第2話 プルミー・エン・ダイナスト②
◇◇◇
苦難に身を浸した少女は、一つたりとも諦めていなかった。労働に、学びに、鍛錬に。少女は何一つ妥協していなかった。
似た
ならば話は早いと、プルミーはすぐさま食事処の経営者夫婦に、真紅の髪の少女を引き取るために相談を持ちかけた。
しかし、結果は予想外に芳しくはなかった。
少女を住まわせ、働かせている食事処の夫婦は、プルミーの「彼女を引き取らせてはくれないか?」という頼みをにべもなく断った。
彼ら曰く「ここで働いた方がアンジェリカちゃんにとっても幸せだ」とのことであった。
どうしても首を振らない夫妻を前に、プルミーは仕方無しと、金貨の入った袋を取り出して見せた。そのときばかりは彼らの決意も揺らいだように感じたが、それでもしばし悩んだ
「聞いたところによると、あの子は有名な魔法貴族の生まれで、落ちこぼれってんで捨てられたそうじゃないか」
「そうさ、捨てられるような才能ってことは、才能がないってことだろ? それなのに努力を続けるなんて馬鹿げている。魔法を学んだところで将来性がないのなら、そんなものはとっとと捨てて、普通の生活を送る方が良いに決まってる。現にあっちを見てみな。アンちゃんは立派に働いている」
終始がこのような感じで、夫妻は頑なにプルミーの提案を受け入れることはなかった。
なるほど。経営者夫婦は確かに少女のことを考えているのだろう。けれど全く彼女のことを理解しようとしていなかった。
プルミーのできることは───
「ああ、これはさっきの話とは関係ない。料理が美味しかった心付けとでも思ってくれ」
取り出した金貨は仕舞わずに、袋ごとそのまま夫妻に渡した。
「できればで構わない。余った分は貴方達の自由にしていい。だからあの子にはもう少し休みをあげて、良い服を着せてやって欲しい」
少しでも少女のためになるようにとの願いを託し、店を後にしたのだった。
◇◇◇
プルミーが再び店を訪れたときには、「しつこいな! また来たのか! アンちゃんはウチで面倒見るってのがわからないのか!」とそのまま店を追い出されそうになったが、客として訪れたと伝えると、店主夫婦はしぶしぶ「あの子には接触しないでおくれ」という条件の下、入店を許可したのだった。
そうしてプルミーは何度となく少女の働く食事処へと足を運んだ。
彼女が店を訪れる度に、経営者夫婦は眉をしかめ、赤髪の少女をプルミーに極力会わせないようにと意図して遠ざけていたが、店の客入り如何によってはやむなく、少女にプルミーの頼んだものを配膳させることもあった。
店を訪れ、少女を見る度に、彼女の魔力量が増え、魔力線がより洗練されていくのがわかった。話しかけずとも、少女の成長を確認することが、プルミーにとっての楽しみであり、喜びですらあった。
◇◇◇
それから二年近くが経過し状況が変わった。
どうやら経営者夫婦の一人息子が借金をこさえたことが原因で彼らと少女との間に金銭的な問題が発生したことが原因のようだった。
情報によると、裸一貫で住まいを後にした少女は、その町から最も近く、栄えている街であるグリンアイズに向かっているとのことである。
不思議なことに、少女がギルドを訪れる確信があった。そして───
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます