第6話 少年と敵

「今、この薬を森の魔女様にお調べ頂いておる。場合によっては、お前の地位は剥奪し、必要な処罰も行う」


「魔女様に……? 何故ですか! 父上の為に、遠方から取り寄せました薬と申し上げましたのに!」

王太子は明らかに動揺していた。


「遠方とは何処なのか。未だに元第五王子のかたきの地方貴族を処させないのも怪しい」

 第二王子だ。


 母からは、王太子を除く王子は皆様、父上第五にお優しかったと聞いている。


「そう、王太子の口添えで、便宜が図られます特別牢に。恐れ多くも、森の魔女様からの証拠がございますのに」

 これは、第三王子。


「だから……」


「王太子が頻繁に特別牢に通われていることは確認済です。牢兵達を遠ざけた後、何かを受け取っていますね。あの地方の特産は、毒にも薬にもなる薬草でしたな」

 第四王子も続いた。


 どうやら、王子達は魔女の調査のあとを継いでくれたようだ。


「それは……」


「私がお前の薬を毎日服用していたことは明らか。身罷みまかりし後に、この身体を調べてもらえばお前の悪事が露見すると思うていたが、まさか、生きているうちににお会いできますとは……ありがとうございます、魔女様のお遣い様」


 国王陛下が頭を下げようとするのを、慌てて止めるアカゴ。


……気づいてくれていたのだ、この方は。


 兄王子様方も、弟王子の敵を滅さんとしてくれていた。


 アカゴは、感に堪えずにいた。


 そこに、王太子が腕を伸ばす。

「お前のせいで……その目、まさか!」


 アカゴの目を正面から見た王太子が顔色を変える。


「その蒼い目。第五の……! 王子でなくなる時、あいつは、あの地方の管理職を求めた。俺があの貴族と組んで毒草を横流ししていたのに気づいていたんだ! だから、護衛を減らし、奴を……それなのに、息子が、奴の息子があ! 俺を……」


 王太子は半狂乱に。


 それでも、アカゴは魔法を使うのをためらった。


 身を守る術、と魔女の許しを得、基礎のみネエネエに教わり、書は多く読んでいるが、慣れぬ自分の魔法では国王を巻き込んでしまうのではないかと逡巡したのだ。


『せめて、お祖父様をお守りせねば……』


 防御魔法を、と思ったその刹那。


に何をするか!」


 響く声、そして、王太子に向かう氷の魔法。


 誰が、魔法を。


 ……それは、火を見るより明らかだった。












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