第3話 橋作り
各種書類の偽造、特殊シリコンを使った変装、のどに薬物注射をしてまでの声の偽装を巧みに使い、全く存在しない橋の建設計画を生み出し、河の両端や島と島の間に橋を作ってしまう犯罪者、橋作り。国や自治体を装い建設会社に発注し、銀行や大口スポンサーに金を出しているとだまして思い込ませながら実は1円も動かしておらずあれよあれよという間に橋を作ってしまう。しかし出来上がるとどこからも金が出ていないので人件費や資材費は保険で
橋を作ることによりその周辺の地価は上がり不動産売買で大儲けをする。また、その情報を金持ちに提供することで見返りも貰っている。一般人に通行料などは求めない。作り終わった橋に特に関心はないようだ。
勝手に建設をしその中でも橋を作るのが好きなだけで金を集めたいわけではないので悪の連中に資金提供をしており、まさに悪者。
口すぼめマンは自身の行為をことさらに宣伝するようなことはないが橋作りは自分の犯罪行為を広く宣伝し自慢するタイプだ。
「きょうも、無事故。よし。明日もこの調子でどんどん作っていこう」
橋作りは上機嫌になり帰路に就く。現場近くに1LDKを借りている。夕食はファミリーレストランですますことが多い。家に帰ると明日の準備をして寝るだけだ。
「ああ、橋ができていくのは本当にうれしい。こんなに楽しいことはほかにない」
と言いながら床に就く。
そして、いよいよ橋が完成し開通式。その場に橋作りはいない。式典に興味はないからだ。まだ解体されていない工事用プレハブの中で
「もう完成か。ずいぶんかかったような気もするしあっという間だった気もする」
などと言い緑茶を飲んでいる。
そこへ口すぼめマンが現れる。プレハブの窓ガラス越しにヒーローの姿を見かけると椅子から立ち上がりドアを開けて出て行き、口すぼめマンの全身を舐めるように見た。
口すぼめマンが声を張り上げて言う。
「あらわれたぞ口すぼめマン」
「貴様、違法どころか、なにひとつ許可を得ないで橋を作っているな許さんぞこのままではおかない」
「ふふ、とうとう現れたな。貴様の事は噂で聞いていた。謎のヒーローがいるとな」
「ヒーローの噂を気にしているということは自分が悪の自覚があるらしいな。だったらなぜこんなことをする」
「俺は橋を作るのが好きなんだ、まあ、お前にはわからんだろう。今まで人に言って理解してもらえたこともない」
この時は橋作りは素手だが、まわりにはいろいろな工具や建設に使うものでいっぱいだ。使い方は本来のそれも熟知しているし、戦いに応用して使うにしても手慣れたものだ。
「やっていることを悪事と思っていないならもうこれ以上言う事はない」
口すぼめマンは口をすぼめ超スピードで急接近する。橋作りはそのスピードにたじろぐことなく手近なものを素早く手に取る。彼にとっては工事現場にある何もかもが武器となる。ちょうど足場用の鉄パイプを手に取ると戦国時代の槍使いのようにブンブン振り回す。パイプの中央を持ち、回しながら体の左右に素早く移動させる。カンフー映画で見たような動きに深車は攻撃を躊躇する。口すぼめマンはいったん突進をやめ身構え相手の出方を待つ。
「うおおーっ」
橋作りがパイプで襲い掛かると右に身をかわす。能力は使わずとも鍛えぬいた体は身が軽い。右拳に渾身の力を込め橋作りの顔めがけて振るが大きく後ずさりされ空振り。またお互い距離をとる。橋作りは上段に構えたかと思うとかけ込んできて全力で振り下ろす。パイプが空を切り恐ろしい風切り音がする。
「お前の動き、格闘技か。何をやっている」
口すぼめマンは戦闘の最中でも冷静さを欠くことはなく、戦いに有利に情報収集を適宜行える。
「俺はずっと橋を作ってきただけだ。現場作業で全身が鍛えられている」
「悪人め。結局は悪によって作られたその体、一生悔やみながら罪を
口すぼめマンは口すぼめで超スピードを出し突進する。橋作りはとっさにパイプを構えて口すぼめマンを殴りつけようとするが余りの突進スピードの速さに体がついていかず動きがぎこちない。振りおくれてしまう。うなるような勢いで拳が橋作りの顔面をとらえ、体ごと吹き飛ぶ。それでも流石は頑丈な体の持ち主、橋作りはパイプを振りかぶり殴ろうとしてきた。よろけながらの攻撃にタイミングを合わせ橋作りはあごを強く殴られ気絶してしまった。口すぼめマンはベルトから網を取り出し橋作りの体に動けないよう巻き付ける。作業が終わったとはいえ工事現場、人がいずれ来て警察に通報するだろう。そう考え口すぼめマンは橋作りをそのままにして立ち去った。
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