第47話クイーン&ストリーム

 アナタはアイドルを『ズッコケ』させたことがありますか?……俺はある。

 

 「さあ盛り上がってまいりました!

 「決勝、準決勝は『異世界あいどる24』と『クイーン&ストリーム』、『サモンロードチーム』と『ドラゴンキングダム』の四つのチームとなりました」

 俺たち四チームは、全員会場の中央へ集められていた。

 

 「四つのチームともあの『四支神よんししん』を倒した『屠りしもの』の四人、その実力は今まで謎でしたが、今明らかになりました!とんでもない猛者たちです!」

 「うおおおおーーー」

 「わあああーーーー」

 

 「今回の準決勝・決勝戦は、『バトルロイヤル形式』となります……『タイマン』『共闘』『裏切り』何でもありの大乱戦、果たしてこの戦いを制して、世界一の四天王を持つチームはどこになるのか!?」

 「いいぞーーやっちまえーーー」

 「わあああーーーー」

 

 『バトルロイヤル方式』と聞き、互いに牽制し合う四チーム……

 ドラゴニックキングの足元に、首にネクタイをした大きめのペンギンが立っている、あれってもしかして……

 「ギャウギャウ、北の祠で止まっていた氷の四支神よんししん、『神居かむい』だな」(小声)

 「やっぱり……」(小声)

 「オレはあいつとは相性が悪い、このままスルーの方向で頼むギャウ」(小声)

 「俺もヴァロンへの後ろめたさと、さっきのキングとの睨み合いで、ちょいと避けたい気分だった」(小声)


 「って言うか、竜族の神であるオレを差し置いて、ドラゴンを名乗るってどういうことギャウか?」(小声)

 「あー、それは俺がゲームを始めた時に『竜騎兵ドラグーン』は無かったからじゃないかな?」(小声)

 「だったらギガっち、今すぐゲームをやり直せ!そして次は『竜騎兵ドラグーン』でプレイだギャウ!」(小声)

 「無茶言うなよ……」(小声)


 

 「さあ互いにけん制し合う四チーム、いったいどんな作戦で行くのでしょうか?」

 

 「よし、ちょっと『コズミッククイーン』にあいさつに行ってくるぜ」

 「えっ、マスター一人でですか?」

 「ああ」

 俺は一人、コズミッククイーンのところへ歩き出す。

 

 「『あいさつ』ってもしかして、戦闘前にガツンと一発かましてやる的な、そういうの?」

 「ま、まさか、マスターに限ってそんな……」

 「もし乱戦になったら、迷わず助けに入るわよ」

 

 俺はコズミッククイーンの前に。

 クイーンの四天王たちが警戒するが、クイーンがそれを止め、クイーンも俺の前に。

 「ゴクリ……」

 メンバーやクイーンの四天王たちの緊張が伝わる。

 

 俺が右手を出す……メンバー、クイーンの四天王が装備を構える……

 

 ガシッ

 

 俺とクイーンは固く握手を交わす。

 後ろの方でメンバーとクイーンの四天王がズッコケている。

 

 「あんたの四天王、一目見てわかったよ、俺と『同類』だってな」

 「私もわかったわ、いい趣味しているわね」

 

 「ど、どういうこと?」

 メンバーや、クイーンの四天王、サモンロード達も、頭の上にはてなマークが浮かんでいる。

 

 俺はコズミッククイーンの四天王を見て、一発で気付いた……

 あの四人は現実世界で『あいどる24』とアイドル業界を二分する大人気男性四人組アイドルグループ、『sTReaM』のメンバーのドッペルゲンガーだ。

 つまり、クイーンも俺と同じ『アイドルオタク』!

 

 「そ、そうだったのですかマスター、心配して損したような気分です……」

 みんなホッとしたような、拍子抜けしたような、そんな顔だ。

 

 

 クイーンの肩の上に、緑色して、デカい眼鏡をかけたリスが乗っている……

 どうやらあれが、西の祠にいた『四支神よんししん』の一柱みたいだ。

 

 俺の肩に乗っている神魔が尋ねる。

 「久しぶりだな『神無かんな』、お前はリスに転生したのか、お前らしいなギャウギャウ」

 「……アナタも子竜に転生とかそのまんまなのね、ひねりがない……ま関係ないけど」(小声)

 声小っさ!

