第27話暗殺組織デスサイズ

 アナタはアイドルに『嫌われようとした』ことがありますか?……俺はある。


 「くそっ、よくも私の島の民を……これでもくらえ!」

 首長の前に魔法陣が展開……『風』『地』『光』

 「雷竜よ 回れ回れ 紫の閃光を解き放ち その鱗触れしものを感電させよ 紫電属性ハイアナグラム『ローリング……」


 突然首長の動きが止まった!


 「ぐ……なんだ、これは……体が……」


 「フェッフェッフェ……それはワレの可愛い虫たちの鱗粉から作った『麻痺毒の鱗粉』……お前はもう指一本動かすことはできません」


 レイブンの後ろから三体の黒い影が……?

 「お前ら……何しに来た!?」


 「ガルルル……

 お前だけでは心もとないと、ボスがオレたちも寄こしてくれたのさ……感謝するんだなガルルル……」


 「フシュルルル……

『雷の島の首長』、お前はもう用済みだ……用が済んだ『おもちゃ』は処分する、当然のことだよなフシュルルル……」


 フードを被った男の肩には赤いサソリが……あれは『蠍座スコーピオンのゾディアックビースト』!?

 「アサルトモード!」

 男の掛け声と同時に、サソリは巨大な金属の鞭に変化した!


 「テイルキャプチャー!」

 金属の鞭が首長をグルグル巻きに!

 「ぐう……」

 「スコーピオンデスニードル!」

 ドスッドスッドス!

 「グハッ!」

 鞭の先についた針で首長をめった刺し!首長は絶命した……


 「首長!……こいつら一体……」


 「あいつらは暗殺組織デスサイズの三幹部……『赤サソリ』と『ハイエナ』、それに『ムカデ』だ!」


 「カズキ、知っているのか!?」

 「暗殺組織にいたときに、一度見たことがある……相当な実力者だ、気をつけろ!」



 その時、俺たちの後ろから一人の女性が……

 「マスター、お待たせしました!修行完了です……って、なんですかこの状況?」

 「ナイスタイミング、モミジ!レイブンと暗殺組織の幹部が襲撃してきた!」

 「なんですってー!?」


 モミジのペンダントの石に光が灯ってる……

 「砂漠の民の魔力を注いでもらったんだな?」

 「はい、修行の成果もお見せしますよー!」


 「フシュルルル……貴様、いい風を纏っているな……砂魔法の使い手か?」

 「そのセリフ……まさかアナタは、『砂漠の民』?」


 「そうだ、『元』な……

 ワタシはあの島での暮らしに嫌気がさし、出て行って暗殺組織に入ったのさ。

 人を嬲って金が稼げるなんて、最高の職場だよ!フシュルルル……」


 「赤サソリ、悪い人ですね……アナタのような人は、『砂に代わって、デコピンよ』!」

 おい、大丈夫かそのセリフ!?



 「ワタシの名は闇のビーストテイマー『ハイエナ』。

 地獄の番犬、ケルベロスを使役しているの貴様か?」

 ハイエナって奴の横には、頭が九つある大蛇、『ヒュドラ』が寄り添っている……


 「『闇のビーストテイマー』と聞いては無視はできないとよ……私が相手になるとよ」

 「おおマコト!とうとう『山羊座カプリコーンのゾディアックビースト』の出番か?」

 「任せておいてとよ、おいで!『めん太』!」

 「メ、メエエェェ……」

 めん太はビビッて、一番遠い建物の陰に隠れている……


 「めん太は家にいたときから相当なビビりやったけん……しょんなか、べロスちゃん!」

 「ワオン!」

 「ガルルル……お前を殺して、そのケルベロスもオレが頂こう、ガルルル……」



 「マスター、あの『ムカデ』というやつはオレにやらせてくれ……

 あいつのクラスは『インセクトマスター』、オレに『魔蟲』を仕込んだのはあいつなんだ!」

 「なんだって!」


 「フェッフェッフェ……お前カズキですか?

 そんなにまたワレの『魔蟲』を食らいたいのですか……いいでしょう、また組織の操り人形になるといいです、フェッフェッフェ……」


 「お前の『魔蟲』を二度も食らうなんて御免だ!それにオレはもう二度と暗殺組織には戻らねぇ!」



 レイブンには俺が対峙した……


 「レイブン、性懲りもなくまた罪を犯しやがって……このままじゃお前もただでは済まないはずだ」

 「ヒャハハハ、どうやらこのカードを所持していると罪が加算されないらしい、これでオレは殺し放題だ!」


 「そんなことはさせねぇ!」


 「新しく手に入れたこのチカラ、お前にも見せてやるよ!」


 レイブンの前に魔法陣が展開……『地』『闇』『闇』

 「呪いの王に この贄を捧ぐ 偽善なる者を地獄に落とせ!呪縛属性ハイアナグラム、『カースバインド』!」


 何か呪いの言霊のようなものが俺の周りに集まってきた!

