第8話 キミのカッコいいところが見たい
○○○
俺とセンセイはアノンの主導のもと《
「ムコ殿、体調悪そうに見えるんじゃが?」
数日前から自覚はあった。
明らかに俺には
残りの日数を乗り切る為にも、どうにかして俺はその
それなのに……無慈悲なことにそれを妨げるべくアクシデントが俺を襲った。
アクシデントとは
「センセイ……大丈夫ですよ」
「大丈夫そうには見えないんじゃが」
いつもはイタズラ猫のようにからかってくるセンセイの心配をよそに、俺は先程の出来事を思い返していた。
○○○
竜の咆哮と共にアシュリーの屋敷に来襲したのは、やたらゴツい鎧に身を固めたげにむくつけき
彼らは空を埋め尽くさんばかりの
「「ウオオオオオオオオオオ!!!」」
その姿は控え目に言っても不逞のヤカラのそれであった。そんな奴らが奇声を発しながら大勢現れたのだ。すわ襲撃か! となっても不思議なことではないし、俺が、彼らに向けて「かかってこい! バケモノ共! みんなは俺が護る!」と腰の剣に手を掛けたとしても仕方のないことだった。
「ロウ、やめやめ。変な集団じゃないから。彼らが《
アノンが言うやいなや、
「グギャアアアアアアア!!」とか「ゴアアアアアアアア!」などといった鳴き声を上げた。
竜の雄叫びに共鳴するかのように鎧の漢達が咆哮を上げた。
「ガンホー! ガンホー!」「ガンホー!」「ガンホー! ガンホー! ガンホー!」「ガンホー!」
ガンホーって何?
ただでさえゴツい鎧がむさ苦しくて暑苦しいのに、雄叫び効果で150%増であった。
それに反比例して俺のSAN値は急激に下落した。
「僕は、常々思うんですけど」
アノンが俺の呟きを耳にして「ん?」と首を
「爆音を上げる乗り物と、その乗り手はすべからく滅びるべきだと思うんです」
「何かキミ怖いよ……どうしたのさ?」
「滅びるべきだと思うんです……」
パチン!
俺はアノンにオデコを叩かれたのだった。
「はっ! 俺は何を!」
「このおバカ! 何が『はっ!』だよ!
せっかく手に入れた移動手段と戦力を相手取ってどうするのさ!」
くすん。冗談なのに。
「アノンと聖騎士はいるかァ?」
声の出所は巌のごとき漢達で築き上げられた、金属鎧壁のその最奥であった。
そこにいたのは、他と比べて明らかにサイズの異なる
というかあれどう見ても
それに何なのあの鎧、他の団員より二回りは大きいんだけどご立派ァ!!
全ての団員が着陸を果たした後、一際巨大な竜が地にドドンと降り立った。
その竜の背から「ハアッッ!!」とデカ鎧の男性が暑苦しい声と共に両手を広げて跳躍した。ドドムというむさ苦しい着地音と共に、彼は再び剣を天を突くように掲げた。
恐らく彼が《
「ガンホー!」「ガンホー! ガンホー!」「ガンホー!」「ガンホー! ガンホー! ガンホー!」
まるで団長を祝福(?)するかのごとく団員も続々と奇声を上げ始めた。
だからガンホー! って何だよ!
彼等の声が大気を震わせる中に、アノンとアシュリーは彼等の前へと足を進めた。
「私は聖騎士アシュリー・ノーブル。《
アシュリーが名乗りを上げ、彼等へと感謝の言葉を告げた。
その威風堂々たる
「おーう、先日ぶりだなー。聖騎士の嬢ちゃん。それからアノンよォ」
団長───サガ・アサルトボディはヘルムを外し「ぷふぅー」と一息吐くや、二人と挨拶を交わした。ようやっとフルフェイスを外すと、短髪の野性的な男性が姿を現した。力強そうな二枚目男性であったが、汗が気化したのか『ムワァァ』と湯気が立ったように見えた。
控え目に言っても漢臭くて死にそうだった。
恐ろしいことに団長以外にも大勢のむくつけき漢達がの登場が未だ控えているのだ。彼らもヘルムを外すときっと、いや絶対に『ムワァァ』とするのだ。
持ってくれよ俺の身体ァァァ!!
「聖騎士の嬢ちゃんよォ、忘れちまったのかァ? 俺らは依頼を引き受けるとは言ったが、それは俺から出した条件をクリア出来たときだけってよォ。だから今回は依頼を受けるに値するかわざわざ前もってェ、見に来てやったってワケだァ」
条件? 値するか?
おおう、何故か嫌な予感がする!
こういう時の俺の悪い予感は高確率で的中しちまうんだぜ!
「ロウ」
後ろからガッシとアノンが俺の肩を掴んだ。
今まさに予感が的中しつつあることに、俺はごくりと喉を鳴らし「何だい?」と答えた。
「彼らはね、依頼を引き受けるために金銭と、もう一つ条件を課したんだ。それが、『依頼主が信頼に足る強さを持ってること』だったんだ」
「ロウくん、前回アノンと共に《
アノンが《
「ねぇ、ちょっと。俺の肩に指が食い込んでるんですけど」
「何を言ってるかわからないよロウ。
よしきた! キミの出番だよ! 彼らを相手に大立ち回りをしてもヨシ! 団長と一騎討ちしてもヨシ! ワタシにキミのカッコいいところを見せてくれたまえ!」
「あたたた! 痛ッ! 指ッ! 指が食い込むというかめり込んでる! めり込んじゃってるから!」
俺の肩にかかったアノンの異常なパワーを前にして、『ムワァァ』とした状況から、どうすれば最短で逃れられるか頭をフル回転させたのであった。
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