必要ないだろう。

 それとは別に、待ち合わせ時間までにあと一時間ほどか……。


 もうしばらくすれば戻ってくるはずの彼女達の小腹を紛らわさせるために、ナッツやくるみやビスケットなんかを用意しておく。




○○○




 彼女達と会う───その日になると、俺はいつも王都での彼女達との時間を思い出す。


 出来れば二度とは思い出したくはないが、それでも俺は、あの日のことを一生抱えて生きていかないといけない。







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