第50話ドラゴニックキング

 アナタはアイドルに『気合いだ』と言ったことがありますか?……俺はある。

 

 「マスターを守るようにできるだけ固まって動いて、全員で一人を集中して攻撃よ」

  「了解」

 

 「異世界あいどる24、マキア選手の指示で、固まりながらドラゴニックキング選手の方へ攻め込みます!」

 「フフフ……お前たちが焦っているのが手に取るようにわかるぞ」

 

 ドラゴニックキングの前に魔法陣が展開……『炎』『風』『闇』『闇』

 「アコン・マーザ・エルクル・ウロボロスド・シーザ・ルーベン

 暗闇に蠢く 大いなる巨竜 その咢で全てを食らい尽くせ

 暗黒竜属性クアトログラム、『ウロボロス』!」

 バアアアアァァァ!

 「あーっと、ドラゴニックキング選手の前に、真っ黒なドラゴンが現れたと思ったら、口から黒い霧のようなブレスを吐きだしました!これはいったい!?」

 

 「触れれば状態異常になる『黒い霧』だ、ホラホラ逃げないと当たっちまうぞ!」

 「マズい!」

 俺たちはまんまと散開してしまう!

 「あーっと異世界あいどる24、ドラゴニックキング選手の魔法攻撃で散開してしまいましたーー、これはドラゴニックキング選手の思惑通りかーー?」

 「マスターーー!」

 「マキア、アマネーー」

 

 

 マキアVSドドム

 「マキア選手の前には、鬼の民ドドム選手が立ちふさがります!」

 「くっ……一刻も早くマスターのそばに行きたいのに」

 

 「うぬは剣士だな……その黒い刀身の剣、拙者でも見たことがない」

 「この『マキアカリバー』は、マスターのいる世界の『モリブデン鋼』製。まともに受ければ、アナタの刀剣もタダでは済みませんよ」

 

 「フッ……」

 シャキィン

 「!……アナタも、二刀流でしたか」

 「ドドム選手、剣を抜きました、ドドム選手も二刀流の剣士のようです…… そして、その剣……何といいましょうか……妖しく、鈍く光る刀身、まるで立ち上がる妖気が見えるようです」

 

 「今まで、名だたる剣士を倒して奪ってきた刀剣の数は九百九十九本、うぬで千本目だ」

 「なんかそんなことをしていた人が、マスターのいた世界の昔話に出てきたような気がします」

 

 「一回戦目で戦ったメギード王は中々強かったが、剣の作りがイマイチだった……

剣は見ればわかる、うぬの剣はかなりの職人が作ったものだな」

 俺の親父って、そんなに凄い職人だったのか……?

 確かに『刀剣マニア』ではあったけど……

 

 「さあ、うぬの『剣』の声、存分に聞かせてもらおうか」

 「そうはいきません、さっさとあなたを倒して、私はマスターの元へ戻ります」

 

 「マキア選手、気力を高めています、この構えは……」

 「『ハイブリット高周波ソード』×二!」

 「出たーー、イチヒコチームの女戦士選手を一撃で倒した、マキア選手の『ハイブリット高周波ソード』です!」

 

 ガガキイィーンッ!

 「あーっとしかし、ドドム選手、マキア選手の必殺技を受け止めたーー!」

 「なッ!?しかも、モリブデン鋼で作られたこの『マキアカリバー』を受けて、刃こぼれ一つしないなんて……」

 

 「フフフ、拙者の扱うこの刀は『キバ』と呼ばれる、鬼の民に代々伝わる製法で作られた特殊な刀……

 聖獣や神獣、魔獣の牙や爪などを加工・研磨して作られた唯一無二の刀だ。

 今回持ってきたのは、『六神獣のキバ』のうちの『双竜牙ソウリュウガ』と『鳳凰牙ホウオウガ』の二振り、そこら辺のナマクラと一緒にされては困る」

 

 ガガガガガッ!

 「おーっとドドム選手、『キバ』と呼ばれる特殊な刀で、マキア選手と互角に渡り合っているーー」

 「くっ、速い……この私が、『エアリアルエンチャント』がかかっていない相手に、押されるなんて」

 「はあああ」

 「キャーーー」

 「あーっとマキア選手、ドドム選手に吹き飛ばされましたーー、何という怪力と剣速!」

 

 「剣士としての腕は一流のようだな、ではこれはどうだ?

