第38話執念VS信頼

 アナタはアイドルに『信頼』されたことがありますか?……俺はある。

 

 レイブンとベヒーモス、その他にも融合した者が……

 

 「フシュルルル……こんな姿になっちまって、

 私は人間なのか?モンスターなのか?もう自分がわからなくなってしまった……」

 暴風獣ガルーダの頭には、『鞭使いの赤サソリ』が融合している。

 

 「ガルルル……どうせ一度はやられた身、罰は甘んじて受ける。

 すべてを捨てたオレ様は強いぞ、覚悟してもらおう!」

 火災獣ファイアドレイクの頭には、『闇のビーストテイマーのハイエナ』が融合している。

 

 「フェッフェッフェ……この体、最高ですよ、力が漲ってきます!

 蟲たちも、一万匹以上操ることができます……ワレにはご褒美でしたね」

 雷撃獣ヌエの頭には、『蟲使いのムカデ』が融合している。

 

 「四人共、災害獣と融合しているのか……?」

 見ただけで、前より数段パワーアップしているのがわかる。

 

 「カレン、本当に融合は解除不可能なのか?」

 「はい……残念ながら、今まで解除できた事例はないとのことです」

 「くそっ……自業自得とはいえ、何とも後味の悪い……」

 

 「フフフ……この『ギルギル』のラスボスと、プラス暗殺組織の幹部の力、その身で体感するといい」

 コンドルの野郎、自分は離れて高みの見物か……

 

 

 VS赤サソリ+暴風獣ガルーダ

 

 赤サソリ……前に持っていた『スコーピオンウィップ』が四本に増えて、

 まるで触手みたいになってる。

 「うええ、なんか気持ち悪いんですけど」

 赤サソリにはモミジが対峙した。

 

 「またデゴちゃんの『ゴーレムデコピン』を食らわせてやります!

 おいで、デゴちゃん!」

 「バオオオーン」

 モミジの周りに砂が集まったかと思うと、巨大なゴーレムになった。

 「デゴちゃん、『ゴーレム壁ドン』!」

 「バオオオオッ!」

 デゴちゃんが赤サソリに腕を伸ばす!

 

 「テイルキャプチャー×四!」

 ガシッガシッガシッガシィッ!

 「バオオオ!?」

 「うぐっ、これは……」

 赤サソリの四本のスコーピオンウィップが、デゴちゃんとモミジを縛り付ける!

 

 「マジか!?デザートゴーレムの力でも切れないのか」

 「フシュルルル……このまま串刺しにしてやろう……『スコーピオンデスニードル』!」

 「モミジ!」

 ザシュッ!

 

 間一髪、スコーピオンウィップが切れて、モミジとデゴちゃんは助かった。

 「ありがとう、助かったわカレン」

 スコーピオンウィップを切ったのはカレンだったのか……

 

 「モミジ、ここの砂は『呪術の島』の砂より魔力が低くて、目が粗い……デザートゴーレムの硬度や能力も、半分くらいになってしまうはず。ここは私に任せて」

 

 赤サソリにはカレンが立ち向かうようだ。

 「行きますよハーミットさん」

 「承知しました、カレン様」

 

 「フシュルルル……

 この強固なスコーピオンウィップをどうやって切断したのかは分からんが、

 いくら切断しようと無意味だぞ、無限に再生するからな」

 

 「確かにパワーは相当なものなのでしょうが、

 接合の『ふし』の部分は、さほど頑丈でもないようですね」

 「あの状況で『節』の部分だけを狙うとは……」

 

 シュシュシュ!

 カレンがもの凄いスピードで、赤サソリの死角へ回り込む。

 「このっ……『乱気流タービュランス』!」

 ビュオオオオ!

 「くっ……」

 「カレン様大丈夫ですか?簡単には近づかせてもらえないようです」

 

 赤サソリの前に魔法陣が展開……『水』『風』『風』『風』

 「ダル・キル・マダル・オーレシオ

 怒りの竜 空昇りて天の竜となれ その力もって 今こそ世界を浄化せよ 竜巻属性クアトログラム、『トルネイド』!」

 

 巨大な竜巻が発生して、カレンに襲い掛かる!

 「カレンーーー」

 「カレン様ー!?」

 「……私はここにいます」

 「うわっ、ビックリしたー」

 いつの間にかカレンが俺の後ろに……

 

 「チッ、『ファントムシフト』か……」

 カレンの『ファントムシフト』、以前にも増してキレがいい気がする……

 

 「くらえ、『インビジブルエッジ』!」

 見えない何かがカレンを襲う!