 「ガッ……か、体が……動かない……?」

 「マスター!?」


 「この呪いのチカラで、今度こそお前を亡き者にしてやるぜ!『呪霊騎士カースドナイト』、行け!」


 「そうはいきません!」

 マキアが剣を構えて俺の前に立つ。

 スバババ!


 マキアが斬ったそばから呪霊騎士カースドナイトは元に戻っていく!

 「くっ、実体が無いから斬っても手ごたえがない……」


 「さあ、愛しのギガンティックマスターを守りながら、オレと戦うことができるかな?」



 鞭使いの赤サソリVSモミジ


 「あんな優しい人たちばかりだった砂漠の民に、アナタのような人がいるとは……私が成敗します!」

 モミジの前に魔法陣が展開……『風』『地』『地』

 「砂の王に進言します 顕現せよ 地上を脅かす者どもを蹴散らす力となり給え 砂属性ハイアナグラム『デザートストーム』!」


 「フシュルルル……」

 赤サソリってやつの前にも魔法陣が展開……『風』『地』『地』

 「砂の王に進言する 顕現せよ 地上を脅かす者どもを蹴散らす力となれ 砂属性ハイアナグラム『デザートストーム』!」


 「なっ!?」

 モミジのデザートストームと、赤サソリのデザートストームがぶつかる!


 「きゃあああ!」

 モミジの方にダメージが!?


 「フシュルルル……ワタシは元砂漠の民、貴様のような小娘に砂の魔法で負けるほど落ちぶれちゃいない」

 「くっ、さすがですね」


 その時、赤サソリのクチがニヤリと歪む……足元の地面にスコーピオンの鞭が刺さっている、まさか!

 「モミジ!」

 「……ッ!」

 地面から飛び出してきたスコーピオンの鞭が、モミジの後ろから襲い掛かる!


 「テイルキャプチャー!」

 「あう!」

 スコーピオンの鞭が、モミジをグルグル巻きにした!


 「フシュルルル……捕まえたぞ、一度捕らえれば二度と抜けることはできん!」

 「クッ……」

 なんだ!?モミジの周りに砂が集まっている……?


 バキィ!

 「なんだと!」

 スコーピオンの鞭がバラバラに砕け散った!

 「ありがとう、デゴちゃん!」

 デゴちゃん?……モミジはいったい誰と話をしているんだ?


 「なんだ今のは?スコーピオンウィップが砕け散るとは……何か砂が集まったように見えたが……?」

 モミジのペンダントの石が、黄色の光を放っている。

 「ま、まさかそれは!?砂漠の民の秘宝、『砂漠の涙』?ということは、貴様、『砂漠の守護神の加護』を……」

 「そうです、さすがに知っていましたか」

 「いや、『砂漠の守護神の加護』は、砂漠の民の秘宝中の秘宝……ワタシでも見たことはない」


 「そうですか、では特別に見せてあげましょう。出ておいで『デゴちゃん』!」

 モミジがそう叫ぶと、周りに大量の砂が集まってきて、モミジの後ろで巨大な砂のゴーレムが誕生した!

 「バオオオオオオオ!」


 「……『砂漠の守護神』とは、デザートゴーレムだったのか!?」

『デ』ザート『ゴ』ーレム……だからデゴちゃんか!

 「くそっ、まさかデザートゴーレムが相手とは……」

 そう言いながら、赤サソリはまたスコーピオンの鞭を地面に刺している……ってかいつの間にか再生している!?


 ズボッ!

 またスコーピオンの鞭がモミジの後ろから襲い掛かる!

 「バオオーン」

 バシィ!

 デゴちゃんが、まるでハエでも落とすように、スコーピオンの鞭をはたき落とした!

 「またまたありがとう、デゴちゃん!」


 「このゴーレム、完全自立型か?自分の意志で術者を守っている……こんな魔法が存在するなんて」

 折れたスコーピオンの鞭は、もう再生している。

 「くそっ、無限に再生するこのスコーピオンウィップをもってしても、さすがにこれは分が悪い……距離を取らせてもらう」

 そう言って赤サソリは、鞭を木や岩などに打ち付けて、まるでサーカスのブランコのように逃げていく!

 「そうはいきません、デゴちゃん!」

 「ブオオオオオ」


 おおデゴちゃん、その巨体ですごいスピード!

 「ゴーレム壁ドン!」

 ゴーレムが赤サソリが逃げる方に壁ドンした!

 ドガアアア!

 凄い威力なんですけど!?

 「うおおおお!?」

 さすがの赤サソリもそれ以上進めない!


