第42話召喚士

 アナタはアイドルと『木登り』したことがありますか?……俺はある。


 巨大で真っ白な狼に乗った少年が、俺を狼の背中に引き上げてくれた。

 モッフモフの毛並み……まるで毛足の長い高級絨毯のような手触りだ。

 「ありがとう、助かったよ」


 「どういたしまして……というか僕が命令する前にこの『フェンリル』が、すでに助けに飛んでいたんだけどね」

 「そうか、お前のおかげだよ、ありがとうフェンリル」

 「ワオーン!」


 北欧神話に登場する、巨大な雪狼せつろう『フェンリル』……

 ファンタジーの世界でも、モンスターや召喚獣としてよく登場する。


 「ところで、『屠りしもの』って……?]


 「ああ、君にはまだ伝わっていないかもしれないね……

 何せ君は、魔界へ行っていたり、暗殺組織と戦ったりで、忙しかっただろうから」

 「そんなことまで知っているのか……」


 その『サモンロード』とかいう少年は、白い狼に合図して、メンバーのいる葉っぱの上に降りた。

 「マスター、無事ですか?」

 「ああ、この少年に助けてもらった……『サモンロード』という名前だそうだ」

 「『サモンロード』……?」


 サモンロードは俺をフェンリルから降ろし、自分も葉っぱの上に降りた。

 「そうそう、『屠りしもの』とは、四支神よんししんを倒した者のことをいうんだ」

 「四支神を!?じゃあアンタは……?」


 「そう、僕は大陸の東の祠にいた四支神の一柱、風を司る『神楽かぐら』を屠った者さ」

 「『神楽かぐら』を……アンタが……?」


 「僕もここの『マジェスティックドラゴン』に用事があってね……実はもう四回目の挑戦なのさ。どうだいギガンティックマスター、僕と協力してここを攻略しないか?」

 「それは願ってもない」

 「よし、決まりだ」


 いつの間にかサモンロードの後ろには、四人の四天王が立っていた。

 重装備の騎士と、魔法使いと回復役っぽい女性二人、もう一人は……?

 真っ黒な服と包帯で全身を覆っていて、よく見えない……


 「僕の四天王を紹介したかったんだけど、向こうは待ちくたびれちゃったみたいだね」


 後ろを向くと、紅鱗竜が待ちくたびれたかのように、今にも攻撃を開始しそうになってる!?

 「マズい!『獄炎のブレス』がくる、みんな離れろ!」

 「大丈夫、僕に任せてくれ、『タイタン』!」

 サモンロードがそう言うと、黒ずくめの男が俺たちの前に立ち、構える。

 「『タイタンウォール』!」


 ドドドドド!

 黒ずくめの男が地面に手を当てると、地面から巨大な壁が立ちはだかった!


 「バオオオオオオッ!」

 紅鱗竜が獄炎のブレスを吐く!……が、壁がブレスを完全に防いでくれた。

 「スゲー!」


 「フェンリル!」

 サモンロードが叫ぶと、さっきの巨大な白い狼がサモンロードの前へ。

 「僕たちはこの『紅鱗竜』はすでに攻略済みだ……HPは削るから、とどめは頼んだよ」

 そう言うと、サモンロードはフェンリルの背に乗り、紅鱗竜に向かって飛んでいく!


 「バアアアアアッ!」

 紅鱗竜の『溶岩流』や『炎の羽根』を軽々とかわし、あっという間に射程範囲に。

 「フェンリル、『フェンリルクロー』!」

 ザシュゥッ!

 「ギャオオオ!」


 「『フェンリルファング』!」

 ガシューーッ!

 「ギャアアアンッ!」

 「スゲー、攻撃に『氷属性』が付与されている!あれは紅鱗竜からすると、たまったもんじゃない!しかもあれだけの近距離攻撃なら、炎の結界も意味がない」


 はたから見ても、紅鱗竜のHPがみるみる減っていくのがわかる。


 「さあ行くよ、フェンリル、『雪狼咆哮撃せつろうほうこうげき』!」

 「アオオオオーーーーン!」

 フェンリルが雄たけびを上げると、紅鱗竜に氷と音波の衝撃が!

 ビキビキバキバキッ!!

 「ギガンティックマスター、今だよ!」


 「よし、カスミ!」

 「はい、『絶対零度氷壁』!」

 バキバキバキバキ!

 紅鱗竜を巨大な氷塊に閉じ込めた!


 「マキア、とどめだ!」

 「はい、『雷足らいそく』!」

 バリバリバリバリ!