 「危ないカレン様!」

 バキィッ!

 間一髪、ハーミットが防いだ。

 

 「ありがとうございますハーミットさん……今のは、見えない風を操った『真空の刃』?」

 

 「フシュルルル……

 そうだ、この無数の『見えない真空の刃』、お前は避けることができるかな?」

 「くっ……見えないとは厄介ですね」

 

 「『インビジブルエッジ』!」

 シュシュシュ!

 なんか風の音だけが、カレンに向かって飛んでいくのがわかる!

 

 「カレン様、上から一つ、左から二つ、後ろからも一つきます!」

 バキィッガガキィッガキンッ!

 カレンが見えない刃をはじいた!

 

 「なんだと!一体どうやって……」

 「フフフ……私ハーミットは覚醒してしまったのです、『超聴覚』という能力を……」

 「『超聴覚』?」

 

 「常人では聞き取れないような小さな音や、大きさ、方角まで、音を聞き分けることができるのです」

 

 「おかげで、コンドルのそばにいなくても、色んな情報を得ることができました」

 「あー、そりゃ確定だな……ハーミット、お前『魔界のカード』を持っているだろ?」

 「えっ、なぜそれを……」

 「危険だから、後で没収ね」

 「えーーーー」

 

 

 「くそっ、ならばこれならどうだ!」

 赤サソリの前に魔法陣が展開……『水』『風』『風』『風』『風』

 「大いなるアトランティスの神よ その四方守りし 風の竜 今こそその力解放し 咆哮せよ  テリブル・コーダ・アーキセクト・スーダオン・カルスト

 大竜巻属性ペンタグラム、『アトランティストルネイド』!」

 

 巨大な竜巻が四本発生、広範囲を破壊しながら周りの物を巻き上げる!

 あんなの食らったら……

 

 「フシュルルル!みんな斬り裂かれてしまえーーー!」

 「カレンーーー」

 「……大魔法を使ったことで『隙』ができました、いきます!

 アドバンスドアーツ、『影足えいそく』!」

 シュインッ!

 

 「えっ、それって魔界で魔角族の皇子シャルドが使った技!?」

 カレンは影から影へ一瞬で移動し、赤サソリの死角へ。

 「えっ!?」

 「アドバンスドアーツ、『ファントムセイバー』!」

 ザザシュッ!

 「グハアアア!」

 

 ズズゥゥンン……

 急所を斬られた赤サソリは、その場に倒れた。

 赤サソリは倒したけど……ハーミットは?

 「ハーミットさん!?」

 

 「わ、私はここ……です」

 地面からハーミットが出てきた。

 「私は、『対魔力結界』には定評があるのですよ」

 どっかで聞いたことのあるセリフだな……

 

 「カレン、お前魔界には行っていないのに、なんで『影足えいそく』が使えるんだ?」

 「マスターが携帯電話で送ってくれた『動画』の中に、『影足えいそく』が映っていました……私は『動画』を見るだけでもアサシンタイプの技を会得することができるようです」

 どんだけ優秀なんだ、お前は……

 

 「ハーミットさん、今回はハーミットさんのおかげで大分助かりました」

 「本当ですかカレン様、では『ご褒美』を頂戴しても……?」

 「『ご褒美』……ですか?」

 「はい、口汚い言葉で、私を罵って下さい!お願いします!」

 「えっ……私が、ですか?」

 「はい、ファルセイン攻城戦の時の、カレン様のあの汚いものを見るような冷たい目が忘れられないのです!ハァハァハァ……」

 

 ハーミット……まさかの『ドМ』だったのか……

 

 「し、仕方ないですね、では、コホン……

 こ、この、薄汚いブタ野郎……『ピーーーーーーー』よ、この出来損ないが!」

 「アハーーーーーン」(エコー)

 「ハーーーン」(エコー)

 「ァーン」(エコー)

 「カ、カレン様……最高です……」

 

 「変態だあ」

 「変態だな」

 「変態ですね」

 

 

 VSハイエナ+火災獣ファイアドレイク

 

 「ガルルル……この体は醜いが、魔獣を二体以上、同時に操れるようになった……

 今度こそその『ケルベロス』をオレのものにしてやろう」

 

 絶えず真っ赤に燃え盛る体に、鋭い爪や巨大な翼がついている。

 間違いなく炎系の技や術は通用しなさそう……

 横にいるヒュドラは、目が真っ赤に光っていて、完全に我を失っているようだ。

 

 「マコト、べロスは奪われないように下げつつ、

 今度こそ『山羊座カプリコーンのゾディアックビースト』の出番だ」

 「はい、めん太……あれ?めん太、どことよ?」

 

 めん太は、また奥に隠れてガタブルしている……

 「あちゃー」

 「あいつ、本当に臆病なんだな」

 

 よそ見をしていたら、ヒュドラが攻撃してきた!

