【コミカライズ】聖騎士の俺が好きになったヒロインが続々とアイツのハーレムメンバーになってしまうんだけど俺の何がいけないのか誰か教えてくれ!!
第13話 私は怖かった (vs《封印迷宮第四階層守護者β》)
第13話 私は怖かった (vs《封印迷宮第四階層守護者β》)
◇◇◇
☆《信頼と信用》☆
異国の少年である聖騎士ヤマダの固有スキル。
スキル所有者と互いに信じ合い、信頼関係を結べたパーティメンバー、またはそれに準じる者のみを対象とし、効力が発揮される。
その効果は彼らの成長を大幅に促進するというものであり、また魔法、スキルに関わらず、スキル所有者により施されたありとあらゆるバフが大幅に強化されるというものである。
◇◇◇
☆《スキルディフェンダー》☆
異国の少年である聖騎士ヤマダの固有スキル。
悪しきスキルから己と仲間を護る。
◇◇◇
聖女ミカは思考を戦闘に割くように意識していたが、どうしてか、いくつもの余計なことが彼女の脳裏にちらついた。
『もしかすると《封印迷宮》は人の心を───その中でも恐怖心を読み取ってるのかもしれない』
先程のアンジェリカの言葉もその一つだ。
戦闘に集中しなければと思えば思うほど考えは散り散りになり、思考することを振り解けなかった。
「《
隣のアシュリーが四つ目のスキルを発動した。ついに彼女は《
───デッドライン
しかし彼女に躊躇いはない。
そんなアシュリーの姿に聖女ミカは何故だが胸が痛み、苛立ち、苦しくなった。
思えば初めからそうだ。
最初から彼女のことが気に入らなかった。
けれど、それはどうしてなのか?
彼女とは初対面のはずなのに───
◇◇◇
初めて見たときから、彼女のことが気に入りませんでした。理由はわかりません。
彼女の有り様や
◇◇◇
「ミカァッッ!! 集中なさいッッ!! 私達は一度も失敗はできないのッッ!!」
「わかってますッッ!! そう仰ったアンジェさんこそ気を抜かないでくださいッッ!!」
以前の《刃の迷宮》では二人掛かりの結界がほぼ全損させられた。にも関わらず、今回の結界を張る役割は聖女ミカ一人のものであった。
この作戦を遂行するにあたり、アンジェリカには結界を張ることに割くリソースはなかったからだ。
「嫌な、感じがする……」
アシュリーの額を玉のような汗が伝った。
───ぶぉんぶぉんぶぉん
六枚の刃と化した《
「聖女ミカ、これは……駄目だ。とてもではないがここで使わせてもらう」
アシュリーの所持するぶっ壊れとも言えるスキルの発動のタイミング───それは作戦の分岐点の一つであった。
「《
出し惜しみせずに発動されたのは、アシュリーの奥の手のスキルであった。
同じタイミングで、ついに六枚の刃の内の一枚が光った。
チカッという光に、気付いたときには、聖女ミカの張られたドーム状の十六枚の多重結界───その内の四枚が、けたたましい音を上げて消滅した。
「アシュリーさん、貴女の判断は正しかった」
「なら、良かった……」
「状況は依然として良くないですけどね」
聖女ミカとアシュリーの会話にアンジェリカは口を挟まない。彼女は複雑な詠唱に取り掛かっていた。
再び《
───パリィィィィィィン!!
先程の破壊から、即座に張り直された聖女ミカの結界であったが、その内の八枚が一瞬で破壊された。
聖女ミカの背筋が凍りついた。
単純な話だった。
一枚の刃による一度の超加速で四枚の結界が破られた。こちらの結界は十六枚。
もし五枚の刃が同時に加速したらどうなるか───
「アシュリーさん!! ここが勝負どころですよ!!」
聖女ミカの声に呼応するように、聖騎士アシュリーのスキルがさらに威力を強めた。
「これくらいやってみせるさ」
自身の声に応じてみせたアシュリーに、追随するかのように、聖女ミカからさらなる聖力が溢れ出た。
結界はすぐさま十六枚へと再生され、それまで以上の強靭さを感じさせたのだった。
◇◇◇
彼女よりもたらされたその不安は、私の胸を締めつけるような痛みを伴いました。やがて痛みは心の内をじくじくと蝕み、気づいたときにはもはや手遅れとなっていました。痛みは無視できないほどに大きなものとなっていたのです。
◇◇◇
宙に浮いた六枚刃が、ふよふよという浮遊をやめ、空中で制止した。こちらの様子を伺っているように見えた。それは正しかった。
《
その刹那、六枚刃───その全てが一度に光った。
◇◇◇
私は間違えていません。
私は正しいことを為しました。
私にできることは虚勢を張ることだけでした。
いえ、虚勢を張っていたと気づくことすらできない愚かな道化でした。
◇◇◇
───パッリィィィィィン!!!
