第48話J・S・F

 アナタはアイドルに『想いを伝えた』ことがありますか?……俺は、まだない。

 

 俺たちとクイーン&ストリーム、中央から少し離れたところで仕切り直し。

 「よし、とりあえずクイーン&ストリームたちの攻撃は一旦退けた。

 でもあいつら全然落胆している様子がない、また何か仕掛けてくるだろう、警戒を怠るな」

 「はい」

 

 その時、コズミッククイーンが俺たちに向かって叫んできた。

 「ギガンティックマスター、私たちはこれから最大の攻撃をするわ、アナタたちも全力で備えなさい」

 「コズミッククイーン選手、ギガンティックマスター選手にまさかの攻撃予告……ギガンティックマスター選手もそれに応え、『衡軛の陣』を布陣しました」

 「わざわざ私たちに攻撃を予告するなんて……何を考えているのでしょうか?」

 マキアの疑問ももっともだ。

 

 「おそらく、それだけ今から使う技に自信があるんだろう、全員油断するなよ」

 「はい」

 

 「全員『長蛇の陣』!」

 「おーっとクイーン&ストリーム、機動力重視の陣形、『長蛇の陣』をとりました。ヘビのように四天王を縦一列に配置します、効果は機動力+2ですーー」

 

 「疾風迅雷 電光石火 風林火山 汝に風の力を 浮かせ 滑空させよ

 滑空属性ハイアナグラム、『エア・グラインドプラス』!」

 「コズミッククイーン選手、さらに四天王と自分に『滑空の魔法』をかけました、これは相当なスピードになります」

 

 「『長蛇の陣』に『エア・グラインド』……何をするつもりだ?」

 「みんな、行くわよ!」

 「おう!」

 ザザザザーーーーッ

 「クイーン&ストリーム、一列のまま物凄いスピードで滑空しています、これは速い!」

 

 「こ、この技、なんか見たことあるぞ!」

 「『ジェット・ストリーム・フラッシュ』!」

 「クイーン&ストリーム、そのまま『衡軛の陣』の異世界あいどる24に突っ込んでいきます!」

 

 一番手前に、一番防御力の高い『双子座ジェミニのゾディアックビースト』のリュウセイって奴を配置していやがる、これは簡単には止められない!

 「みんな、連続攻撃で止めるわよ!」

 いち早くマキアが反応した!

 「『ハイブリッド高周波ソード』×二!」

 ガキィィーーン!

 

 「マキア選手が攻撃!リュウセイ選手を止めました!」

 「そうはいかん!」

 「リュウセイ選手の上から、カケル選手が攻撃してきましたーー」

 「『スターライトナックル』!」

 

 「マズい!」

 「メエェェーー!」

 ドガアッ!

 「めん太!?」

 めん太が攻撃を受けて吹っ飛んだ!

 

 「まだまだーー!」

 「今度は横からヨシキ選手が出てきたーー」

 「『スターダストショット』!」

 ガガガガガ!

 アマネの前に魔法陣が展開する……『光』『地』『水』

 「あまねく精霊たちに申し上げる 光 地 水に力の恩恵を 木々に活力を 森に実りを与え給え 森属性ハイアナグラム 『フォレストーション』!」

 バキバキバキバキ……

 「アマネ選手、ギリギリ森魔法でスターダストショットを捕らえましたーー」

 

 「今度はこっちだよ」

 「またもや横からリン選手だーー」

 「『ローズニードル』!」

 「くっ、『アマノイワト』!」

 パアアアーーー

 「カスミ選手、間一髪リン選手の『ローズニードル』を防いだーー」

 

 コズミッククイーンの前に魔法陣が展開……『地』『地』『光』『闇』

 「ジュケイ・ナース・アルカン・ラスピクト・シーズ・ロークェート

 流星よ 我が前に収束し 彗星となれ 重力に引かれ 星を穿て

 彗星属性クアトログラム、『デュアル・コメットレイヴ』!」

 「ヤバいっ!」

 「あーっとコズミッククイーン選手、『コメットレイヴ』をダブルキャストで放ったーー! 収束した彗星が二つ、ギガンティックマスター選手に向かって飛んでいくーーー」

 

 「『対魔力結界』展開!」

 「ギガンティックマスター選手、巨大な『対魔力結界』を二重に張っていますーー」

 バリンバリーーーンッ!