 「言ったはずです、アナタを成敗すると!砂漠の民秘伝の魔法、とくと受けなさい!」

 モミジの前に魔法陣が展開……『風』『風』『風』『地』

 「プール・フォン・メイジア・エイジス

 砂漠の女王 砂の竜に乗り舞い上がる 恒河沙を超え かの者を縛る楔となり給え 磁気嵐属性クアトログラム『ジオマグネフォース』!」

 「えっ!?モミジが『神の言霊』を!?」


 「うおおおおおーーー!?」

 凄まじい砂嵐が巻き起こる!

 「な、なんだこれは?体が……いうことを聞かない、いやこれは、鎧や武器が勝手に……」


 「これは『磁気嵐』を発生させる魔法です……纏っている金属のものは全て磁気により動きを封じます!」

 「く、くそっ……動け、ない……」


 「さあ、では行きますよ……『砂に代わってデコピン』よ!」

 デザートゴーレムがデコピンの構えをとる……

 「や、やめろーーー!」

 「ゴーレムデコピン!」

 ズガガガ!!


 ゴーレムにデコピンされた赤サソリは、もの凄い勢いで吹き飛び、いくつもの岩をぶち抜いて、岩の下敷きに。

 「デコピンでこの威力……さすがにあれは死んじゃってるんじゃあ……」



 闇のビーストテイマーのハイエナVSマコト


 「ガルルル……地獄の番犬ケルベロスと、魔界の大蛇ヒュドラ……どちらが上か勝負と行こうじゃないか」


 「魔獣をそういう風に扱うのはあまり好きやなかと」

 「貴様のような甘ちゃんが、よくケルベロスを使役なんかできているな……」

 「私はべロスちゃんを信頼しているし、べロスちゃんも私を信頼してくれているとよ」


 「ガルルル……ビーストテイマーと魔獣は、過ごした時間がモノを言う……

 オレとヒュドラは生まれた時から一緒に過ごしてきたいわば『戦友』。貴様のように急造された出来損ないとは訳が違う」


 「そうと?そん割にはヒュドラの方はばり不満があるごたーけど……」

 「なんだと?」


 「言うことば聞かんとご飯は抜かるーし、機嫌が悪かとすぐに叩くし、負くると全部ヒュドラのせいにするって」


 「は?貴様何を言っているんだ?まるでヒュドラと話ができるかのように……」

 「えっ?」

 「えっ?」

 「あれ?ビーストテイマーってみんな魔獣と話ができるんじゃないの?」

 「私もそうやと思ってたとよ」

 俺とマコトはビックリ顔。


 「何を言っているんだ貴様ら、そんなことができるやつがいるわけがないだろう!」


 「いや、それができちゃうんだなぁ、うちのマコトは」

 「私の家族は全員魔獣と話ができたと。私も物心ついた時から話せたけん、当たり前や思ってたとよ」


 「くっ……だからどうした、重要なのは話せるかどうかじゃない、

 魔獣を、術者の言うことを百パーセント言う通りに行えるようしっかり使役し、『絆』を持つことが真のビーストテイマーだ」


 「いいえ違うとよ。

 魔獣の気持ちを読み、信頼関係を築き、百二十パーセントのチカラを引き出してあげるとが、真のビーストテイマーとよ!

 アナタのは『絆』ではなく、恐怖による『強制』とよ」


 「ガルルル……、貴様のような反抗的な奴には、きつい『調教』が必要だな……ヒュドラ!」

 「シャアアア」

 「ポイズンブレス!」

 ボワアアアア!


 「くっ、べロスちゃん、『獄炎のブレス』!」

 バオオオオオ!

 おお、ブレス攻撃は互角か!?


 「べロスちゃん、『極寒のブレス』!」

 バキバキバキバキ!

 「シャアアア!?」

 ケルベロスは三つの頭を持ち、それぞれ属性の違うブレスを吐くことができる……

 氷系のブレスでヒュドラの体を凍らせた!

 「しまった!ヒュドラ、早く剥がせ!」


 「今とよ、『電撃のブレス』!」

 バリバリバリ!

 「シャバババ!」

 「ヒュドラ!?」

 ヒュドラは電撃のブレスを受けてぐったり……


 「この役立たずめ!

 オレに恥をかかせやがって!お前のような役立たずはここで死んでしまえ!」

 「シャア……」

 ハイエナが怒りのままヒュドラを蹴りまくっている……ビーストテイマーの絆はどこへやら。


 「やめるとよ、ヒュドラがかわいそう!」

 マコトがたまらず止めに入る。


 「今だ、ヒュドラ!」

 「きゃあああ!」

 なっ、ヒュドラが急に起きて、マコトをグルグル巻きに!


