第58話最強の援軍

 アナタはアイドルに『ギュっとしてポイッ』と言ったことがありますか?……俺はある。

 

 ◇カイエル港町・アマネside

 

 戦況は思わしくない……

 

 「こうなれば、残った艦で盾になり、町を砲撃から守る!皆の者続け!」

 「はい、ガーマイン様!」

 

 その時、ガーマイン王子の後ろに、巨大な白いモフモフが……

 「その戦法はあまりお勧めしないなぁ、ガーマイン王子」

 

 「なっ……アナタは、サモンロード殿?」

 ガーマイン王子の後ろには、フェンリルに乗ったサモンロードさんとその四天王が……

 

 「サモンロード、来てくれたのか!」

 ドローンのスピーカーから、マスターの声が。

 

 「ギガンティックマスター……?どうやらここじゃない、別の場所にいるみたいだね」

 「俺はファルセイン城に作った『作戦司令本部』にいる」

 「なるほど、キミはそこから指示を出していたわけか……うん、その方がいいね、まだアクトも残っているし」

 

 そう言うと、サモンロードさんは、相手のイージス駆逐艦に乗っている『海軍将・ヤス』の方を見る。

 「ここは僕に任せてよ、あの海軍将・ヤスには、ちょっとイラついているんでね」

 「わかった、でも気をつけろ、相手は現実世界最強の艦隊だからな」

 

 「みんな準備はいいかい、行くよ」

 サモンロードさんは、少し微笑んだかと思うと、フェンリルでイージス艦隊に突撃した。

 

 「サモンロード、性懲りもなくまた来たんでヤスね……

 目標フェンリル、54口径127mm砲、『てーーーッ』でヤス!」

 ドオンッ!

 ドオンッ!

 海軍将・ヤスが、フェンリルに向かって艦隊の主砲を撃つ!

 ……が、物凄いスピードのフェンリルが、軽々と主砲の弾丸を避けていく。

 

 サモンロードさんは、自分の四天王を、イージス艦一隻に一人ずつ降ろしていった。

 そして自分は、海軍将ヤスの乗る戦艦へ降り立つ。

 「おのれ~ちょこまかと避けやがってでヤス……」

 

 「やあ、久しぶりだね、悪いけどキミの艦隊、全部『沈黙』させてもらうよ」

 「はあ?でヤス、そんなことできるわけ……」

 

 ドオオオンッ!

 一番端のイージス巡洋艦が、内部から火柱をあげる。

 「な、なにごとでヤス!?」

 

 一番端のイージス巡洋艦には、サモンロードさんが召喚した『タイタンさん』が……

 「なんだこいつ?体が岩でできていて、こちらの攻撃がまるで通用しない!?」

 「『タイタニックウェイヴ』!」

 ズガガガガガッ!

 

 『タイタンさん』が、甲板に両手を当てると、凄まじい振動が船体を駆け巡る!

 「せ、戦艦の全ての計器が使用不能、ショートして火災も発生しているもよう!」

 「なんだとでヤス!?」

 

 バババババーーッ!

 反対側のイージス駆逐艦も、中から光線みたいな光が……

 「『ホーリーブレス』!」

 バババババーーッ!

 ドカーーーーン!

 「うわああああ!」

 「うふふ、『ウィルオーウィスプ』ちゃん、よくできました、後でご褒美あげます」

 

 「聖女のキャルロッテさん、凄い……『ウィルオーウィスプ』を七体召喚して、『ホーリーブレス』まで使えるようになってる」

 イージス駆逐艦は、もう沈没寸前。

 

 ズガガガガガッ!

 今度は隣の三番艦が……真ん中から『ひしゃげてる』!?

 「今度はなんでヤスか!?」

 

 「セイ・タルス・クエト・ジータ・アースクレート・ヴァイアロン

 重轟場属性 五芒星魔術ペンタグラム、『ヘクト・グラビトン』!」

 ズガガガガガッ!

 魔女のエスタさんが、雷を伴った重力球を戦艦の内部で発動してる!

 

 「三番艦も沈黙、動くこともできません!」

 「く、くそっ……まだ二番艦がいるでヤス、二番艦の駆逐艦なら……」

 

 二番艦の甲板の上には、重騎士のガンドルフさんが立っている。

 確か『四天王戦世界大会』の時に、自慢の『ダイヤタートルシールド』と『ドリルスピア』は真っ二つになったはず……

 ……と、思ったら、現実世界の『モリブデン鋼』で補強して復活している?しかも、盾は二枚に!?

 

 「我、復活、新必殺技、披露」

 ガンドルフさんは、槍を構えて、その場でジャンプ!