 ボワアアアア!

 「まずい、ポイズンブレスだ!」

 

 バオオオオオ!

 「べロスちゃん!」

 べロスが『獄炎のブレス』で防いでくれた。

 

 「ガルルル……

 ケルベロスよ、そちらに気を回したおかげで隙ができたな……」

 「ガウ!?ガウゥゥ……」

 べロスが苦しそうに……

 「ガオオオオォォォン!」

 べロスの目も真っ赤に光ってる?まさか……

 

 「ガルルル……

 オレが魔獣に触れれば、『本能』を刺激して使役することができるようになる。これでケルベロスはオレのものだ」

 

 そんな!?べロスが盗られた?

 「さあケルベロスよ、『獄炎のブレス』だ!」

 バアアアアア!

 「危ないマコト!」

 間一髪、マコトは獄炎のブレスを横に飛んで避けた……

 でもそこにヒュドラが待ち構えていた!

 

 「きゃああああ」

 「マコトーー」

 マコトがヒュドラに捕まってしまった!

 「ガルルル……

 地獄の番犬ケルベロスと、魔界の大蛇ヒュドラ……この二匹を使役するオレは最強だ!」

 

 くそっ……状況は最悪だ。

 その時、めん太が一歩だけ、物陰から出てきた……

 足がまだガクガク震えている。

 

 俺はめん太に話しかけた……

 「めん太、お前は俺の話していることは理解できるハズだ……

 いいか、弱肉強食の世界で生きてきたお前は、生きるために逃げるのは当然だ。

 でも、大切な人がピンチの時だけは、絶対に逃げちゃだめだ」

 「メ、メエエエェェ」

 

 「マコトが言っていた、お前とマコトはずっと一緒に育ってきた家族のようなものだと。お前もマコトを助けたいんだろ?だから怖いけど勇気を振り絞って、一歩踏み出したんだろ?」

 「メエエェェ……」

 

 めん太は恐怖で足がブルブル震えながらも、マコトを助けるため前に出てきた。

 「よし、一緒にマコトを助けよう」

 「メエエェェー」

 俺はめん太に乗り、ヒュドラにグルグル巻きに捕まっているマコトの元へ。

 「そのまま突っ込め、めん太!」

 

 めん太はヒュドラの他の頭の攻撃を避けつつ、マコトの近くへ。

 「『エクスプロードブロウ』!」

 ズドンッ!

 「シャアアアッ!」

 ヒュドラは悶絶し、マコトを離した。

 

 「ありがとう、めん太……一緒に戦ってくれると?」

 「メエエーー」

 「よし、めん太、『アサルトモード』!」

 ガカァッ!

 

 めん太が光ったかと思うと、その姿は黄金の金属の体に!

 「これが、めん太の本当の姿……?」

 

 「ガルルル……

 たとえ『ゾディアックビースト』でも、二匹の魔獣を使役する最強のこのオレに、勝てるとでも思っているのか!」

 

 

 「マコト、べロスは俺に任せろ」

 「バカめ、今そのケルベロスは『本能』を最大にまで刺激してある……『本能』に逆らえる魔獣などおらぬ!」

 「いーやあるね、『本能』にも勝る、もっと凄いのが!」

 

 マコトが心配そうに俺に尋ねる。

 「マスター、本当にそんなものがあるとよ?」

 「マコト、お前『パブロフの犬』って知っているか?」

 

 『パブロフの犬』……

 犬に餌を与える時にベルを鳴らすと、餌がなくてもベルを鳴らしただけでよだれが出てくるようになる。

 ロシアの生理学者、パブロフが実験で発見した『条件反射』という生理現象のことだ。

 

 「日々のしつけからなる『条件反射』は、『本能』すら超える……さあこっちだべロス!」

 「バオオオオオオン!」

 

 吠えまくるべロスを見て、ハイエナが命令する。

 「いいぞケルベロス、そのまま食い殺してしまえ!」

 俺は大口を開けて襲い掛かってくるべロスを前に、微動だにせず号令を下す。

 

 「べロス、『おすわり』!」

 「ワンッ!」

 シュバッ!