 「ガルルル……ひっかかったな、ビーストテイマーは術者さえ押さえればこっちのものだ。敵の魔獣に情けをかけるとは、とんだお人好しだな」

 「マコトーーーー!」


 「さあケルベロスよ、術者を殺されたくなかったら、オレの言うことを聞くんだ、ガルルル……」

 「ク、ク~ン……」

 べロスが困っている。


 「べ、べロスちゃん、この人の言うことを聞いてはダメ、私は大丈夫とよ……」

 「貴様は黙っていろ!ヒュドラ!」

 「きゃあああ!」

 「マコト……」


 「ヒュドラは、ずっと私に、『ごめんなさい、ごめんなさい』って言いよー……こうしないと、帰ってからまたいじめられてしまうけんって」

 マコト、こんな時まで敵の魔獣の事を……


 「魔獣を道具のように扱うこんな人に、私は絶対に負けんとよ!」

 マコトはまだ諦めてはいない!


 「べロスちゃん、三つのブレスを一つに収束して、私を攻撃とよ!」

 「えっ、マコト、そんなことをしたらマコトが……」


 「私は大丈夫……信じてべロスちゃん!」

 「ガウウウウ……ワオーーーン!」

 おお、べロス、やる気だ!


 「ガルルル……いいぞヒュドラ、そのまま巻き付いていろ!これでたとえお前が死んでも、あの術者が消えればケルベロスはオレのモノだ!」

 なんて奴だ、あの野郎……


 マコトの前に魔法陣が展開してる……『水』『水』『風』『地』

 「雲合霧集 黄霧四塞 五里霧中 神秘なる霧よ 二度と抜け出せぬ 幻の中へ誘い給え 蜃気楼属性クアトログラム、『ミラージュ』!」

 マコトが四重星魔術クアトログラムを!?


 マコトの周りに霧が立ち込める、『逃げ霧』の時とは少し違う……?

 なんだ?ヒュドラに巻き付かれているマコトが、少し歪んで見える?


 「今とよべロスちゃん!『トリニティブレス』!」

 バオオオオオ!

『獄炎のブレス』と『極寒のブレス』そして『電撃のブレス』が一つに合わさった巨大なブレス攻撃!こんなの食らったら……

 「マコトーーーー!」


 ゴガガガガ!!

 「な、なんだーー!?ギャアアアアア!」

『トリニティブレス』は、マコトに直撃したかと思ったら、なぜかダメージは闇のビーストテイマー・ハイエナの方に!?


 「やったとよべロスちゃん!」

 「ワオーーン!」

 ハイエナはトリニティブレスの直撃を受けて、吹き飛んでいった。

 ヒュドラはマコトの拘束を解き、ハイエナの方を見に行く……



 「マコトお前、四重星魔術クアトログラムを使えたのか!?」

 「はい、子供のころようお姉ちゃんとかくれんぼしたときに使とった魔法とよ、久しぶりやったが使えたとよ」

 「おいおい、かくれんぼに四重星魔術クアトログラムを使うんじゃない!」


 「かくれんぼの時も、この魔法で上手く捕まらんやったけん、今回もうまくいったとよ」


 ……蜃気楼属性魔法『ミラージュ』は、魔法の霧を発生させ、蜃気楼を起こし、敵に幻を見せて命中率を下げる魔法……

 でも今のマコトの魔法は、あきらかに空間を曲げて、ブレスを敵側に当てたように見えた。マコトにはまだ、本人も知らない秘密があるのかもしれない……



 蟲使いのムカデVSカズキ


 「受けてみなさい!アドバンスドアーツ『インセクトキャノン』!」

 ムカデって奴が、虫の塊を高速で撃ち出してきた!


 バフッ!

 カズキに当たったと思ったら……あれは『闇分身』か!?


 「くらえ!アドバンスドアーツ『百裂矢』!」

 カズキの本体はムカデの後ろに!カズキの百本の腕から放たれる百本の矢!


 ドバババッ!

 「グガアア!」

 やった!ムカデってやつの腹に、風穴を開けてやった!


 「フェッフェッフェ……無駄ですよ」

 ギュルル!

 「なに!?」

 ムカデってやつの腹に開けた穴が、一瞬にして塞がった!?


 「フェッフェッフェ……ワレは自分の体に『魔蟲』を改良した『回復魔蟲かいふくまちゅう』を飼っているんです。ワレの体が傷つくと、その回復魔蟲が自動的に直してくれます」


 自動回復する蟲を持っているのか……厄介だな。

 その時、カズキの目が空中を鋭く睨む!

 「そこだ!『闇の手』!」

 カズキから伸びた黒い手は、空中の『蛾』や『蝶』みたいな虫を捕まえていた!


