審判の塔編

第9話審判の塔

 アナタはアイドルに『一生俺のそばにいろ』と言ったことがありますか?……俺はある。


 イチヒコとの選考会の後日、俺達は王政の担当者に『審判の塔』の前まで案内してもらった。

 今回のクエスト同行者は、『異世界あいどる24』とニビルのチーム、そして何故か貴族が四人とそのお供の女性奴隷も四人……このクエスト、どうやらこの貴族達の護衛も兼ねているらしい。


 「お前が最近噂のギガンティックマスターか、なかなか腕が立つそうじゃないか」


 「はあ、まあ……」


 「私の名前はフレデリック・フォー・ナンデヤネン男爵だ」


 「ブッ」

 その名前……マジか。


 「私はリチャード・ソル・アカンヤン男爵と申します」


 「ウ……ッ……ブプッ……」


 「私はその妹、シルビア・ウル・アカンヤンです」


 「クッ……ヒーヒーフー……」


 「俺はブルタス・ギル・ドツイタルネン子爵」


 (もう勘弁して、お腹痛い……)


 「まさかちょっと反抗的な召使いをいびり殺したくらいで『罪』になるとは思わなかったよ」


 「私もさ、ちょっと奴隷に餌を与えるのを一か月さぼったくらいで『殺人』だって、もうやんなっちゃう」


 この貴族達、名前は面白いけど性格はクズだな、貴族ってみんなそうなのかな?


 「おらっ、さっさと歩け!今日ぐらいは役に立って見せろよ」


 そう言いながら女性奴隷たちに蹴りを入れる貴族達……

 ……これが奴隷の本当の使われ方か。首輪を鎖でつながれて、まるでペットの犬のようだ。

 マキアやノノアたちがすごい顔でガンつけてるけど、貴族たち全く気付いていない。


 その女性奴隷達、なんか気になるのは、やっぱり『あいどる24』だからなのだろうか……

 こっちにいる背が小さくて若い子はたぶん『今 真琴』

 髪が長く、ウェーブがかかっている子は『天王寺 涼』

 あっちの髪の長久手ストレートの子が『一条 香澄』

 髪が少し短めの子が『早乙女 菫』……かな?

 みんな目に包帯やら仮面やら変なメガネをつけているから、顔がよく見えないんだよなー……


 「よーし、じゃあさっそく突入と行こう!さっさと攻略して私たちの『罪』をリセットしてもらおうじゃないか」


 「おいおい旦那いいのかい?貴族様たち、さっそく仕切っちゃってるぜ」


 「まあいいんじゃない?反発するとかえって厄介だし、ああいう人達って」


 貴族たちは女性奴隷を自分たちの盾のようにして、後ろに隠れながら進み出す。

 俺達もその後に続いて塔の扉から中へ進んでいった。


 ……塔の中は薄暗く、魔粒子も少し濃い気がする。

 でも崩れていたり汚い訳ではなく、重厚な石造りで、荘厳な感じでもある。


 少し進むと、広間のような空間に人影が浮かんできた。


 「やっと来たか、待ちわびたぞギガンティックマスター」


 巨大なモンスターを椅子のようにして座っていた男が、立ち上がりそう叫んだ。

 ……でかい、二メートル近くある大男、しかもその白銀の鎧は『アダマンタイトの鎧』だ。

 右手には長尺の槍を構えている……間違いなく『百戦騎士』。


 「我が名は百戦騎士『とどろきのゴーガン』。いざ尋常に勝負」


 王政管理のダンジョンだと聞いていたから、まあいるだろうなとは予想していた。

 「今回は百戦騎士ってこと隠さないんだな……いいのか?」


 「必要ない、我は貴様と戦い、勝利すればそれでいい」


 「だったらその椅子代わりにしていたモンスター、『ミノタウロス』か?そいつも利用すればよかったのに」


 「えっ……あーそれは……想定内だ」


 ……想定外だったんだな、きっと。

 なかなかバカっぽいぞ、前の百戦騎士アイアスといい、百戦騎士ってこんな奴ばっかりなのかな?