 「うわあぁぁーー!」

 「キャーーー」

 

 「ギガンティックマスター選手、何とかギリギリ耐えました!凄まじい攻撃でしたクイーン&ストリーム!」

 「く、くそ、完全には防ぎきれなかった……なんて技だ」

 

 コズミッククイーンと四天王たちが、勝ち誇った顔でこちらを見ている……

 「ギガンティックマスター、今のは私の最大の魔法ではないわ、今の私の最大の魔法は、ダブルキャストによるクアトログラムの『コメットレイヴ』と、ヘキサグラムの『メテオーション』……それをあえて使わなかったのは、さっきの『借り』を返すためよ」

 

 今の攻撃でヘキサグラムを使われていたら、間違いなく全滅していた。

 あれだけの高速移動をしながらの連続攻撃、『長蛇の陣』のせいで後ろの四天王たちは見えないし、しかも一番後ろのクイーンは、みんなが攻撃をしている間に魔力を集中できる……

 恐るべき攻撃だ、『ジェット・ストリーム・フラッシュ』……

 

 「マスター、今の技見たことあるんですよね?攻略法は?」

 「ん~、あの技の攻略法は……『気合い』と『根性』……かな」

 「『気合い』と『根性』って……」

 「あの技の迫力に押されて、体制を引いちゃうと相手の思うつぼだ、そのまま押し切られて全滅するのがオチ。

 『気合い』と『根性』で相手に対して前に出る、それしかない」

 

 「まさに『気合い』と『根性』……そして『勇気』ですね」

 「そう、『勇気』もいるな……

 あいつらの『絆と連携』は確かに凄いものだった。でも、『絆と連携』なら俺たちだって負けてない、そうだろ?」

 「もちろんです」

 「よし、俺たちは逃げない、あの技に真っ向から勝負だ!覚悟を決めるぞ!」

 「はい!」

 

 今の俺のレベルでも、ダブルキャストで使える最大の魔法は、クアトログラムとヘキサグラムの二連続。

『怒り』状態になればヘキサグラムの二連続も可能だけど、あれは危険すぎる……

 俺もクアトログラムとヘキサグラムの二連続で行く!

 

 「どうやら覚悟を決めたようね、いい顔になったわ……私たちも行くわよ、これで決めるわ!」

 「おう!」

 「クイーン&ストリーム、『長蛇の陣』と『エア・グラインド』でまた異世界あいどる24に向かって走り出しました!」

 

 「俺たちも行くぞ!」

 「何とぉ?異世界あいどる24も、『長蛇の陣』に『エア・グラインド』をかけています、これは……」

 「『ジェット・ストリーム・フラッシュ』には『ジェット・ストリーム・フラッシュ』だ!俺たちの覚悟を見せてやる!」

 

 異世界あいどる24メンバーも気合いを入れる!

 「私は、マスターの『剣』になる!」

 「私は、マスターの『盾』になるわ!」

 「私は、マスターの『翼』になるとよ!」

 「私は、マスターの『光』になります!」

 

 「うおおおおおーー」

 「はあああああーー」

 ザザザザザァァーーー!

 「両者会場の中央で激突ーーーーー!」

 

 「『ジェミニシールド』、『シールドバッシュ』!」

 「おーぎ、『マキアクロスインパクト』!」

 ズドガアアァァーー!

 「ぐわああ」

 「リュウセイ選手、マキア選手の『おーぎ』をくらい、吹っ飛んでしまいましたーー」

 

 「まだまだーー!『スターライトナックル・一点集中ストライク』!」

 「めん太、アサルトモード!」

 「メエェーー!」

 「『カプリコーンブラスト』!」

 ドガアーーッ!