 「お前の攻撃方法は分かっている……こうやって空中から虫を近づかせ、得意の『麻痺毒の鱗粉』で相手を動けなくするんだろ?」

 「おおー素晴らしい、さすがは元暗殺組織のヒットマン……ご存じでしたか」


 「オレをなめるなよ」

 「いやいやいや、なめてなどいませんよ……ですからこうして『奥の手』も用意していますフェッフェッフェ……」


 ガクン……

 「な、なんだ?体に力が入らない……」

 カズキ!?どうしたんだ?


 「毒を巻き散らすのは空中だけとは限りませんよ、フェッフェッフェ……」

 カズキの足元には『蟻』や『ダニ』、『毛虫』や『蜘蛛』など、無数の毒虫が這いまわっている……

 「し、しまった……クソッ」


 「お前ほどの手練れ、殺してしまうのは惜しい……

 もう一度組織の元で働きなさい、ただただ命令に従う、忠実な人形として……」


 ムカデってやつは、手から黒い『魔蟲』を取り出した。

 「これを飲めば、お前はまた忠実なしもべとして組織の一員に戻れる……フェッフェッフェ」


 「や、やめろーー!」

 カズキは体が麻痺していて動けない!『魔蟲』がカズキの口から体内に入ろうとしている……

 「カズキーーー!」


 ゴクンッ……

 あああ、魔蟲が、カズキの体内に……

 「ゴフッゴホッ……」


 「フェーーーフェッフェッフェ!さあ、これでもうお前はワレに逆らうことはできません……ワレと一緒に組織に戻りましょう」


 「……断る」

 「なんだと!?お前、死にたいのか!?」

 ムカデの態度が急に変わった。


 「……一度仕込まれたからわかる、魔蟲の動きが。

 魔蟲は体内に入ると、まずその体の大きさと重さを測るため、体の真ん中に潜む……つまり、今魔蟲はオレのヘソのあたりにいるはず!」


 「カズキ、まさか……」


 「闇分身!」

 カズキは自分の分身を作り、自分の前に立たせた。

 「分身よ、オレを撃て!」

 「待て、カズキーーー!」


 バシュッ!

 「グフッ!」

 カズキは自分の分身で自分のお腹を撃ち抜いた!


 「ギイィィーー!」

 カズキのお腹を貫いた矢の先には、魔蟲が刺さっている。



 「カズキ!なんて無茶を……」

 アマネがカズキを回復しに駆け寄ってきた。

 「まだだ、回復はあいつを倒してからだ」


 「ムウゥゥ、ワレの魔蟲をそんな方法で回避するとは……お前のことを少し見くびっていたようですね」

 「へへ、お前はオレが思っていたより大したことなかったな……」


 「なんだと……てめぇ!暗殺組織デスサイズの幹部であるこのワレを、なめるんじゃねぇぞこのクソザコが!」

 「へっ、やっと本性が出てきたな……ド汚ねぇその本性がな!」


 「テメェ……お前などもういらん!ワレのとっておきの技であの世に送ってやる!」

 ムカデの周りに、黒い羽虫がたくさん集まってきた……これは、『スズメバチ』だ!


 「スズメバチ千匹の針に刺されて、ショック死するがいい!アドバンスドアーツ、『サウザンドスティンガー』!」

 千匹のスズメバチがカズキに襲い掛かる!

 「カズキーーー!」


 「うおおおーーー!アドバンスドアーツ、『闇の千手せんじゅ』!」

 カズキの体から無数の黒い手が伸びてきて、千匹のスズメバチを全部捕まえた!


 「なんだとーーー!」

 「さすがのお前も、これだけの数の虫を操った後は、他の虫を操るのは無理そうだな」

 「ぐっ、しまった……」


 「こいつでとどめだ、姉御との修行の成果、見せてやる!」

 「ま、まて!」


 「アドバンスドアーツ『ダークマターアロー』!」

 闇の気を纏った巨大な矢を高速で撃ち出す!

 バシューー!

 「ぎゃああああ!」


 闇の気を纏った巨大な矢を受けて、ムカデは消滅した……

 やった!カズキがムカデを倒した!



 レイブンVSマキア


 「アナタの相手は私です!」


 「へっ、ギガンティックマスターを殺すのは、まずお前を八つ裂きにして、奴の泣きっ面を拝んでからだ!」

 「相変わらず、趣味が悪いですね!」


 マキアの剣と、レイブンのデスサイズが交差する!

 ガキィン!

 シャキーン!


 「くっ、この女……俺のデスサイズを難なくさばきやがって」

 「私だって、前よりもレベルは上がっています!」


 「アドバンスドアーツ、『エイプリルフール』!」

『エイプリルフール』?どんな技だ?


 マキアが素早く動き、レイブンの死角をとる!

