第28話恐怖症、克服?

 アナタはアイドルに『しがみついた』ことがありますか?……俺はある。


 暗殺組織デスサイズとの戦闘後、俺たちは図書館島へ戻り、全員回復した。


 俺は館長に呼ばれ、スミレの話をした。

 「スミレは?何ともないのかい?」

 「あれだけ凄いことをしたんだけど、特に何も……

 アナライズで体調とかも調べたけど、どこも悪い所は見当たらなかった」


 「そうかい……まあ何も無いに越したことは無いんだがねぇ」


 「今回の件は、スミレの特異体質というよりは、本の方がスミレに力を貸してくれたような……そんな気がする」

 「ネクロノミコンが、人間にチカラを……かい?」


 「あの本はまだまだ謎が多い、いろいろ調べてみる必要があると思う」

 「引き続きスミレのこと、よろしく頼むよ」



 次の日、念のため『雷の民の島』へ行き、雷の民たちに話を聞いてみた。

 ほとんどの民は首長の行為を知らなかったようだが、一部の民は知っていて黙認していたようだ。


 「……暗殺組織に便宜を図る見返りに、金銭をもらっていた。お陰でギリギリ死なずに生活できた、首長には感謝している」

 「ある程度やむを得ない事情もあったかもしれないな……」


 俺たちは雷の民たちの話を聞き、暗殺組織のアジトに最も怪しそうな建物へ行ってみた。


 「予想はしていたけどやっぱりもぬけの殻だねぇ。結構有名な組織らしいし、大陸中にアジトがあるんだろう」


 「それだけ支援者もいるってことか……」

 俺たちは危険はないと判断し、図書館島へ戻ることに。


 大図書館では、『錬金術師アルケミスト』のシイナが、ほぼ不眠不休で『魔力石』の事を研究していたようだ。

 「マスター、『魔力石』の事いろいろ分かったので、メンバーの武器や防具に合わせてみたいんです。相談に乗ってください!」

 「わかった、わかったから、とりあえずお前はいったん休め、これは命令ね」

 勤勉すぎるっていうのも考えもんだな……



 それから各島のイベントを、メンバー全員で手分けして手伝うことに。

 ……気が付けば魔導連邦サザバードに来てから、もう一か月が過ぎていた。


 「よーし、では今日は各島のイベント状況の進捗具合を確かめに訪問する」

 「おーー」


 暗殺組織との戦闘で、グリフォンで空を飛べた俺は、ほんの少しだけ高所恐怖症が薄れた気がした……なので、高所に慣れるため今回の島訪問は館長とグリフォンで行くことに。

 バサッバサッバサ

 「キエーーー」

 「頼むからゆっくりめでお願い!」



 まずは『筋肉団長』のいる『マッスル島』だ。


 「久しぶり、どうだい団長……って、どうしたんだその体!?」

 団長は、以前のバキバキの体は見る影もなく、ブクブクに太っていた。


 「やあ、久しぶりデブ、あれから温泉が良すぎて筋トレさぼりがちになってしまったデブ」

 語尾が『マッスル』から『デブ』になってる!

 「やばい、俺が温泉に入った後の『ビール』まで教えちゃったから……」


 これも『後悔先に立たず』かも……

 まあ、後からやる気を出すように俺から説得しよう、うん。


 「実はこっちに、俺が欲しかった新しい施設を試作してみたんだ」

 俺は団長とみんなを連れて、少し離れた小さな小屋に。

 「なんデブかこの小屋は?」


 「これは現実世界で俺の大好きな『サウナ』だ」

 「『さうな』?」

 

 俺はみんなを水着姿にして、その小さな小屋の中へ。

 「あっつーい!なんですかこの部屋、ここだけ真夏みたい」


 「密閉した小屋の中で、焼いた石を長時間入れておいたんだ。ここで十分も座っていたら、大量の汗をかいてスッキリするぞ」


 「汗をかくための施設……ってことデブか?」

 「そういうこと」


 さっそく全員イスに座り、十分待つことに。

 「これは……結構キツイ、デブね……」


 「肌に塩なんか塗ると美容にもいいらしいぞ。あとこんなものもある」

 そう言って俺は、サウナストーンの上に柄杓で水をかける。

 ジュワワワ……

 「うぅっ、これは……蒸気が上がって、さらに熱く……」


 「これは『ロウリュウ』っていうんだ。蒸気で湿度を上げ、一気に体を温められる……発汗作用は、新陳代謝やデトックス効果、快眠効果なんかも期待できるぞ」


 そう言えば『ロウリュウ』って何語なんだろう……?