 「マスターと戦うとは聞き捨てならないですね」


 俺の四天王が俺の前に立ち、装備を構える……

 貴族達は女性奴隷の後ろに隠れつつ、横の方に避難している。


 「フン、女どもに守られて情けない、みっともないとは思わんのか?」


 カッチーン!「なんだと……!」

 この野郎、バカのくせに『あおり能力』は高めだな……


 「貴様に一騎打ちを申し込む!男なら当然受けるよな?」


 「こいつ……上等じゃねぇか、受けてやるよ」


 「マスター、待って下さい」


 「わかっているノノア、怒りで我を忘れているわけじゃない。

 あいつのあの鎧、『対魔力結界』が張られているな……」


 『対魔力結界』は俺の『対斬撃結界』と同じように、相手の攻撃を軽減することができる。

 使い方次第で『反射』『吸収』『軽減』など、多様な使い方が可能だ。


 俺が本気で魔法を使えば、あの結界を破ることはできるだろうが、また男らしくないとか難癖をつけてくるかもしれない……

 一騎打ちというくらいだから、ガチンコの殴り合いをご所望なのだろう。


 「ミユキ」


 「はい」


 いつもはミユキに持っていてもらっている俺専用のガントレットを受け取り、代わりに杖を預ける。


 「ほう……良いのか、魔法ではなくて」


 俺は肉体派のように筋トレなどで自分を鍛えるのは得意じゃない。

 そして頭脳派のように計算や理論で相手を嵌めたりするのも苦手だ。


 ではただのゲームオタクの俺の強みは何か?

 それは今まで見たアニメやゲームなどの知識から得た『発想力』と『開発力』!


 「ゲーオタなめんな!」


 「ではさっそく、いざ参る!」


 百戦騎士ゴーガンの素早い槍さばき、それを何とか両腕の『対斬撃結界』で凌ぐ俺。


 「ハッハー!どうしたギガンティックマスターよ、避けてばかりでは勝負にならんぞ」


 わかってるようっせーな。

 前回の百戦騎士アイアスとの戦闘で、こういう魔法が効きづらい相手を想定し準備はしていた、名付けて『バーストガントレット』。


 その仕組みはロボットモノのSFとかでも登場するいわゆる『炸裂拳』。

 拳が当たる瞬間に、ガントレットの中で爆薬を炸裂させ、威力を跳ね上げる。

 爆薬ではなく爆発魔法『バーストロア』を使用するのが俺流。


 ただこのバーストガントレット、問題が二つある。

  ①タングステン製で非常に重く、

   俺にはバフがかかっている百二十秒の間しか使えない。

  ②威力がありすぎて、左右一回ずつしか俺の手が持たない。

 つまり、百二十秒以内に二発の打撃で相手を戦闘不能にしなくちゃならないってこと。


 俺はこの為にボクシングや格闘技の動画を飽きるほど見てきた。


 「ぬうう、いい加減観念するがいい!でやあぁーー!!」


 きた!上段の大振り、それを待っていた!

 俺は右手で槍を逸らしつつ、左手でガラ空きになった脇腹を打つ。

 狙いは人体の弱点の一つ、『肝臓レバー』だ!


 「バーストブロウ!」


 ザザザーーー!


 後ろに吹っ飛びそうになったが耐えやがった。


 「ぐぅ……やるではないか、自慢のアダマンタイトの鎧に穴をあけるとは。そんな高威力の武器を持っていたとは驚いた」


 くそっ、警戒されちまった……あと一発しか打てないのに。


 「少し慎重にいかねばならんか……もう今のようにはいかんぞ」


 そういうわけにはいかない、こっちには時間もないんだ……あと二十秒。

 仕方ない、『肉を切らせて骨を断つ』……俺はわざと小石に躓いたふりをして隙を作った。


 「ムッ、隙あり!」


 百戦騎士ゴーガンの突きが俺の肩口をかする!