 

 俺は気を取り直し、クイーンに話しかける。

 「『sTReaM』の四人を探すのも大変だっただろうが、四つの『ゾディアックビースト』を探すのは、もっと大変だっただろう、よく見つけたな」

 「彼らを四天王にするのなら、妥協は許されない……私は彼らを最強にするわ、優勝もさせてもらうから、そのつもりで」

 「そうはいかない……そうはいかないけど、あんたとの対戦は楽しみだ、正々堂々戦おう」

 そういって俺はメンバーの元へ戻った。

 

 「マスター、マスターのあいさつで私も思い出しました、確かにあの四人、現実世界のテレビでよく見ました」

 『sTReaM』……

 『あいどる24』と双璧を成す、日本のアイドル業界の頂点に立つ男性四人組グループ。

 歌番組やドラマ、バラエティの司会など、幅広い分野で活躍している『アイドルの鑑』。

 コンサートを開けば、そのチケットは数秒で完売、パフォーマンス中に女性ファンが気絶して倒れるほどの人気。

 

 おおー神よ、なぜ同じ人間でこんなに差をつけたのですか……

 

 

 少し不本意だが、『sTReaM』の四人を紹介。

 「名前カケル」「男性」「レベル115」「基本属性 水」

 「HP720」「MP150」「腕力320」「脚力310」「防御力170」「機動力300」「魔力190」「癒力170」「運70」「視力2.5」

 

 現実世界の『船水 駆』は、アイドル界随一の頭脳を持つ、IQ130の秀才。

 抜群のトーク力で、バラエティや歌番組の司会もこなす、まさに『まわしの達人』。

 

 「『水瓶座アクエリアス』、アサルトモード!」

 ガシャンッ

 カケルって奴の横にあった水瓶が、真ん中から二つに割れて、そのままガントレットに!

 「アクエリアスガントレット、装着」

 「『水瓶座アクエリアスのゾディアックビースト』は、ガントレットか……」

 

 

 「名前ヨシキ」「男性」「レベル116」「基本属性 地」

 「HP730」「MP170」「腕力250」「脚力300」「防御力180」「機動力330」「魔力210」「癒力180」「運50」「視力2.5」

 

 現実世界の『円 慶喜』は、運動全般が得意なスポーツ男子。

 ペットや動物が大好きで、自分で動物愛護団体を発足してしまっているほど。

 

 「『蟹座キャンサー』、アサルトモード!」

 カシャンカシャン!

 ヨシキって奴が持っていたカニが変形して、奇妙な形のロッドになった……

 「キャンサーロッド、装着」

 「魔法系ではなさそうだけどな……」

 

 

 「名前リュウセイ」「男性」「レベル113」「基本属性 風」

 「HP800」「MP210」「腕力190」「脚力200」「防御力320」「機動力230」「魔力180」「癒力150」「運60」「視力1.0」

 

 現実世界の『千代 竜成』は、『sTReaM』の役者・俳優担当。

 その演技力には定評があり、海外からもオファーが来るほど。

 彼が主演するドラマはどれも高視聴率、人呼んで『視聴率オバケ』。

 

 「『双子座ジェミニ、アサルトモード!」

 バシャンッ!

 双子の人形が変形して、二枚の扉に……あれが武器なのか?

 「へへ、ジェミニゲート、装着」

 

 「名前リン」「男性」「レベル113」「基本属性 炎」

 「HP740」「MP200」「腕力180」「脚力210」「防御力180」「機動力280」「魔力270」「癒力200」「運80」「視力0.5」

 

 現実世界の『春日部 倫』は、日本が誇る、国宝級超絶イケメン。

 その所作、性格、能力に至るまですべてがイケメン。

 バレンタインデーにトラック二十台分のチョコを貰ったという最高記録保持者でもある。

 

 「『乙女座バルゴ、アサルトモード!」

 ザザザザ……

 『乙女座バルゴのゾディアックビースト』は、一輪の薔薇……?

 「フフフ……バルゴローズ、装着」

 「あれで、どうやって戦うんだろう……?」

 

 

 クイーン達が何か話している……

 「アナタたちは、みんなそれぞれ『剣闘士』や『元盗賊』など、暗い過去を持っている…… でもこの大会で優勝して、私がみんなを必ず『貴族』にしてあげる!」

 「我が『命』をクイーンに捧ぐ!」

 「僕の『魂』をクイーンに捧ぐ!」

 「私の『心』をクイーンに捧ぐ!」

 「オレの『人生』をクイーンに捧ぐ!」

 「ありがとう、私は自分の『全て』をアナタたちに捧げます!行くわよ!」

 「おう!」

 

 「なるほど、クイーン達がこの大会の優勝を目指すのは、そういう理由があるのか……」

 