 響きだけ聞くとデッカイ『湯気の竜』みたいだな……

 俺は空をでっかくて白い『湯気の竜』が飛んでいるのを妄想してニヤニヤしながら、みんなにタオルで熱波を送る。


 「ギャーー、あついーー」

 その時砂時計が丁度十分を示す。

 「よし、十分経った、みんな川に飛び込め!」


 ザバーーン!

 「ひえーー今度は冷たいーーー心臓が止まるーー!」

 「ハハハオーバーだなぁ、汗が引いたら河原にあるイスでみんな横になるんだ」


 河原にあるイスに各々みんな横になる……

 「これは……なんというか……頭がスッキリして、体がふわっと軽くなったような気が……」

 「それが『ととのう』っていうやつさ」

 「『ととのう』……?」


 サウナには自律神経やホルモンバランスを整えて、一種の瞑想のような効果もあると言われている。


 「なるほど、これはいいデブね……そしてこの後に飲む『ビール』もまた最高というわけデブか」

 「えっと、それは……」

 これはまさかの『本末転倒』というやつでは……俺し~らないっと。



 次に俺たちは『魔獣島』へ。

 異世界版クラウドファンディングと、酋長による魔獣のスカウトで、動物園……いやこの場合『魔獣園』かな?も、順調に準備が進んでいる。


 労働力も現地の獣の民を使って、地域に還元し、見た目もだいぶ様になってきた……もうちょいだな。


 実はここにはもう一つ、施設を作った……それは『養鶏所』。

 サザバード中の『サザバード』を捕まえてきて、この養鶏所で育てている。

 館長が言った通り、サザバードは繁殖力が高く、現実世界のニワトリは成長するのに約四か月、あのブロイラーですら二か月かかるのに、サザバードはたった一か月で成長し、卵も一日に何個も生むため、あっという間に百羽を超えた。


 「一応百羽を超えたら食肉として使ってもいいと、館長の許可が出ているから、これから捌いて、ミユキに料理を作ってもらおうと思っている」


 「おおー、メニューは何ですか?」

 「ミユキ」

 「今回は大人用は『親子丼』、子供用は『オムライス』よ!」

 「やったー!」

 サザバードは卵も一級品なのだ。


 今回これをクラウドファンディングの返礼品として、援助してくれた人たちに味わってもらうことにした。

 ミユキが腕によりをかけて作った『サザバードの親子丼』は、代表して、ひそかに援助してくれていた館長に。

 「さあ、召し上がれ」

 ゴクッ……


 館長が一口、サザバードの親子丼を口に入れる……

 「……」

 「あれ、館長……?」

 「うまいっ!こんなにうまい飯は初めて食べたよ!

 プルプルの半熟卵に、しっかり噛み応えのある鶏肉……まるで丼ぶりの『カイエル王城』だよ!」

 凄いたとえが出たな!


 もう一つの返礼品『オムライス』は、勇気を出して十サザンを献金してくれたあの女の子だ。

 「召し上がれ」

 「いただきます……」

 パクッ……


 「うおいしぃぃーーー!なにこれなにこれ!

 大きい鶏肉が入ったチキンライスに、フワッフワの卵が覆いかぶさって……まるでこれは食の『中央島のユグドラシル』よ!」

 もうたとえがよくわからん!


 一応食べているところを、鏡の魔法で全大陸に中継していたんだけど……

 「ゴクリ……おい、資金を援助したらその『サザバードの親子丼』とやら、食べさせてくれるんだよな?」

 「ぼく、もらったお小遣い全部あげるから、その『オムライス』食べさせて~」

 「お、おれも」

 「私が先よ!」


 鏡の向こうは大騒ぎ、その後も資金援助が止まらず、最終的には『一千億サザン』(一億円相当)が集まった。

 これなら素晴らしい『魔獣園』が建設できそうだ。


 「ありがとうギガンティックマスター殿、お陰で今年は笑顔で年を越せそうガウ」

 「私からもお礼を言わせてください、これで研究を進めることができそうです、ありがとうございました」


 うんうん、まあ動物園って元々動物たちを研究・飼育したりするのが目的の施設だしね。

 「あ、研究員さん、丁度お願いがあるんだけど」

 「はい」

 「アナタ今日から『魔獣園 園長』ね」

 「はい?」


 このあと館長と相談して、『サザバードの鶏料理レストラン』の建設を試案中らしい。これで『魔獣島』は放っておいても大丈夫そうだ。



 鏡の魔法で全大陸につながっていた時に、聞いてみた。

 「この中に、亜人の『霧の民』って人はいる?」

 「はい……私、霧の民です」


 「ちょっと聞きたいことがあるんだけど……霧系の魔法の中で、時空を曲げることができる魔法ってある?」

 「時空を曲げる魔法ですか?……六芒星魔術ヘキサグラム以上だと私には分かりませんが、私が知っている魔法の中では、そういう魔法は存在しません」

 「そうか……」


 「ただ……」

 「ただ?」

 「『霧の魔獣』の噂は聞いたことがあります」

 「『霧の魔獣』?」


 「はい、十年くらい前に、濃い霧が発生したとき、霧の中に人や獣のような影を見たという報告がありました。それ以来、その霧の事を『霧の魔獣』と呼んでいるそうです」

 「『霧の魔獣』か……」

 「時空と関係があるかどうかわかりませんが、

 その霧が発生したときに、物がなくなったり、人が神隠しにあったりすることが多くなるそうです」

 マコトと何か関係がある……かな?



 その次は『雷の民の島』へ。

 首長が亡くなってしまったので、次の首長を決めるべく、今島は選挙の真っ最中。

 その間に俺が設置した『ソーラーパネル』と『蓄電池』で、島のビリビリは無くなり、観光客なんかもチラホラ……


 「ここは元々風光明媚な土地だったからね、ビリビリさえなくなればそれなりに観光業で儲かるのさ」


 蓄電池で貯めた電気を現実世界で売って、雷の民に還元した。

 「手に入った収入で、やってほしいことがあるんだけど」


 俺が提案したのは『イルミネーション』。

 現実世界でイルミネーション用の電飾を購入、雷の宮殿とその広場に設置した。


 夜になり、電飾のスイッチをオン!

 パアアーーー

 「わあーー、綺麗……」


 全部で三百万個の電飾を飾った雷の宮殿は、幻想的で雰囲気バッチリ、モチロン全部『LED』です。

 「電気は余っているんだし、毎晩イルミネーションしたら、ここは恋人たちの憩いの場になるかもね」

 「ステキ~」

 メンバー達もうっとり。



 お次の島は『砂の民の島』。

 モミジがオアシス長に報告。

 「確かに数年前、島から出ていった若者がいた……まさか暗殺組織に入っていたとは」

 「でも、このペンダントと『ジオマグネフォース』のお陰で勝てました」

 「そうか、それは何よりだ」


 「オアシス長、さっき空から見たら、このオアシスのまだ先の方に、廃墟のようなものが見えたんだけど……」

 「それは我々砂漠の民の上位種、亜人『鬼の民』の村だな」

 「『鬼の民』……?」


 「鬼の民は昔人間と戦争をして負け、迫害された種族……

 その戦闘力は凄まじく、一人で一国を相手にできた者もいたと言われている」


 「そんな凄い亜人がいるのか!?」

 「今はもう絶滅していて、生き残りが存在するのかどうか」


 「まだまだ俺の知らない種族や亜人がいるんだなぁ……」



 次の島は『音の民の島』。

 カラオケの機材を置いて、そのままだったけどどうなったかな……?


 「ラ~ララ~ラ~ララ~♪」

 「お~と~こ~のぉ~そ~ら~♪」


 お、歌ってる歌ってる……って歌ってるのは音の民たちばっかり?

 「お~ギガンティックマスターど~の~♪おせ~わ~に~なって~ま~す♪」


 「おせ~わ~に~なって~ま~す♪っじゃないよ、音の民がカラオケ独占しちゃったらダメでしょう?」

 「す~みま~せ~ん♪でも~がま~んできま~せ~ん♪」


 ……音の民にカラオケ機材を預けたらこうなるのか……まあ全部うまくいくとは限らないよなぁ。


 「まあまあ、カラオケはダメだったけど宿泊施設で音の民の音楽を流すってアイデアは大成功みたいだよ」


 これも実は俺のアイデアだったんだけど、現実世界でも『ヒーリングミュージック』っていうのがある。

 宿屋なんかの宿泊施設で、ゆったりした音楽をかけることでリラックス効果を高め、安眠や不安除去などの効果が見込める。


 カラオケは失敗だったけど、宿屋はまずまずだから、まあ良しとしよう。

 どんな音楽を流すのか、今度俺も泊まってみよう……



 次に俺たちが向かったのは『占術島』。

 暗殺組織との戦闘後、レイブンの持っていた『愚者』のカードを拾った。

 それを占術長に見せてみる。


 「間違いないね、昔アタシが持っていた『愚者』のカードだよ」

 「やっぱりそうか……これを所持していたレイブンって奴が、『呪い』のチカラを使っていた」

 「愚者のカードは所持者に呪いのチカラを授けるんだね……アタシが所持者じゃなくてよかったよ」


 「このカードは、もともとの所持者であるうちのメンバーのコウが保管するから」

 「それがいいね……他にも失くしたカードが存在するんだろ?」

 コウが答える。

 「はい、あとは『世界』『正義』『恋人』『死神』『隠者』『審判』の六枚です」


 「フム……その中だと『死神のカード』をこの店に持ってきた男がいたね」

 「本当ですか?」

 「ああ、当時は『魔界のタロットカード』の存在を知らなかったからね……その男もその『死神のカード』についていろいろ知りたがっていたよ。

 でも悪い噂が絶えない男だったはず、たぶん暗殺組織の人間だよ」


 「暗殺組織?ひょっとしてその男ってのは、長髪で左の頬に赤いタトゥーをしたやつじゃなかったか?」

 「いや違うねぇ、アタシが見たのは短髪で片目に眼帯、顎にひげを蓄えたガッチリしたおっさんだった」


 「う~ん、じゃあ違うか……」

 「どっちにしても警戒するに越したことは無いよ、絶対に良いことに使うわけがない」

 「そうだな……」


 俺たちは占いの館を出た。

 「ふう、残りのカードはどこへやら……」

 コウがタロットカードを眺めながら呟いた。


 「『隠者』と『審判』には心当たりがある」

 「本当ですか、マスター?」


 「『隠者』のカードは確か『ハーミット』っていうんだろ?だったらあいつが怪しい……」

 「あいつ……ですか?」


 「『審判』のカードは多分『審判竜ジャッジメントドラゴン』が絡んでいるとみた」

 「ジャッジメントドラゴン!?」


 「今すぐは無理だけど、今度探りを入れてみよう」

 「ありがとうございます!」



 最後は『呪術の島』。


 呪いの館の前は、デスサイズとの戦闘の跡が、まだ少し残っている……

 ギイィィ……

 古い木の扉を開けて、中に入る……


 「呪術長、いる?」

 「なんじゃ、またおぬしか……何の用じゃ?」


 呪術長はまた大きな鍋で何かを作っている……

 「どうせまた、『野菜の煮込みスープ』を作っているんだろ?」

 「ご名答、よくわかったね」

 「そう何度も騙されてたまるかっての」


 「で、今日は何の用じゃ?」

 「そうそう、暗殺組織が攻めてきたとき、レイブンって奴が呪いの技や術を使ってきただろ?また戦闘になったときのために、『式紙』とかの呪いグッズが欲しいなぁっと……」


 「確かに……『式紙』はワシしか作れんのぉ」

 「そうなんだ……ぜひ俺にも作ってくれよ、モチロンお代はちゃんと払うからさ」


 「ふむ、お前さんの周りには女の子が多いからのぉ、メンバーからの呪いも警戒しておいた方がいいのぉ、女の嫉妬は怖いぞえ、ヒッヒッヒ……」


 「そ、そんなわけねぇし……」


 「まあ丁度よいわ、『式紙』の作成には恨みを持っている女性の『髪の毛』が必要じゃからのぉ」

 「か、髪の毛?」


 「『式紙』の『紙』は、もともと『髪の毛』の『髪』からきておるんじゃよ」

 「そうなんだ、知らなかった……」

 「モチロン、ウソじゃ」

 「おおーーーーい!!ウソかよ!」


 「心配せんでも『式紙』はタダで作ってやる、ウヒャヒャヒャ」

 「くそ~また騙された、この婆さんめ~」


 *****


 全部回り終え、俺たちはまた図書館島へ戻ってきた。


