第一次異世界大戦 後編

第57話現代兵器VS異世界


 アナタはアイドルに『画面越しに指示』したことがありますか?……俺はある。

 

 ◇カイエル港町・アマネside

 

 私たちは、マスターのオルタナティブドアでカイエル港町に到着。

 ……と、同時に、海軍将・ヤスの攻撃が始まった。

 

 「もう待つのは面倒くさいから、やっちまうでヤス!攻撃開始でヤス!」

 海軍将・ヤスが号令をかけると、イージス巡洋艦とイージス駆逐艦の主砲が、一斉にカイエル海軍に照準を合わせる。

 「目標カイエル海軍艦隊、54口径127mm砲、『てーーーッ』でヤス!

 ドオンッ!

 ドオンッ!

 物凄い轟音!カイエル海軍の騎士団の人たちが、結界を張る。

 

 「『対射撃結界』展開!」

 ドガアーーーン!

 バリーーーン!

 「うわあーーーっ!」

 戦艦の砲撃は、騎士団の結界を簡単に破壊し、カイエル海軍の軍船に被弾!

 「三番艦から九番艦まで被弾、航行不能です!」

 「一発が、まるで『エクスプロードロア』並みの威力……こんなの我々の『対射撃結界』では防げません!」

 

 獅子騎士ガーマインさん率いるカイエル海軍でも、現実世界の戦艦には歯が立たない……

 「くそっ、こちらが攻撃しても傷一つ付かず、攻撃を受けると一撃で破壊……このまま進軍されると、町が火の海に」

 

 「私が魔法で足止めをします!」

 マリネの前に魔法陣が展開……『水』『水』『水』『風』

 「海神よ 我に力を貸し給え 深淵を除くとき 深淵もまたこちらを見ている 水流よ 全てを飲み込む穴となれ 大渦属性クアトログラム、『メイルシュトロム』」!」

 ドドドドドォォーーーー

 艦隊の下に大渦を作るけど、艦隊は止まらない……

 「だめだわ、船体が大きすぎて、メイルシュトロムの渦では足止めにならない」

 

 「アーヒャヒャヒャ、町が射程に入ったでヤス、砲撃開始でヤス!」

 「マズい!」

 

 「私が受けます、皆さんは攻撃を!」

 「アマネ殿!」

 

 「お願い『ウィルオーウィスプ』、来て!」

 私は光の精霊『ウィルオーウィスプ』を召喚……やった、十体召喚できた!

 「みんなお願い、整列して!」

 『ウィルオーウィスプ』たちは私の前で整列してくれた。

 「『シャイニングウォール』!」

 シャキイーーン!

 

 「『てーーーッ』でヤス!」

 ドオンッ!

 ドオンッ!

 バガアーーーン!

 「くっ、凄い威力……だけど何とか持ちこたえた」

 

 「アマネが防いでいる今のうちに攻撃だ!」

 カズキが弓を構え、矢に闇属性のチカラを込める。

 「ダークマターアロー』!」

 バシューーーーーッ

 ガーーンッ!

 「くっ、あまりにデカすぎて、ほとんどダメージが通らない!」

 

 「私が行くわ!マグマドラゴンちゃん、来て!」

 バオオオオンッ!

 ヒメノが叫ぶと、地中からマグマドラゴンが飛び出す!

 「『レイジングドラゴン』!」

 ズドドドドドド……

 

 当たった箇所は、多少焦げた程度……

 「表面に『対魔力結界』が張られている……あれじゃあ威力も半減だわ」

 

 

 「攻撃は済んだでヤスかな?じゃあこっちのターンでヤスね」

 海軍将・ヤスは、砲撃手に指示を出す。

 「壁で防がれないよう、魚雷で攻撃でヤス、狙いは『カイエル港町』でヤス」

 ガシャンッ!

 「『てーーーーッ』でヤス!」

 バシュバシュバシュバシューーン!

 

 四発の魚雷が、戦艦から放たれ、カイエル港町に着弾する!

 ズドーーーンッ!

 ドガーーーンッ!

 ズドーーーンッ!

 ボガーーーンッ!