 

 ◇サモンロードside

 

 僕のところにドラゴニックキングが来て、耳元で話し始めた。

 「おいサモンロード、この『バトルロイヤル方式』は何でもありの乱戦だ。一緒に共闘してあの二人を倒そう」

 「僕はそういうのはあまり好きじゃないな、やりたければ勝手にどうぞ」

 

 「チッ、バカ真面目な奴だな……お前、優勝賞品の『オリハルコン』が欲しかったんじゃないのか?」

 「確かに『オリハルコン』は欲しいけど、多人数で寄ってたかって一人を攻撃して勝利しても、後ろめたさの方がまさるよ」

 

 「わかったわかった、じゃあオレ様の作戦を話す……放っておいてもあの二人は戦いだすだろう、その間オレ様は手出しせず決着がつくまで待つ」

 「……」

 「決着がついたら、残った方は疲弊しているから、そこを狙う。

 卑怯だとか言うんじゃねぇぞ、『バトルロイヤル方式』の四天王戦ならこの戦法は常識、みんなやっていることだ」

 「確かに……」

 

 「だからお前は、オレ様がその残ったチームを倒すまで、一切の邪魔をするな。それぐらいならいいだろう?」

 

 「……分かった、それなら協力しよう」

 「よし、契約成立だ」

 

 

 〇俺side

 

 「ドラゴンキングダムとサモンロードチームは、少し離れて戦いを見守る作戦のようです!」

 

 ふむ……この決勝戦は『バトルロイヤル方式』、俺とクイーンが戦って、消耗した方を倒すのも作戦なわけか……

 俺はクイーンとの戦闘中も、他の二チームを警戒しつつ、余力も残さないといけない。これは『駆け引き』と『頭脳戦』が求められる戦いになるな……

 

 「まあ、先のことを考えても仕方がない、まずは目の前の『クイーン&ストリーム』を倒すことに全力を尽くそう」

 「わかりました」

 「まずは陣形『衡軛こうやく』で相手を迎え撃つ」

 

 「異世界あいどる24。陣形『衡軛』を使ってきました、効果は『防御+一・機動力+一』。敵を迎撃するのが得意な陣形です」

 相手の攻撃を受けつつ、まずは様子見だ……

 

 「私たちの強さを思い知らせてあげましょう、陣形『鋒矢ほうし』!」

 「あーっと、『クイーン&ストリーム』も陣形『鋒矢』を使ってきましたー、攻撃重視の陣形で、効果は『攻撃+三・防御-一』です」

 「俺たちの『衡軛』にたいして『鋒矢』で対抗か……自分のメンバーの攻撃に、絶対の自信があるんだな」

 

 「バトルスタートします、3、2、1、バトルスタート!」

 

 

 マキアVSカケル

 「星の光よ、我が拳に宿れ!」

 カアアーーーッ!

 「うっ、眩しい……」

 

 「カケル選手、本当に拳に星の光が宿ったように、ガントレットが輝いていますーー」

 「行くぞ!『スターライトナックル』!」

 ドドドドド!

 「ぐっ、何という拳速……二刀流の私でも、捌くのがやっとだなんて」

 「オラオラオラオラオラオラーー!」

 ドドガアッ!

 「キャーー!」

 

 「マキア選手、捌き切れず吹っ飛ばされました!凄まじい拳速です!」

 「マキアーー」

 「どうだ!この『スターライトナックル』は、星の光を宿すことで『エアリアルエンチャント』の二倍以上の効果が出せるんだ」

 「くっ、これが『ゾディアックビースト』の力……」

 

 

 マコトVSヨシキ

 「星屑よ、敵を撃て!」

 キュゥゥーーン……

 「ヨシキ選手のロッドが変形して、棘のようなものがたくさん生えてきましたーー、これは?」

 「『スターダストショット』!」

 ガガガガガ!

 「キャーーー」

 「メエェェーーー」

 

 「ヨシキ選手のロッドから、本当の星屑みたいなたくさんの棘が、まるで意思を持っているかのようにマコト選手に襲い掛かるーー!」

 「くっ、攻撃に移るヒマが、無いとよ……?」

 「ヨシキ選手の『スターダストショット』が止まらないーーこのまま無限地獄となるのかーー?」

 マコトとめん太は避けるので精一杯だ。

 

 

 カスミVSリュウセイ

 「行きますよー、一人レゾナンスアーツ『アマノイワト・烈』!」

 「カスミ選手、棘のようなものを付けたアマノイワトで、リュウセイ選手に突進だー」

 

 「フッ、『スターゲート』オープン!」

 シュインッ!

