第28話 Are you ready ?
◯◯◯
どばあと大量の水が彼に降り注いだ。
燃え盛る彼がカエルの様に押し潰された。
もちろんそれは鎮火のためだ。
教会側の冷静な人の魔法によるものだった。
しかし───大多数の者は冷静ではない。
先程の竜宮院のセリフを受けて、大司教の一人は、直前までの竜宮院が火達磨であったことなど少しも考慮せず、声高に叫んだ。
「この無礼者がッッ!! やはり貴様は我らを謀っていたのだなッッ!! この偽物勇者めがッッ!!!」
また別の司教が怒声を上げた。
「お前が本物の勇者なら、このお方が誰だか分かるはずだッッ!!」
そのセリフを言った彼の目は、怒りや喜びでバッキバキにキマっていた。続けてさらに声を張り上げたが───
「これまでの貴様の狼藉の数々ッッ! もはや許し難しッッ!! このお方をどなたと心得るッッ!! このお方こそは───」
センセイが手で制した。
「そこまでにせよ。
ここで我のことを言うても詮ない」
センセイが見たことない冷たい目で竜宮院を見た。
「そもそもこんな奴に言ったところで何だという話であるしな。我が誰であるかをお
もはや真実は
此奴には慈悲もいらんし、同意も必要ない」
センセイの声にいつもの柔和さはない。
「こやつはこれで終わりじゃ」
「ハッッ!!
彼女の命令に、教会関係者達が一斉に声を張り上げた。
それは竜宮院の疑惑に対する決定打だった。
彼らの様子を静観していたマディソン宰相が、詳しい説明はされずとも大勢は決したと判断した。しかし───
「おかしいよなッッ! 俺は勇者でッ! お前達は知恵も知能も足りない後進世界の単なるモブだろッッ!! そもそもからしておかしいッッ!! こんなのは何かの間違いだッッ!! そうだッッ!! 絶対に間違いだッッ!!」
彼の顔には狂気が浮かんでいた。
これまで思うままに振る舞ってきた者の末路だった。
「俺が山田の功績を掠め取っただってッッ!! ええッ!! 全て俺の功績に決まってるだろうがッッ!! 俺のものだよッ!! 俺のものッッ!!」
醜悪な表情で彼が叫んだ。
「そもそも取られたって被害者からの訴えはあるのかッッ?! ないだろッッ?! 取られたって騒いでる被害者がいるのかよッッ?! いないだろッッッ?! 取られた被害者は山田だってお前達は言ったよなァァァ?! そんなやつどうせどこにもいないだろオオオォォーーッッ!! アイツはもう死んだんだッッ!! 出せるもんなら出してみろよオオオォォォォーーーーッッッ!!」
喉から血が出るのではないかというほどの声量で、竜宮院が絶叫した。
アノンが俺の耳元で囁いた。
「準備は万全だ。目にものを見せてやろうじゃないか」
背後に
「イチロー、全てを取り戻してきなさい」
彼女の言葉を背に、俺は仮面を外し、一歩、また一歩と前へと進んだ。そして───
「竜宮院、呼んだか?」
喚き散らして「なんだよッッ!! 僕の邪魔をするなッッ!! この未開の猿がッッ!!」と振り返った竜宮院が、俺の顔を
「山田一郎が、お望み通り戻ってきたぜ?」
竜宮院は数歩後ろに下がると、再度バランスを崩して後ろに転び、尻を地面に着けたのだった。
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全部はあれですが数話前くらいの感想から感想返ししていきますー
普段は「感想なんて///」という方ももしよろしければ
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