初恋の人を探しに来ました

嬉野K

初恋の人を探しに来ました

第1話 いろいろありまして

「私は、私の初恋の人を探しに来ました」


 転校してくるなり、彼女はそう言い切った。


 転校生紹介というのは青春の一大イベントであり、当然教室は盛り上がっていた。夏の暑さなんて忘れて、教室に現れた転校生が美少女だったことを喜んでいた。


 だが、その盛り上がりと……困惑は同じくらい大きなものだった。


 名前を紹介するよりも先に、その転校生は喋り始めたのだ。


「10年ほど前の河原でのことです。私が落とし物をして困っているときに助けてくれた人です。私は……その人に伝えられなかった想いがあるんです」

「……えーっと……」隣の教師が困り果てた様子で、「いくつか質問があるんだけど……」

「なんでしょう」

「なんで、そんなに服がボロボロなんだ?」


 それは僕も気になっていた。


 なぜか転校生の服はボロボロだった。泥だらけだし……どこかで転んだ、にしては派手に破けていたりする。


「ああ、これはちょっと、いろいろありまして……」ごまかすあたり、あまり口にしたくないことなのかもしれない。「とにかく……私はこの学校に初恋の人を探しに来たんです。10年前の河原で……私に似た女の子を見たことがあるという人は、名乗り出てくれると嬉しいです」

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