第18話ファルセイン城攻防戦②

 アナタはアイドルに『自分のマントをかぶせたこと』がありますか?……俺はある。


 イレギュラーズ達は何とかなりそうだ……他のメンバーは?


 「くらえーー!」

 ライカがこの間あげた『チェンソー』で騎士たちを刻んでる⁉


 「マスター、騎士たちの鎧が厚紙のようにスパスパ切れますー」

 ライカ、そんなの振り回してたら、どこぞの殺人鬼のようだぞ。


 「アドバンスドアーツ、『ハーフクレイジートランス』!」


 『ハーフクレイジートランス』とは、能力アップを1.5倍に抑えることで、敵と味方の区別だけはつくように改良されたライカの技だ。

 この技とチェンソーを装備したライカなら、並みの騎士では歯が立たない。



 「砂の王に進言します 顕現せよ 地上を脅かす者どもを蹴散らす力となり給え 砂属性ハイアナグラム『デザートストーム』!」


 おおー、いつの間にかモミジが三重星魔術使えるようになってる!

 範囲も広いし威力も申し分ない。



 「危ないマスター、飛翔扇!」

 セカンドシスターズ投擲士ミイナのブーメランが、俺を後ろから狙っていた騎士を倒してくれた。


 「ありがとうミイナ」

 親指を上げてノリノリのミイナ。その横にシイナもやってきた。

 「マスター聞いてください、夢だった『透明薬』がやっと完成したんです!」

 「その話今しなきゃダメか?」

 「試しにミイナのブーメランに使ってみたいと思います」


 シイナが透明薬をミイナのブーメランにかけると、なんとみるみるブーメランが透明になっていく!

 「これで攻撃されたらひとたまりもありません」

 「なるほど、そういう使い方があるのか」


 俺の後ろの方から、数人の騎士たちが上がってきた!

 「ギガンティックマスター、覚悟!」


 「丁度いいです、ミイナこのブーメランで」

 「わかった、いくよ!名付けて『インビジブルブーメラン』!」


 「な?見えない何かに切り刻まれる!?ギャアアァァーー!」

 数人で俺を狙っていた騎士たちを、シイナとミイナが一掃してくれた。


 「よーし、ではこのまま私も念願の透明人間に……」

 そう言いつつ自分自身に透明薬をかけるシイナ。


 あれ?なんか変だぞ……

 「シ、シイナ!服が、服だけがドンドン透けていってる!?」

 「あれ?おかしいですね……無機質のものだけが透明になって、生身は効果がないみたいです」


 「いや、大変なのはそこじゃなくて!み、見えちゃうよ!」

 「あー、そうですね……」

 シイナ?全然意に介してない……俺は急いで自分のマントをシイナにかぶせた。

 「勘弁してくれよ……」

 「まだまだ改善の余地がありそうです……はぁ」



 「中々やるではないか、残り三十七手が四十一手に増えたぞ」

 ヴァイガンの野郎、余裕だな……これならどうだ!


 「カイ・ル・ランクルス 敵に衝撃を与え平伏せさせよ 衝撃波属性ハイアナグラム、『インパルス』!」


 「全てを引き裂くものよ 我より出でて 敵に衝撃を与え平伏せさせよ 衝撃波属性ハイアナグラム、『インパルス』!」


 ヴァイガンも俺と同じ魔法を?……でも俺の方が速い!

 ヴァイガンの手前で衝撃波同士がぶつかり、互いに相殺した。


 惜しい、もうちょっとで当たったのに……


 「なるほど、『神の言霊』か……

 詠唱を神の言葉に近い言語に置き換えることで、その詠唱を大幅に短縮することができる魔導士の秘術。アイアス程度では相手にならぬわけだ……」


 げっバレてる……まあこれは神魔に教えてもらった秘術なんだけどね。


 リョウVSゴーガン


 「我の捨てた槍でよくぞここまで来た、褒めてやろう」


 「『りさいくる』……」


 「?」


 「捨てたものを修理・再利用して復活させる……

 マスターのいた世界では『りさいくる』と言うそうです。

 そしてこれはただの『床落とし』ではありません。

 タングステンで補強した、名付けて『床落としマークⅡ』です!」


 「フッ、そうか……ではその『りさいくる』とやらの力、見せてもらおうか!」


 ガキーン!ズガガガ!

