インタールード☆☆☆

第1話 剣士の名は①

◇◇◇



「ラウラ様とお嬢は本当についてくるの?」


 言外に『わたし一人で大丈夫だ。というよりむしろ足手まといなのでついてくるな』と含ませたにも関わらず、二人はそんなものは何のそのと、目をキラキラと輝かせながら何度もふんふんと頷いた。

 二人の護衛を請け負っている少女は仕方ないかと、溜息をいたのだった。



◇◇◇



 お嬢こと、ソフィア・ゴア。

 彼女はアルカナでも──とりわけこのボルダフではなおさら知らぬ者はいないとされる、ゴア商会会頭のハインツ・ゴアを父に持つ女性だった。

 父顔負けの商才の片鱗を見せ周囲を驚かせることはあれど、未だに甘さが随所に滲み出ているため修行中の身である。


 そして、ラウラ様こと、ラウラ・ボルダフ。

 言わずと知れた辺境の街ボルダフ領主の三人娘の末っ子である。好き勝手に生きた姉二人のせいで彼女は「何とかこの娘だけでも」と願った両親によって、箱入り娘もとい、宝箱入り娘と揶揄されるほどに溺れるくらいに溺愛され、大事に大事に慈しみ育てられた娘であった。




 より深く彼女達を知ってもらうために、彼女達二人の性格を反映するエピソードを紹介したい。これは少し前の出来事だ。


 ソフィアは「信の置ける者が直接出向く必要のある商談がある」と兄に頼まれ「私に任せてください!」っと何一つ疑うことなく、いざ出発!

 途中で何故か護衛全員が逃亡し、間が悪くゴブリンの群れに囲まれた。

 すわ苗床! という今際の際で、運良く通りかかった謙虚(?)でどこか陰のある青年に助けられ、何とか生き延びたという。


 そして、ラウラにいたっては、スーパー過保護な生活に嫌気が差し、仲の良い侍女のアドバイスに従い屋敷から護衛の一人も連れずに「いきますわ!」っと大脱出!

 やはりというべきかそこには当然むくつけき汚らしい男達が待ち構えており、阿吽の呼吸でかどわかされた。

 すわ傷物! どころか身体も心も人生もハチャメチャにされちゃう! というギリギリのところで運良く通りかかったカッコいい青年(想像)に助けられることで難を逃れたという。


 これらの話を聞けば、もうお分かりだろうが、二十歳を超えたソフィアも、十代ではあるが貴族の娘であるラウラも、年齢に見合わずその場のノリで何となく生きている人種であった。

 未だ十代の護衛の少女からすると、二人はまるでわがままな駄々っ子のようだった。



 とまあ、ほぼ同時期に危機に陥り、ほぼ同時期に同一人物に助けられたという、不思議な縁もあり、彼女達が親しくなるのにそれほどの時間は必要なかった。

 今では彼女達は親友となり、時間があれば集まってお茶をしばきながら様々な会話に花を咲かせていたのだった。



 ……それだけならば平和であった。

 しかしそう簡単にはいかない。

 そもそもアクティブであった彼女達が揃い、仲良くなるにつれ、二人の持つそのアクティブさは相乗効果を発揮し、類まれなアクティブさを持つ二人組へと進化を遂げたからだ。


 その結果、元よりお転婆気質なラウラと、知的メガネキャラ(笑)のソフィアの二人は、何かと良からぬ計画を企てては、それらを実行に移してきた

 しかし残念ながら、これまでは未然にゴアパパ、及びボルダフパパによって二人の計画は阻止されてきたが、懲りない二人の戦いは続くのだった。


 その話を聞いたとき護衛の少女は「何をやっとるんだこいつらは」という気分になり、もう何度目になるかわからない溜息を漏らした。







─────

今話から新しい章となります

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これマジっ!?と驚きました。

本当に嬉しかったです…心より感謝しております!




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