 「そこです!」


 「転べ!」

 「キャーー!」

 マキアが転んだ!?


 「くっ……何もなかったはずなのに」

 「マキア気をつけろ、あいつ何か仕掛けているぞ」


 「暗闇になれ!」

 「な!?急に目の前が真っ暗に……一体?」


 「ハハハ、今だ!」

 「マキア危ない!」

 バキーーン!

 間一髪防いだ。


 「くっ……目が見えなくても、気の流れで多少は動きが読めます」

 さすがは剣士……


 「お前その技、もしかして……」

 「へへ、そうだ、この『エイプリルフール』は、呪いのチカラで『嘘』を現実にする技だ」

 「その割には『死ね』とか言わないところを見ると、そんなに大きな事は実現できないようだな」


 「確かに些細なことしか実現できないが、剣士の動きを止めるには十分だ……」


 「なら魔法で……

『大地と大気の精霊よ 力満ち……」


 「『舌を噛め』!」

 「ガチッ……イッターい!」

 魔法も唱えられない?……地味な技だけど、地味に効く……


 「くらえ!アドバンスドアーツ『怨霊玉』!」

 レイブンの手から無数の怨霊が、弾丸のように飛んでくる!

 それをかろうじて避けるマキア。


 「呪術長、何とかならないか!?」

 「スマンねぇ……あいつの操る『呪霊騎士カースドナイト』から他の人を守るのが精いっぱいで、そっちまで手が回らないよ」


 「ギャーーーハッハッハ!死ね死ね死ね死ねーーー」

 「あいつ、呪いに侵食されかけているねぇ……このままだと理性のない『呪いの化物』になっちまうよ」

 呪いの化物?あんな奴が見境なく暴れたら、手に負えないぞ。


 「この『紙』を持ちな、そうすればその呪縛ぐらいは解除できるよ」

 呪術長から白い紙を受け取ると、すーーっと呪縛が解けていく……

 「えっ、なにこれスゲー?」


 バサッバサッ!

 レイブンは羽を開き、空中へ飛んだ!

 「そうか忘れていた、あいつ『羽人ハネト』だった……」


 「空に逃れても、私からは逃げられません!『雷足らいそく』!」

 ババババババ!

 マキアが対打撃結界の間を、稲妻のように駆け上がる!

 「おーぎ、マキアイン……」


 「そう来ると思って待っていたぜ」

 レイブンの周りには無数の怨霊の玉が!

 「くらえ!アドバンスドアーツ『怨霊玉』!」


 バシュバシュバシュ!

 「くっ、しまっ……キャアーーー!」


 怨霊玉の直撃を受けたマキアが、空中から地面へ真っ逆さまに落ちていく!

 「まずい!あのままじゃ地面に激突してしまう!館長、俺をグリフォンに乗せてくれ!」

 「えっ、アンタ高所恐怖症じゃ……?」

 「そんなこと言っている場合か!」


 俺は館長のグリフォンに乗り、マキアの元へ。

 「マキアーーーー!」

 間一髪、俺はマキアの腕をつかんだ!


 「マスター、ありがとうございます!」

 「……え」

 「?」

 「こえーーーー〇ンタマが縮み上がるーー!」

 「だからアイドルの前で言うのやめて下さい!セクハラです!」

 ……でもさすがに前よりは少し平気になった気がする。


 レイブンも地上に降りてきた。

 「へへ、へへへ……もう面倒くさいから、お前らまとめて消し飛ばしてやるぜ!」

 レイブンの前に無数の怨霊が集まっている……


 「くっ、あの数……やばいかも」

 「安心しな、あいつはもう限界だよ」

 「えっ?」


 「うおお!?な、なんだ?怨霊が……オレに……があああああ!」

 突然レイブンが苦しみだした!?


 「呪術はね、そんな軽いモノじゃないんだよ……

『呪い』は必ず自分自身にも跳ね返ってくる……ワシたち呪魔導士は、呪いが見えるようにこの『呪眼ジュガン』と、跳ね返った呪いを代わりに受けてもらう『式紙シキガミ』を、必ず常備しているのさ」


 「『呪眼ジュガン』と、『式紙シキガミ』……」

 確かに呪術長の右目は、黒目に白い瞳という、特殊な目をしている。

 そしてその手には、人型にかたどられた数体の白い紙を持っている……あれが『式紙』?


 「ワシに触れば、お前さんにも見えるだろう」

 そう言って呪術長は俺の前に……俺は呪術長の肩に手を置く。

 「こ、これは……?」

 地面から無数の手が伸びてきて、レイブンを捕らえているのが見える……これが呪い?