 今だ、もう一つの人体の弱点、『みぞおち』だ!


 「バーストブロウ!!」


 「グハッ!」


 今度はちゃんと後ろに吹っ飛んだ!カウンター気味に入ったし、これでダメなら……


 「フ、フフフ……」


 た、立ちやがった……マジか、もう俺は両腕が使えない。


 「ギガンティックマスターよ、なかなかやるではグフッ!」


 あ……血吐いてる。

 よく見たら足もガクガクしてるし、なんだよ効いてるんじゃないか。


 「フ、フフフ……今回のところは『引き分け』ということにしておこう」


 「え?その状態でよく言えたな、それ」


 「だが我の真の目的だけは達成させてもらうぞ!

 エクイップメントアーツ『床落とし』!」


 ゴーガンは飛び退きながら槍を投げ、俺の近くの床に突き刺した。

 『エクイップメントアーツ』とは、その武器に最初から備わっている特殊技の事。

 突き刺さった場所からひび割れが起き、床が崩れる!


 「うわあぁぁーーー」


 「マスタ――――!」


 俺は床ごとそのまま下へ落ちて行った。



 「いててて……」


 なんとか無事だった……

 まさかこの塔に地下があるとは思わなかった……

 ちょっと離れたところにあの貴族達と女性奴隷たちもいた、一緒に落ちてしまったらしい。


 「あーあー、マキア、聞こえるか?」


 「……マス……大丈夫で……」


 俺はインカムで話したが、落ちたショックで調子が悪い……


 「マキア、俺は大丈夫だ。貴族達もこっちにいる、一緒に戻るから、お前達も先に進んでおいてくれ」


 「わか……た。マ……気を付け……」


 「もう一つ、さっきの百戦騎士をアナライズした時に、変なことを考えていた。

 どうやらもう一人百戦騎士がいて、そいつが俺達のパーティの中に潜む計画らしい。すでに入り込んでいる可能性もある、気を付けろ」


 「り…………わ………プツッ」


 通信が途切れた、壊れたっぽい。

 俺が行くまで何事もなければいいけど……


 「ゴホッゴホッ、何でこんな酷い目に……」


 (それはアンタ達貴族がビビッて俺のいる床の方にいたからだよ)……と心の中で呟いてみる。


 「大丈夫か?ケガしてる者は?」


 「我々は大丈夫だ」


 「私も大丈夫」


 「そっちの子がケガしてるじゃないか!」


 女性奴隷の一人が頭から血を流している。


 「ああ、そいつは別に気にしないでいい、放っておけば治る。治らなくても別に問題ないし、所詮『災いの民』だしな」


 「そういうわけにはいかない、ちょっと見せてみて」


 「はい……」


 「ちょっと深いな、『ヒーリング』!」


 俺は女性奴隷の傷を治した。


 「チッ……もったいない、MPの無駄遣いだな」


 ……この貴族達、クズなのはわかってるけど、何でそこまで嫌うんだろう?奴隷と言っても、必要だから買ったんだろうに……


 「グオオォ―――!」


 うわっびっくりした……振り向くと後ろには三つ首の巨大なモンスターが……地獄の番犬『ケルベロス』だ、たぶんここのボスキャラだな。


 「ひ、ひえぇぇ……お、お前達、私たちをかばえ、ほら、前に出ろ!」


 「ひっ!そ、そんな……」


 「危ない!」


 思わず俺は女性奴隷達を助けるように前に出た。


 「ガオオオオオオ!」


 おおやる気か?仕方ない相手になってやるぜ……って、女性奴隷の一人が俺に何か訴えている?


 「お願いします待って下さい、こん子、怯えとーだけなんです」


 おっとまさかの博多弁?

