第11話 王都での三日間②(ロズウェル事件)

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 俺達はあの日、ようやく竜宮院の問題を片付けることができた。もちろん彼によって二度と元に戻らぬようになったものも多く、本当の問題解決にはかなりの時間を要するだろう。

 けれどそれこそ、この世界の人々がどうにかするべきことでもあった。俺に出来ることは精々、俺の周りにいる人を助けることだけだ。




 アノンから頼まれた通り、俺達は三日間を王都にて過ごした。

 予定通りの三日目、彼に言われるがまま訪れた劇場では、アノンプレゼンツの舞台を観覧することとなった。


 俺と一緒に舞台鑑賞した面々からは、わりと好意的な意見が多く、何だか自分が褒められているようでどこかむず痒かった。

 それはそうと俺を主役にした舞台は、第二弾、第三弾と続編が制作されることも決まっているようであった。


 俺の隣で、アノンから脚本のために話を聞かせて欲しいと頼まれたエリスとアンジェが嬉々として了承していたことが、気になると言えば気になった。マジでやめろし。そういうのは本人のいないとこでやってくれ。

 俺は彼らからすすっと視線を反らすと、見ざる聞かざる言わざるを決め込んだ。そうしなければ恥ずか死んでしまう……。



 これは余談ではあるが、舞台に関してとても興味深い話を耳にした。

 前回の竜宮院脚本の舞台に出演していた『聖騎士ヤマダ』役の役者さんは、実在するとされる最低キャラを演じたお陰で、キャラと同一視され、罵声を浴びたり、人格否定されたりと散々な憂き目にあっていたそうだ。

 こんな話を聞かされた俺は完全に被害者であった。泣いても良いですか?


 ただしかし、今回の舞台では、そういったネガティブなイメージを打ち消すためにも、元『聖騎士ヤマダ』役の役者さんには可能ならば真『聖騎士ヤマダ』役、それが難しければ代わりに何らかの良いポジションのキャラの役が割り当てられることが決まったそうだった。

 難しければ? 確かに……ボルダフで観た舞台の『ヤマダ』は体型的にちょっと……ん、んん(咳払い)



 話は変わって、忘れてはならないのがサガ達のことだ。

 サガは、舞台の誘いに対して「舞台なんて興味ないに決まってるだろォ見れば分かるだろ」と一秒も考えることなく断り、俺達が鑑賞しているときも、副官さんや聖騎士のアダム、ネリーのコンビ達と共に、酒場でパーリーピーポーウェイウェイウェーイを決め込んでいたのだった。

 役目から開放されこれからどうすればいいのか途方に暮れるネリー───相談に乗るという名目で彼女を連れ去ったサガとアダムは、多くの人間を盛大に巻き込んでグデングデンのベロンベロンになるまで飲み明かしたそうだ。


 これは後日、顔面蒼白にしたメガネの副官カミュ氏から聞いた話だ。

 そのときの料金は、仲間の分はもちろん、居合わせただけの者達の分も全てサガが持ちで、今回もらった報奨の一部をデロリと溶かしたそうであった。昭和の大スターかな?

 カミュ氏のメガネがズレて見えたのは俺の見間違いではなかったはずだ。南無。


 ただ、やっぱりサガの酒の飲み方はかなりヤヴァイ。

 彼は喉の焼けるようなアルコール原液みたいな酒をかっぱかっぱと水みたいに流し込んでは陽気にガハハと叫んでいた。

 サガの肝臓はバケモノか……などと感傷に浸りつつも、魔法やポーションなんかが存在するこの世界だ。肝臓に直で効くポーションなんてものがあっても不思議ではないだろう……俺はそう思い込むことにした。


 ん? どうして、サガの酒の飲み方を知ってるのかって?

 一緒に飲みに行ったことがあるからだよ。それも二回も。


 一度目は、封印領域の征伐祭ゼロ日目で、二度目は、舞台観賞の前日だった。




◯◯◯




 そう。舞台観賞した前日に俺は、サガとアダムという屈強な男達に脇を抱えられ、酒場へと連れていかれたのだった。

 これはまさに拉致とか連行とか誘拐と言い換えても良い所業であった。俺の気持ちはまさに、ロズウェル事件のグレイそのものであった。


 あれは王都で過ごした数日の中でも、本当に濃い夜であった。もとい「濃いメンツで飲んだw」というやつだ。



 今から、その夜の話をしていこう。

 大酒飲みのおっさん二人に連れられ、ぎゃあぎゃあと騒がしい夜の酒場にて、彼らと共にテーブルを囲んだところから話は始まる。

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