第7話 少年と魔女

「魔女様、命を絶たれましては罪を明らかにできませぬ」

 王太子は氷柱の中。躍動感のある彫像のよう。

 第二王子の言葉に、魔女は確かに、と納得する。


「どうだ? 半日も過ぎれば解凍されよう」

 頭部の氷のみ溶かし、息だけはできるように。


「ありがたきご配慮。……では」

 王が、一度言葉を切り、声を張る。


「森の魔女様に逆らいしは、王太子と雖も厳罰。また、此奴きゃつは元第五王子強襲の黒幕。自供ぞ! あの貴族と共に、下級牢へ!」

 厳しい口調で申し付ける。


 王太子は氷柱のまま、台車に。近衛兵と王子達が周囲を固める。


「魔女様には礼の言葉もございませぬ。ですが、よろしかったのですか」

 人払いをさせた国王は、頭を下げる。

 王とはいえ、森の魔女にならば、許される行為。


「構わぬ。ただ、貢ぎものに紛れしを保護したのみ。だが、王宮に住まうものが黒幕とは。森の魔女は王宮とは拘わらず、を使われた。道理であの貴族の裏側を探れなかったわけだ。黒の魔石から森に全てが筒抜けとは知らずに自供してくれるとは。王族が魔石を通じて薬を渡してくれたからこそだ」


「足りぬところはあります王太子でしたが、父の為に薬を、という行いが嬉しく。真逆の意図、体調の変化で気づいてはおりましたが……」

「それでも、其方は己の身体で奴の罪を明かそうとした。それは親の情よりも、奴に王位を渡さぬという決然たる覚悟だ。よき祖父でよかったな、殿。懸案が晴れし今、堂々と王宮に戻りなさい」


 僕が薬を送る前から、全てお聞きになっていらしたのでしょう?

 いったい、何を仰っているの?


 アカゴは驚きのあまり、声も出せない。


「魔力を隠さずとも、この血族は優しかろうて。そうだ、国王、解毒薬は王族の母に頼むとよい」

「ありがとうございます」


「励めよ、。……さらばだ」


「魔女様……? 魔女様!」


 魔女の姿は、登場と同様、忽然と。

 伝説級の大魔法、転移魔法。


 残りしは、ひらりと舞う、紙一枚。


 解毒薬の、調合法。



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