第33話 聖騎士 vs 勇者 ⑤
○○○
これは刹那の攻防だ。
○○○
準備は終えていた。
手に馴染んだ聖剣───《護剣リファイア》からかつてない力の迸りを感じた。
しかし、それでも足りないと、私の名を呼んでと、リファイアが鳴動したのを感じた。
───リファイア……俺に力を貸してくれ
俺が願うと、その刀身が煌めいた。
瞬間、俺の身体にさらなる力が流れ込んだ。
そうだ……俺はこの感覚を知っている。
お前もはいつだって俺と共に、戦ってくれていたんだな……。
───ありがとな
心の中でリファイアに感謝を伝えていると、後方にて俺に馴染みのある聖なる力が発生したのを感じた。
聖騎士アシュリー・ノーブルに加えて、彼女の要請に従い、俺に力を貸してくれることになった二人の聖騎士アダム・アロガンスとネリー・バーチャスであった。
彼らは王より授けられし宝具を装着し、彼らそれぞれの能力を発動させたのだった。
俺は、三人の聖騎士である彼らから、既に激励の言葉を貰っている。
◇◇◇
───私達の分も目にものを見せてやってくれ、イチロー
◇◇◇
☆《
《
歴代聖騎士の特殊スキルである、邪を封じる《魔封》スキルを増幅させる触媒として働き、《封印迷宮》を封じ込めていた。
これまでの働きと、《封印迷宮》ならびに《封印領域》が消滅した際の貢献により、王から聖騎士アシュリー・ノーブルへと授けられた。
☆《
アシュリーのスキルの一つ。
彼女のような清らかなる心根の人間に相応しいスキル。
効果は『スキル発動から戦闘終了までの間、スキル発動者が味方であると認定した者の被ダメージの75%をカットする聖域を創る』というもの。使用後は行動不可となる。
今回、玉座の間にて用いられた際に、《
◇◇◇
───勇ある漢よ、私も共に戦おう
◇◇◇
☆《
《
歴代聖騎士の特殊スキルである、邪を封じる《魔封》スキルを増幅させる触媒として働き、《封印迷宮》を封じ込めていた。
これまでの働きと、《封印迷宮》より這い出た
☆《
聖騎士アダム・アロガンスのスキル。
効果は『邪悪なる存在であればあるほどこの空間内での被ダメージが増加し、さらにデバフが著しく効力を発揮する』である。
邪悪の定義は彼の主観によるものが大きいところが玉に瑕ではあるが、悪を嫌うアダムに相応しいスキルと言える。
また、この度与えられた《
◇◇◇
───三つ首龍倒してくれてありがとね、君がいなきゃ多分私死んでた
◇◇◇
☆《
《
歴代聖騎士の特殊スキルである、邪を封じる《魔封》スキルを増幅させる触媒として働き、《封印迷宮》を封じ込めていた。
これまでの働きと、王国騎士団や魔法貴族達の折衷役を務めあげ、一人の犠牲者も出さなかったことで、王から聖騎士ネリー・バーチャスへと授けられた。
☆《
聖騎士ネリー・バーチャスのスキル。
効果は『この空間内におけるネリーの信頼にたる人物は、膂力、魔力などの全ての面おいて、極大の能力アップ効果を得る』である。
また、この度与えられた《
◯◯◯
三人の聖騎士から強烈な光が発せられた。そいつは温かくも優しい光だった。三つの光は合わさると奔流となり一気に俺へと流れ込んだ。
迎え撃つ覚悟は───できている。
竜宮院から黒色のオーラが噴き出した。
禍々しくも凶々しいタールを煮詰めたような全てを飲み込む欲望の黒だった。
以前の俺は、竜宮院の力の一端すら認識出来ずになされるがままにされていた。
しかしセナやセンセイとの厳しい修練を乗り越え、超常の能力を理解し把握出来るようになった今だからこそわかる。
黒のオーラから発せられる怖気立つような
あの黒のオーラこそが竜宮院の能力の実体であり、全ての元凶に違いなかった。
大丈夫だ。これは予想通り彼の───
粘性を持った黒のオーラが蠢き胎動した───そいつは竜宮院から一気に解き放たれ───俺達へと、あるいは世界に向けてと、爆発的速度で拡散せんと一気に───
「させるかよッッ!!」
《スキルディフェンダー》を、意識的に使用し、体内から溢れ出る力をリファイアを通してぶっ放した。
リファイアを通して放たれた俺の力が光のオーラとなり、竜宮院の黒いオーラと正面衝突と相成った。
「リファイア───抑え込んで消滅させるッッ!!」
これまでは認識することすら出来ずに何度も一方的に蹂躙されてきた。しかし、今回は───
今まで無意識で使用していた力であったが、竜宮院の力に抗い、打ち破るべく、訓練し、やれることをやってきた。
「うおおおぉぉぉォォォォォォォォォッッッ!!!」
互いの力が拮抗し、
「敗けてッッ!! たまるかァァァァァァァァッッ!!!」
次第に、俺のオーラが、竜宮院の黒のオーラを押し始めた。
「いけるッッ!! このまま押し切ってみせるッッッ!!」
しかし竜宮院のオーラは圧倒的だ。
奴は数々のデバフを受けもはや万全には程遠い。それに俺だって大量のバフを受けている。にも関わらず───精神力、魔力、体力、その全てが物凄い勢いで削られていくのがわかった。
「けど───だからそれが何だってんだッ!! そんなものは関係ないッッ!!!」
俺の叫びに応じ、リファイアからさらに激しい力が放たれた。
相対する竜宮院から悲鳴にも近い声が聞こえた。
「どうしてぇ!!」
俺のオーラは竜宮院の黒のオーラを確実に追い詰めた。
「なんでぇっ! なんでなのぉっ! どうしてなのぉぉっ!」
そして竜宮院のオーラを完全に捻じ伏せ、
「嫌だっ! 嫌だよぉっ! 助けてよぉっ! 誰か僕をっ! 誰か僕を助けてよぉっ!」
俺から放たれたオーラが、彼とその周囲の黒いオーラを完全に包み込んだ。
「みんなぁっ! 山田をっ! 倒してよォォォォ! みんなァァァ! お願いだよぉぉ! お願いだからァァァ!」
竜宮院が、涙を浮かべて咽び泣いた。
あと一息だった。
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