 マキアは紅鱗竜の頭上へ……

 「新おーぎ、『マキアクロスインパクト』!!」

 ズガガガガガガガーーーッ!


 閉じ込めた氷塊ごと、紅鱗竜を攻撃!

 紅鱗竜は沈黙……何とか倒せたようだ。


 「ふう、何とか倒せたようだな……

 まだ頂上まで四分の一くらいなのに、こんな強いドラゴンがいるのか」


 「マジェスティックドラゴンのいる場所まで、今の紅鱗竜より強いドラゴンがまだ控えている……『蒼鱗竜そうりんりゅう』と『白鱗竜はくりんりゅう』、『黒鱗竜こくりんりゅう』の三体がね」


 「げえ、まだそんなにいるのか?」

 「僕たちは『白鱗竜はくりんりゅう』までは攻略できている、問題はそのあとの『黒鱗竜こくりんりゅう』だね」

 「もう名前だけで強そうじゃん……」

 「強いよ……僕の四天王は全員レベル百超えだけど、黒鱗竜には勝てなかった」


 「マジか……そう言えば四天王と言えば、さっきの黒ずくめの男、『タイタン』って……」

 「ああ、丁度いいから改めて紹介するよ、僕の四天王」

 さっきの四人が、いつの間にかまたサモンロードの後ろに控えている。


 「彼は『重騎士ヘビーナイト』のガンドルフ」

 一番左に立っている重装備のデカいやつの事らしい……やたらデカい槍に、デカい盾を持っている。


 「こっちは『魔女』のエスタ」

 魔女……確か人間だけど闇属性の魔法が得意なクラスだったはず。


 「隣は『聖女』のキャルロッテ」

 聖女……俺のゲーマー時代の四天王にもいた、回復系のスペシャリスト。


 「最後に僕が召喚した『タイタン』」

 「『召喚』……」

 「そう、僕のクラスは『サモナー』……召喚士だよ」

 「やっぱり!」

 フェンリルやタイタンは、『サモナー』が召喚できる『召喚獣』の一体、『サモンロード』という名前からも、召喚が関係するだろうとは思っていた。


 先ほどの戦闘で、タイタンの包帯や服が少しはだけている……

 その素肌はまさに岩のよう。


 「俺は、召喚魔法って『ジャッジメントドラゴン』の時みたいに、召喚して、攻撃して、それで終わりだと思っていたよ……タイタンや、このフェンリルのように、ずっと召喚し続ける魔法もあるんだな」


 「君が使った召喚魔法は『アクティブ召喚』というやつだね……召喚したあと、自動的に元の場所に戻ってしまう。

 このタイタンやフェンリルは、『パッシブ召喚』と言って、召喚した後もその場に居続け、移動や召喚者のサポートなどができるんだ」


 「へえ~、いいなー『サモナー』……」

 「マスター、そんなにいいならマスターも最初から、クラスを『サモナー』にしたらよかったですのに」


 「俺が『ギルギル』を始めたころは、まだクラスは『精霊王アレクタリス』しか無かったんだよ……」

 「そうなんですか?」

 「数か月前にこの『ギルギル』の運営が、大規模アップデートをしたみたいで、その時に四つ、新しいクラスを追加したんだ……俺はその時『魔界』にいたからなぁ……」

 「あちゃー」


 「確か新しく追加したクラスは、『召喚士サモナー』と『星詠人スターゲイザー』、あと『竜騎兵ドラグーン』と『悪魔崇拝者サタニスト』だったよな?」

 「僕はちょうど三か月前にこの『ギルギル』を始めてね、迷わずこの『サモナー』を選択したよ、便利そうだったからね」

 「移動やパーティメンバーの代わりもできるなんて、そりゃ便利だよな~」


 「でも『召喚魔法』は、通常の魔法より消費魔力が多く、僕自身のステータスはあまり上がらないからね」

 なるほど、クラスにもそれぞれ得手不得手があるのか……まさに『一長一短』だな。



 「よし、じゃあこのまま先へ進もう」

 俺たち『異世界あいどる24』と、サモンロードの四天王との共闘パーティで、ユグドラシル頂上を目指す。


 また茎や蔦を昇り、大きな葉っぱの上へ……いた、次のドラゴンだ。

 「二体目は『蒼鱗竜そうりんりゅう』、水属性のドラゴンだよ」

 さすがはサモンロード、四回目の挑戦だけあって、一つも焦りがない。


 「グルオオオオオ!」


 『蒼鱗竜』……さっきの『紅鱗竜』の色違い?