 鬼哭流刀殺法きこくりゅうとうさっぽう 鬼零式おにれいしき、『鬼眼キガン』!」

 バチィッ!

 「ぐっ……なっ!?か、体が……動かない?」

 「あーっとマキア選手、動けない模様、いったい何が!?」

 

 「あれはもしかして……漫画やアニメなどでよく見る『相手を金縛りにする技』?」

 「さあどうする?拙者的にはこれで終わると、非常につまらないのだが……」

 

 「マスター、この技はどうやって解いたらいいのですか?」

 どうやら見た感じ、自分の『気力』を相手にぶつけて、その『気力』で相手を抑え込む技みたいだ。

 だったら……

 「『気合い』だ、この手の技は大体『気合い』で解ける!」

 「そんな抽象的な……でもやるしかない!はあああーーーっ!」

 

 パアンッ!

 「ハア、ハア、ハア……」

 「ほう……助言があったとはいえ、『気合い』でこの技を破るとは……『気力』の扱いにも長けていると見えるな」

 「マキア選手、どうやら金縛りにあっていたようですが、自力で脱出できたようです」

 「もう今の技は、私には効きませんよ!」

 「そのようだな……では、

 鬼哭流刀殺法きこくりゅうとうさっぽう 鬼一式おにいちしき、『鬼火オニビ』」

 ボオオッ!

 

 「ドドム選手、自分の刀に『炎』を付与しました!刀身が激しく燃えています!」

 「この『鬼火』は、普通のエンチャントとは訳が違う……その身で受けてみるがいい!」

 ガキィーーン!

 ボオオッ!

 「アチチチッ」

 「あーっとマキア選手、ドドム選手の攻撃を受けると、炎がマキア選手にも燃え移りましたーー!」

 

 「フフフ、この『鬼火』は、受けた相手にも炎が燃え広がる『鬼の炎』……お前は何度受けることができるかな?」

 「まるでスミレのアドバンスドアーツ、『炎の剣』みたい……

 こんなの何度も受けられない……風のチカラを使って、炎の延焼を遅らせるぐらいしか……」

 

 「まだ終わりではない、行くぞ!

 鬼哭流刀殺法きこくりゅうとうさっぽう 鬼百式おにひゃくしき、『鬼門キモン』!」

 ズズズン……

 「こ、これは……?ドドム選手の後ろに巨大な『鬼の門』が出てきましたーー?」

 

 「この技は、北東の方角にある『鬼の門』を開き、怨霊を現世に呼び寄せる技……

 怨霊は人間を呪い、弱らせることができるが、鬼に対しては能力を強化する効果がある」

 「なんですって!?」

 ギイィィ……

 「あーっとドドム選手の後ろに出現した門が開き、中から大量の『怨霊』が出てきましたーーー危険です!」

 

 「怨霊よ、拙者にチカラを貸せぃ!」

 オオオオオーーーン……

 カアアーーーッ!

 「あーっとドドム選手、門から出てきた怨霊を吸収、体が一回り大きくなり、体中に異様な紋様が浮かんでいます!」

 「ふううぅぅ……行くぞ!」

 ガガガガガッ!

 「ぐっ、さらに威力とスピードが上がって、すでに亜人の域を超えている……もう手加減している余裕はありません、本気で行きます!」

 

 ガキイィンッ!

 「マキア選手吹き飛ばされましたーー、いや、自分から飛んで離れた?……ようです!」

 「『対打撃結界』展開!……アドバンスドアーツ、『雷足』!」

 バリバリバリバリバリッ

 「マキア選手、稲妻のように空中を駆け巡り、ドドム選手の頭上へ……」

 

 「いいぞ、来い!」

 「はああああああ……」

 「ごおおおおおお……」

 

 「おーぎ、『マキアクロスインパクト』!」

 「鬼哭流刀殺法奥義、『鬼哭妖炎双牙きこくようえんそうが』!」

 ズガガガガガガァーーー!

 「あーっとぉ!?マキア選手の凄まじい攻撃を、ドドム選手受け止めましたーーー!」

 「そ、そんな!?」

 

 「おおおおおおお!」

 バキイィンッ!

