第38話 聖騎士 vs 勇者(究極完全体) ③
○○○
殴りつけた方の拳をぐーぱぐーぱと数回握り、光の腕が完全に制御下であることを確認する。
「───オールグリーンだ」
竜宮院が起き上がる前に、センセイとアノンへと視線を送る。
体感ではあるが、一度、彼の《
「あががががッッ!! 痛ぃ痛ぃ痛ぃぃぃぎぎッッッ!!」
竜宮院が頬を押えてうめき声を上げている傍ら、俺の意図を解したセンセイやアノン達は、てきぱきとみんなを誘導し、神気結界の外へと出た。ここからは───
「竜宮院、みんなは結界の外に避難した。ここには俺とお前の二人だけしかいない。正真正銘、二人だけの空間だ」
彼が立ち上がり、膝の砂を払った。
「山田ァッッ!! よくも俺を殴りやがってッッッ!! ついさっき半ダルマにされたくせにやけにイキってるじゃないかァァッッ!!
俺の力と、俺の《
大仰な物言いは治りはしない。
だから言わせておけばいい。
竜宮院が話してる間にグラムを拾って備える。
俺の態度が気に障ったのか、彼が先手を取って飛び出した。
「俺の話を聞けぇぇェェェェッッッ!!」
竜宮院の攻撃は速くて重い。しかし単調で読みやすく、言うならばそれは"素人の剣"だ。
彼のデタラメな速度の超連撃───その全てを余裕を持って受け流す。
「クソッッ!! こんなはずじゃないんだッッ! どうしてッ! どうしてッッッ!!」
竜宮院が一度下がって地団駄を踏んだ。
もう十分だろ。次は俺の番だ
一足飛びからの、唐竹割り───からのフェイント───そこで横一文字───竜宮院は上昇した能力のみで無理やり何とか追いついたが───キィンッ!───彼の剣を弾き飛ばした。
「よく、追いつけたな」
竜宮院が真っ赤に血走った瞳で俺を呪い殺さんばかりに睨みつけた。
「俺は《限界突破》を使って人類の限界ってやつを超越したはずなんだッ!!」
「《限界突破》で人類の限界を超えた、か。
お前らしいな。お手軽ワンタッチで《限界突破》───恥知らずなお前にちょうどぴったりのスキルじゃないか」
「だ、黙れ」
「黙らねーよ。俺は何度も自分で限界を超えてきた」
「モブキャラごときが何を───」
「敵はいつだって格上だった。
何度も死にそうな目に合ってきた。
だけど、その度に泥臭く足掻いて、限界を超えてきたんだ」
魔法反射。物理無効。超加速。不死。炎の
様々な敵と相対し、俺は生き延びてきた。
限界を───己を超えなければ生きてはこれなかった。
「お前は器じゃねーよ、竜宮院」
竜宮院が押し黙った。
「俺が
それは100%の確信を込めた断言だ。
すると竜宮院か、何かをボソボソと呟いた。
「大丈夫、大丈夫だ。僕は大丈夫。俺は大丈夫なんだ。俺には最強最大最強最高最強最大の必殺技 《
やはり彼は、正気ではない。
「《
彼の姿が瞬間───光速に達し───ブレた。
けれど、脳の部分加速により、彼の動きはもはや認識可能だ。
光速となった彼の連撃が間断なく襲いかかってくるも、腕の部分加速により、弾いて、弾いて、弾いて、弾いて、弾いた。しかし───
「はッはァァァーーーー!!」
竜宮院の超加速が収まると、彼の哄笑が響いた。
その瞬間、俺の身体に無数の剣閃が走り、血が吹き出した。
「やったぞヤマダァァァッッッ!!」
問題ない。
急所は無事で全て切り傷だ。
ただ、一つだけ。
俺の感覚が捉えた───
竜宮院の《
さらに言うと、俺のものより魔力消費も少なく、連続使用が効く。
けれど、もう、そろそろだ。
あと一回ほどで───
「やっぱり俺は最強だァァァア!!」
俺の怪我を見てノリノリで気炎を上げた竜宮院であったが、俺は彼に構わず『センセイ、ミカ、あとで頼む』と心の中で謝罪しながら、先程の傷を光魔法で覆った。
「御託はいいから、さっさと来い」
喜びの声を妨げられた竜宮院が、
「謝ってもォォッ!! もう許さないィィィィッッッ!!」
謎の奇声を放つと、
「《
再度超加速してみせた。
彼の技は俺の模倣、というよりもある種の上位互換版と言えるかもしれなかった。けれど、所詮は───
「どうして……通じないッッ!! さっきはッッ!! 効いたのにッッッ!!」
彼が通常速度に戻ると、俺の頬に一筋の線が走った。彼は満足いかず、悔しそうな表情となった。
「もう、見切った」
彼の《
けれどその攻撃は、どこまでも単調で、どこまでもなってない。
「それに───」
俺は───外界から《気》を取り込むと、即座にそれを《神気》に変換し、一気に全身へと巡らせた。
そして、これまでの制御可能限界を遥かに超えた、二十を超える数の腕を背中に創り上げた。
「なんだ……それ、は……ば、ばけものっ」
俺も、今一度限界を超えてみせよう。
【コミカライズ】聖騎士の俺が好きになったヒロインが続々とアイツのハーレムメンバーになってしまうんだけど俺の何がいけないのか誰か教えてくれ!! 麒麟堂 あみだ @kirin-san
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