 そのまま回転しながら、戦艦に突っ込んでいく!

 「新必殺技、『超貫通戦槍コークスクリューダイヴァー』!!」

 ブギュルルルルッ!

 

 ガンドルフさんは、自身を回転する槍と化して、貫通力を最大限にまで高め、物凄い勢いで戦艦のあちこちに大穴を開けている!

 「二番艦浸水!隔壁も間に合いません、沈没します!」

 ドドドドド……

 轟音を立てながら、二番艦は沈んでいく……

 

 「おのれ~オラの無敵のイージス艦隊を、よくもやってくれたでヤスな……」

 「あとはこの一番艦とキミだけみたいだけど……どうするんだい?」

 「フッフッフ……オラにはまだとっておきの『切り札』があるでヤス、今目にものを見せてやるでヤス!」

 

 「……ひょっとして、キミの『切り札』って、アレのことかい?」

 イージス艦とカイエル港町の間の海域に、大きな渦が起こり、そこに巨大な何かを捕まえている、マリネの『クラちゃん』が。

 サモンロードさんは、そのクラちゃんが持っているモノを指さす……

 「あーーーー!オラの『切り札』、『潜水艦』がーーーー!?」

 

 「マスター、海中にいたクラちゃんが、変なモノを捕まえたって言ってます」

 マリネが、マスターのドローンに話しかける。

 「変なモノ?」

 「食べてもいいかって聞いています」

 「そんなもの食べたらお腹壊すから、『ギュッ』として、『ポイッ』だ」

 

 「わかりました、クラちゃん、『ギュッ』として、『ポイッ』よ」

 「ピィーーー……」

 クラちゃんは、持っていた潜水艦を、そのままひねる。

 ギューーー、バキバキバキッ!!

 「うわああああーー!」

 「き、緊急退避、緊急退避だーーーッ!」

 潜水艦は、クラちゃんの触手にひねられて、まるで絞ったタオルのように……

 

 そのままクラちゃんは、潜水艦を『ポイッ』!

 ダッバーーーーーンッ!

 グシャグシャになった潜水艦は、そのまま海中深くに沈んでいった……

 ブクブクブク……

 

 「あ、あああ……オ、オラの『切り札』が……」

 「残念だったね、これで完全にキミだけになったみたいだけど」

 

 「おい!オラにこんなことをして、ただで済むと思っているでヤスか?」

 また前のように、お前たちの秘密を暴いて、炎上させてやるでヤスよ、いいんでヤスか?」

 

 「残念だけど、もうキミは今までのような『ハッキング』はできないよ。

 キミのパソコンはボクが起動できないように完全に機能を停止、全てのアカウントも凍結させてもらったよ」

 「えっ?それはどういうことでヤス……?」

 ヤスは急いで自分のパソコンを起動する……

 「オ、オラのパソコンが起動しない……まさか、お前が『ハッキング』したんでヤスか!?」

 

 「そうだよ、一応プロテクトもかけてたみたいだけど、僕には意味ないかな?朝飯前どころか、その前の『夜食前』だったね」

 「そんな……バカな、でヤス」

 「キミたちのこと、調べさせてもらったよ……

 まずは『堂元亜久斗ドウモトアクト』、二十歳

 父親は反社会組織『堂元組』の組長。

 自身も半グレ集団『悪童アクドウ』の元リーダー。

 『恐喝』『暴行』『強盗』『強姦』……ここ数年何度も『少年鑑別所』に入っていたみたいだね。キミたちはそこで彼の舎弟になったのかい?」

 「う……」

 

 「海軍将・ヤス……本名『潮見安男しおみやすお』、二十五歳

 コンピュータを使ったネット犯罪で炎上させて、侮辱罪と名誉棄損で服役……おまけに幼女誘拐未遂まで犯しているんだね」

 「オ、オラのことまで……」

 

 「空軍将・ハヤト……本名『飛田吾郎とびたごろう』、二十六歳

 元ホストで、結婚詐欺と『DVドメスティックバイオレンス』で二年間服役……ハヤトって源氏名で、本名は吾郎っていうんだね」

 「ハヤトの本名まで……」

 

 「陸軍将・ギンジ……本名『堂元銀次どうもとぎんじ』、十八歳

 オレオレ詐欺の主犯で、『少年鑑別所』からつい最近出てきたばかりだね、金の亡者ってとこか」

 「そんなことも……」

 

 「いや~四人とも見事な『ワル』だね、今すぐにでも『闇市』に出入りできるよ、きっと」

 「お前一体、何者でヤスか……?」

 その時、ヤスって人がサモンロードさんの服を見て、何かに気づいたみたい……?

