【コミカライズ】聖騎士の俺が好きになったヒロインが続々とアイツのハーレムメンバーになってしまうんだけど俺の何がいけないのか誰か教えてくれ！！

第20話 貴方の側にいるために

○○○

「師匠」

　彼女───剣聖エリス・グラディウスが、俺を呼んだ。

　俺の横にはセンセイが座り、ちゃぶ台を挟んだ向こうには二人の剣士───エリスとオルフェリアが座っていた。ちなみにセナは俺の後方に座り、壁にもたれ掛かっていた。

　彼女が俺を「師匠」と呼んだことで、数分続いた沈黙が破られた。

　エリスから前回以上の不調が見て取れた。酷い隈だった。

「今でも、私が、貴方を『師匠』と呼ぶことを、許していただけますか？」

　掠れる声でエリスが俺に尋ねた。

「当たり前じゃねぇか……何当たり前のこと聞いてんだ」

　彼女は「よかった……」と呟き、はらはらと涙をこぼした。

　それを袖で拭うと、居住まいを正した。

「師匠には、この場で改めて謝罪させてください」

　その声には、微かな熱がこもっていた。

　ただ、それが何に由来するものかはわからなかった。

「貴方を裏切ってしまって申し訳ありませんでした」

　彼女が深く頭を下げた。

「エリス、俺は《封印迷宮》でお前と剣を交わしたとき、その気持ちは十分に理解した。だから、もう謝らなくていいんだ」

　彼女はこんなにも小さかったか。

　もともと彼女は華奢であったが、目の前の痩躯はあまりにも───

「師匠、私は貴方の隣にいたかった」

　───私は、貴方を一人にはしたくない

　忘れるわけもない。

　あのときの彼女の言葉だ。

　あの頃の俺は、彼女のその台詞にどれだけ救われたか。

「それなのに私は、」

　エリスは歯を食いしばるように言った。

「あんな奴のために、貴方を裏切ってしまった。だから私は、だから私は───」

　その言葉は震えていた。

　気付いたときには、俺は彼女の隣に飛び出していた。

「大丈夫だから、大丈夫だから、エリス……」

　彼女をそのまま抱き締める、子をあやすように背を叩いた。エリスは「う、う、」と、俺の胸で嗚咽を漏らしたのだった。

　しかし、そうしていたのも数分ほどの時間であり、我に返った彼女が俺の胸を両手で押し返した。

「師匠、ありがとうございました。もう、大丈夫です」

　未だに溢れ続ける涙を、彼女はぐしぐしと袖で拭った。　

「私には、しなければ、ならないことがあります」

　嗚咽が、混じり、言葉がするりと出ない。

「本来であれば、全てを成し遂げてから、師匠と会うべきだと思ったのですが、そう上手くはいきませんでした───」

「気にすんな。お前は、俺の弟子なんだから、」

「そう言っていただけて何よりです。貴方の弟子であれたことが、私の誉れであり、誇りでした」

　エリスから、得体の知れない決意のようなものを感じた。

「何があったんだ？」

　俺の問い掛けに彼女は弱々しく首を振り、立ち上がると、俺に背を向け、小屋の外に向かった。

「それでは、師匠、今までありがとうございました」

　───私は、最北端にある、世俗から離れた修道院に行こうかと思います

　何故か、あの日のミカと重なった。

「エリスッ！！　待てッッ！！」

　そのまま行かせてはならない予感がした。

「ちょっ！　あんた！　このバカ！」

　しかしオルフェと俺の制止を振り切ったエリスは───

「セナ」

　彼女が引き留めてくれていた……というか何かぐったりしてません？

「こんな身体じゃ何にせよ、出来るものも出来ない。ここで出て行っても出て行かなくても、結果は同じ。今のこの娘（こ）には、何も成せやしない」

　エリスはセナの腕の中でくたりと意識を失っていたのだった。

○○○

「えーと、どこから話せばいいかしら」

　オルフェが思い出そうとしてか、目線を上へと向けた。

　センセイとセナ謹製のありがたいお布団にエリスを寝かし、俺達は彼女と共にこの地に訪れたオルフェから話を聞くこととなった。

「わたし、ソフィア達に挨拶してさっさとボルダフから出ていくつもりだったのね。それからなるはや（なるべく早く）で《七番目の青（セブンスブルー）》に戻って脱退を済ませて、なるはや（なるべく早く）であなたと修行をしたいと思ってたの」

　お、行動力ゥー！！

　思い立ったが吉日を地でいく思考回路。凄まじいまでの行動力は羨ましくもあったが、俺の内心はたじたじであった。しかしこの場の誰もが彼女の話に口を挟むことはなかった。

「ちょうどそんなとき、ボルダフを後にしたエリスと会ったの。どこ行くんだって聞いても要領も得ない。だから腹立って、何度も何度も尋ねて、やっとこさ『王都に帰る』って聞き出したの。それで王都に帰るったって、この娘、何だか不健康そうだし、このまま放っておいたら死ぬんじゃないかと思って、仕方なく《七番目の青（セブンスブルー）》に帰る途中までの道を同行することになったわけ」

「話はそれだけじゃないんだろ？」

　今の話は彼女達がここに戻ってきたことの説明にはなってない。

「そうね。話は続くわ。

　そもそも、エリスの目的は、あなたの汚名を雪（そそ）ぎ、全ての真実を明らかにすることだったの。当初（・・）は王都に行けば、昔からお世話になってる有力者がいるから、彼に全てを話して真実を詳（つまび）らかにすれば何とかなるはずだって言ってたわ」

　オルフェが唄うように告げた。さらさらと紡がれる語調とは裏腹に、そこには怒りにも似た、哀しみにも似た何かを感じた。

「あのバカ、『アルカナ王国に、師匠の功績を認めさせてから、師匠の元に帰るんです』って、『何をしてでもわたしは師匠の側にいるんです』って意気込んでたわ」

　両拳を握り締め、ふんす！　と決心を固めた彼女の姿は容易に想像出来た。

　けれど───

「そう。あなたの思った通り。

　エリスの思い通りにはいかなかった」

　オルフェが言った瞬間、

「そこからは、私に、話をさせてください」

　エリスが目を覚ました。

　絶不調とも言える彼女であったが、彼女の瞳の内に、鬼気迫るものを確かに感じた。

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もうしばらく宣伝をさせてもらいます。

まずはですが

11/19に紙版のコミカライズ1巻2巻同時発売します！この辺のお話は最新の近況ノートにてしておりますので、よろしければお目通しください。

それから限定ノートの方に文字化けを修正したお話を載せております。オルフェちゃんの分ですね。当初、誤って同じ話を掲載してしまいましたので、「読んだよー」という方も今一度ご確認を……！！

また【マンガBANGアプリ】もしくは【マンガBANGのサイト】にてコミカライズの最新話が更新されておりますー！

明後日の水曜日に12話(2)が更新されます！

よろしくお願いします。