 色が『青』になっただけで、見た目はほとんど変わらないけど……

 あ、でも、蒼鱗竜の周りに何か小さい物体が浮いている……なんだあれ?


 「『蒼鱗竜』の周りに浮いているのは『水の精霊・クリオーネ』、あれ自体も攻撃や回復をしてくるんだけど、もっと厄介なのが……」

 ブワワワワ……


 水の精霊が変身した……?

 と、思ったら、蒼鱗竜がたくさんいる!?

 「あの『水の精霊・クリオーネ』は、水の力で蒼鱗竜そっくりに変身できるんだ……しかも一度変身すると、一瞬で蒼鱗竜と、いつでも体を入れ替えることができる」

 「マジか!?」

 分身の類なら、『アナライズ』すればポップアップコマンドで、本体がすぐわかると思ったけど、一瞬で体を入れ替えるとなると……


 「グルルウゥ……」

 「マズい、空気中の水分を集めている……『水魔法・オーシャンウェイブ』が来るよ!」

 サモンロードが叫ぶ!

 蒼鱗竜の前に魔法陣が展開……『水』『水』『水』『水』

 「リレイン・カザルド・アイボーン・ヒューエル・リーン・ケイオータス

 広大なる海と ワダツミの神よ 海原に大いなる波動を起こし 悪しき者を圧し潰せ……」


 「タイタン、『タイタンウォール』だ!」

 ドドドドド!

 「くっ、さすがにこれだけの人数を防御したことが無いから、壁が足りない!」

 「カスミ、『アマノイワト』を展開!みんなも各自防御結界を!」

 「はい!」


 「水属性クアトログラム、『オーシャンウェイブ』!」

 空中に大量の水が集まり、物凄いうねりをともなってこちらに襲い掛かってくる!

 あっ!、アンタッチャブルズたちの防御結界が間に合っていない!?

 「危ないっ!」

 「キャアーーー!」

 ドドドオオォォーー!


 アンタッチャブルズ達の前に巨大な盾が現れて、オーシャンウェイブから守ってくれた!

 「我壁也、水効力無、攻撃、『螺旋槍破スパイラルジャベリン』!」

 ギャルルルッ!

 巨大な槍を回転させて、蒼鱗竜を攻撃!……でも体が水になって弾けた!

 「水分身也、我落胆……」


 「あ、あの、ありがとうございます……」

 「全員、無事?」

 「はい」

 「良」

 ずいぶんと個性的な喋り方だな……


 「アンタッチャブルズたちを助けてくれてありがとう……

 『重騎士ヘビーナイトのガンドルフ』だっけ?あのオーシャンウェイブを受け止めるなんて、凄い盾だな」

 後ろからサモンロードが歩いてきて、ガンドルフの肩をポンと叩きながら代わりに話す。

 「この盾は『ダイヤタートルシールド』……『金剛亀ダイヤモンドタートル』の甲羅を加工して作った、彼自慢の一品だよ」

 「マジで!?あの『金剛亀ダイヤモンドタートル』の甲羅で作ったの?高そう……」


 「みんな話は後だ、まずは蒼鱗竜の本体を探すんだ」

 「ちょっと待った、俺にいい考えがある」


 俺はメンバーの中からララを連れてくる。

 「ちょっとの間、魔法とか使えなくなるけどいい?」

 「?」


 「ララ、頼む」

 「は、はい……アドバンスドアーツ、『大号泣』だニャーーーー!」

 「ニャーーー!」(エコー)

 「ャーー!」(エコー)


 「こ、これは……?」

 耳を塞ぐサモンロードがビックリしている……

 蒼鱗竜の水の精霊たちもビックリして、蒼鱗竜の本体を残して、みんなどこかに消えてしまった。


 「どうだい、うちの秘密兵器は?」

 「驚いたよ……これは凄いね」

 「よし、物理攻撃班、行くぞ!」

 「はい!」


 「まずは私が……

 ララの技の前にすでにエンチャント済みです、行きます、レゾナンスアーツ『巨神おとし』!」

 リョウは、すでに雷の魔法をエンチャントさせていた『床落とし』を、空中に投げる!

 『床落とし』は、そのまま雷を纏いながら、蒼鱗竜めがけて落ちてきた!

 バリバリバリバリ!