 

 「その『真っ白なパーカー』に、胸に三本の青い槍のマーク……

 ま、まさかアンタ、政府公認のホワイトハッカー集団、『神の槍グングニル』のメンバーでヤスか!?」

 「へえ~知ってたんだ?」

 

 ヤスは、持っていたパソコンを床に落とし、腰が抜けたように座り込むと、小刻みに震え出した。

 サモンロードさんは、そのままヤスに話しかける。

 「妹の所在がバレた時は一瞬ヒヤリとしたけど、僕が『神の槍グングニル』の一人だと気づかなかったところを見ると、キミは大したハッカーじゃないみたいだね」

 「な、な……」

 

 「僕の趣味はね、キミのような悪質なハッカーを探し出すこと。

 そして僕の特技は、キミのようなハッカーを懲らしめることさ」

 

 サモンロードさんの前に魔法陣が展開……『水』『水』『水』『水』『光』『闇』

 「海精 海竜 海神よ 生命の根源たる海の王 その息吹 その逆鱗 人の身にて抗うこと敵わず 願わくば その力 我が前にて示したもう……

 レヴィナート・アイントル・クオンタム・シーゲイン・ブールー・ネイト・ウォルシュ……」

 

 「あ、ああ、ああああ……」

 

 「海竜召喚属性ヘキサグラム、『リヴァイアサン』!」

 「バオオオオオオーーーーン!」

 サモンロードさんを中心に、超巨大な海竜が顕現した。

 「『リヴァイアサン』、『わだつみの咆哮』!!」

 

 ドドドドドドドドドドーーッ!

 「しぎゃああああああああああーーっ!」

 

 リヴァイアサンが去った後には、気絶したヤスの姿が……

 

 「こう見えて僕は、意外と根に持つタイプなんだよ、フフ」

 

 

 ◇マッスル島・カスミside

 

 一旦地上に降りた館長たちは、集まって作戦を練る……

 「こうなったら、私があのハヤトって奴に特攻をかける、みんな援護を頼むよ!」

 

 「相変わらずね、館長」

 「ア、アンタは、ま、まさか……コズミッククイーンかい?」

 館長の後ろに、コズミッククイーンさんと、四天王さんたちが立っていた。

 館長の、見事な三度見!を見てしまった……

 

 「コズミッククイーンだって?アンタ現実世界の生活は大丈夫なのか?」

 私のそばにいたドローンのスピーカーから、マスターの声が聞こえる。

 「私の心配は必要ないわ、それより今は異世界の平和が第一、そうでしょ?」

 コズミッククイーンさん、カッコいい……

 

 「みんな、私たちで異世界を救うわ、行くわよ!」

 「おう!」

 コズミッククイーンさんと四天王さんたちは、『鶴翼の陣』でハヤト達の空軍を迎え撃つ!

 

 「またボクに会いたくなったのか~い、ハニーちゃん」

 「会いたくはなかったけど……サザバードの危機となれば話は別よ、私がお相手するわ」

 

 「ん~いいねぇ~、ボクの邪魔をするなら容赦はしないよ~『F15イーグル』、ハニーちゃんを攻撃だよ」

 ダダダダダダッ!

 「『対射撃結界』展開!」

 コズミッククイーンさんの巨大な『対射撃結界』で、機銃を全て防御。

 「あんなに大きな結界を……」

 

 「うぬぬぬ……ならミサイル攻撃だ!『サイドワインダー』発射!」

 バシュンッ!

 

 コズミッククイーンさんの前に魔法陣が展開……『炎』『風』『光』

 「ミリタリス・ビー・オージャ・ダナドゥ

 我 光弾を操り 敵を屠るものなり

 光弾属性ハイアナグラム、『ヴァーミリオンレイ』!」

 ドキュキュキュ!

 「光弾よ、止まれ!」

 ピタピタッ!

 「光弾よ、上へ!」

 ドキュキュキュ!

 

 コズミッククイーンさんが光弾を上へ飛ばすと、ミサイルもそれを追いかけて上へ軌道を変える。

 「なんだってぇ!?」

 キュンッ……ズズーン!