 「うわあああーーー」

 「火、火が……早く火を消すんだ!」

 カイエルの港町が炎に包まれる。

 

 「ああ……カイエル港町が……」

 「くそっ、長年カイエル国の貿易を支えてくれた、由緒ある港町が……」

 

 「何とも脆い街でヤス、これが本当の『炎上』でヤスね、アーヒャヒャヒャ」

 「くっ、防御だけじゃ侵攻を防げない……」

 

 

 ◇マッスル島・カスミside

 

 私たちはオルタナティブドアで、マッスル島へ。

 館長たちを援護するため、モミジの『デゴちゃん』に乗り、地上を走る。

 

 「時間になったので攻撃しまーす!ハニーちゃんたちは上手く逃げてねぇ~」

 空軍将・ハヤトが、戦闘機部隊と、戦闘ヘリ部隊に号令を出す。

 

 ガガガガガガッ!

 戦闘機や戦闘ヘリからの、機銃やガトリングでの攻撃!

 

 バリーーーン!

 「うわああっ!」

 サザバード空艇師団たちの、『対射撃結界』がことごとく割れていく。

 

 「くっ、我々の結界では、時間稼ぎにもならないよ!」

 七長老の館長が、空艇師団に指示を出す。

 「こちらから攻撃して、相手に攻撃する暇がないようにするんだよ!」

 

 「う~ん、それはどうかな?オールドハニーちゃん……

『F15イーグル』の最大速度はマッハ2.5、キミたちの攻撃じゃあ遅すぎて話にならないよ~」

 

 館長たちは、魔法やブレスで攻撃するも、戦闘機のあまりの速さについていけていない。

 「攻撃したら、もういない……速すぎて目が回るよ」

 「館長、あいつら島を攻撃するつもりだ!」

 一緒に来ていた占術長が、島に向かう戦闘機を指さす。

 

 「みなさん、防御は私にお任せを!一人レゾナンスアーツ、『アマノイワト』!」

 ガガガガガガッ!

 

 私の『アマノイワト』で、機銃やガトリングを防ぐ!

 「おおカスミ、助かったよ、よしみんな、今のうちに攻勢にでるよ!」

 「おおー」

 サザバード空艇師団は、全員攻撃に移る……その時

 

 空軍将・ハヤトの前に魔法陣が展開……『風』『風』『地』『地』『光』

 「キラキラ光る 星のキラメキよ 今夜ボクたちを輝かせてプリーズ! 光の中で踊るキミに 星の祝福を!今夜はパーリィナーイツ フーーーーーッ!

 星光属性 五芒星魔術ペンタグラム、『トィンクルナイトゥーー』!」

 パアアアア……

「あれが『詠唱』?ふざけているようにしか聞こえないけど?」

 

「この魔法は『月蝕属性魔法エクリプス』の逆、つまり、対象の命中率を上げ、物理攻撃力を上げる魔法なのさ、フォーーーーー!」

「あの人イケメンだけど、あの『キショイ』喋り方、何とかならないの?」

 さすがのモミジも嫌そうな顔をする。

 

「機銃から、ミサイル攻撃に変更だ!いっくよ~」

 戦闘機と戦闘ヘリが、攻撃を機銃からミサイルにシフトする。

 

 私とスミレで壁を張り、防御態勢を整える。

 「一人レゾナンスアーツ、『アマノイワト』!」

 「死者の章 第一節、『しかばねの壁』!」

 

 「カスミ、スミレ、危ないっ!」

 ドガガガガガッ!

 戦闘機が撃ったミサイルは、私とスミレの張った壁を貫いた。

 間一髪モミジの『デゴちゃん』が、私たちをかばう。

 「そんな!『アマノイワト』と『屍の壁』を貫通するなんて……」

 

 その時、スピーカーを内蔵しているドローンから、マスターの声が聞こえる。

 「カスミ、聞こえるか?今のは空軍の『地中貫通型爆弾』……『バンカーバスター』だ」

 「『バンカーバスター』?」

 

 「敵の地下施設を破壊する目的で作られた、貫通性能を高めた兵器だ。

 今までの『バンカーバスター』でコンクリート六メートル、地中三十メートルまで貫通することが可能。

 今の最新型は、鉄筋コンクリートを六十メートルまで貫通させることができる」

 「そんな兵器を使われたら、いくら私たちの壁でも……」

 さすがのスミレも、呆然とする。

 

 「だったら、私の『アマノイワト・極』なら!」

 私は、『バンカーバスター』を、『アマノイワト・極』で受ける!

 ドガガガガガッ!

