第5話 ソッポズィー

口すぼめマンの敵であるソッポズィー※1は口すぼめマンの正体を知っている数少ない人物であり、それでいて悪人である。

※1英語表記(Soppozy)

悪人を捕まえる行為を邪魔をするという悪をなす存在で口すぼめマンに並々ならぬ執着心を持っている。顔を覆うマスクをし正体不明。

身長203cm、体重100kg、2002年2月2日生まれ。

以前戦った時には、腕に厚い布を巻きその上から有刺鉄線を巻き付けて振り回し攻撃してくるスタイルだった。

「あー逃がさねえなあ、逃がさねえなあ」

と執拗に何度も言っていた。

何を目的としているのかわからない悪人に口すぼめマンは当然恐怖を覚えたが、結局のところ悪のための悪ということで割り切り、捕まえることに決めている。

深車は片方ずつの目で真実と虚構を同時にとらえる。幼いころから身体能力高さに加えその特殊な観察眼で格闘センスは抜群だった。バスケットボールの経験が活きる。戦闘相手の身振りや体つきを素早く察知し、隠している武器を見抜いたりフェイントモーションに引っかかったりはしない。また、相手の隙を一目で見定める。たいていのチンピラなら一撃で気絶させるのは難しくない。一番の成長期には、見えている相手に対して自分が考えているように自分の体の動きが追い付かないと感じるほどだった。独学で体操を学び軽々と伸身でバク宙ができるほどにまで鍛え上げた。

奴がどうやって口すぼめマンの正体にたどり着いたのかはわからない。正体が深車という人物であること、住んでいるところも突き止めていたようで深車の自宅のドアにナイフが突き立ててあった。紙の上から突き立てており、そこには脅迫とも挑戦状ともよくわからない内容が書いてあった。指定は明日の午前4時。場所は山の上にある大学の、今は使われていない施設に来いとある。


「あらわれたぞ口すぼめマン」


「どれだけ鋭く研いでも貴様の心はえぐれないな。刃を向ける先が間違っていたかな」

というとソッポズィーはナイフを逆手に持ちかえると自分のみぞおちに向けて構えた。

「俺を俺が殺すところを見せてやろうか。貴様は人が死ぬところ見たことないんだろう」

口すぼめマンは思わず動けなくなり、体が固まってしまう。

「よせ」

そう叫ぶのがやっとだった。

ソッポズィーは刃先を自分に押し込む。血が一筋流れ出る。

「ククク。今俺は生きている。だが次の瞬間はどうかな。今話している俺は貴様の目の前で死ぬ。」

口すぼめマンはもはや戦いを忘れている。自分にこんな弱点があったとは。ヒーローであるならば予見していなければならなかった敵の死にこれほど動揺するとは考えていなかったのだ。

「人間の心臓が止まるんだ。気様のせいでな」

「くっ」

本来捕まえるはずの悪人の命を助ける事を強要されている。口すぼめマンにしてみればひどいパラドックスで心を締め付けられる思いがした。

悪人なんだ、見殺しにするか。見殺しにするか。しかし命を奪うのはどんな相手であろうともしてはならない。そんな逡巡しゅんじゅんがすごい速度で脳裏をめぐる。

「深車よ」

ソッポズィーは名前を読んできた。

「俺はな、暴力が好きなんだ。暴れて殴って、歯向かってくるやつを叩きのめすのが好きなんだ。歯向かってこないとつまらない。そこに現れたのが貴様だ」

血を流しながら歯をむき出しにして笑う

「お互い好きな事、得意な事が暴力なんだ。仲良くやっていこうぜ」

そう言うとナイフを体から抜き腰の後ろにしまうと帰って行ってしまった。




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