 

 「『サイドワインダー』は、赤外線センサーを使った熱誘導ミサイル、私たちよりも高温の物体を作れば、自然にそちらへ起動を変えるわ」

 「コズミッククイーンさん、凄っ!」

 

 「今度はこちらの番かしら?」

 コズミッククイーンさんの前に魔法陣が展開……『風』『風』『地』『地』『闇』

 「天空に輝く 昏く 強き真円 それを貪るは 影の王 逢魔が刻の始まりを告げるは 闇の鐘の音

 ヴァル・ベル・アシード・フルグレール・レーベン・ロア・キルド

 月蝕属性 五芒星魔術ペンタグラム、『エクリプス』!」

 

 ザアアア……

 リーンゴーン……

 天空に月が現れ影に飲み込まれていき、真っ暗になったかと思うと、突然鐘の音が鳴り出す……

 

 「う、うわあああ、前が、前が見えないっ!?緊急退避!」

 空軍将・ハヤトの戦闘機たちは、お互いにぶつかったり、壁に激突して大破していく……

 「やった、戦闘機隊は全滅したわ!」

 

 「おのれぇ……だがボクも乗っているこの『戦闘ヘリ』は、ホバリングしていたから暗闇でも平気だよ!これならどうだい?戦闘ヘリ、『バンカーバスター』だ!」

 ヒュイーン……バシューンッ!

 

 「マズい、私の『アマノイワト』を貫通した、『バンカーバスター』だわ!」

 戦闘ヘリから発射された『バンカーバスター』は、一直線にコズミッククイーンさんに飛んでいく!

 「リュウセイ!」

 「はいよ!『ジェミニシールド』!」

 ズガガーーーッ!

 「星の光よ、我の拳に集え!『スターライトナックル』!」

 バガアーーンッ!

 横からカケルさんが『バンカーバスター』を殴ってるー!?

 ドドドドド……

 

 煙が晴れると……あれ、コズミッククイーンさん達がいない?

 シュインッ!

 少し離れた場所からみんな出てきた!『スターゲート』のおかげでみんな無傷……凄いっ!

 

 「『ギャラクシアンローズ』!」

 リンさんが薔薇に息を吹きかけると、薔薇の銀河が……って、リンさんがまた七人もいる!?

 

 「何人増えても、『クラスター爆弾』なら一緒だよ!一気に全部焼き払ってしまえ!」

 空軍将・ハヤトの号令で、戦闘ヘリから『クラスター爆弾』が発射される。

 バシューンッ!

 

 「待っていたよ……星屑よ、敵を撃て!『スターダストショット』!」

 ババババババーーッ!

 ヨシキさんの杖から放たれた星屑が、全てのクラスター爆弾の『子弾』を撃ち落としていく……

 

 「くっ、この野郎……」

 「フフ……だんだん本性が出てきたわね、『なんちゃってイケメン』さん」

 「なんちゃってって言うなっ!」

 

 コズミッククイーンさんの前に魔法陣が展開……『地』『闇』『闇』

 「セイ・タルス・クエト・ジータ

 重力属性ハイアナグラム、『グラビトン』!」

 ズドンッ!

 「うわあああーっ!?」

 コズミッククイーンさんの『グラビトン』が、空軍将・ハヤトの乗っていた戦闘ヘリを地上に落とした!

 

 「くそっ、このアマ……」

 「みんな、今よ!『長蛇の陣』!」

 「おう!」

 「疾風迅雷 電光石火 風林火山 汝に風の力を 浮かせ 滑空させよ

 滑空属性ハイアナグラム、『エア・グラインドプラス』!」

 

 「『長蛇の陣』に『エア・グラインド』……こいつは!」

 ドローンのスピーカーから、マスターの声が聞こえる。

 「はあああーー!」

 ザザザザーーーーッ

 

 「出たーーー!『ジェット・ストリーム・イケメン』だーーー!」

 「ちょっと!私の四天王の技に、ダサいネーミングつけるのやめてくれる!?」

 

 「ただ纏まって突撃してくるだけの技が、なんだっていうんだ!これでもくらえ、『スターライトナッコー』!」

 ガキーーーンッ!

 リュウセイさんがジェミニシールドで防ぐ!

 「なにぃ!?」

 「本物を見せてやる!くらえ『スターライトナックル』!」

 ズドガアアッ!

 「へぶしっ!」

 

 「『スターダストショット・惑星御手プラネットアーム』!」

 バキバキバキバキーーーッ!

 「はぶしゅっ!」

 

 「『ローズニードル・モーニングスター』!」

 ドンッドンッドガアッ!

 「らぶあばっ!」

 

 ドザアッ!

 ボロ雑巾のようになったハヤトが、吹っ飛んで地面に落ちる。

 「ぎゃあああ!!、は、鼻が……ボクの鼻がッ」

 ハヤトの鼻は、曲がって、大量の鼻血が出ている。

 「テメエ、このブスが!この鼻に一体いくらかかったと思っているんだ!」

 

 「知らないわ……知りたくもないし、知る必要も無い」

 コズミッククイーンさんの前に魔法陣が展開……『地』『地』『光』『闇』

 「ジュケイ・ナース・アルカン・ラスピクト・シーズ・ロークェート

 流星よ 我が前に収束し 彗星となれ 重力に引かれ 星を穿て

 彗星属性クアトログラム、『コメットレイヴ』!」

 

 ドドドドドーーーッ!

