第16話 勇者はそこにいる彼らの夢をみるか①
◇◇◇
勇者である竜宮院に《時の迷宮》を踏破させると言ったところで、彼の実力が伴わなければそれはただの空言であった。
別の実力者を同行させるとしても、ただの足手まといを連れて行く意味は、竜宮院に対する罰以外には何もなかった。
もちろん、多くの者が新造最難関迷宮踏破のための探索を大義名分にし、彼を死地に追いやりたいとは思っていた。
それでももう一人の少年の「彼を生かして罪を償わせてくれ」という頼みは、どうしても無下にすることは出来ず、とりあえずは
しかしレアスキルである《成長率5倍》を持つとは言え、一ヶ月で竜宮院を戦えるようにするには、それこそ山田一郎が乗り越えた訓練と同等のものをこなす必要があった。
多くの者が検討を重ねた結果、勇者竜宮院にも、山田一郎に課したとのとほぼ同様の訓練をさせることとなった。
捕縛されてから竜宮院は大人しくなった。
それはもう、人が変わったように静かになった。本当に反省してるのでは? と信じる者も出るほどであった。
しかしそれは、やはりとも言うべきか、彼のお得意の猫被りであり、反省からなされたものではなかった。
訓練をしっかりと受けたのも初日だけであった。と言っても、その初日ですらノルマを半分もこなしていない状況で彼は気を失った。
その日一日、強力な回復魔法を掛けられても彼が目を覚ますことはなかった。
そう。みなさんは既におわかりだろう。
全ては彼お得意の気絶した振りである。
彼には、演技の才能があった。
つまり目を覚まさない(フリの)彼に、シスター達は心配し、何度も何度も回復魔法を掛け続けていたことになる。
彼は愚かであった。
こんなものバレないわけがなかった。
早々に気絶した振りがバレた彼は、一週間を待たずに反省の様子なしとされ、厳しいお仕置きを受けることとなった。
◇◇◇
「やめてぇぇぇぇぇぇーーーー!! どうしてぇぇぇーーー!」
その日、王都にあるクラーテル教大聖堂にて勇者竜宮院の悲鳴が響き渡った。彼が訓練を始めてからちょうど一週間が過ぎたときであった。
「誰かぁ、たしゅけて、ひろいころしないれぇぇぇぇーーーーーー!」
彼は助けを求めたが、助ける者は誰もいない。
「【
王城で竜宮院を絡め取った光が、再び彼を襲った。
「ひゃめれぇぇぇぇぇぇぇーーーー!」
彼は既に性欲を封じられ、もはや一日の楽しみはその日の食事のみであった。
しかしそれも───
「リューグーインくん、君もバカだねぇ。僕はやるといったらやるんだよ。君は本日を以て、こちらの与えた最低限度の食事しか出来ない。おかわりなんて以ての外だ。
前も言ったと思うけど、これはもう解除出来ないよ」
竜宮院はあーあーうーうーと咽び泣いた。
「節制の世界にようこそ」
ギルバートが暗く嗤った。
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