 「くっ!」

 ザザザザザァァ

 「凄まじい威力だった、だが拙者を倒すまではいかなかったな」

 「あの『ベヒーモス』と融合したレイブンでさえ、一撃で葬った技なのに……」

 

 「どうやら今のがとっておきの技だったらしいな……ならばそろそろその剣を貰い受けるとしよう」

 「くっ、体が重い、相手のスピードにもついていけない……私、こんなに弱かったなんて……」

 

 

 アマネVSレイザ

 「オレの嫌いな匂いがする……やっぱりお前がいたか」

 「また『嫌いな匂い』って言われた…… 今日だってちゃんとお風呂入ってきましたよ!」

 

「あーっと美少女同士の言い合い、このまま平和的に終わってしまうのでしょうか?」

 「いやいや、そんなわけ……」

 

 「お前からは、オレの嫌いな『光の匂い』がする……お前は『光の民』ではないのか?」

 「『光の民』……?違います、私は『森の民・エルフ』です」

 

 「そうか……オレ達『闇の民』と『光の民』は表裏一体、お互い相容れない存在だ。水と油、炎と氷、光と闇……オレ達『闇の民』の対極にいる存在、それが『光の民』だ」

 「対極ってことは、正反対ってことですね?」

 

 「オレ達『闇の民』も、そして『光の民』も、その強力なチカラと能力により、妬まれ、人間たちに迫害されてきた……」

 「迫害の歴史……MCの方も、マスターも、その話をしていました、よく今まで無事でしたね?」

 

 「オレ達『闇の民』は代々、迫害から逃れるため、『夜の民』のふりをして不夜城に紛れ込んでいた。幸い、オレは夜の民のヨヨに気に入られていたしな」

 「それで男装してヨヨの取り巻きに……あまりのイケメンぶりに、女性とは全く気が付かなかった」

 俺は自分が、人を見る目がないと悟ってしまった……(泣)

 

 「だが『光の民』は、他の民のふりをして紛れることができなかったため滅びた……滅びたはずなのに、なぜお前から『光の匂い』がする?」

 

 「いや、それは私に言われましても……私、よく『光魔法』を使うからでしょうか?」

 「ひょっとしたらお前は『光の民』とは関係ないのかもしれない……でも、それでも、やっぱり気に入らない……オレの八つ当たりに付き合ってもらうぞ」

 「そんな……」

 

 「闇の民レイザ選手、どうやら八つ当たりでアマネ選手に固執しているようです、いい迷惑です」

 「ああ?」

 ギロリッ!

 「し、失礼しました、何でもありません……」

 

 レイザが、物凄い形相でアマネに迫ってくる。

 「アドバンスドアーツ、『闇の手』!」

 「あーっと、レイザ選手が腕を伸ばすと、その腕から黒い腕が伸びて、アマネ選手の首を締めあげますーー!」

 「ぐっ……ぐううぅぅ……」

 「まだまだーー、アドバンスドアーツ、『闇の千手』!」

 ザザザザザァァ

 「レイザ選手の『闇の千手』が発動!アマネ選手を千本の黒い手が掴んで動きを封じています!」

 「キャアーーー」

 「アマネーーー!」

 

 「アーーハハハ、いい子ちゃんはみんな悶え苦しむがいいさ、アハハハ」

 ゴゴゴゴ……

 「こ、これは?地鳴り?地鳴りが起こっています!」

 「来たね、出てこい!『ダークマタードラゴン』!」

 「バオオオオオオッ!」

 「おーっと、地面が割れて、真っ黒な三体の竜が出てきましたーーー!」

 あれは『ダークマタードラゴン』?……確か魔角族のシャルドが使役していた、闇の精霊だ。ということは、あいつも『闇のエレメンタルトーカー』……?

 

 「あいつを食いちぎってしまえ!」

 「バアアアアアッ!」

 「闇の精霊ダークマタードラゴンが襲い掛かる!危ないアマネ選手ーーー!」

 

 「くっ……『ウィルオーウィスプ』、来て!」

 シュルン、パアアーーー!