 「ぎゃあああああーーっ!」

 巨大な彗星をまともに受けて、空軍将・ハヤトはもはや虫の息……

 

 ザッ……

 コズミッククイーンさんと四天王が、ハヤトの前に立つ。

 「畜生……女のくせに、ボクにこんなことしやがって」

 「あら、まだそんなことを言えるのね」

 「当たり前だ、お前ら女はどうせイケメンが大好きなんだろ?その四天王もイケメン揃いだしな」

 「……」

 「現実世界の女どもも、みんなボクに貢いでくれたよ。

 イケメンだったら、性格なんてどうでもいい、女なんて周りにイケメンの彼氏を自慢したいだけ、そうなんだろ?

 女は黙って、ボク達イケメンの言うことを聞いていればいいんだよ!」

 

 ハヤトを殴ろうとするカケルさんを、コズミッククイーンさんが止める。

 「確かに私は、イケメンが大好きよ」

 「クイーン……」

 「でもアナタは『真のイケメン』ではないわ」

 「『真のイケメン』……?」

 

 「『真のイケメン』とは、顔なんていいのは当たり前。

 常に女性をリスペクトし、女性にとっての最善を考え、行動できる者……私のこの、四天王のようにね」

 

 コズミッククイーンさんの前に魔法陣が展開……『地』『地』『地』『地』『光』『闇』

 「バオウ・ガオウ・レディオン・シンカ・リーデス・アヴダクト

 悠久なる 宇宙の星々よ 星の海より来たれ 我にその力の一端を貸し与え給え 我が眼前に 隕石よ 落ちろ……」

 ゴゴゴゴゴゴ……

 

 「お、おいおいおい、そんなの食らったら……

 ま、待て、そうだ、ボクが君の『彼氏』になってあげるよ、これで他の奴にも自慢できるよ、どうだい?」

 「結構よ、間に合っているわ」

 「そ、そん……」

 

 「隕石属性 六芒星魔術ヘキサグラム、『メテオーション』!」

 ズガガガガガーーーッ!

 「にぎゃあああああああっ!」

 巨大な隕石の直撃を食らって、ハヤトは地面にめり込んでいる……

 

 コズミッククイーンさんが、イケメンの四天王を従えながら、ハヤトに向かって言い放つ……

 「真のイケメンじゃない者が、イケメンを語るなかれ」

 

 

 ◇トリド砂漠・ジュンside

 

 陸軍将・ギンジの戦車部隊が、ドンドン侵攻してくる。

 このままじゃ、本当にマスターとマキアさんがいるファルセイン城まで進軍しそう……

 

 その時、マスターのドローンが私の横に来て、私に指示を出す。

 「全員少し下がらせてくれ、危ないから」

 「えっ?」

 

 メギード王や騎士団の人達に少し下がってもらった後、マスターのドローンが戦車部隊の前に行ってホバリングしている。

 ドローンのスピーカーから、マスターの声が聞こえてきた。

 「あー、あー……」

 「おお、ア・ヴァロンの王に、何か言うんだな?」

 メギード王が、期待しながらマスターのセリフを待つ。

 

 「コオラ、ドラゴニックキング!てめえ偉そうなこと言っておいて、なんだその様は?」

 「え、そっち?」

 ピシッ……

 あれ?なんか石像になったドラゴニックキングさんに、ヒビが入ったような……

 

 「散々偉そうなこと言って、仲間に心配かけるとか、なっさけないリーダーだなお前は?」

 ビシビシッ……

 

 「悔しかったらそんなとこで油売ってないで、サッサと復活しろ、このゴリラの王様がー!」

 「いや、それはさすがに言い過ぎでは……」

 バキバキバキバキーーーッ!

 えーーーー!?石が割れて、中からドラゴニックキングさんが出てきたーーーっ!?