 「うおおおーー」

 「カケル選手、マコト選手、双方はじけ飛びました!」

 

 「『スターダストショット・惑星御手プラネットアーム』!」

 「ヨシキ選手、『スターダストショット』を操作して、巨大な『手』を作りましたーー」

 アマネの前に魔法陣が展開……『光』『光』『光』『光』

 「レンズ・リング・ロンド・アークソルタ・ネイジー

 光よ 光子よ 閃光の力解き放ち 世界を光明で照らし給え

 光属性クアトログラム、『フォトンブラスター』!」

 パパパパーーー!

 「幾重にも重なった光線が、『惑星御手プラネットアーム』を削ぎ落としていくーー!」

 

 「『ローズニードル・モーニングスター』!」

 「リン選手、ローズニードルで巨大な岩を掴み、そのまま鉄球武器『モーニングスター』のように攻撃!」

 「『アマノイワト・極』!」

 ガキィーン!

 「リン選手の攻撃を、カスミ選手が防御!」

 

 「マスターーーー!」

 「クイーーーーン!」

 「残すはリーダーの二人のみ!巨大な魔力の奔流が、二人を中心に巻きあがっているのがわかります、これは凄い!」

 「おおおおおおお」

 「はああああああ」

 

 「ダブルキャスト発動!」

 コズミッククイーンの前に魔法陣が展開……『地』『地』『光』『闇』

 「ジュケイ・ナース・アルカン・ラスピクト・シーズ・ロークェート

 流星よ 我が前に収束し 彗星となれ 重力に引かれ 星を穿て

 彗星属性クアトログラム、『コメットレイヴ』!」

 

 コズミッククイーンの前に魔法陣が展開……『地』『地』『地』『地』『光』『闇』

 「バオウ・ガオウ・レディオン・シンカ・リーデス・アヴダクト

 悠久なる 宇宙の星々よ 星の海より来たれ 我にその力の一端を貸し与え給え 我が眼前に 隕石よ 落ちろ

 これで終わりよ!隕石属性 六芒星魔術ヘキサグラム、『メテオーション』!」

 キュイイィィーーン

 ズドドドドドォォ!!

 

 「コズミッククイーン選手、クアトログラムとヘキサグラムのダブルキャストだーーー!巨大な彗星と、さらに巨大な隕石が、空から降ってくる!ギガンティックマスター選手の運命は!?」

 

 「ダブルキャスト発動!」

 俺の前に魔法陣が展開……『水』『水』『風』『地』

 「シャウン・エーゼ・ベルカイン

 我に全てを包み込み跳ね返す 水鏡を与えよ……

 お前の術、借りるぜヴァイガン! 反射属性クアトログラム『グラムレフ』!」

 

 「ギガンティックマスター選手の前に巨大な『水鏡』が現れました、これはいったい……?」

 ガカアァッ!

 「あーっと、なんと!?コズミッククイーン選手の『コメットレイヴ』が、ギガンティックマスター選手の『水鏡』で跳ね返されましたーー!」

 「なにっ!?」

 

 俺の前に魔法陣が展開……『炎』『水』『風』『地』『光』『闇』

 「スー・シュー・ゴウ・レイ・ファシオン

 炎神 水神 風神 地神 光と闇の王をいただきて すべての者に安息と死を

 六極炎属性 六芒星魔術ヘキサグラム、『ヘキサゴンフレア』!」

 

 「ギガンティックマスター選手、さらにヘキサグラムの『ヘキサゴンフレア』を発動!コズミッククイーン選手、『コメットレイヴ』と『ヘキサゴンフレア』を、ヘキサグラムの『メテオーション』だけで受けることに、これは!?」

 「くっ……」

 「クイーーーーン!」

 ズガガガガガガガァーーーーー

 「キャーーーーー!」

 

 「凄まじい爆音と衝撃……おそらくコズミッククイーンは……お?おーっと、コズミッククイーン選手、無事、無事ですーーーー」

 

 「私、なんで……?