 「あれは?光の精霊『ウィルオーウィスプ』!なんでアマネに……?」

 「『ホーリーシールド』!」

 「ギャオオオオンッ!」

 「アマネ選手、『ウィルオーウィスプ』を召喚!レイザ選手の『ダークマタードラゴン』を跳ね除けましたーー!」

 

 「間に合ってよかった」

 客席に、入院しているはずのサモンロードがいる!?

 「お前、入院しているはずなのに……抜け出してきたのか?」

 「ゴメン、心配で抜け出してきちゃった。

 実は昨日のうちに、アマネさんに僕の『ウィルオーウィスプ』を召喚してつけておいたんだ。彼女ならきっとうまく使ってくれると思ってね」

 「そうだったのか、ありがとうサモンロード」

 

 「よくもオレの可愛い『ダークマタードラゴン』を……アミサー、アンタの出番だよ」

 「はい」

 「おっと?レイザ選手、天空の民のアミサー選手を呼んできました、いったい何を……?」

 「空間の主たる我が名において命ずる、汝の契約を解き、物質界より送還す……アドバンスドアーツ、『強制送還サモンリバース』!」

 キュウイイィィン……

 

 「なっ……!?」

 「あーっと、天空の民アミサー選手の空間を操る術により、アマネ選手のウィルオーウィスプが『強制送還』されてしまいましたーー」

 「そんなっ……」

 「サモンロードの召喚獣たちも、あの技で『強制送還』させられたのか!」

 「あんな技を使われたら、召喚士の僕は為す術もないよ……」

 

 「せっかくサモンロードさんが召喚してくれたウィルオーウィスプが……」

 「さあ、『ダークマタードラゴン』を虐めてくれたお返しだよ」

 「私は虐めてなんか……」

 

 「『闇の千手』よ、集まり混ざれ!」

 ズズズズズ……

 「これは!?レイザ選手の『闇の千手』が纏まっていき、二本の巨大で黒い『闇の腕』に……?」

 「アドバンスドアーツ、『闇の王の抱擁やみのおうのほうよう』!」

 「キャアーーー」

 「レイザ選手が作った巨大な『闇の腕』が、アマネ選手をまるで抱きしめるかのように締め上げています!」

 「アマネーーー!」

 

 アマネの前に魔法陣が展開……『光』『光』『光』『光』

 「レンズ・リング・ロンド・アークソルタ・ネイジー

 光よ 光子よ 閃光の力解き放ち 世界を光明で照らし給え

 光属性クアトログラム、『フォトンブラスター』!」

 パパパパーーー!

 

 「あーっと、アマネ選手『フォトンブラスター』で『闇の腕』を攻撃、間一髪潰されるのを免れましたーー」

 「チッ……」

 闇の民レイザの攻撃が激しすぎて、アマネは防戦一方だ、このままじゃ……

 

 

 「リュオン、アミサー、お前たちの出番はねえ……残りの三人はオレ様が相手をしてやる!」

 ドラゴニックキングの前に魔法陣が展開……『炎』『地』『地』

 「バガイン・ザキード・アル・メル・トトス

 炎精よ 炎の海より来たれ 我と共に燃え 我と共に飛べ 我と共に咆哮せよ

 火竜属性ハイアナグラム、『サラマンダー』!」

 ギャオオォォン!

 

 体が真っ赤な、蜥蜴の様なドラゴンを召喚した。

 あの属性式、俺の『ナパームサークル』と同じだ、もしかして……

 

 「触れれば装備を燃やし尽くす広範囲魔法だ、死にたくなかったら逃げ回ることだな」

 「やっぱり!」

 「ギャオオオーーー!」

 ナパームサークルと違って、ちゃんと意思を持ってこちらを追いかけてくる!

 こんなの本当に逃げ回るしかない!?

 

 「一人レゾナンスアーツ、『アマノイワト・龍』!」

 ザザザザザ……

 「カスミ選手、『アマノイワト・龍』でサラマンダーを囲み、被害も抑え込んでいます!」

 「これでこれ以上は動けません!」

 カスミ、危ないっ!」

 

 「『ドラゴニックファング』!」

 バキィーンッ!