鼓膜が破れそうな音が響いた。
ほんの一瞬で結界の残りが───一枚となった。しかし三人を包む結界は、即座に十六枚へと復元された。
ミカは六枚刃の総力を上げた超加速に対し、死力を尽くして抗ってみせた。
それを察知した六枚刃の宝剣は───それまでのように足並みを揃えることなく、各々が狂ったように明滅を繰り返した。
その代償は余りにも大きく、
「聖女ミカッッ!!」
アシュリーがミカの口の端から血が流れるのを見て叫んだ。
「大丈夫です。心配はいりません。貴女にできる全力を尽くしてください」
◇◇◇
彼女に対して抱いた感情は嫌悪感だけではありませんでした。私は初対面のはずの彼女に、なぜだか、どこか胸を突くような懐かしさを覚えていたのでした。
◇◇◇
聖女ミカの働きは驚異的なものだった。
チカチカチカチカと、それぞれがランダムに光り、不規則に超加速する六枚の刃の際限のない攻撃に対し、彼女はひたすらに強固な結界を張り、この戦闘の一瞬の内に、結界が破壊された瞬間に再生される術式まで加えて、結界を維持し続けた。
六枚の刃の猛攻に、結界はあっという間に破られるものの、即座に修復され、破られ、即座に修復されを延々と繰り返した。
空間に硝子の割れる様な音が断続的に響き渡った。
もはやとてもではないが拮抗状態と呼べるものではなかった。
恐らくエネルギー切れなどなく、滅びるまで動き続けるであろう六枚刃の宝剣に対し、相対するのは聖女とはいえ人間の少女であった。
底無しの魔力を持つとされたミカであったが、そこには当然限界があった。
彼女は己の創れる最も堅牢な結界を幾度となく張り、それを毎秒のように何枚も何枚も再生してみせた。ミカの持つ魔力が尋常でない速度で目減りし、その魔力消費は、生命維持に影響を及ぼす危険水域に到達しようとしていた。
ついにはミカが我慢出来ずに、びしゃりと血反吐を吐き出した。彼女の足元に血溜まりができた。
「賢者アンジェリカッッ!! まだか!! 聖女ミカがッッ!!」
「アシュリーさん、狼狽えないでください」
「だって、こんなに血が───」
「大丈夫だと言ってるでしょう。何を泣いてるのですか……」
己のことを案じて涙を流したアシュリーに、ミカはどこか呆れた声を漏らした。
「全く、大袈裟ですよ」
この会話が行われている最中も、聖女ミカの結界は何度となく破壊され、何度となく再生された。
時と共に、ミカの表情から急速に色が失われていった。
アシュリーにとって、永遠の時間のように思われた。
早くッ! 聖女ミカを! 早くッッ!
そして、ようやく彼女の願いが叶ったのか、
「《
詠唱を終えたアンジェリカが唱えた。
無数の───それこそどれだけ《超加速》しようとも逃れられぬほどに大量の超高温の炎の針が、アンジェリカから射出された。さらに
空間の制圧───これこそが、三人の立てた作戦の一つであった。
しかし、炎の向こうで───チカチカチカチカ───《
瞬間───炎が元から存在しなかったかのように消え失せた。
「だと思ったわ」
アンジェリカが溜め息を
「全部予想通りなの」
アンジェリカが不敵に告げた。
耳障りな宝剣の鳴動を打ち消すに足る音は、先の詠唱後からずっと辺りに響いていた。
───ドルルルルルルルル!!
七つの
「《
彼女の持つ切り札の一つであった大技 《
対象を滅ぼすまで追尾するミサイルの前にたった数秒の《超加速》など無意味だ。
彼女の命令に従い、ミサイルのような七つのそれは、超高温で熱された六枚刃の宝剣へと高速で発射されたのだった。
◇◇◇
神の
運命は斯くも残酷で───
まさに同時刻、聖騎士と剣聖の少女の意志に従い、聖剣───《護剣リファイア》が眩いばかりの光を放ち、剣聖エリスの呪縛を解き放ったのだった。
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数日間宣伝します。お許しを!
7/16コミカライズ1巻が発売しました。
漫画版は小説には存在しない第0話カラー版が収録されております。
みなさま、よろしくお願いしますー!
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