 「え?キミ、この子の事わかるのかい?」


 コクりと頭を下げる……本当らしい。


 「お前、いい加減なこと言うな!でしゃばるんじゃない!」


 ナンデヤネンが吠える。


 「まあまあ、キミ、この子は何で怯えているんだい?」


 「こん子は人間に捕まってここに魔法で幽閉されとったようです……やけん人間が怖かて言ってます」


 そこまでわかるんだ、凄いな。

 「じゃあ、その幽閉の魔法を解いてあげるから、大人しくできるかと聞いてくれ」


 「わかりました……ワンワンワン!ワウー――!」


 「ガルルル……」


 おお、本当に大人しくなったスゲー


 「我が名において命ず 汝の幽閉を解き 自由の名のもと 彼方へ飛ぶ翼与えん……解呪!」


 ケルベロスの後ろ脚に浮かんでいた幽閉の紋章が消えていく……


 「アオオオーーーーン!」


 ……喜んでいる、のかな?


 「喜んでいます、ペロペロしたかて言ってます」


 「そんなでっかい図体でするのはやめてくれと言っておいて」


 「ワンワオン、ワオーン」


 「クーン……ワン!」


 吠えたかと思ったら突然爆発した!?……煙が晴れると、小っちゃい子犬がいる!?


 「小さくなったけん、ペロペロするて言ってます」


 小さくなった子犬にペロペロされる俺……可愛いけど、こいつケルベロスなんだよな。


 「助けてもろうたお礼がしたいので、アナタについていくて言ってます」


 「えー、まいっか。じゃあお前の名前はケルベロスだから『ベロス』ね」


 「ワン!」


 「か、簡単すぎでは?」


 「フ、フン!ケルベロスがいなくなったのならさっさと戻ろう」


 貴族達も立ち上がって体の埃をはたいている。


 「まったくこんな目に合うとは、割に合わんな」


 そう言いつつドツイタルネンが自分たちの後ろにある扉を蹴飛ばした……

 その時!


 ブシュ――――!


 「わっぷ!な、なんだこれは!?」


 扉から大量の煙が……これは?


 「!!これは、『魔粒子』だ!みんな下がって!」


 この魔粒子、相当高濃度な魔粒子だ……こんなの浴びたら……


 「ぎゃあああ、か、体が……た、たすけべれ……」


 ああ、貴族達の体が変化して……

 妹のときの数十倍、数百倍の速度でモンスター化していく……

 これは、ダメだ……貴族たちはもう助からない。

 女性奴隷達を前に出して、自分たちは後ろに下がっていたから浴びてしまった、自業自得か……


 「グガアアアーーー!」


 貴族達はそれぞれ『サイクロプス』『ジャイアントバット』『半魚人』『ゾンビ』に変わってしまった。

 おそらく一生この塔からは出られないだろう、それならいっそ……


 え?女性奴隷達の『奴隷紋』が消えていない?

 モンスター化しても契約は継続なのか?