 

 「ギガンティックマスター、てめえいい度胸してんじゃねぇか、ブッ殺す!」

 「やっぱり『ドラゴニックスキン』で防御してやがったんだな?上等だこの野郎、かかってこいやぁ!」

 「いやいや、アンタまで乗るんじゃない!」

 メギード王が、一生懸命マスターをなだめているのが面白くて、つい笑ってしまった。

 

 「テメェはその前に、やることがあるんじゃないのか?」

 「……ああそうだった、お前の前に、オレとリュオンを石化したやつをブッ殺すのが先だったな!」

 ドラゴニックキングさんは、隣のリュオンさんの石像を叩く。

 するとまた石が割れて、リュオンさんも中から出てきた。

 

 「キング、リュオン!」

 鬼の民ドドムさん、闇の民レイザさん、天空の民アミサーさんも、ドラゴニックキングさんのところに集まった。

 「無事でよかった」

 「『ドラゴニックスキン』で石化ガスを防いだまでは良かったんだが、その後表面の石を壊せなくて動けなかったんだ……

 少しムカついたが、ギガンティックマスターに煽られて怒ったおかげで抜け出せた」

 「キング……よかった、私のせいでやられちゃったのかと」

 「オレ達があんな奴にやられるわけないだろう、さあ、借りた『借り』を返すぞ、『利子』をつけてな!」

 「おう!」

 

 陸軍将・ギンジが、装甲車から顔を出す。

 「チッ、大人しくレリーフになっていればいいものを……まあいい、丁度いいから見せしめにバラバラにしてやる」

 ギンジが戦車部隊に号令を出す。

 キリキリキリ……

 「ラインメタル120mmL44滑腔戦車砲、標準合わせ、撃てーーーッ!」

 ドオーーンッ!

 戦車の砲台から、轟音とともに弾丸が発射される。

 

 シュシュシュシュン!

 私はまた、糸を網のように編み込んだ、弾力のある壁を作った。

 ボヨ~ン!

 「この網があれば、戦車の弾丸は爆発しません」

 「おお嬢ちゃん、助かるぜ!」

 

 「チッ、またあの網か……『火炎放射』部隊、前へ出ろ、あの網を燃やしてしまえ!」

 ボオオオオオオ……

 

 「鬼哭流刀殺法きこくりゅうとうさっぽう 鬼零式おにれいしき、『鬼眼キガン』!」

 バチィッ!

 「ガッ……か、体が……動かない……?」

 『火炎放射部隊』は、みんな止まってしまった。

 「おい、お前たち一体どうしたんだ!?」

 ギンジが焦り出した……

 

 「だったら『ナパーム弾』をお見舞いしてやる、『自走式多連装ロケット砲』、撃てーーーッ!」

 バシュバシューーーッ!

 さっき辺り一面を火の海にした、『ナパーム弾』が飛んでくる!

 

 「そうはいかないよ」

 闇の民レイザさんの前に魔法陣が展開……『水』『水』『風』『風』『闇』

 「氷よ輝き舞え 氷竜よ敵を包め 氷神よ罪人に永遠の罰獄を

 ブレーベン・ドドレス・アクレイン・マージ

 ガイ・イン・トゥーザ・ファラン・ライン・ゲート……

 氷獄属性 五芒星魔術ペンタグラム 『コキュートス』!」

 ガガガガガガ……バキバキバキ!

 

 「な、何ぃーー!?」

 ナパーム弾と、戦車部隊全てを、巨大な氷山の中に閉じ込めてしまった!

 「す、凄い……」

 

 「鬼哭流刀殺法 最終奥義、『鬼コンボ』!」

 ズズズズゥゥン!

 鬼の民ドドムさんが叫ぶと、キバが炎に包まれ、北西と南東の方角に鬼門が現れる。

 「『真打・鬼哭妖炎双牙』!」

 ドドムさんの二本のキバから、炎を纏った気力の渦が、戦車に向かって飛んでいくーーー!

 ドガガガガガッ!

 

 数台の戦車を破壊した!

 「そんなバカなッ、現代兵器の戦車の装甲を破壊するなんて……」

 「『コキュートス』で極低温まで冷やされたあとに、拙者の奥義で超高温の技を受けたのだ、金属であれば分子の結合が崩壊し、脆くなるのが道理……お前はそんなことも知らんのか?」

 「くっ、クソッ……」

 

 「そろそろ終わりか?顔に余裕が無くなったな」

 そう言いながら、ドラゴニックキングさんが、ギンジに近づいていく。

 「オレを舐めるなよ……」

 ギンジの前に魔法陣が展開……『水』『地』『闇』

 「全てを灰色に染める 呪いの魔獣よ 彼の者を 千代に朽ちることのない石と化せ

 石化獣属性ハイアナグラム、『コカトリス』!」

 クエエェェーーッ!

 

 「石化の魔獣を召喚した!?」

 その時、ドラゴニックキングさんの後ろから、天空の民アミサーさんが出てきた!