 「なっ、消えた!?」

 「フッフッフ……」

 「あーっとリュウセイ選手、一瞬にして消えましたー!?そして誰もいないのに声が聞こえます!これはいったい?」

 

 「私の『スターゲート』は、亜空間に繋ぐことができる……私は今亜空間にいて、お前の姿はこちらから丸見えだ」

 「なんですって!?」

 「この状態から、どこからでも攻撃が可能だ……こんな風にな!」

 シュインッ!

 「あぶなっ……!」

 「あーっとリュウセイ選手が、突如カスミ選手の後ろから現れて攻撃してきました!カスミ選手間一髪避けたー」

 

 「く、今だ!『アマノイワト・烈』!」

 シュインッ!

 「あーっとカスミ選手攻撃しましたが、リュウセイ選手またもや姿が消えましたー」

 「防御も、攻撃もできないなんて、いったいどうしたら……」

 

 

 アマネVSリン

 「キャアーーーー、リン様ぁーーー!」

 「おっとぉ?観客席から黄色い声援が飛び交います!超絶イケメン、リン選手の登場です!」

 「フッ……行くよ、『ギャラクシアン・ローズ』!」

 「こ、これは……?」

 「おーっとリン選手、手に持っていた薔薇に息を吹きかけると、無数の花びらが舞って……これはまさにその名の通り『薔薇の銀河』のようだー」

 くーー、あのリンって奴、やることがいちいちイケメンだな……

 観客席で気絶している女性もいるよ、どうなっているんだいったい?

 

 アマネの前に魔法陣が展開……『光』『光』『光』『光』

 「レンズ・リング・ロンド・アークソルタ・ネイジー

 光よ 光子よ 閃光の力解き放ち 世界を光明で照らし給え

 光属性クアトログラム、『フォトンブラスター』!」

 パパパパパッ!

 

 「あーっと、リン選手に眩い光線が幾重にも重なり降り注ぎます!……ってあれ?リン選手がいません?」

 「オレはここだよ」

 「いやこっちだ」

 「リン選手、消えたと思ったら今度は増えたーー?七人のリン選手がアマネ選手を取り囲んでいますー!」

 

 「いつの間に……これは幻術?ならば、アドバンスドアーツ『アマネフィールド』!」

 「おーっとアマネ選手を中心に、白い結界が広がります!……しかし、リン選手はそのままだーー?」

 「そんな!?幻術が消えない?」

 

 「残念、これは魔法や技の類ではない……花の香りによる『錯覚』を利用しているのさ」

 「錯覚……だから『アマネフィールド』でも浄化できなかったのですね」

 「『ローズニードル』!」

 バシュッ!

 「キャアーー」

 「あーっと、棘のついた薔薇の花で攻撃!」

 

 「美しいバラには棘がある……オレに惚れると傷つくぜ」

 「キャーーーー」(ハート)

 バタッバタッ……

 また気絶しているし……もういいって。

 

 

 俺VSクイーン

 「まずは様子見と言ったところね……」

 クイーンの前に魔法陣が展開……『地』『闇』『闇』

 「セイ・タルス・クエト・ジータ

 重力属性ハイアナグラム、『グラビトン』!」

 ズドンッ!

 「うおっ!?これは……」

 

 クイーンの前に魔法陣が展開……『炎』『風』『光』

 「ミリタリス・ビー・オージャ・ダナドゥ

 我 光弾を操り 敵を屠るものなり

 光弾属性ハイアナグラム、『ヴァーミリオンレイ』!」

 ドキュキュキュ!

 「マジか!?それ俺のルーティン……」

 

 「コズミッククイーン選手から無数の光弾がギガンティックマスター選手に向かって飛んでいくーー」

 

 俺の前に魔法陣が展開……『水』『地』『地』

 「バン・ヴォール・ディーン 我を守る盾となれ……」

 ドドドドドーー!

 

 「ギガンティックマスター選手、被弾ーーー!あ、いや、無事です!『障壁魔法』が間に合っていましたーー」

 

 「『バリアウォール』か、やるわね……」

 

 「くっそ~俺のルーティン、パクりやがって……しかもまさかの『ダブルキャスト』持ちだったとは」

 「別にパクった覚えはないわ、勝手に自分のルーティンとか言わないでくれる?」

 

 「今度はこっちの番だ!」

 俺の前に魔法陣が展開……『地』『闇』『闇』

 「セイ・タルス・クエト・ジータ

 重力属性ハイアナグラム、『グラビトン』!」

 ズドンッ!