 

 「くううう……どう?これなら何とか、貫かれずに……」

 その時、戦闘機が後方に下がり、戦闘ヘリが前に展開してきた。

 戦闘ヘリから撃たれた一発のミサイルが、空中で割れたかと思うと、無数の『子弾』を巻き散らす!

 

 「あれは、収束爆弾……『クラスター爆弾』だ!」

 ドローンからマスターの声が聞こえたかと思うと、その爆弾で、マッスル島の広範囲が火の海に!

 

 「なんてことを……マスター、『クラスター爆弾』とはいったい?」

 「殺傷力が高く、広範囲を攻撃できる爆弾で、現実世界でも百以上の国で使用を制限している……それだけ凶悪な兵器ってことだ」

 

 「あああ、マッスル島が……ギガンティックマスターと一緒に作った、温泉やサウナが……」

 後方で見ていた筋肉団長が、力無くガックリうな垂れている。

 

 「団長、悔しいのはわかる、だが今は生存することと、奪われないことが第一だ。温泉もサウナも、また作ればいい」

 「ギガンティックマスター、わかっていまーす……でも、悔しいマッスル……」

 

 「貫通型の『バンカーバスター』に、広範囲型の『クラスター爆弾』、一体どうしたら……」

 

 

 ◇トリド砂漠・ジュンside

 

 「全軍進撃だー!邪魔するものは全て踏みつぶしていけ!」

 陸軍の大戦車軍団が、進軍を開始する。

 その後ろには、装甲車に乗った陸軍将・ギンジが。

 さらにその後ろに、ギンジが召喚した『魔獣』の群れが続く。

 

 「あんな大軍勢、オレたちでどうにかできるのか……?」

 ファルセインの騎士団の人たちの顔に、焦りと緊張が色濃く出ているのがわかる。

 

 「皆の者、臆するでない!

 我らの後ろには異世界あいどる24のメンバーがいる、臆せず進め!」

 「メギード王さま!」

 騎士たちの後ろには、オルタナティブドアから出てきた、メギード王と百戦騎士、そして私たちアンタッチャブルズがいた。

 

 「アミサー、お前は『人間恐怖症』だ、無理しないで下がっていろ」

 鬼の民ドドムさんが、『人間恐怖症』の天空の民アミサーさんを気遣う。

 アミサーさん、さっきからずっと震えが止まらないみたい……

 

 

 「アラクネ流操糸術、『エントラップメントウェブ』!」

 バシャンッ!

 私が糸で戦車を絡めようとするが、全く意に介さず進軍する戦車部隊。

 「戦車が大きすぎて、私の糸では全く歯が立ちません!」

 

 「私に任せて!」

 ナーガのコマチが、天を仰いで力を行使する。

 「アドバンスドアーツ、『アシッドレイン』!」

 ザアアアアアア……

 戦車部隊を、強酸の雨が打つ。

 

 「これで装甲は弱くなったはず……アドバンスドアーツ、『氷瀑』!」

 ズドドドドドド……

 空から巨大な『氷塊』が、戦車めがけて降ってくる!

 ドオオオオオオオオッ!

 

 戦車部隊の周りは白い煙が充満している……

 「くっ……『対魔力結界』に『対打撃結界』……何と用意周到な」

 戦車の装甲には、『対魔力結界』と『対打撃結界』が張られていた。

 「ほとんど無傷とは……自信を無くしそうです」

 しゅんとするコマチの後ろから、メメが詠唱を唱える。

 

 「ならこれならどうじゃ!」

 メメの前に魔法陣が展開……『風』『地』『地』『地』

 「シーン・セイジ・クロム・ブリズナン・バズレイン

 石の神 岩の神 固き意思のもと かの者を石棺に封じたまえ

 岩石属性クアトログラム、『エアーズロック』!」

 ガガガガ……ズズーン!

 巨大な岩の中に戦車を閉じ込めた!

 

 ドガガガガッ!

 閉じ込められた戦車は、そのまま『エアーズロック』に穴を開け、抜け出してきた。

 

 「ダメじゃ……他の戦車たちも、『エアーズロック』で作った丘を、いとも簡単に走破してくるのじゃ」

 「まったく、あの『キャタピラー』を開発した人は天才だな……」

 ドローンの画像を見ていたマスターも、ため息交じりでそう話すのが、スピーカーから聞こえた。

 

 

 装甲車のハッチから、陸軍将・ギンジが顔を出す。

 「へへへ、今度はこっちの番だな」

 

 キリキリキリ……

 「ラインメタル120mmL44滑腔戦車砲、標準合わせ、撃てーーーッ!」

 ドオーーンッ!