 「空間の主たる我が名において命ずる、汝の契約を解き、物質界より送還す……アドバンスドアーツ、『強制送還サモンリバース』!」

 キュウイイィィン……

 「なんだと!?」

 

 「やった、コカトリスを強制送還した!」

 でも、アミサーさんはブルブル震えている……

 「アミサー、お前は『人間恐怖症』だ、無理しなくていい、下がっていろ」

 

 「チッ、よくも……ならこれならどうだ!」

 ギンジの前に魔法陣が展開……『風』『地』『闇』『闇』『闇』

 「漆黒纏いし 亡国の騎士よ その首級を王に捧げよ 血塗られた戦場の果てで 歴史は繰り返されるだろう

 アナン・ケイル・シジルド・ヴォーテ・クアッシーニ……

 不死召喚属性ペンタグラム、『デュラハン』!」

 「オオオオオーーーン……」

 

 「ヴァロン城で召喚した、『瘴気』持ちの魔獣だわ!」

 「へっ、それとオレが進軍するときに召喚しておいた魔獣二十体、こいつら全部、『強制送還』できるのかよ!?」

 アミサーさんは、ドラゴニックキングさんの後ろで震えている……

 「アミサー、無理するな、オレ達に任せておけ」

 アミサーさんは首を横に振る。

 

 「……ギガンティックマスターさんが言っていました、恐怖を克服するのは『勇気』だと。

 私は、キングやみんながいれば『勇気』が出ます、『人間恐怖症』だって、克服して見せる!」

 ヒイイィィン……

 アミサーさんの体が、光り輝いている……

 「まさか、『種族進化』?」

 

 「空間の王たる我が名において命ずる、汝らの契約を解き、自由に空を飛ぶための翼を与えん 大いなる力により、物質界より送還す……アドバンスドアーツ、『強制送還・拡張サモンリバース・エクステンション』!」

 パアアアアアアア……

 目を開けていられないほどの、眩い光が辺り一面を照らす……

 目を開けると、そこにはもう誰もいなかった……

 

 「そ、そんなバカな……オレの魔獣軍団はいったいどこへいったんだ!?」

 「新しく目覚めたアミサーのチカラで、全部強制送還したよ、残念だったな」

 「なんだと!?クソッ……」

 

 ザッザッザ……

 ドラゴニックキングさんと四天王さんは、ギンジの方へ近づいていく。

 「なら『アクティブ召喚』で……これでもくらえ!

 赤き宝石の力宿し精霊よ 我が前に立ち 我が力となれ

 宝石獣召喚ハイアナグラム、『カーバンクル』!」

 額に宝石がついた魔獣を召喚した。

 「突撃だ、カーバンクル!」

 

 「『ドラゴニックファング』!」

 ザシュッ!

 「な、なにぃ!?」

 カーバンクルは真っ二つになって消えた。

 

 「な、ならば……」

 ギンジの前に魔法陣が展開……『水』『風』『闇』『闇』

 「レイ・ガルン・ソル・ヴァルエルス・ニー・バッシュ

 黒き氷獣よ その爪で敵を引き裂き その牙で敵を喰い千切り その咆哮で敵を屠れ

 黒氷獣召喚属性クアトログラム、『ブラックフェンリル』!」

 

 「ガオオオオオーン!」

 「『ブラックフェンリル』……?青い瞳に白い毛並みのフェンリルとは対照的に、赤い瞳に黒い毛並みの狼……?」

 さすがのマスターでも、知らない魔獣みたい……

 

 「へへへ、サモンロードのフェンリルの亜種で、フェンリルよりもレア度が高い、オレのとっておきだ!

 スピードもパワーも、フェンリル以上、こいつの牙で引き裂かれてしまうがいい!」

 「ほう、面白い、かかってこい!」

 「ガオオオオオオオッ!」

 

 ガシィッ!

 襲い掛かってきたブラックフェンリルの爪を避け、ドラゴニックキングさんはブラックフェンリルの喉元を掴んだ!

 「おらぁっ!」

 五メートルはあるブラックフェンリルの巨体を、軽々と地面に打ちつける!

 「ギャインッ!」

 たまらずブラックフェンリルは悲鳴を上げる!

 「そ、そんなバカな!お前はバケモノかっ!」

 そこだけは、私も同意見……

 

 「ブラックフェンリル、続けて攻撃だ!」

 ブルブルガタガタ……

 ブラックフェンリルは、耳も尻尾もダダ下がり、ビビッて後ずさりしている……

 「お、おい、お前……」

 

 「『ドラゴニックチャージ』!」

 ドゴオォッ!

 「ぐぼっ!」

 ドラゴニックキングさんのショルダーチャージで、ギンジは吹っ飛んだ!