 「むっ……」

 

 俺の前に魔法陣が展開……『炎』『風』『光』

 「ミリタリス・ビー・オージャ・ダナドゥ

 我 光弾を操り 敵を屠るものなり

 光弾属性ハイアナグラム、『ヴァーミリオンレイ』!」

 ドキュキュキュ!

 

 「おーっとギガンティックマスター選手、お返しとばかりに『重力魔法』と『光弾魔法』のコンボだーーー」

 

 クイーンの前に魔法陣が展開……『水』『地』『地』

 「レイラント・ファスト・アービス 星屑よ 我を守る帯となれ 星屑帯属性ハイアナグラム、『アステロイドベルト』!」

 ガシンガシンッ!

 「これは……コズミッククイーン選手の前に小さな岩が集まって壁になり、コズミッククイーン選手を守りましたー」

 

 「俺の『バリアウォール』と同じ属性式なのに、クラスが変わると違う魔法になるのか…… これが『星詠人スターゲイザー』専用魔術、『星語魔術プラネットロアー』ってやつだな」

 「アナタも『ダブルキャスト』持ちだったのね……面白くなりそうだわ」

 

 

 「さあ、全体的にやや『クイーン&ストリーム』の方が優勢か?どうする『異世界あいどる24』!?」

 くそっ、MCの言う通り、このままじゃジリ貧だ。

 「みんな、いったん引くぞ!陣形『偃月えんげつ』!」

 「はい!」

 

 「おーっと、『異世界あいどる24』、いったん引くようです!陣形『偃月』は、脱出するとき機動力と防御力に+二の効果がつきます」

 「逃がすか!」

 「しかしクイーンの四天王が逃さないーー、『異世界あいどる24』、追撃されています!」

 

 その時、俺は振り向きざま詠唱を唱える。

 「衝撃よ 波となり 破壊となれ

 カイ・ル・ランクルス・ヴォーレイズ・ガンナ・イプシオン

 超衝撃波属性クアトログラム、『ヘクト・インパルス』!」

 シュバババババ!

 

 「うぉっとー?とてつもなく速い詠唱だー!巨大な衝撃波が扇状に放たれるーー!」

 「くっ、『対魔力結界』!」

 「間一髪、クイーンの四天王たちは『対魔力結界』で防御、しかし『異世界あいどる24』はまんまと退避成功です」

 「うおおおーーいいぞーーー」

 

 「すまないクイーン、逃がしちまった……」

 「逃げながらの詠唱は相当な集中力を要するハズ……やはり相当な手練れね、あれは仕方ないわ。まあいい、私たちも今のうちに回復とバフよ」

 「了解」

 「アドバンスドアーツ、『星脈せいみゃく』」

 パアアァァ……

 「クイーン&ストリーム、コズミッククイーンのアドバンスドアーツで、回復しながらバフがかかっています!これも『星詠人スターゲイザー』の専用技のようです」

 

 *****

 

 「ううぅ~つえぇ~、さすがはあのガーマイン達を倒した奴らだ、個々の能力も、連携も半端じゃない……」

 「ですね……とてもじゃありませんが、余力を残して勝てる相手じゃありません」

 「だな」

 

 「まともにチカラ勝負、スピード勝負をしても、『ゾディアックビースト』を持っているあいつらの方が有利だ」

 「マスターどうしますか?逃げながら戦い、隙を見てリーダーのみを攻撃するという方法も……」

 「いや、大丈夫だ……俺たちがあいつらに勝っているものがある、それは『経験』と『場数』だ」

 「『経験』と、『場数』……?」

 「『押してもダメなら引いてみな』、『それでもだめなら変えてみな』ってな」

 

 

 「おーっと、異世界あいどる24、隠れながらクイーン&ストリームに近づいていきます、これは奇襲をかける気でしょうか?」

 

 「フッ、そんなことをしても無駄よ……陣形『方円ほうえん』!」

 「クイーン&ストリーム、陣形『方円』を使いました、効果は『サーチ能力+二』です」

 「リン、お願い」

 「ああ、『サーチ』!……異世界あいどる24は、陣形『雁行がんこう』で、こちらに向かってきている」

 

 「陣形『雁行』の効果は『攻撃+一・防御+一』、少し斜めにメンバーを配置することで、隙間をあけるとタイマン勝負になりやすい陣形です」

 「……またタイマンでの勝負を?まあいいわ、陣形『鶴翼の陣』で迎え撃つ、各個撃破よ」

 「了解」

 「クイーン&ストリームの陣形は『鶴翼』、敵を迎撃するのが得意な陣形です」

 『鶴翼の陣』は、戦いながら徐々に敵を取り囲んでいく陣形……長引くと逃げることもできなくなる。

 

 「異世界あいどる24、奇襲をかけるもクイーン&ストリームのサーチでバレています、先ほどと同じ状況、このまま終わってしまうのか?両チーム衝突します!」

 俺たちは岩陰に隠れながら近づき、コズミッククイーン達を襲撃!