 「グバオオオゥゥゥ……」

 「おお、効いてる効いてる、このまま立て続けに行くぞ」


 「グルルゥゥ……」

 「『激流のブレス』が来るよ!」

 「我一任!」

 重騎士のガンドルフが、蒼鱗竜の前に立ちはだかる!


 「グバアアアーーー!」

 蒼鱗竜の口から、ものすごい水圧の水のブレスが放射される!

 「我守護!『金剛亀盾ダイヤタートルシールド』!」

 ドンッ!

 ドバアアアアーーーッ

 スゲー、あの『激流のブレス』に耐えた!


 「必殺攻撃、『回転鉄槍ドリルスピア』……『螺旋槍破スパイラルジャベリン』!」

 ドリルのように回転する巨大な槍が、蒼鱗竜に突き刺さる!

 「グルアアアアッ!」


 「とどめは私が!おいで『デゴちゃん』!」

 ザザザザ……

 「バオオオオオーーーン」

「おお、あれは『デザートゴーレム』?」


 「『ゴーレムデコピン』!」

 ドガガガガ!

 ズズーーン……

 蒼鱗竜は、ユグドラシルの幹に激突して、そのまま沈黙……


 「ふう、どうやら倒せたみたいだな」

 「大したもんだよギガンティックマスター、あの蒼鱗竜をこんな簡単に倒せるなんて」

 「前はどうやって攻略したんだ?」

 「今までは、雷竜『サンダードレイク』を召喚して、水の精霊ごとこの辺り一帯に、倒すまで何度も雷撃を落としていたんだ」

 「……なかなかに強引な方法だな」

 「それしか思いつかなくて……

 ただそれをやると消費魔力が半端なくて、毎回魔力回復アイテムを大量に仕入れなきゃならなくて……」

 「だろーな、『転移病』になっちまうぞ」

 「今回こんなに消費を抑えることができたなんて、ギガンティックマスター、助かるよ」


 「さあみなさん集まって下さい、回復します……

 回復属性クアトログラム、『エクスヒーリングプラス』!」

 パアアア……

 おお、『エクスヒーリング』の全体版か、これは助かる。


 「『聖女』のキャルロッテは、攻撃魔法は一切使えないけど、回復、防御、バフ系などあらゆるサポート系魔法を会得しているんだ」

 「今のうちにバフ系の魔法もかけておきますね」



 俺たちは、さらにユグドラシルの上を目指す。

 次の葉っぱの上には……いた、あれが『白鱗竜はくりんりゅう』か。

 真っ白な体に、鳥の様なやわらかそうな羽根が四枚……天使のようなその見た目、荘厳さすら感じる。

 前の蒼鱗竜みたいに、小さい光る物体がいくつも浮いている。


 「白鱗竜の周りに浮いているのは『光の精霊・ウィルオーウィスプ』……

 さすがに変身とかはしないけど、それぞれ光の魔法や回復など、白鱗竜のサポートをしてくる」


 「ふむ……蒼鱗竜の時と同じなら、またララで行けるかな?」

 「ちょっと待ってくれ」

 おっと、魔女っ子のエスタって子が俺を止めた。

 「ここはアタイの『闇属性の魔法』の見せ所なんだ、さっきの技は勘弁しておくれよ」


 なるほど、光属性の白鱗竜には、闇属性の魔法か……

 でも光と闇の属性は、お互いに相克関係にある。

 あの魔女っ子の弱点も『光属性』ってことになるけど……大丈夫なのか?


 エスタの前に魔法陣が展開……『闇』『炎』『地』

 「ハイアール・ギビン・クェルレイド・バッサー

 地獄の王とその眷属よ 血の盟約に従い 地獄より禁断の炎を召喚せよ

 煉獄属性ハイアナグラム 『インフェルノ』!」

 ゴオオオオオ!

 「オオーーーン」

 おお、これはファルセイン攻城戦でコウが使った煉獄の魔法!


 エスタの前に魔法陣が展開……『地』『地』『闇』『闇』『闇』

 「セイ・タルス・クエト・ジータ・アースクレート・ヴァイアロン

 重轟場属性 五芒星魔術ペンタグラム、『ヘクト・グラビトン』!」

 雷を伴った重力球で、ウィルオーウィスプごと白鱗竜を地面に叩きつけた!


 「おおー、人間で闇属性の魔法を使えるだけでも珍しいのに、五芒星魔術ペンタグラムまで……」

 「感心していないで、アタイが押さえている間に、早く……」

 「おお、了解、任せてくれ……カズキ、スミレ!」

 「おう!」

 「任せて下さい!」


 カズキが弓を構える……

 「アドバンスドアーツ『ダークマターアロー』!」

 闇の気を纏った巨大な矢を高速で撃ち出す!