 ハッ!み、みんな……カケル!ヨシキ!リュウセイ!リン!みんなしっかりして!」

 「あーっと、コズミッククイーン選手の前に四天王が倒れています……どうやら『サクリファイス』が発動したようです」

 「みんな、みんな……良かった、気絶しているだけ……」

 ポロポロと涙をこぼすクイーン……よほど心配だったんだな。

 

 気絶しているリンを抱きしめるクイーン。

 その周りでホッと安堵の表情をしている四天王たち……

 こう見ると、あの五人まるで家族みたいだ。

 

 「マスター、女性は攻撃しない主義だったのでは?」

 「いや、今のは魔法だったし……まあ、魔法もダメだけど。

 でも今のは、魔法を放つ前にクイーンの四天王が動くのが見えたし、クイーンとあの四天王の感じからして、絶対信頼度は高いだろうなとわかっていたし、きっと『サクリファイス』は発動するだろうと予想はしていた」

 

 「そこまで予想していたとは……マスター、『ワル』ですね」

 「まあな、こう見えて、俺はもと『ヒール』ですから」(キラン)

 

 

 俺はコズミッククイーンたち五人のところへ歩いていく。

 クイーンの前に立つと、残りの四天王たちがゾディアックビーストを構えて、クイーンを守ろうとしている……もうほとんど体力も魔力も残っていないくせに。


 「まさか私の『コメットレイヴ』を跳ね返すとはね……」

 「以前戦った奴が使った魔法だったんだ、まさかこのタイミングで、俺が使うことになるとは思わなかったけどな」

 俺はファルセイン城での攻防戦を思い出していた……

 「どうするクイーン、どうやらリンって奴が戦闘不能になったみたいだけど、

 まだ決着はついていない……最後までやるかい?」

 「……いいえ、ギブアップするわ」

 

 「あーっと、クイーン&ストリーム、ギブアップですーーー」

 「勝負あり、勝者『異世界あいどる24』です!確認してくだサイ」

 「わああああーーー」

 パチパチパチパチパチ……

 

 「いいのかクイーン、まだ余力は残っていると思うけど……」

 「私は彼らを……自分の四天王たちを愛しています、彼らが私のために、これ以上傷つくのを見ることはできない……」

 「クイーン……」

 「みんなごめんなさい、この大会で優勝して、みんなを貴族にするって約束したのに……」

 「いいんだクイーン、アナタが無事なら……」

 

 スゲェなクイーン……サラッと『四天王を愛してる』って言えるなんて。

 俺なんか恥ずかしくて、一つも気持ちを伝えられていないのに……

 そう思いながら、マキアの方をチラッと見る俺。

 「?」

 マキアはキョトン顔。

 

 

 ◆少し離れた高台……

 

 ギガンティックマスターとコズミッククイーンの戦いの決着を待つ二人。

 ドラゴニックキングとサモンロードだ。

 

 「フッ、どうやらあの二人の決着がついたようだな……

 勝者はギガンティックマスターか、まさか数年前の古いクラス、『精霊王アレクタリス』で、『星詠人スターゲイザー』を倒すとはな」

 「そうだね……でも僕は当然だと思ったよ、僕は彼の強さを直に見たからね。

 君はどうするんだい?残ったギガンティックマスターを攻撃するんだろ?」

 

 「ああ、オレ様の邪魔をする奴は、みんな消えてもらう……フッフッフ」

 後ろからサモンロードを見ながら、不敵な笑みをこぼすドラゴニックキング。

 右腕のガントレットが、鈍く光る……

 

 ☆今回の成果

  異世界あいどる24 『ジェット・ストリーム・フラッシュ』を会得

  俺 反射属性クアトログラム 『グラムレフ』習得

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