 

 「奇襲をかけたところで意味は無い、さっきと同様に……って、何!?」

 「アナタの相手は私です!」

 ガキィーーンッ!

 

 「あーっとこれは、異世界あいどる24、対戦するメンバーを変えてきたーー?

 カケル選手にはカスミ選手、ヨシキ選手にはアマネ選手、リュウセイ選手にはマコト選手、そしてリン選手にはマキア選手が立ち向かうーー!」

 

 「メンバーを変えた?これは一か八かの奇策?」

 「俺たちの戦法の妙、受けてみろ!」

 

 

 カスミVSカケル

 「メンバーを変えたって一緒だ、行くぞ!

 星の光よ、我が拳に宿れ、『スターライトナックル・、密集連突ファランクス』!」

 

 「一人レゾナンスアーツ、『アマノイワト・龍』!」

 バアアアア……

 

 「カスミ選手、アマノイワトを龍のように自分の前に展開、これは広範囲防御型か!?」

 ガガガガガ!

 「くっ、何という固い壁……ならば一点集中で破壊するまで……『スターライトナックル・一点集中ストライク』!」

 「一人レゾナンスアーツ、『アマノイワト・極』!」

 ガキィーーンッ!

 「な、なにぃっ!」

 「あーっと、カケル選手、一点集中させて放った『スターライトナックル』でしたが、こちらも一点集中させたカスミ選手の『アマノイワト・極』にはじかれた!凄い防御力です!」

 

 「どんなに速く、強力な攻撃でも、当たらなければ意味はありません!」

 「くそっ……」

 「相手の攻撃に臨機応変に対応しています、カスミ選手俄然有利!」

 

 

 アマネVSヨシキ

 「星屑よ、敵を撃て!『スターダストショット』!」

 バババババ!

 「ヨシキ選手、アマネ選手に『スターダストショット』を放つも、空中で制止させています……?」

 

 「僕の『スターダストショット』は、僕の命令通りに動き、永遠に君を攻撃し続けることができる、覚悟はいいかい?」

 「ということは、この『スターダストショット』は、アナタが目で見て、操作しているのですね?」

 「そうだ、僕の視力は両目とも『2.5』だからね、あんたの着ているローブの糸くずまで見えるさ」

 「そうですか、それは良かったです」

 「?」

 アマネの前に魔法陣が展開……『風』『光』『光』

 「スー・ビー・ロイテウル・カナン・フーリー・フーミュー・ルーテス

 光の精霊よ その清廉なる光により 彼の者の邪悪を 暴き給え

 閃光属性ハイアナグラム 『ブライトーション』!」

 カァッ!

 「うあっ、しまった、目が……」

 

 「あーっとヨシキ選手、アマネ選手の閃光の魔法、『ブライトーション』をまともに見てしまい、目が眩んでいるーー」

 

 アマネの前に魔法陣が展開する……『光』『地』『水』

 「あまねく精霊たちに申し上げる 光 地 水に力の恩恵を 木々に活力を 森に実りを与え給え 森属性ハイアナグラム 『フォレストーション』!」

 バキバキバキバキ……

 「うわあぁーー」

 「アマネ選手の『フォレストーション』で、たちまち周りが草木に覆われました!ヨシキ選手も、『スターダストショット』も、全部樹木の枝に捕まって動けません!」

 「私は亜人エルフ……『森の民』の通り名は伊達ではありません」

 

 

 マコトVSリュウセイ

 「へっ、相手が誰であろうと、私の『スターゲート』は無敵だ、行くぞ!」

 シュイン……

 「あーっと、リュウセイ選手、また『スターゲート』で亜空間へ消えましたー、マコト選手ピンチ!」

 

 「私の『スターゲート』の亜空間移動は、音も気配もなく、魔法でも感知されることは無い」

 「……」

 「おーっとマコト選手、目を閉じて動きません、諦めたのでしょうか?」

 

 「へっ、何をしようと無駄だ、この技を感知する手段は無い!」

 「いいえ、たった一つあるとよ」

 「世迷言を……やれるもんならやってみろ!くらえっ……」

 

 「そことよ!めん太!」

 「メエェェ!」

 ドガァッ!