 「えっ!?」

 べロスは俺の前で瞬時に『おすわり』をする。

 

 「ケルベロス、お前いったい何をしているのだ!?」

 ハイエナが驚きながら頭を抱えている。

 俺は続けて指示を出す。

 「べロス、『お手』!」

 シュタッ!

 

 「べロス、『おかわり』!」

 シュタッ!

 

 「べロス、『伏せ』!」

 「ワオン!」

 べロスは俺の前で、見事な『伏せ』を見せる。

 

 「そんなバカな……本能を最大にまで刺激されているはずのケルベロスが……」

 「これが本能に勝る『条件反射』だ、覚えておくんだな……今のうちだ、マコト行け!」

 「行くとよ、めん太!」

 「メエエェェー!」

 黄金のめん太に乗って、マコトがヒュドラに突撃!

 

 「シャアアア!」

 めん太に乗ったマコトは、縦横無尽に駆け回り、ヒュドラを翻弄する!

 「めん太、右!次は上、今度は左斜めとよ!」

 さすが今まで一緒に育ってきた家族だけのことはある、まるで自分の手足のようにめん太を操縦してる。

 「はい、これでお終い!」

 

 気がついたら、ヒュドラの首全部を『もやい結び』にしちゃってる!?

 「な、なんでそんなことに……」

 ハイエナが頭を抱えてる……そこは俺も同意見だ。

 

 「くそっ、ならばオレが直接燃やし尽くしてくれる!」

 ハイエナの前に魔法陣が展開……『炎』『炎』『地』『地』『光』

 原子炉溶融 原子崩壊励起 核分裂の力をもって 想像を絶する炎を

 太陽のごとき爆炎をその手に!

 シン・ヴァレリアル・サンセルト・ジン・ガインゼル・パララシオン

 融解属性 五芒星魔術ペンタグラム、『メルトダウン』!」

 

 この魔法は、俺がシャルドと戦った時に使った融解属性の魔法!

 全てを融解する真っ赤な爆炎が、ハイエナを中心に竜巻のように回転しながら広がっていく!

 

 めん太に乗ったマコトが、ハイエナのメルトダウンに巻き込まれた!

 「マコトーーーー!」

 「ガールガルガルガル……

 三千度以上の高温に焼かれて、灰になるがいい!」

 

 ドバアアーーッ!

 メルトダウンの壁からマコトとめん太が飛び出してきたー!?

 「なんだとーー!?」

 

 マコトとめん太の周りに白い球体が……

 「これは……『霧の結界』!?」

 マコトとめん太は、『霧の結界』に守られてピンピンしてる!

 

 「ちょっとビックリしたけど……今度はこっちの番とよ!めん太!」

 「メエエェェー」

 めん太の角が展開し、頭が『ボーガン』みたいに変形した!

 マコトがボーガンの糸を引くと、光る矢が装填された!

 

 「行けー!『カプリコーンブラスト』!」

 バシューーーーン!

 めん太の頭から打たれた光の矢は、衝撃波をともない、ハイエナとファイアドレイクの体を貫いた!

 「ぎゃああああ」

 ズズウゥゥン……

 

 やった、ハイエナを倒した!

 「やったね、めん太」

 一緒に喜ぶめん太とマコト……

 

 マコトはいつも誰かに守られているという印象がある。

 いったい誰がマコトに力を貸しているんだろう……?

 

 

 VSムカデ+雷撃獣ヌエ

 

 「フェッフェッフェ……

 どうです、強くなったこの体、美しいでしょう?」

 「お前の美的センスはどうでもいい、かかってこい!」

 ムカデの前にはカズキが対峙する。

 

 「これでもくらえ!アドバンスドアーツ、『ダークマターアロー』!」

 バシュンッ!

 闇の気を纏った矢が、ムカデを貫く!

 

 バフゥッ!

 「なにっ!?」

 「フェッフェッフェ……今のは蟲で作ったワレの『蟲分身』……お前の闇分身を真似してみました」

 

 「くそっ、舐めやがって……」

 ガクンッ

 その時、カズキが突然膝をつく……これは?