 「館長、この世界には『映画』ってあるのかい?」

 「『えいが』……って何だい?」

 「そうか、やっぱりないんだな。

 映画っていうのは、『シナリオ』があり、演技をする『役者』がいて、それをカメラなどで『撮影』して、他のたくさんの人に見てもらう娯楽作品ってとこかな」


 「ほう……」

 「本の民は基本的に本しか読まないんだろうけど、この『DVDプレーヤー』で映像なんかも見ると、また面白いんじゃないかな」


 俺はとりあえず、ポータブルのDVDプレイヤーで、以前元ファルセイン王にも貸したことのある、『あいどる24』のライブ映像を流した。


 「おおーこれが『えいが』……

 アンタたち、みんなこんなに歌って踊れるのかい、凄いねぇ」

 「まあ、これは映画じゃないけど、映画もこんな風に動いて音も出るんだ、面白いだろ?」


 「確かに面白いよ、私たち本の民は文字しか見てないからねぇ」


 「いろんなDVDがあるから見てみなよ、そして今度は『プロジェクションマッピング』で、大陸大図書館の壁を使って上映会をやったら、盛り上がるぜ」


 「そんな凄い装置があるのかい……アンタのいる世界は凄いねぇ」



 そんなこんなで次の日、俺たちはグリフォンに乗ってとうとう中央島へ行くことに。

 「ううぅぅ……まだちょっと怖い」

 「大丈夫ですマスター、私がついています」

 マキア頼もしい……

 俺は悪いと思いながらも、マキアにガッチリしがみついた。


 「グリフォンで空から行けば、四・五時間もあれば中央島に着くよ。

 アンタは携帯電話の『お天気アプリ』で、風の動きを教えておくれ」


 「わかった、任せてくれ」

 「では行くよ、出発!」

 キエーーーー!


 俺たちを乗せたグリフォンは、走り出し、そのまま空へ。

 四・五時間も飛ぶと、本当に中央島が見えてきた。


 「中央島が見えてきたよ、風はどっちだい?」

 「今は……南東から北へ向かって、強めの風が吹いている!」

 「よーし分かったよ、みんな私についておいで」


 館長の後をついていって、風を抜けると、ユグドラシルが目の前に……

 「おおースゲー」


 「キュエエェェーーー!!」

 「なんだなんだ!?」

 グリフォンが急に暴れ出した!


 「どうしたんだい?ひどく怯えている……操縦できないよ」

 館長も焦ってる。


 グリフォンが怯えているって、まさか……

 俺は上を見上げる……真っ黒で巨大な生物が数十体、俺たちの動きを観察しているように飛んでいる、あれは『ワイバーン』?

「あれは……『グレートワイバーン』!」


 『グレートワイバーン』って、ワイバーンの上位種か?

 グリフォンたちはグレートワイバーンに睨まれて、完全に委縮している。


 「この状態じゃ着地は無理だね、引き返すよ!」

 館長の号令の下、俺たちは引き返すことに……



 バサッバサッバサ

 「キエッキエッーー(泣)」

 俺でもグリフォンが怖くて泣いているのがわかる……よほど怖かったんだな。


 「う~ん、俺たちだけなら何とかなったと思うんだけどなー」

 「しかし空中での戦闘となると……」

 「そうだなー、グリフォンがあれじゃな」

 「すまないねぇ、普段は命令は絶対に聞くんだけど……」

 「いや、『グレートワイバーン』がいるんじゃ仕方ないよ、他の手を考えよう」


 「マスター、現実世界の乗り物を使うんですね?」

 「そうだな、さすがの俺も『戦闘機』とかは組み立てられないから、現実的な手としては『気球』がいいかな」

 「『気球』……ですか」


 「いろいろ必要なものがたくさんある、出発はファルセインからになるだろう」

 「いったんファルセインの自宅に帰宅しますか?……マスターなら一旦現実世界に戻って、またドアですぐにファルセインに行けます」

 「そうだな、そうしよう」


 俺はオルタナティブドアを出し、館長たちにお別れを言う。

 「いろいろお世話になった、感謝している」

 「また必ずおいで、みんな待っているよ」

 俺たちはそのままオルタナティブドアを通ってファルセインの自宅へ。


 まだ俺たちは知らない、そこからとんでもないことが起こるのを……



 ☆今回の成果

  マッスル島に『サウナ施設』

  魔獣島に『養鶏所』

  雷の民の島に『イルミネーション』

  音の民の島に『ヒーリングミュージック宿屋』

  ミユキ 『サザバードの親子丼』と『サザバードのオムライス』

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