 「何ぃ!?」

 「あーっとリュウセイ選手、マコト選手の死角から攻撃するも、位置を特定されめん太の体当たりを食らったーー」

 

 「バカな!なんで私の位置が、いったいどうやって?」

 「フッフッフ、『勘』とよ」

 「は?」

 「子供のころのかくれんぼや、失くし物を探すときの私の『勘』は、外れたことがないとよ」

 「はあ?そんな非科学的なことで、私の『スターゲート』を破ったのか!?」

 

 「なんとー、マコト選手野生的『勘』で、リュウセイ選手の位置を特定していたようですー、恐るべしマコト選手!」

 「かくれんぼで鍛えた私の『勘』、舐めるといかんとよ!」

 

 

 マキアVSリン

 「フフッ、美しきマドモアゼル……誰がこようがオレの技を破ることは不可能、行くよ、『ギャラクシアンローズ』!」

 「リン選手、先ほどと同じように、無数の花びらで『薔薇の銀河』を作り、七人に増えましたーー」

 「さあ、魔法でも感知できないこのオレを、どうやって攻略する……?」

 「簡単です、なぜなら『庭の掃除』は私の担当だからです」

 「は?」

 「アナタは『ブロアー』をご存じですか?」

 

 『ブロアー』……

 現実世界のブロアーは、落ち葉や埃、塵などをノズルから出る空気で吹き飛ばす、清掃機械のこと。ガソリンエンジン式、電動式、コード式や充電式など様々なタイプが存在する。

 

 「ようは、花びらは『風』に弱いということです!」

 

 マキアの剣に、風のチカラが集まる……

 「アドバンスドアーツ、『風纏い・旋風斬り』×二!」

 ズババババーーー

 「あーっとマキア選手の双剣から凄まじい風が巻き起こり、リン選手の花びらを全て吹き飛ばしてしまいましたーー」

 「しまった!」

 「花びらも香りも、『風』とは相性が悪すぎましたね」

 

 「くそっ、『ローズニードル』!」

 「『対打撃結界』展開……アドバンスドアーツ、『雷足らいそく』!」

 バリバリバリバリ!

 「マキア選手、一瞬でリン選手の頭上へ……」

 「はあああ、『ハイブリッド高周波ソード』×二!」

 ガガガガガガガガァーーッ!

 「うわあああーー」

 「リン選手、マキア選手の『ハイブリッド高周波ソード』で、吹き飛びましたー!」

 

 「キャーーーー!なんてことするのよこのブスッ!リン様に何かあったら承知しないわよ!」

 「ブーブーブー!」

 「あーっと会場は大ブーイング、マキア選手にリン選手の女性ファンからヤジが飛び交います!物を投げるのはやめて下さい~!」

 

 マキアがヤジを飛ばされている、俺はどうしたら……って、マキアがカラオケのマイクを握っている?いつの間に?

 

 「みなさん!」

 ピタッ!

 ヤジが止まった……

 「みなさんはリンさんが好きですか?」

 「当たり前じゃない!何言っているのよこの女、バカなの?」

 会場にはMCのマイク用に、壁にスピーカーが内臓されている……マキアのあのマイク、いつの間に繋げたんだろう?

 

 「みなさんは『推し』に好かれたいですか?だとしたら、今のみなさんを『推し』は好きになるでしょうか?」

 「えっ……それは……」

 ザワザワザワ……

 「『推し』の対戦相手を罵倒したり、蔑んだりする人を、みなさんの『推し』は好きになりますか?答えは『NO』です」

 「うぅ……」

 「……」

 すげぇマキア、会場を黙らせちまった……

 

 「今みなさんがするべきことは、『推し』の対戦相手を罵倒することではありません、『推し』に好きになってもらうために、自分自身を磨き、『もっといい女』になること、これです!」

 「……」

 パチ……パチパチパチ……

 あ、会場中から拍手が……

 「みなさん、忘れないでください……『アイドル』は、いつでもみなさんのことを見ていますよ!」

 「わあああーーーー」

 パチパチパチパチパチ……

 「あーっとマキア選手、マイクパフォーマンスで会場中を味方につけてしまいましたーーかく言う私も少しドキドキしています!何というカリスマ性、恐るべしマキア様……じゃなかった、マキア選手ーー!」

 

 スゲェなマキア、俺もまた惚れ直してしまいそうだ……

 

 