 「な、なんだ……体に力が入らない、まさか『麻痺毒の鱗粉』か?

 そんな、空中も地面も気を付けていたのに……」

 

 「フェッフェッフェ……

 蟲の中には、姿を擬態できるものもいるのですよ」

 カズキの体に、服の色そっくりに擬態した蟲がついている!

 「しまった、畜生……」

 

 「フェッフェッフェ……

『魔蟲』を仕込んでも、また前のように回避されるかもしれない……

 残念ですが、お前には死んでもらいましょう」

 

 ムカデの前に魔法陣が展開……『風』『風』『地』『地』

 「右に雷電 左に閃光を持つものよ 空を裂き 大地を割れ 汝が名は轟雷

 千雷属性クアトログラム、『ギガボルト』!」

 「くっ……」

 ガガガガガ!!

 「カズキーーーー!」

 

 煙が晴れる……カズキは……無事だ!

 「な、なんでオレ、無事なんだ?」

 カズキの横に『対魔力結界』を張っている男が立っている……あいつは?

 

 「世界中を旅し、久しぶりに帰郷したら……これはいったい何の騒ぎなのだ?」

 「お前、ライゴウか!?」

 立っていた男は、ファルセイン攻城戦でカスミと戦った、元百戦騎士『ひらめきのライゴウ』だった。

 

 「いまいち状況は呑み込めないが、

 ギガンティックマスター、お前たちがこのサザバードのために、あのバケモノと戦ってくれているというのは理解できる」

 「ば、化物だと!?この美しいワレに向かって……」

 

 「どうやら雷の魔法を使うようだな……ならばここは私に任せてもらおう」

 「フェッフェッフェ……

 たかが百戦騎士が、このワレと戦うなど、十年早いですね」

 あいつ、喋りながら足元から蟲を放ってる……?

 

 「ライゴウ、蟲に気をつけろ!空中からも地面からもくるぞ」

 「心配無用、私には先ほどの『麻痺毒の鱗粉』とやらは、通用しない……アドバンスドアーツ、『サンダーフィールド』!」

 バリバリバリッ!

 「なにっ!?」

 

 ライゴウの周りに雷の結界ができ、空中や地面にいた蟲たちが丸コゲになってる。

 「おのれワレの可愛い虫たちを……」

 

 ライゴウの前に魔法陣が展開……『風』『地』『光』

 「雷竜よ 回れ回れ 紫の閃光を解き放ち その鱗触れしものを感電させよ

 紫電属性ハイアナグラム『ローリングサンダー』!」

 ガガガガ!

 

 「フェッフェッフェ……

 ワレの下半身は『雷撃獣ヌエ』……雷の魔法など効きませんよ」

 雷の魔法が効かないとなると、ライゴウには攻撃手段がない。

 

 「雷の魔法が効かないのは私も一緒だ」

 ライゴウも亜人『雷の民』……帯電体質で雷系の魔法や技は効かない。

 

 「雷の魔法が効かないのならば、蟲系の技を使うまで……」

 ムカデの体の周りにたくさんの虫が集まってくる……

 「このアドバンスドアーツ、『キングインセクトキャノン』で葬ってあげましょう」

 ブウウーーン……

 

 「くっ……」

 「ライゴウ、お前確か『帯電体質』で、貯めた電力を魔力に上乗せできるんだよな?」

 「そうだが……?」

 

 「よし、じゃあ俺たちメンバーの『雷の魔法』をお前に放ってやる、受け取れ!」

 

 ノノアの前に魔法陣が展開……『風』『地』

 「大地と大気の精霊よ 力満ち 天より地へ 天の鉄槌を落とし給え!

 雷属性アナグラム、『ボルト』!」

 バシィッ!

 

 モミジの前に魔法陣が展開……『風』『風』『地』

 「雷雲を携えしもの 大気を震わせ 大地を穿ち給え 秩序を乱すものに罰を 雷よ落ちよ  落雷属性ハイアナグラム、『メガボルト』!」

 ガカァッ!

 

 俺の前に魔法陣が展開……『風』『風』『地』『地』

 「右に雷電 左に閃光を持つものよ 空を裂き 大地を割れ 汝が名は轟雷

 千雷属性クアトログラム、『ギガボルト』!」

 ガガガガ!

 

 ライゴウに俺とメンバーの雷魔法を浴びせた……なんかライゴウの体が光ってる!?