 「これでアンタはしばらく動くことができないよ」

 「く、くそっ、クソーーー!」


 「さんざん人を虐げてきたお前が、今まさにその報いを受けている、自業自得とは正にこのことだな……」


 「やられたらやり返す、当たり前のことだ!何が悪い!」

 「違う、やられたからこそ相手の気持ちがわかるんだ、自分がされて嫌なことは相手にもするんじゃない!」


 「うるせぇ!オレにはもう後がねぇんだ、テメェの屁理屈に付き合っている暇はねぇんだよ!」


『自分の限界を超えるチカラは、自らを破滅させる』か……アナタの言ったことは正しかったよ、ラーマイン王。

 「マキア」

 「はい、とどめを刺させてもらいます……残念ですが、アナタにかける慈悲はありません!」

 「ちく、ちくしょーーーー!!」


 「おーぎ、マキアインパクト!」

 ドガガガガ!!

 「ガアアアアアアア!」


 マキアインパクトを食らい、レイブンは吹き飛んでいった……



 「ふう、なんとか四人共倒したようだな」

 かなりの強敵だったけど、メンバーの活躍もあって、なんとかなったな。


 ゴゴゴゴ……

 「な、なんだ?」

 後ろの方から、四つの魔力がドンドン大きくなっているのがわかる……


 「ガルルル……」

 「フェッフェッフェ……」

 「フシュルルル……」


 「そんなバカな!?四人共バラバラになったはずなのに!」

 バラバラだった体が、くっついて修復されていく……これはまさか……


 「フ、フェッフェッフェ……こ、こういうこともあろうかと……他の三人にも、『回復魔蟲かいふくまちゅう』を、し、仕込んでおいて、正解でしたね……

 ただ、さすがにバラバラになった体を再生するには、じ、時間がかかりました……」


 「マジか……ほとんど不死身じゃないか」

 「クッ……」

 メンバー全員また戦闘態勢に。


 「ギャーハッハッハ、面倒くせぇ!お前らまとめて、俺の『呪い』でブチ殺してやるよぉ!」

 「レイブン、お前また呪いの反動を食らいたいのか!」

 「ヒャハハ、構わねぇよ、数十秒だけでもお前らの動きを止められるならなぁーー」


 レイブンの前に魔法陣が展開……『地』『闇』『闇』『闇』

 「地獄竜ヴァールの名において 絶望の淵にしがみつく者にとどめを 呪いの王よ かの者を縛り 嬲り 堕とせ 呪殺属性 禁呪、『カーズエフェクト』ー!」


 「うおおおおー!?」

 地面から無数の呪いの手が伸びてきて、俺とメンバー達全員の動きを封じている!

 「こんな広範囲の魔法まで……」


 「ギャハハハ、じゃあ死ねーーーー」

 レイブンの振り上げた手に、無数の怨霊の玉が収束している!

 「アドバンスドアーツ、『呪霊砲』!」


 「くそっ、これは、ヤバい!」

 もう駄目だと思った瞬間……


 「死者の章 第一節、『しかばねの壁』!」

 ズアアアア!

 屍でできた巨大な壁が、呪霊砲から俺たちを守ってくれた!