 戦車の砲台から、轟音とともに弾丸が発射される。

 

 シュシュシュシュン!

 騎士たちの前に、格子状に張られた網のような壁が現れる。

 ボヨ~ン!

 戦車の弾丸は、爆発せずに、網で跳ね返り下に落ちた。

 

 「私が作った、糸を網のように編み込んだ弾力のある壁です、これなら爆発しません」

 「でかしたジュン、ナイスだ!」

 マスターに褒められてしまいました、フフン。

 

 「おい、白兵戦の準備だ」

 陸軍将・ギンジが、歩兵たちに指示を出す。

 

 「対人戦なら我らでも戦える、ファルセイン騎士団、魔法師団、前へ!」

 メギード王の号令で、騎士団の人たちが突撃する……でも

 

 ボオオオオオオ!

 「こ、これは!?ぎゃあああああ」

 騎士団の一人が、炎に包まれる!

 「なんだこの炎は!?『対魔力結界』が効かない?」

 

 スピーカーからマスターが叫ぶ。

 「そいつは『火炎放射器』だ!魔法じゃないから結界じゃ防げない、みんな下がるんだ!」

 

 「バズーカ隊、前へ、撃てーー!」

 ズドンッ!

 バオオオオオオオオ!

 「炎が広がって……これは!?」

 「それは『ナパーム』……焼夷弾だ!」

 「しまった、『焼夷弾』で、糸が全部焼かれてしまいました!」

 

 「ギャーハハハ、これが本当の『ナパーム』だ!魔法の『ナパームサークル』とは一味違うだろ?」

 「くっ、『対魔力結界』で防げないんじゃ、どうしようも……」

 

 「さあこれで撃ち放題だ!滑腔戦車砲撃てーー!全部踏み潰せ!」

 ドオーーンッ!

 ドオーーンッ!

 戦車の砲台から、轟音とともに弾丸が発射された!

 

 風光明媚だったトリド砂漠周辺は、砲撃により、見るも無残な景色に……

 「ギンジ、てめぇなんてことを……」

 「ん?ドローンから声が……その声はギガンティックマスター……やっぱり生きていやがったか。丁度いい、オレがこのままそこまで行って、とどめを刺してやるよ」

 

 「くっ、このまま下がり続けたら、本当にファルセイン城まで攻め込まれてしまう……」

 私たちは、戦車軍団の前に為す術がない……

 「ついでに『マキア』って女も、兄貴の前にオレが頂いちまうかなぁ……ギャーハハハ」

 

 「くっ……私の力じゃあ、あの戦車軍団を止められないの?このままじゃマスターやマキアさんまで……」

 

 

 〇作戦司令本部・俺side

 

 「カイエル、サザバード、ファルセイン、全部隊このままじゃ危険だ、前線を下げるんだ!」

 俺は各国のモニターを見ながら、支持を出す……

 「しかしマスター、このままですと城まで攻め込まれるのは時間の問題です」

 全くもってマキアの言うとおり、このままじゃジリ貧だ。

 

 「くそっ、正直ここまで攻め込まれるとは思わなかった……現実世界の兵器がここまでとは」

 アクトたちも、勝算があって戦争を吹っ掛けてきたんだ、当然と言えば当然か。

 

 「いざとなったら俺が出る!これ以上異世界で、好き勝手させるわけにはいかない!」

 三国同時に俺が行くわけにはいかない……ア・ヴァロンにはまだアクトも控えている。

 このままだと、最悪の場合一国ぐらい落とされる可能性も。

 一体どうしたら……

 

 

 ◆現実世界『清流会病院』・サモンロードside

 

 妹の病室で、サモンロードが本を読んでいる……でも表紙は逆さま。

 

 「お兄ちゃん、ルミに何か隠している?」

 「えっ……いや別に、何も……」

 サモンロードはドキッとして、目が泳ぎ、左の眉毛が上がる。

 

 「お兄ちゃんはね、嘘をつくと左の眉毛が上がるの、知ってた?」

 「えっ」

 

 「ルミが何年お兄ちゃんの妹をやっていると思っているの?」

 妹の迫力に、サモンロードはタジタジ……

 