 「おお、これだけの『電力』があれば『あの魔法』を……ギガンティックマスター、感謝する」

 

 ライゴウの前に魔法陣が展開……『炎』『風』『風』『地』

 「シエン・ウィル・ストライダ・ゴー・マーシリー

 雷精よ 我らにその激しき翼を与えよ その羽に触れしものに衝撃を

 雷鳥属性クアトログラム、『サンダーバード』!」

 バリバリバリッ!

 ライゴウの上に雷が落ちた!

 煙が晴れたら、ライゴウの腕にでっかい雷の鳥がとまってるー?

 「キエェー!」

 

 

 「な、なんだそれは!?クソッくらえ!『キングインセクトキャノン』!」

 ムカデの前に集まっていた何万匹の巨大な蟲が、一塊になって飛んでくる!

 

 「行け、サンダーバード!」

 「キエエエエーーー!」

 バリバリバリバリーーーーッ!

 ライゴウが放った雷鳥は、蟲の塊を黒コゲにして、そのままムカデに直撃した!

 「ぎゃあああああ」

 

 「やった!」

 喜ぶ俺たちを制止するライゴウ。

 「いや、まだだ」

 ズズズズズ……

 

 黒コゲになった体は再生し、立ち上がるムカデ……

 「『回復魔蟲』か……」

 「フ、フェッフェッフェ……

 その通り、しかも前よりパワーアップした『超回復魔蟲』です……たとえ粉々にされても、復活して見せますよ、フェッフェッフェ」

 

 「くそっ、厄介この上ないな……」

 「ならば、やつが回復できなくなるまで、この『サンダーバード』を叩きこむだけだ」

 「ムダムダ、ムダです、このヌエの体が『帯電体質』を学習しました。

 今の魔法を使えば、この体が雷を吸収して魔力に変換するでしょう」

 

 「くっ……」

 「フェッフェッフェ……

 もうお前は見ているだけしかできません、さっさと退場してもらおうかこのクソザコがぁー!」

 ムカデは自分の前に『スズメバチ』を集め出した……

 ブブブゥーン……

 

 ヌエの体が『帯電体質』を学習したとはいえ、ムカデ本人は関係ないはず……

 あいつを倒すには、あいつの『許容量』を超える電力を畳み込めば……

 そんな大量の電力なんて……あ!

 

 俺は急いで『鏡の民』に話す。

 「頼む、鏡の魔法で『雷の民』と繋げてくれ」

 「わかりました」

 

 『鏡魔法』で『雷の民の島』と繋いでもらった。

 「雷の民のみんな聞いてくれ、今ライゴウが戦っている、みんなの力を貸してくれ」

 「ライゴウ様が?……ザワザワ」

 

 

 「さあ集まってきましたよ、百万匹を超える『スズメバチ』の群れが……」

 「くそ、ここまでなのか?やっぱり私にはサザバードを守ることはできないのか……?」

 

 「ライゴウ、諦めるな!これを持て!」

 「これは……?」

 俺は『鏡魔法』で、雷の民の島にある『蓄電池』のコンセントをライゴウに渡した。

 「今まで貯めた『雷の民の島』の電気、それと島にいる全雷の民の電力を集めた、これを使え!」

 

 ライゴウはコンセントを持つ……

 ブウウウウゥン……

 「こ、これは……とてつもない巨大な電力、これだけあれば!」

 

 ライゴウの前に魔法陣が展開……『炎』『風』『風』『地』『光』

 「雷神よ 我に天翔ける雷の翼授けん 黒き空に閃光を放ち 悪しきものに天の裁きを

 シエン・ウィル・ストライダ・ゴー・マーシリー

 ライト・オー・フル・グレーブル・バーンナウ

 雷鳳属性ペンタグラム、『ブレークサンダーバード』!」

 バリバリバリバリバリィッ!!

 「キエッキエッキエエエーーーー!!」

 さっきよりさらに巨大な雷鳥がライゴウの腕に!

 

 「だから雷の魔法は効かないと言っているだろうがぁーこのボケナスがーーー!くらえ!アドバンスドアーツ『ミリオンスティンガー』!」

 百万匹を超えるスズメバチの針の攻撃!

 「ライゴウーー」

 

 「一体でダメなら、十体ならどうかな?」

 ライゴウの周りには十体の巨大なサンダーバードが!

 「な、なにぃっ!?」

 「行け!『ブレークサンダーバード』!!」

 「キィエエエエェェェェーーーー!!!」

 

 十体のサンダーバードは『ミリオンスティンガー』を一瞬で丸コゲにし、そのままムカデに直撃!