 ドガアッ!

 「オオーーン……」


 カズキの矢を受け、さらに重力球の圧力の中、立ち上がろうとする白鱗竜……

 「マジで?あの重力球の中で動けるのか?」

 「オオオオオォォ……」

 「聖なる息吹、『ホーリーブレス』だ!」


 「スミレ、頼む!」

 スミレが『ネクロノミコン』を開く。

 「死者の章 第一節、『しかばねの壁』!」

 ズアアアア!

 屍でできた巨大な壁で、ホーリーブレスを防いだ!


 スミレはそのまま『ネクロノミコン』のページをめくる。

 「怨霊の章、怨霊操作、呪いの力よ 我が前に収束せよ!

 アドバンスドアーツ、『呪霊砲』!」

 バアアアアア!


 「よし、だいぶ弱っている、次でとどめだ!」

 「とどめは僕にやらせてくれ」

 サモンロードが白鱗竜の前に立ち、詠唱を唱える。


 サモンロードの前に魔法陣が展開……『地』『闇』『闇』『闇』

 「ガーロン・イースナ・ラインシルド・カール

 影に生き 影に住む 影の女王 その手で罪人の罪をすくい上げ その手で罰を与えよ 影召喚属性クアトログラム、『クイーンオブシャドー』!」


 サモンロードの影が伸び、その中から『影の女王』が現れた!


 「この魔法、魔界で禁呪になっている影召喚魔法、『キングオブシャドー』にそっくりだ!」

 「この魔法は『キングオブシャドー』の下位魔法……禁呪じゃないし、制御もできているから安全だよ」

 「そうなのか……?」


 『影の女王』は、そのまま影で白鱗竜を縛り付け、六本の影の腕を白鱗竜に突き刺した!

 ドスッドスッドスッ!

 「オオオオオオーーン!」

 雄叫びを上げながら、白鱗竜が消えていく……倒したようだ。


 「召喚魔法、スゲーな」

 「消費魔力が多いから、連続は無理だけどね」



 さて、次がお供のドラゴン最後の一体、『黒鱗竜こくりんりゅう』だ。

 俺たちはまたユグドラシルを昇っていき、葉っぱの上へ……

 漆黒の鱗を纏った巨大な黒竜、『黒鱗竜こくりんりゅう』が俺たちを待ち構えていた。


 「バルオオオオオオーーーッ!」

 ビリビリビリビリ……

 凄い咆哮……仲間がやられて怒っているのか?


 「僕たちはこの『黒鱗竜』に、三度目の挑戦で敗れている……かなりの強敵だよ」

 黒鱗竜の体の周りに、黒い煙のようなものが立ち込めている……?

 「あれは黒鱗竜の『瘴気』……触れると装備や体が腐って、使い物にならなくなる」


 「以前、魔族が地上侵攻したときに東門にいた『瘴気魔族』も、同じような『瘴気』を使っていました。その時はリョウの『巨神おとし』で倒せましたけど……」

 カスミが、その時のことを思い出しながら話してくれた。


 「あの『瘴気』のせいで、近距離での攻撃は届かなくて……

 僕のパーティであそこに届く攻撃は、僕の召喚魔法か、エスタの闇魔法しかない。

 でも僕もエスタも黒鱗竜の弱点である『光属性』の攻撃を持っていなくて」

 「それでジリ貧になり、やむなく撤退ってわけか……」


 確かにあの『瘴気』は厄介だけど、俺たちなら……

 「お前の出番だ、アマネ!」

 「はい、お任せ下さい」

 そう言ってアマネは黒鱗竜の瘴気のそばへ。


 「危ないっ、その瘴気に触れたら……」

 「アドバンスドアーツ、『アマネフィールド』!」

 パアアアーーーー

 アマネを中心に白い結界が広がり、黒鱗竜の瘴気を祓っていく……


 「凄い……瘴気を中和しているのか?」

 「この結界の中なら瘴気に触れることは無い、黒鱗竜の近くまで行って、近接攻撃も可能だぜ」


 俺たちは一塊になり、結界ごと黒鱗竜の方へ歩き出す。

 「バルルォォ……」

 「マズい、『暗黒のブレス』の予備動作だ!」

 黒鱗竜の口の周りに、物凄い瘴気が集まっている……

 「あの火力で一点突破されたら、私の結界でも破れるかも……」


 重騎士のガンドルフが、『ダイヤタートルシールド』を構える。

 「ガンドルフの盾でも、耐えられるかどうか……」


 「ならば私にお任せを」

 カスミがみんなの前に出る。

 「一人レゾナンスアーツ、『アマノイワト・極』!」

 カスミはアマノイワトを極力小さくし、三枚重ねた。

 自分の前だけの、局地範囲だけに絞り込むことで、一枚の防御力を極限まで高めたのだ!