 「ギガンティックマスター選手、カスミ選手の盾になり、ドラゴニックキング選手の『ドラゴニックファング』を受け止めました!」

 「ぐぅ……なんて重い斬撃、マキアの『ハイブリット高周波ソード』以上だ」

 「ハッハー、さっきの威勢の良さはどうした?サモンロードの仇を討つんじゃなかったのか?」

 

 「自分の『気力』を刃と化して飛ばし、相手を斬り裂く技か……

 重すぎて、あともう何度か受けたら結界が割れちまう」

 

 「私に任せるとよ、めん太!」

 「メエェェーー!」

 「マコト選手、羊のめん太をドラゴニックキングに突進させました!」

 

 「フンッ!」

 ガシィッ!

 「あーっとしかし、ドラゴニックキング選手、めん太の角を持って、そのまま突進を止めましたーー、何という怪力!」

 「めん太!」

 「返してやるぜ、ほらよ!」

 「メエェェ!?」

 「ドラゴニックキング選手、そのままめん太をマコト選手に放り投げたーー!」

 

 ドカアッ!

 「マコト!」

 「めん太?めん太、しっかり……めん太が重くて動けないとよ……」

 「マコト選手、気絶しためん太の下敷きになり動くことができません!ピンチ!」

 

 「まずは一人目!『ドラゴニックブレス』!」

 「ドラゴニックキング選手、動けないマコト選手にブレス攻撃ーーー」

 「そうはいきません、『アマノイワト・雲』!」

 パアアアア……

 「カスミ選手、ドラゴニックキング選手のブレスを『アマノイワト・雲』で防御、マコト選手助かりましたーー」

 「キャーーー」

 「しかしダメージが入る!何という威力、『ドラゴニックブレス』!」

 「くそっ、やつの動きが速すぎてついていけない……」

 

 「くっ、ならば……『絶対防御鉄壁』!」

 「『ドラゴニックファング』!」

 ザシュッ!

 「カスミ選手、『絶対防御鉄壁』を張りましたが、ドラゴニックキング選手に切り刻まれてしまいました!」

 

 「だったらこれならどう?『絶対零度氷壁』!」

 バキバキバキ!

 「カスミ選手、今度は巨大な氷壁にドラゴニックキング選手を閉じ込めましたーーー」

 「『ドラゴニックチャージ』!」

 バガーーンッ!

 「キャーーー」

 「ドラゴニックキング選手、強烈なショルダーチャージで、氷壁から脱出!」

 

 「こいつ……これならどうだ!」

 俺の前に魔法陣が展開……『炎』『風』『光』

 「ミリタリス・ビー・オージャ・ダナドゥ

 我 光弾を操り 敵を屠るものなり

 光弾属性ハイアナグラム、『ヴァーミリオンレイ』!」

 ドキュキュキュ!

 

 「フッ……」

 シュシュンッ!

 「ギガンティックマスター選手の放った『光弾』を、ドラゴニックキング選手、軽やかに避けています!凄いスピードだ!」

 

 「光弾よ、止まれ!」

 ピタピタッ!

 「光弾よ、回り込め!」

 ドキュキュキュ!

 ズズンッ!

 「おーっとギガンティックマスター選手、イチヒコチームとの戦いの時のように、『光弾』を止めてから回り込ませましたーー!完全に光弾を操っています!」

 

 「フフフ……遅い、遅くてアクビが出るぜ」

 「なっ……くそっいくら何でも速すぎるだろ!?」

 「ドラゴニックキング選手、全くの無傷です!あの光弾を全て避けたようです、恐るべき反応速度!」

 

 「さあて、そろそろフィナーレと行こうか……

 虫のように這いつくばっているお前を見るのは楽しかったぜ、ギガンティックマスター」

 「ちくしょう、この野郎……」

 

 ドラゴニックキングの前に魔法陣が展開……『炎』『水』『風』『地』『闇』『闇』

 「地獄の底に眠る 闇の神よ 我に最凶 最悪の 闇の竜の力与えよ

 その憎悪 その慟哭 その怨嗟を 全て吐き出せ 全ては破壊のために

 シッダ・ヨールグ・アビート・モア・クワッド・ミラレス・フリーラン・フリューゲルズ

 邪竜属性ヘキサグラム、『ファフニール』!」

 「バオオオオオオオオッ」

 「ドラゴニックキング選手の前に、真っ黒で巨大なドラゴンが現れましたーーー、これは……」

 