 バリバリバリバリバリバリバリバリィッ!!!

 「ぎゃああああ……きょ、許容量が……は、破裂するぅ!!」

 バアアアァァーーーン!

 

 やった!ムカデを倒した!

 

 

 VSレイブン+震災獣ベヒーモス

 

 マキアが『マキアカリバー風神』と『マキアカリバー雷神』を抜いて構え、レイブンと対峙する。

 「アナタの相手は私です、行きますよ!『ハイブリッド高周波ソード』!」

 

 「アドバンスドアーツ、『超震動拳ちょうしんどうけん』!」

 レイブンも反撃!

 チュイイィィーーン!

 高周波と震動波がぶつかり、高音の機械音が響く。

 

 「うおおおおお」

 「はあああああ」

 ズガガガガガッ!

 レイブンとマキアの凄まじい攻防!

 

 「こいつ二刀流になって、前よりさらに速く、強くなっていやがる……クソッ、さばききれない!」

 バキィーンッ!

 ズザザザァ……

 レイブンが吹っ飛ばされた!

 

 「クソッ、これならどうだ!」

 レイブンの前に魔法陣が展開……『地』『地』『地』『地』『地』

 「大地の神の怒りに触れしもの 断罪の時は来たれり 大地を揺らし 全てを破壊せよ

 ガイアード・スレイシア・シンク・バース

 デイ・ダスド・ヴァイブカイン・シエンテッド・ハレイモア

 大地震属性ペンタグラム、『アースシェイク』!」

 

 「広範囲の地震系魔法だ!マキア、危ない!」

 「大丈夫ですマスター」

 そう言うと、マキアは空中に『対打撃結界』を無数に展開した。

 

 「アドバンスドアーツ、『雷足らいそく』!」

 バリバリバリバリッ!

 もの凄いスピードで空中を飛び回り、一瞬でレイブンの真上へ。

 

 「新おーぎ、使います!」

 マキアは右手に持った『マキアカリバー雷神』を逆手に持ち替えた。

 「はあああああ!」

 回りながらレイブンに剣を振り下ろす!

 

 「くっ、『超震動拳』!」

 「シン・おーぎ、『マキアクロスインパクト』!!」

 二刀流のマキアカリバーをクロスさせて、レイブンに直撃!

 ガガガガガガガ!!

 「うおおおおおお!」

 

 マキアクロスインパクトの衝撃で、レイブンの腕ごと本体を斬り裂いた!

 ズズウゥゥン……

 レイブンはその巨体ごと、地面に倒れた。

 

 「す、凄い……」

 アンタッチャブルズのジュンが信じられないという顔で、その光景を見ている……

 

 風と雷の魔力石でパワーアップし、マキアインパクト二発分の威力を放つ『マキアクロスインパクト』は、今までのマキアのレベルアップを抜きにしても、単純に三倍以上の威力がある。

 今のマキアなら、あの審判の塔も一撃で破壊することが可能だろう。

 

 震災獣ベヒーモスと融合して、数段パワーアップしたあのレイブンを、いともあっさり倒してしまうとは……

 マキアの成長率は、他のメンバーとは一線を画すほど高い。

 徐々に強くなるというより、元々強くて、それを思い出しているかのような……そんな気がしてならない。

 

 ズズズズズ……

 「やっぱり復活するか……多分あいつにも『超回復魔蟲』が仕込まれているな」

 

 レイブンとベヒーモスのバラバラになった体は、繋がってもうほとんど傷も回復している。

 「クソックソッ!ちょっと強くなったからって、いい気になるなよ!」

 

 「……復活するのなら、復活できなくなるまで何度でも『マキアクロスインパクト』を叩きこみます、覚悟して下さい!」

 「この野郎……いつもいつも上から目線で喋りやがって、気に入らねぇ!」

 

 俺がマキアとレイブンの会話に割って入る。

 「『名もなき村』で初めて会った時からずっとそうだが、お前はなぜそんなに人を見下したがるんだ?」

 

 「オレ様は『誇り《プライド》』が高いんだよ、ザコ共と一緒にするな!」

 「違う」

 「なに?」

 

 「『誇り《プライド》』とは、たった一つの譲れないものを自分の中に持つこと。お前のは、自分が他のやつより優位に立ちたいという、ただの独りよがりだ」

 

 「だから何だ!?オレはオレのしたいようにやる、その邪魔をする奴はみんな殺してやる……

 テメーらはオレ様に、殺されなきゃならねーんだ!」

 

 レイブンの前に魔法陣が展開……『地』『地』『地』『地』『地』

 大地の神の怒りに触れしもの 断罪の時は来たれり 大地を揺らし 全てを破壊せよ

 ガイアード・スレイシア・シンク・バース

 デイ・ダスド・ヴァイブカイン・シエンテッド・ハレイモア

 「大地震属性ペンタグラム、『アースシェイク』!」

 ゴンッゴンッガガガガッ!!