 凄まじい槍同士の応酬!


 「その『マゼンタイーグルの衣』、熱には強いらしいが氷属性はどうかな?

 氷の精霊よ 我に宿りて氷結の力高め その息吹で敵を粉砕せよ!氷属性アナグラム フロストブレス!」


 氷の息吹がリョウを襲う!

 「うっ……しまった!足が凍って……」


 「ハハハ、どうやら動けぬようだな、これで終わりだ!」

 ゴーガンの前に魔法陣が展開……『風』『風』『水』

 「青き氷 白き結晶 吹雪纏い 氷嵐の息吹を持って 悪辣なるものどもに永久の眠りを 吹雪属性ハイアナグラム『ブリザードブレス』!」


 「キャアアアーー!」

 あああ、リョウが巨大な氷塊の中に……


 「とどめ!アドバンスドアーツ『螺旋槍破(スパイラルジャベリン)』!」

 回転させた槍で、リョウのいる氷塊を粉々に破壊した!

 「リョウーーー!」


 「さあギガンティックマスター、次は貴様だ」



 カスミVSライゴウ


 「雷よ 地を這い 敵を穿て 魚雷属性アナグラム『トルピード』!」

 地面を這う雷が猛スピードで襲い掛かってくる!


 「くっ、じっとしていたらやられる……壁を張りながら前に出なきゃ」


 その時!

 「キャア―!」

 カスミの足元から雷が!


 「フフフ、それは『地雷属性アナグラム マイントラップ』。

 事前に仕掛けさせてもらった……踏めば雷に打たれる罠の魔法だ」


 そんな、これじゃ迂闊に動けない……


 「さあ観念するがいい。

 『雷竜よ 回れ回れ 紫の閃光を解き放ち その鱗触れしものを感電させよ 紫電属性ハイアナグラム『ローリングサンダー』!」


 地面を這うように何本もの紫の雷の鞭が、多方向から襲ってくる!


 「『絶対防御鉄壁』!」

 バシイィ!

 「キャア―ーー!」


 防いだはずなのにカスミにダメージが!

 「お前と私とでは属性の相性が悪すぎる。『鉄壁』も『氷壁』も電気を通すからな……悪いことは言わない、誰かと代わるがいい」


 「くっ……」



 アンズVSジン


 「まさかボクの『宝林寺活人拳』の対極に位置する拳法、『裏林寺殺人拳』の使い手が、百戦騎士にいるとは思わなかったです」


 「フッ、所詮格闘術とは相手を破壊するためにあるもの。

 我が『裏林寺殺人拳』こそ、武術の神髄といっていい……お前達の『オママゴト』とはわけが違う」


 お互いに構えをとる……ジンってやつの手が紫色に変色してる?

 「私が十年かけて作り上げたこの『毒手』……

 軽く触れただけでお前の命は残り六十秒となる……覚悟しろ」


 触れただけって……受けることもできないのか?それはキツイ。

 ジンの容赦ない攻撃!避けるしかないアンズは防戦一方。


 「十年前、私の家族は盗賊に殺された。

 私は盗賊に復讐するために裏林寺殺人拳を習い、盗賊を殺すためにこの毒手を会得したのだ……なにが『活人拳の極意は人を活かすこと』だ!

 そんな綺麗事で平和など来ない!」


 「クッ……」

 アンズが押されてる!


 「くらえ!」

 ザシュ!