 「なんだと!?」

 俺たちの横には、『ネクロノミコン』を持ったスミレが……

 「スミレ!」


 「どうやら死者と悪魔を使役できるこの『ネクロノミコン』を持つ私には、呪いの技や術は効かないようです」

 「マジかスミレ……でもその本は……」

 俺は館長との会話を思い出していた……


 *****


 「前も言ったが、私たち『本の民』は本に書いてあることを現実にする能力を持つ。そしてその事象に対して、等価の反動がある」


 「ああ、メンバーのスミレも、それに当てはまるんだよな?」

 「そうさ……今までスミレが本を読んだとき、どうだったんだい?」

 「ん~、特に今までは反動とかがあったようには見えないけど……」


 「本の民と人間とのハーフ、しかも『災厄眼』持ちの子供はかなりレアだ……今まで見たことは無いが、特異な体質を持っているかもしれない」

 本の内容をノーリスクで実現できるとしたら……そんなことができたらそれこそ世界を支配できる。


 「だとしても、あの『ネクロノミコン』は危険だ……

 あの本には、人間の力を軽く凌駕する内容が、多数書かれている。

 だからギガンティックマスター、アンタに頼むよ、あの子を注視しておいておくれ」


「わかった」


 *****


 「スミレ、『ネクロノミコン』は危険すぎる、お前は逃げろ!」

 「そんなことをしたらここにいる全員がやられてしまいます、私は逃げません!」

 「くっ……」


 ……たとえスミレに嫌われたとしても、スミレを失うことよりは数倍マシだ。

 「スミレ、俺の命令が聞けないのなら、お前はクビだ……『異世界あいどる24』を抜けてもらう」

 「えっ」

 メンバー達がビックリしている。


 「お前はもう俺たちと関係ない、とっととこの場から立ち去れ!」

 俺は胸が締め付けられながらも、真剣な目でスミレに言い放った。


 「……マスター、私、『アナライズ』が使えるんです、知ってました?」

 「えっ、マジで?」

 「ウソです」

 「おーーーーい!スミレ、お前もか!」


 「でも、今マスターが考えていることは分かります。

『男には大好きな人にどうしても嫌われなくちゃならない時がある』……館長がそう言っていました」

 「スミレ……」


 「マスター、大丈夫です、この本を開いたとき、お父さんの声が聞こえたような気がしました……その声は言ってました、『大丈夫だよ』って。

 それに、何かあっても仲間が必ず助けてくれます、だって私は『異世界あいどる24』の、スミレだから」

 他のメンバー達も頷いている……


 「今、私にはみんなを守るチカラがあります……私だって大切な人を自分で守りたい!」

 スミレは本を開き、レイブンたちを真っ直ぐに見据える……

 「お父さん……私、今、恋しているよ」


 「やんのか?かかってこい小娘がぁ!」

 レイブンたちも戦闘態勢をとる!


 「……恋する乙女、舐めんな!!」



 スミレが『ネクロノミコン』を読み上げる……

 「地獄の章 序文 『悪、邪、鬼、欲にとらわれし者

 現世にて重き罪を犯せし罪人として 冥界の竜により地獄に落ちたもう……』

 地獄の章、『地獄巡り』!」


 レイブンたちを巨大なバリアのようなものが囲む……

 「な、なんだこれは?」


 「レイヤー展開、その空間を『地獄』と直結しました……私の許可がないと、そこから出ることはできません」

「なんだと!?ふざけるな!」

 レイブンたちはバリアを攻撃するが、ビクともしない。


 「地獄の章 地獄巡り第一節、『針の山地獄』……」

 ジャキーーーーン!

 「ぎゃああああ!」


 スミレが読み上げると、地面から無数の針の山が、レイブンたちを串刺しにした!

 「ぐあああ、なんだこりゃあああ!」


 「地獄の章 地獄巡り第二節、『血の池地獄』……」

 ダバーーーーン!

 「うおおおおお?と、溶ける、体が溶けていくーーー!?」


 今度はレイブン達を真っ赤な血の池に落とした。

 煙が上がっていて、体が溶けていくのがわかる……


 「凄い……」

 俺はスミレが敵じゃなくて、心底良かったと思ってしまった。


 「次が最後です、自分の犯した罪を懺悔しながら、地獄に落ちなさい……

 地獄の章 地獄巡り最終節、『餓鬼魂がきだま地獄』!!」

 「クソッ、今度はいったい……」


 レイブンたちの周りに牙のついた火の玉が群がってきた、あれが『餓鬼魂がきだま』……?

 バクン、バクバク!

 「ぎ、ぎゃあああ、く、食われるーーーーー!?」

 「た、助けてくれーーーー!」


 何百、何千という餓鬼魂に、生きたまま食われるレイブンたち……

 あれでは『回復魔蟲』もまったく意味をなさない……終わったな。


 その時ーーー


 ザンッ!!


 瞬間、斬り裂く音と、一筋の閃光が!


 レイブン達がいたバリアが真っ二つに割れ、中に二人、人影が見える……

 「そんな、別の空間ごと斬り裂くことができるなんて……」

 スミレが驚いている。


 煙が晴れる……そこには念動魔法で気絶したレイブン達を浮かせている男女が二人。

 長髪で、左の頬に赤いタトゥーをし、恐ろしく冷たい目をした男と、秘書の格好をした女性……


 「お、お前は……ボス!?」

 元暗殺組織のカズキが叫ぶ。


 「初めまして、かな。

 私は『暗殺組織デスサイズ』のボスをやっている、『コンドル』……」


 「『コンドル』……?」


「私の部下達が世話になったようだな……

 こいつらにはまだ利用価値がある……悪いが返してもらうよ」

 「ま、まって、このまま逃すわけには……」

 「待てマキア、深追いするな」

 「し、しかし……」


 「近いうちにまた会おう、アディオス」

 そう言ってコンドル達は煙の向こうへ消えていった……


 「マスター、よろしかったのですか?」

 「あいつには底知れぬ何かがありそうだった、俺たちも疲弊してたし、深追いは危険だと判断した」

 「わかりました、マスターがそうおっしゃるなら……」


 「よし、とりあえず戻って回復だ」



 ☆今回の成果

  モミジ 『砂漠の守護神 デザートゴーレム』と『ジオマグネフォース』獲得

  マコト 『ミラージュ』取得

  カズキ 『ダークマターアロー』取得

  スミレ 『ネクロノミコン』獲得


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る