 「一人レゾナンスアーツ、『アマノイワト・球』!」

 「カスミ!」

 「マスター、マコト、この中へ!」

 ダメだ……『アマノイワト・球』は、大きくなれば大きくなるほど魔法防御力が薄れる。そもそも三人は定員オーバーだし、ヘキサグラムまでは想定していない……

 

 「ドラゴニックキング、俺はこっちだ!」

 「マスター!?」

 「あーっとギガンティックマスター選手、カスミ選手の『アマノイワト』には入らず、一人で受けるつもりのようです!」

 「ハーハッハッハ、自分の四天王をかばって、自分がやられてしまうとは世話がない、望み通り死ねーーー!」

 「ギガンティックマスター選手に、ドラゴニックキング選手の『ファフニール』が襲い掛かる!万事休すかーー!?」

 

 「『対打撃結界』展開!アドバンスドアーツ、『雷足』!」

 バリバリバリバリッ

 「あーっとマキア選手、一瞬の隙をついて『対打撃結界』を一直線に展開、

 そのまま『雷足』を使い、一瞬でギガンティックマスター選手の元へ!?」

 「マスターーーーー!」

 

 ズガガガガガガァーーー!

 「マキアーー!」

 「マキア選手とギガンティックマスター選手に『ファフニール』が直撃ーー!二人の安否は……?」

 

 ザアアア……

 「マキア、マキア、しっかりしろ!」

 「ギガンティックマスター選手、無事です!どうやらマキア選手の『サクリファイス』が発動した模様……マキア選手は戦闘不能です」

 「俺のせいで、すまないマキア……」

 

 

 マキアは担架に乗せられて、会場を降りて行った……

 「これだけの戦力差があって、しかもうちで一番の手練れだったマキアが戦闘不能となると、ほぼ勝ち目はない……

 コズミッククイーンじゃないけど、俺も、俺のためにお前たちが傷つくのを見るのは、辛い」

 カスミもマコトも、力なくうなだれている……

 「一矢も報えなくて悔しいけど、仕方ない、ギブアップしよう……」

 「マスター……」

 

 その時、客席の方から聞き覚えのある声が……

 「ギガンティックマスター、私との戦いのときは、そんな簡単にあきらめなかったと思うがな」

 

 この声は……?

 

 *****

 

 ◆四天王戦世界大会、三日前……ヴァロン城・玉座の間。

 

 数名の騎士が倒れ、床に血が流れている……

 大臣らしき者たちが数人、縛り付けられてひれ伏している。

 

 そこへ、大柄だが若い男が、三名のお供を連れて歩いてきた。

 コツコツコツ……ドスッ

 おもむろに玉座に座る大柄な男。

 金髪の頭に、首には金のネックレス、全ての指に指輪をはめ、はだけた胸にはタトゥーが見える。足を組み、ほおづえをつき、ニヤリと微笑む。

 

 「いい玉座だ、趣味もいい、気に入った」

 大柄の男たちの前に、真っ黒な鎧を来た騎士が跪く。

 大柄の男が口を開く。

 「首尾はどうだ?」

 「はっ、城内の方は九割方制圧完了いたしました。

 最後まで抵抗していた千迅騎士三名、『銀嶺のウォルフ』『空魔のソウケイ』『海鳴のホーン』も、先程捕らえたとのことです」

 「国王は殺すなよ、この異世界では重罪になるらしいからな……地下牢にでも放り込んでおけ」

 

 「『ヴァロン近衛兵団』の三名は、『四天王戦世界大会』に出場する予定だったようですが、いかがいたしますか?」

 「『病欠』とでも言っておけ」

 「はっ」

 

 大柄の男と一緒に入ってきた三名も、興奮気味に話し出す。

 「兄貴、いよいよ『世界』を取っちまうんでヤスね」

 「ん~、ボクの腕もなるよ~、『世界』か……いい響きだね~」

 「オレ達四人が揃えば、怖いものなんてないぜ、そうだろ?」

 

 大柄の男が玉座から立ち上がる。

 「現実世界では不可能だが、この異世界なら可能だ……さあ、『世界征服』としゃれこもうか!」

 

 

 ☆今回の成果

  アマネ サモンロードに光の精霊『ウィルオーウィスプ』をつけてもらう

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