 「いい?お兄ちゃんの人生は、お兄ちゃんのモノなの。だから、ルミに縛られなくってもいいの」

 「瑠美……」

 「今ルミは調子がいいから、少しぐらいお兄ちゃんがいなくても平気よ。だから、行きたいところがあるなら行ってきて」

 

 「瑠美、僕の知らない間に、いつの間にそんなに大人になったんだい……?」

 「その代わり、ずっと後でもいいから、何をしてきたのか、ルミにも教えてね」

 「……わかった、瑠美、ありがとう」

 「まったく、世話の焼けるお兄ちゃんだわ」

 

 サモンロードは、カバンから真っ白なパーカーを取り出し、着る。

 「あー、お兄ちゃんが本気になったときに、いつも着るバーカーだね、似合ってるよ」

 「ああ、ちょっと行ってくる」

 

 サモンロードが病室を出ると、廊下には四天王たちが待っていた。

 「我、待望、準備万端」

 「待ってたよ、ロード。行くんだろ?」

 「ちょっと待ってくださいね、今終わりますから……あっ」

 キャルロッテが、書いていたメモ帳を落とす。

 

 「ん?なになに……」

 サモンロードが、キャルロッテのメモ帳を拾い、覗き見る。

 「あ、それは……」

 「『ロード様は、嘘をつくとき左の眉毛が上がる』……だって?何をメモしているのかと思ったら……まったく」

 

 「妹さんは、私の知らないロード様のことを、たくさん知っています、参考になります」

 「いや、こういうのは参考にしなくていいから……」

 サモンロードは、真剣な顔になり、四天王を見る。

 

 「ギガンティックマスターを助けに行く、みんな僕に力を貸してくれ!」

 「了解」

 「あいよ」

 「お任せ下さい!」

 

 

 ◆現実世界『鳥海商事』・コズミッククイーンside

 

 コズミッククイーンがノートパソコンで作業をしていると、奥にある休憩室から女子社員の会話が聞こえてくる……

 「昨日の『sTReaM』のコンサート、最高だったわ~」

 「私、リン様と目が合ったわ、絶対に気づいているはずよ!」

 「リュウセイ君と握手したこの手、私もう一生洗わないから」

 

 コズミッククイーンは、深いため息……

 「私って、こんなに集中力がなかったかしら……」

 そう言いながら、コズミッククイーンはパソコンのエンターキーを押し、書類をプリントアウトして、パソコンの電源を落とす。

 

 「はあー、まったく私は……」

 コズミッククイーンは、書類に何かを書くと、そのまま部長の机へ。

 バンッ!

 

 「部長、有給休暇をお願いします!」

 「は!?く、黒田君?そんな急に言われても……」

 

 「私の仕事は全て終わらせてあります、大丈夫です」

 「い、いや、しかし……り、理由は?休みを取る理由は何だね?」

 コズミッククイーンは、部長に迫り、部長はビビッて少し引く。

 

 「世界の平和を守るためですッ!」

 

 「はぁ!?」

 そう言ってコズミッククイーンは、くるりと振り返り、歩いて行く。

 「待ちたまえ黒田君、ちょっと、黒田くーーん……」

 ガチャ、バタン!

 

 「……」

 やっちまった、というような感じで、顔に手を当てるコズミッククイーン。

 

 「さすがはクイーンだ」

 「カッコよかったぜ」

 外にはコズミッククイーンの四天王が待っていた。

 「楽観的ねアナタたちは……

 下手をしたら、私もアナタたちも、路頭に迷うかもしれないのに……」

 

 「大丈夫だよ、その時はオレたちが異世界でクイーンを養ってやるよ」

 「クイーンは、オレたちがいればあとは何もいらない……そうだろう?」

 「あのねえ、そういうセリフは、私がアナタたちに言うモノよ……アナタたちが言ったらダメじゃない」

 「ハハハハ……」

 

 コズミッククイーンは、リンから杖を受け取ると、顔が『真剣モード』に変わる。

 「私たちで異世界を救うわ、行くわよ」

 「おう!」

 「あいよ!」

 「任せとけ!」

 「イエス、クイーン!」

 

 

 ☆今回の成果

  サモンロード 『嘘をつくと左の眉が上がる』癖

  コズミッククイーン 有給休暇 五日分

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