 ああ、アンズの腕に切り傷が……

 ガクッ……膝から崩れるアンズ。

 「終わりだ、お前の命はあと『六十秒』。フハハハ……」



 カレンVSハーミット


 「カレンさん……でしたか。あの時の薄汚い女性奴隷がこんなに美しくなるとは……ギガンティックマスターとは色んな意味で『魔法使い』ですな」


 「……」


 「口数が少ないのはあの時のままのようですね」


 カレンがダガーを抜いて構える。

 「フォフォフォ、実は私は戦闘は苦手でして、恐らくまともに戦えば私はアナタに勝てません。ですが、アナタが持っていなくて私が持っているものがあります」


 「……?」


 「それは『支配力』」

 ハーミットが指を鳴らすと、その後ろに二十名ほどの男性奴隷が現れた。


 「これは私が選りすぐった二十名の『戦闘奴隷』です。

 人質、洗脳、薬、金……様々な方法を使い、私に服従させています。どんなに素早いアナタでも、この数を一度に相手するのは無理でしょう」


 「……!」


 「さあ、あの美しい顔を血で真っ赤に染めてあげなさい!」

 二十名全員が一斉にカレンに襲い掛かる!

 相当素早いカレンでも、さすがにあの数は……


 ザクッ!ドシュ!

 「キャア!」


 「なんだ、ちゃんといい声で鳴けるじゃないですか……今なら私の力で、定価の数十倍の値段で売り飛ばして差し上げますよ」



 マコトの周りに十名ほどの騎士達が群がる。

 「へへへ……知っているぞ、お前ケルベロスがいなきゃ何にもできないらしいな?」


 「フフフ、そんな偽情報に踊らされるなんて、大したことないとよね」

 「なんだと」


 「私の最大最強・無敵無敗の技を見せるときが来たとよ……」

 「最大最強・無敵無敗……?」

 「行くとよ~」


 マコトの周りに霧のようなものが立ち込めてきた……

 「ゴクリ……」

 周りの騎士達の表情に緊張が宿る……


 「アドバンスドアーツ、『逃げ霧』!」

 「!」

 ビビッてみんな目を瞑っていた騎士達が、そ~っと目を開けてみると……

 スタコラと走り去るマコトの姿が……


 「あーー!あいつ逃げ出したぞ!追え――!」


 『逃げ霧』は相手をビビらせて、霧に紛れ逃げ出す技だったのか。

 でも相当数の騎士達を引き付けてくれたので、こっちは楽になったけど……



 マキアVSパラディン


 「どうした、もう終わりかマップシェイバー。ならばお前も、あのギガンティックマスターとやらも、オレ様が滅してこの戦いは終わりだ」


 「そんなことは絶対にさせません」

 マキアが構えをとって集中しだした……あれは、『マキアインパクト』だ。


 「この技は、人間相手には禁止していましたが……使います!」


 「いいぞ、その気力と集中力……オレ様もそれに答えよう。おおおおおお!」


 なんだなんだ?パラディンの腕が異様に太くなって……


 「おーぎ!マキアインパクト!」

 「パラディンブレイク!」


 ガカッ!!

 「キャアァァーー!」


 嘘だろ!?あのマキアインパクトを跳ねのけた!?

 ダイヤモンドタートルと審判の塔の三分の一を吹き飛ばすほどの技だぞ……


 「ハハハ!マップシェイバー、確かに噂に違わぬ威力だったわ!

 オレ様も昔『マウントブレイカー・山崩し』の異名を付けられて、地図省の奴らによく叱られたものよ」


 「や、山崩しって……」


 「パラディンブレイク……独自の呼吸法により体内の血流を操作し、腕をパンプアップさせ力を倍増、さらに気力と加速時の推進力も乗せて放つまさに山をも崩すパラディン最大の奥義。

 私からすれば、あの技を喰らってバラバラにならないあの女のほうがどうかしている」


 ヴァイガンの説明付きとは恐れ入る。

 しかし、マキアインパクトが効かないとなると、もう打つ手が……



 「次、右の騎士はAの七へ ライゴウは一歩下がれ、ハーミットの部隊はそのまま前進」

 どうやらヴァイガンは『念話』で騎士たちに命令している様だ……


 MP消費の激しい念話を使ってでもヴァイガンの指示のほうが優先度が高いということか。


 「さあここまで来いギガンティックマスター。あと十四手でチェックメイトだ……」



 ☆今回の成果

  オッドアイズマコト 『逃げ霧』習得

  ナイトメアウェイカーズライカ 『ハーフクレイジートランス』習得

  ナイトメアウェイカーズモミジ 『デザートストーム』習得

  セカンドシスターズシイナ・ミイナ 『インビジブルブーメラン』習得

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