 俺VSクイーン

 「なるほど……チカラ勝負にチカラで挑むのではなく、それぞれの得意不得意を考慮して対戦相手を変える、やるわね」

 「これが『経験』と『場数』の違いだ。

不利な状況も、臨機応変な『戦略』と状況判断による『適応力』で打開する……始めて数か月のお前たちと、一年近くいる俺たち、差をつけるならこれだと思った」

 

 「さすがは『魔界』、『暗殺組織』、『マジェスティックドラゴン』を攻略したギガンティックマスター……でもまだ、私とアナタの勝負はついてはいない!」

 

 コズミッククイーンの前に魔法陣が展開……『風』『風』『地』『地』『闇』

 「天空に輝く 昏く 強き真円 それを貪るは 影の王 逢魔が刻の始まりを告げるは 闇の鐘の音

 ヴァル・ベル・アシード・フルグレール・レーベン・ロア・キルド

 月蝕属性 五芒星魔術ペンタグラム、『エクリプス』!」

 

 ザアアア……

 リーンゴーン……

 「コズミッククイーン選手が詠唱を唱えると、急に天空に月が現れ、影に飲み込まれていき、真っ暗になったかと思うと、突然鐘の音が鳴り出しました、これはいったい……?」

 「これは……魔角族皇子のシャルドが、俺との戦いの時に使ったペンタグラム……?」

 

 「この魔法は、月が欠けている間、アナタの魔力を著しく下げ、視力も奪う『月蝕』の魔法……魔導士のアナタに、もう為す術はないわ」

 「なるほど、シャルドの奴こんな恐ろしい魔法を使おうとしていたのか……あ、目の前が真っ暗になってきた」

 

 「さあ、これで終わりよ」

 コズミッククイーンの前に魔法陣が展開……『地』『地』『光』『闇』

 「ジュケイ・ナース・アルカン・ラスピクト・シーズ・ロークェート

 流星よ 我が前に収束し 彗星となれ 重力に引かれ 星を穿て

 彗星属性クアトログラム、『コメットレイヴ』!」

 

 「あーっと空から小さな流星が、コズミッククイーン選手の前で収束、巨大な彗星になりましたーー!」

 

 「今までどんだけマキアと修行してきたと思っているんだ!気の流れでタイミングはわかる、『暗闇』ぐらいじゃハンデにならないぜ!」

 「巨大な彗星が、ギガンティックマスター選手に降ってきますーー!」

 「『対魔力結界』展開!」

 「あーっとギガンティックマスター選手、『対魔力結界』で彗星を吸収!タイミング、ドンピシャリです!」

 

 「そんな、相当魔力が減っているはずなのに」

 「『結界』を張るだけなら魔力は関係ない、一般人でも使用可能だからな……そして少しずつ魔力が戻ってきた、この状態なら一発は撃てる!」

 

 俺は右腕のガントレットを構える。

 「おおおおおお!」

 「くっ、『対打撃結界』展開!」

 「コズミッククイーン選手、巨大な『対打撃結界』を展開、衝撃に備えます!」

 「『エクスプロードブロウ』!」

 

 バリーーーーンッ!

 「しまった!」

 「クイーーーーンッ!」

 

 「あーっと、コズミッククイーン選手の『対打撃結界』が割れてしまいましたが、ギガンティックマスター選手、寸前で拳撃を止めています!コズミッククイーン選手、命拾いしましたーー」

 「な、なぜ?私を倒せる最高のチャンスだったのに」

 

 「俺に女性を殴る趣味は無いよ……それに、もし殴っていたら、あんたの四天王に後から殺されかねない」

 「マスター」

 「みんなスマン、とどめはさせなかった、仕切り直しだ」

 「はい、マスターならきっとそうするだろうと思っていました」

 

 コズミッククイーンが、立ちながら俺に話しかける。

 「イケメンじゃない人が、イケメンみたいに格好つけるのは似合わないわよ」

 「なんだよ、うるさいな~俺は心まで『ブサイク』にはなりたくないんだよ、ほっといてくれ」

 「確かにアナタはイケメンではないわ、イケメンではないけど、でも……ありがとう」

 

 「クイーン、無事か?」

 「ええ、私は大丈夫よ、アナタたちは?」

 「我らは大丈夫、まだまだいけるぜ」

 「彼らを侮ってはいけないわ、次は全力で行く」

 「わかった」

 

 

 ☆今回の成果

   マコト 野性的『勘』取得?

   アマネ 閃光属性ハイアナグラム『ブライトーション』習得

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