 

 「また同じ魔法を……」

 マキアは空中に『対打撃結界』を張り、『雷足』を使って稲妻のように飛び回る!

 「これで終わりです、新・おーぎ、『マキアクロス……」

 

 「アドバンスドアーツ、『エイプリルフール・武器を離せ』!」

 「なっ、しまっ……」

 マキアは右手の『マキアカリバー雷神』を離してしまった!

 カランカラン……

 「あいつ、『愚者のカード』がなくても、あの技まだ使えたのか!?」

 

 「くらえっ、『超震動拳』!」

 「くっ、『マキアインパクト』!」

 ガカッ!

 

 「ギャーハハハ、片剣なら何とか耐えられる……このまま握り潰してやるぜぇ!」

 「残念ながら、それは無理です」

 「なんだと!?」

 「なぜなら、私はマスターを『信頼』しているからです」

 そう言いながら、マキアは右手を高く上げた……

 「マスターーーー!」

 レイブンは俺のほうを見る。

 

 俺の前に魔法陣が展開……『炎』『風』『光』『闇』

 「カイン ガロン ヅア ベルデルタ

 我に物質の分解・構築の力を与えよ 理路整然 万物の理のもと 物質を作る力を

 練金属性クアトログラム、『アルケミー』!」

 

 伸ばした腕の先に磁石のレールが配置され、その間には『弾体』ではなく、俺が拾った『マキアカリバー雷神』が。

 「受け取れマキア!『超電磁キャノン』!」

 バシューーン!

 

 パシッ

 マキアはノールックで、俺の飛ばした『マキアカリバー雷神』を受け取る。

 「な、なにーーー!?」

 

 「これで終わりです、シンおーぎ……」

 マキアの気力が最高潮に高まり、風のチカラが集まっていく……

 

 「マキア、」

 「クソッ」

 

 「クロス、」

 「クッソッ……」

 「マキア、行けーーーーーーーッ!」

 

 「インパクトーーーー!」

 「クッソオオォォォ!」

 

 ズドガアアアアア!!

 「があああああああ!!」

 凄まじい衝撃とともに、レイブンの体は粉々に吹き飛んだ。

 

 「ふう、終わりましたね」

 あれだけ凄いことをしておきながら、まるで『お使い』を済ませたぐらいのテンションで話すマキア。もう凄すぎて、言葉が出ない……

 

 「このまま放置しておけば、また復活するだろう……スミレ」

 「はい、任せて下さい」

 

 スミレが『ネクロノミコン』を開く。

 「地獄の章、『地獄巡り』!」

 レイブン、赤サソリ、ハイエナ、ムカデの周りを、結界が囲む。

 「レイヤー展開、地獄の章 地獄巡り最終節、『餓鬼魂がきだま地獄』!」

 

 「ぎゃああああ」

 「こ、これだけはやめてくれぇぇぇ」

 「足が……腕が……助けてくれぇ!」

 何百、何千という餓鬼魂に、生きたまま食われていく……

 

 餓鬼魂の口の中で、今にも食われそうなレイブンが、恨めしそうにこちらを睨んでいる……

 「ギガンティックマスター、なんで、なんでオレはお前に勝てないんだ!畜生、ちくしょおおぉぉーーーーー!」

 バクンッ!!

 

 レイブンは右手だけを残して、餓鬼魂に食われた……

 「レイブン、哀れな奴……せめて来世では、白い翼が黒く染まらないことを祈る……」

 

 

 ☆今回の成果

 

  カレン アドバンスドアーツ『影足』『ファントムセイバー』習得

  マコト 『カプリコーンブラスト』習得

  ライゴウ 『サンダーバード』と『ブレークサンダーバード』習得

  マキア 新(シン)・おーぎ『マキアクロスインパクト』習得

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