 

 「く、くそっ……なんだ?奴らの動きが速すぎて、全くついていけない……」

 「どうした、そんなものか?アクビが出ちまうぞ」

 

 ドローンのスピーカーから、マスターの声が聞こえる。

 「……あいつら、いつの間にか『グラビティフィールド』を発動しているな。

 敵だったときは腹立ったけど、味方だとこんなに気分がいいもんなんだな……」

 

 ガックリうな垂れているギンジのそばへ行き、目の前でしゃがみ込むドラゴニックキングさん。

 「そろそろ限界のようだな、今とどめを刺してやるよ」

 ドラゴニックキングさんが、ガントレットを構える……

 

 「ま、待て、ちょっと待ってくれよ」

 ギンジがドラゴニックキングさんを止める。

 「ドラゴニックキング、アンタ顔を見ればわかるぜ……アンタも『こっち側』の人間だ、そうだろ?」

 「……それはどういう意味だ?」

 

 「オレ達と同じ『ワル』だってことだよ……

 なぁ、オレと組もうぜ、オレと組めば、もっとおいしい思いができるぜ」

 「おいしい思い……?」

 「ああ、オレは現実世界では『オレオレ詐欺』の元締めをやっているんだ……

 年金をタンマリため込んでいるジジィやババァを騙して、金をふんだくるのさ」

 「ほう……」

 

 「マズいです、あのギンジって人、死んじゃうかもです」

 アミサーさんの会話に、ドローンのスピーカーから、マスターが答える。

 「えっ、どういうこと?」

 「実は、キングの現実世界での職業は、『介護福祉士』なんです」

 「『介護福祉士』?あの顔で?」

 「はい、あの顔で」

 なんか二人で、ひどいことを言っているような……

 

 「ここ最近で一番驚いたよ……『介護福祉士』と言ったら、老人ホームなんかで介護やサポートの仕事をする職種だよな?」

 「そうです、キングは子供のころから、おじいちゃんおばあちゃん子だったようで、老人のお世話をするのが大好きなようです。

 『介護福祉士』の仕事も、天職だと言っていました」

 「あいつ、すぐ『殺す』とか『死ね』とか言っていたけど、そうか、職場で老人たちの前でそんなこと言えないから、ここで発散していたんだな」

 

 『介護福祉士』のドラゴニックキングさんに、オレオレ詐欺師のギンジが『仲間にならないか』って誘ってる、これって……

 

 「オレたちは、老人どもに電話をかけて騙すだけで、数百万も稼ぐことができるんだ……こんなにおいしい商売はないぜ?」

 「……」

 「老人どもは、働きもせず年金を貰って、ずっと貯め込んでいるやつばかりだ。

 オレたちが有意義に使って、世界の経済を回してやっているんだよ!」

 

 「ほう、面白いことを言うな」

 「だろ?アンタも一緒に……」

 「『年金』は、まだ日本が経済成長中だったころに、ご老人たちが休みも惜しんで働いてくれたことへの感謝の『お礼』だ。しかも、そのほとんどは自分の為ではなく、将来の子供や孫たちのために貯蓄している」

 

 「えっ……アンタ、それって……」

 「その金を、騙して奪うなど言語道断……お前は死刑確定だ」

 「ちょ……まっ……」

 

 「レイザ」

 「はいよ、おいで『ダークマタードラゴン』!」

 「お、おい、何をするつもりだ……」

 「アンタ、相手が悪かったね、同情するよ……

 融合、アドバンスドアーツ、『ディザスタードラゴン』!」

 バオオオオオオオオンッ!

 

 「アンタにつける状態異常は、『緊縛』『猛毒』、そして『痛覚倍増』だよ!」

 ドオオオオオオーーーッ!

 「ぐわあああああ!」

 

 ドラゴニックキングさんが、指を鳴らしながらギンジに近づいていく……

 「ま、待て、待ってくれ、オレが悪かった、だから……」

 

 ドラゴニックキングさんの前に魔法陣が展開……『炎』『水』『風』『地』『闇』『闇』

 「地獄の底に眠る 闇の神よ 我に最凶 最悪の 闇の竜の力与えよ

 その憎悪 その慟哭 その怨嗟を 全て吐き出せ 全ては破壊のために

 シッダ・ヨールグ・アビート・モア・クワッド・ミラレス・フリーラン・フリューゲルズ

 邪竜属性ヘキサグラム、『ファフニール』!」

 バオオオオオオオオッ

 真っ黒で巨大なドラゴンが、ギンジに襲い掛かる!

 

 ズガガガガガガガガガガガーーーー!

 「いぎゃあああああああああーーっ!!」

 

 ギンジの叫び声が、トリド砂漠中に響き渡った……

 

 「温故知新、お年寄りは大切に」

 

 

 ☆今回の成果

  ガンドルフ 『超貫通戦槍コークスクリューダイヴァー』習得

  天空の民アミサー 『強制送還・拡張サモンリバース・エクステンション』習得

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