第8章 プルミー・エン・ダイナスト
第1話 プルミー・エン・ダイナスト①
◇◇◇
プルミー・エン・ダイナスト。
当初山田一郎が"エルフのギルマス"と心の中で呼び、新造最難関迷宮に初めて挑戦するにあたって最もお世話になった人物だ。
彼女は今では賢者と称される女傑アンジェリカ・オネストの保護者であった人物でもある。
アンジェリカが賢者と呼ばれるようになってからは、彼女の才能を見抜いて育て上げたという功績ばかりが注目されがちであったが、そもそも彼女自身も優れた魔法使いであり、少しでも魔法を齧った者ならばプルミー・エン・ダイナストの名を知らぬ者はいない程度にはその名を轟かせていた。
そういった実力が評価され、彼女は王都に最も近い迷宮とされた《鏡の迷宮》とそこから比較的近いとされた《光の迷宮》の間に存在する街───グリンアイズに存在する探索者ギルドのマスターを務めていた。
グリンアイズは、二つの凶悪な迷宮から万が一スタンピードが起こった場会に備えた王都の防衛拠点としての役割を備えており、つまるところプルミーは、王都防衛の重要拠点とされたその街の要となる人物の一人であった。
◇◇◇
プルミー・エン・ダイナストはあの騒がしくも幸福だった日々を思い返す。
◇◇◇
かつての話だ。
プルミーは、一人の少女を引き取った。
話は少女の境遇に遡る。
◇◇◇
少女は魔法の名家の生まれであった。
生まれつき莫大な魔力量を保持していた少女は、一族を築き上げた初代と同じ真紅の髪色も相まって、その生まれ変わりと持て囃され、一族の期待を一身に受けていた。
しかし少女が初級魔法しか扱えないことが判明するや否や、両親をはじめとした一族全ての者達から無能の謗りを受け、家を放逐されたのだった。
かねてより神童と噂され、十歳のときに赤髪の少女を見て以降、個人的にも目をかけていた彼女が放逐されたとの報を受けたとき、プルミーは驚きのあまり目を剝いた。
あり得ないと思った。
魔力線も、あの年齢で既に優秀とされる大人と比べても遜色のないものであり、魔力量に至っては比べるべくもない。
それに何より───
プルミーが部下に少女の行方を探させると、すぐさま居場所が見つかった。少女は王都から離れた場所に位置する町の食事処にて、住み込みの従業員をしていた。元来貴族であり、まだ幼い年齢の彼女にとって辛い生活だったことは想像に難くなかった。
プルミーは数日の徹夜を重ね仕事をこなすと、すぐさま少女のもとに赴いた。
そこで見た少女は、みすぼらしい服を身にまとい朝から晩まで休むことなくせかせかと一所懸命に働いていた。
食事は十分だったのだろう。だから少女が痩せているということはなかった。しかしそれでも少女からは、隠し切れない疲労の色が滲み出ていた。プルミーはまずはただの客という
少女は覚えていないだろう。
あの日あの場所で、プルミーと目線を交わしたことを。そもそもの話、仕方のないことだと思う。プルミーはフードを被っていたし、何年も前のことなのだから。
しかし、少女が覚えてなくともプルミーは決して忘れない。
あの日見た、絶え間ない訓練を続けた者のみになし得る、少女の全身を走る強烈で精緻なまでの魔力線を。そしてそれ以上に、どれだけくたくたになろうがそんなものは関係ないとばかりに燃え盛る、彼女の瞳の中に迸る絶対的な意志の炎を。
─────────
エルフのギルマスのお話です。
ターニングポイント的な感じです。
少し長くなります。
born_at_daybreak様、譜田 明人様ギフトありがとうございます!
richbro様とbombcantona様もまたまたギフトくださってありがとうございます!
時期を見て活動報告にて感謝の言葉を伝えたいと思います。
サポ限定で『テンポ悪い』と言われて読めなくしたアンジェリカの過去話を読めるようにしようかと思います。まだ確定ではありませんが…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます