第15話 One×One①

○○○





 その日はシエスタさんや騎士団長と「また会いましょう」と約束を交わし、俺達は別れた。


 予定していた三日間の王都滞在も終わり、翌日には俺達は王都を離れた。



 そうして───忙しなくもまったりとした日々が訪れ、あの日から二月ふたつきが経った。

 たったの二ヶ月ではあるが、それなりに色々な出来事があった。


 みんなの話をしようと思うが、さて、どこから話そうか……。

 なら、そうだな、まずは、アダムとネリーさんの話をしようか。


 彼らはそれぞれの屋敷に帰り、各々の思うように過ごすそうだ。


 アダムは王から下賜された地で貴族として過ごすと言っていた。


「恥ずかしいけど俺は何も知らないからな。政治を学ぶために、一から勉強しようと思う。大変? 確かにそれは大変だろう。けれど、これから始まる第二の人生に、私はワクワクしてるのさ」


 彼が苦味走った表情で、ニヤリと笑っていたのが印象的だった。


 ネリーさんは、何もしたいことが見えず、当分の間は、領地運営を代官に丸投げすると言っていた。

 というより、彼女は役目から解放されたことが未だに信じられないそうで、しばらくゆっくりと過ごしながら、現実との折り合いをつけるそうだ。

 かつてアシュから聞いた話によると、魔封スキルを用いるのは、非常につらく、それはまるで全身の力を抜かれるような感覚になるのだとか……。であるならばネリーさんが、燃え尽き症候群みたいになっていても不思議ではなかった。


 それでも彼女は別れ際に「本当にありがとねー! こっちに来たときは絶対に私の家に寄ってよねー!」と伝えてくれた。





◯◯◯




 プルさんやアンジェは王都に居を構えることになったので、俺達と別れて王都に残った。

 いつだって別れというのは悲しいものなのだ。けれど俺には───


「イチロー、そろそろ起きてご飯を作って」


 セナが俺の背中に飛び乗った。

 腹を空かせたセナが、もう昼前だというのにぐーたらしていた俺にねだった。


「ういー、ちょっと待ってくれなー」


 センセイがミカと共に旅に出たことで、俺とセナはかつての隠れ山の小屋にて、二人だけで暮らしている。エリスもオルフェも今はいない。


 ただ、それでも俺は頻繁に山から街に降りるし、そこではアノンやミラン達と会ったりもする。


 そうそう、先日アノンと会った際に、竜宮院に関する情報を耳にした。


 だから次は竜宮院の戦果について話したいと思う。

 彼が挑戦するのは、最難関とされる《時の迷宮》であった。彼がかつて踏破に大失敗し、再び挑戦を余儀なくされた迷宮である。

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