第11話 痾(あ)
○○○
中々にしつこい雨であった。
ただそれでも、領主主導での人員増加があったお陰でそれほど負担が増えたということはなかった。
人員や物資の追加は、アノンから聞かされた翌日にはおこなわれた。もちろん全てを一度でというわけにはいかないけれど、それでも、『人員補充を開始しまーす』と公布してからも、ゴチャゴチャとした手続きや契約なんかでもっと長い時間がかかると思っていたので感心しきりであった。
元の世界と違い、こちらでは組織のトップからボトムまでの構造がスマートであることと、トップの権力が圧倒的であることが理由だろう。
もちろん良し悪しはあるだろうが、今回に限ってはそれが俺達に味方をしたのだった。
○○○
「いつやむのでしょうか?」
帰還途中にディーテがポツリと漏らした。
俺達は、
館に戻ると、アノンから報告があった。
「イチロー、ついにアロガンスとバーチャスにも
○○○
アロガンスやバーチャスにいる、アルカナ王国騎士団やシエスタさん、それにプルミーさんが心配であった。
いくら《新造最難関迷宮》を攻略しようと、しょせん俺は一人であり、できることには限りがある。そんなことは当然であって「お前は何様なんだよ」と自問自答してしまうくらいには、そんなことを考えること自体が恥ずべきものであった。
けど、それをわかっていてもなお、俺は彼らの無事を願わずにはいられなかった。
○○○
雨が降り始めてもうかれこれ一週間以上が経った。
人員増加もあったし、何とか余裕をもって乗り切れるだろうと考えていたが、それは甘い見通しであった。
俺達は出撃するたびにずぶ濡れになった。全く良化しない状況に加えて、増え続ける
特に魔法使い職のディーテなどは、見ていて不安になるほどの憔悴ぶりであった。
俺とミロは彼女に数日休むようにと言い聞かせ、気配察知スキル持ちのミロと共に、二人で
○○○
さらに数日が経ち、
これまでと異なったモンスターが現れるといった報告が挙がった。
これまでの討伐対象は
今回はそれに加えて、新種である液体状のモンスターが出現したのだ。
一度報告が挙がってからはすぐであった。
およそほとんどの拠点にてこの液体状のモンスターが見られるようになり、それは俺達のパーティも例外ではなかった。
○○○
この液体状のモンスターを《
とにかくこいつはやっかいなモンスターであった。
液体だからか、無闇矢鱈な剣撃や打撃は全く効果をなさず、その核を破壊するか魔法で消滅させない限り、何度も何度も再生と分裂とを繰り返したのだった。
降り続く雨の中、討伐隊にとって、視界が非常に悪く、核を狙うことは中々に面倒な作業であった。
また雨によって火属性魔法が極度に威力を削がれた。
火属性魔法は、高威力の魔法が多いので、得意にしている魔法使いが多い。だからそれが制限されるというのはかなり厳しいことであった。
雨によって火属性魔法を制限されたことは、討伐に携わる全ての人員にとって非常に大きな負担となった。
○○○
ここで
まるで、俺達が苦手意識を覚えることに比例するかのように、《
そしてついに、サガのところの討伐者から非常によろしくない報告がもたらされた。
報告によると、真っ二つに切った
同様のケースは骨戦士でも見られた。
つまり《
魔法が有効であるから良かったようなものの、
○○○
「これは一体どういうことか……。
前回の《封印領域》とは、違い過ぎる───」
センセイの言葉が、やけに耳に残った。
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アンジェリカ過去話②の加筆修正版をサポ限定近況ノートで更新しました。
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