 「バルアアアア!」

 黒鱗竜の『暗黒のブレス』が放射される!

 ドバアアアッ!

 カスミのアマノイワト・極が、暗黒のブレスを四散させた!

 「やった!」


 「まだだ、黒鱗竜は攻撃を休めるつもりはないみたいだ!」

 黒鱗竜の前に魔法陣が展開……『闇』『闇』『闇』『闇』

 「スーレイ・アブトゥル・ラーズ・クルス

 漆黒よ 暗黒よ 暗闇よ 常闇よ すべての闇よ 波のように荒れ狂え

 闇属性クアトログラム、『ダークネスオーシャン』!」


 海の津波のように、うねりを伴った闇の魔力が押し寄せる!


 アマネの前に魔法陣が展開……『光』『光』『光』『光』

 「レンズ・リング・ロンド・アークソルタ・ネイジー

 光よ 光子よ 閃光の力解き放ち 世界を光明で照らし給え

 光属性クアトログラム、『フォトンブラスター』!」


 アマネの光属性クアトログラムが、黒鱗竜の闇属性のクアトログラムを無効化した!


 「みなさん今です!弱点属性じゃなくてもいいので、攻撃を!」

 アマネの合図で全員攻撃に入る!



 「アドバンスドアーツ、『バーチカルアックス』!」

 ジャンプしたライカが回転しながら、垂直に斧を振り下ろす!

 ドカーーン!


 「行くよ!レゾナンスアーツ、『親子の絆アターーーック』!」

 ドガアアアッ!

 ジュリとココの突撃攻撃!さすがの黒鱗竜もよろめく!


 「我、攻撃!『金剛盾撃ダイヤモンドシールドバッシュ』!」

 ズドガーーッ!

 ガンドルフの『ダイヤタートルシールド』による突撃!


 エスタの前に魔法陣が展開……『水』『水』『風』『風』『闇』

 「氷よ輝き舞え 氷竜よ敵を包み給え 氷神よ罪人に永遠の罰獄を

 ブレーベン・ドドレス・アクレイン・マージ

 ガイ・イン・トゥーザ・ファラン・ライン・ゲート

 氷獄属性 五芒星魔術ペンタグラム、『コキュートス』!」


 ガガガガガガ……バキバキバキ!

 黒鱗竜を中心に、巨大な氷山が立ち、砕け散る!


 サモンロードの前に魔法陣が展開……『風』『風』『地』『地』『光』

 「我に黄金の鱗持つ 雷の竜の力を与えよ 雷の咆哮で 眼前の敵に神の裁きを

 レイ・レイガ・ジン・シーンド・ウェルヴェント・ヌア・シェイン

 雷竜召喚属性 五芒星魔術ペンタグラム、『サンダードレイク』!」

 サモンロードの上に、巨大な雷竜が召喚された!

 「キシャアアアア!」


 「サンダードレイク、『召雷しょうらい』!」

 ガガガガガガッ!

 黒鱗竜を中心に、嵐のような稲妻がいくつも落ちる!


 俺の前に魔法陣が展開……『炎』『風』『光』『光』『光』

 「あまねく光よ 我と共に 集まり 重なり 束ねよ

 その光で悪しき者を祓い 正しき者を照らせ 光弾よ収束せよ

 サマンサル・クラジミール・アタナシオン・グルド

 収束属性 五芒星魔術ペンタグラム、『ヴァーミリオンノヴァ』!」


 何百という光弾が俺の前で収束し、巨大な光線となって黒鱗竜に照射される!

 キュウゥゥン……バシューーーー!!


 「グ、グルオオ……オオォォ……」

 ズズゥゥン……


 やった、黒鱗竜を倒した!



 ☆今回の成果

  聖女キャルロッテ 回復属性クアトログラム 『エクスヒーリングプラス』

  ガンドルフ 『金剛盾撃ダイヤモンドシールドバッシュ

  サモンロード 影召喚属性クアトログラム 『クイーンオブシャドー』

  サモンロード 雷竜召喚属性ペンタグラム 『サンダードレイク』

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