 じゃあこの女性奴隷達も一生ここから離れることができない……


 「ああ、ご主人様達が……」


 「みんな悪い知らせだ、どうやら主人がモンスター化しても奴隷紋の契約は消えないらしい」


 「え?そんな……じゃあ私達は一生ここに?」


 女性奴隷達はそれぞれ泣き出したり、放心状態になったりしている、そりゃそうだ……


 「キミ達が助かる方法が一つある、それは主人である彼らを『殺す』ことだ」


 死亡すれば奴隷紋の契約は解除される。

 そうすれば彼女達を縛るものは何もなくなる。


 「貴族の彼等もこのままモンスターとしてこの塔にいるより、殺して欲しいと願ってると思う……俺がやってもいい、どうする?」


 女性奴隷達は各々話し合う……しばらくして答えが出たようだ。


 「私……私が自分でやります!」


 四人共泣きながら答える、手も足も震えている……


 「よしわかった、俺が重力魔法『グラビトン』で貴族達を押さえているから、その間に」


 俺はグラビトンで貴族達の動きを押さえ、さっきの百戦騎士が持っていた槍を拾った。


 「これをキミにあげよう、これで過去を断ち切るんだ!」


 「……はい」


 そう言って天王寺 涼似の子はサイクロプスの前へ……


 「……私を、いつも蹴ってくれて……ありがとうございました!」


 ドスッ


 「ギャオオオオ!」


 槍で刺されたサイクロプスはその場に倒れこんだ。


 「わ、私も!」


 早乙女 菫似の子には俺の持っていた短剣を渡す。


 「私をいつも蔑んだ目で見て下さり……ありがとうございました!」


 ザスッ


 「キエエ――――!」


 そのまま持っていた短剣をさっきケルベロスと話していた今 真琴似の子に渡す。


 「……私は家畜以下やと、生きとーだけで迷惑な存在や言うてくれて、ありがとうございました!」


 ズバッ!


 「グロロローー!」


 最後に一条 香澄似の子が短剣を構える。


 「……私達を生んだ親を怨めと言ってくれて……悲しくて泣いている私達を見て、笑って下さり……本当にありがとうございましたー!」


 ドシュ!!


 「アガアアアーーー!!……とう……」


 「うう……グスッ……ヒックヒック……」


 四人の女性奴隷達は泣いている……それぞれいろんな思いがあったんだろう。

 貴族達……最後涙を流しながら『ありがとう』って言った気がした……


 「最後は俺が……みんな下がって。

 アルガン・ヴェナ・オー・ドラエル

 炎の摩擦 水の渦 地の振動 風の波動

 我が前に下りてその力を示せ 我が怒りを糧とし 汝の敵を焼き尽くせ!極炎属性クアトログラム 『ギガンティックフレア』!」


 四つのモンスターの死体は俺の魔法で消し炭になった。

 と、同時に女性奴隷達の『奴隷紋』も消えていった……


 「四人ともこれで自由になった。もう誰かの命令を聞くこともないし、自分たちの村に帰ることもできる」


 「この『災厄眼』がある限り、私達に帰る場所なんてありません……私達は親にも見放され、捨てられた四人なのですから……」


 天王寺 涼似の子が泣きながら話す……『災厄眼』ってなんだ?


 「ギガンティックマスター様、お願いします……私達を貴方様の奴隷にしてくれませんか?私達は誰かの奴隷でいないと生きていけないのです」


 「イヤイヤイヤ、奴隷じゃないと生きられないって、そんな……」


 一条 香澄似の子が近づいてきて、険しい顔で話に割って入る。


 「いけませんギガンティックマスター様。

 貴方は優しいお方です、私達と一緒にいて、貴方まで不幸にするわけにはいきません。私達は『災いの民』なのですから……」


 「そう、その『災いの民』とか『災厄眼』って何なの?」


 「ギガンティックマスター様は『災いの民』をご存じないのですね……

 災いの民とは、生まれながらにして『災厄眼』を持つ者の事。

 この眼を持つものがそばにいると、不幸に見舞われると言われています」


 なるほど、それであの貴族達は必要以上に女性奴隷達を毛嫌いしていたのか。


 「実際に盗賊に襲われたり、殺されるものもいました……今の主人であった貴族の人達も結局この通りに……」


 うーん、貴族達は自業自得だと思うけど……

 「『災厄眼』ってどんな眼なの?」


 「なっ、ダメです、災厄眼を見たらそれだけで不幸になってしまいます」


 「そうなの?大丈夫だよ、ちょっとだけ見せてよ」


 「貴方という方は……わかりました、どうなっても知りませんよ」


 そう言って一条 香澄似の子は自分の眼につけていた包帯をほどいていく。


 「どうですか、これが不幸を招くと言われている災厄眼……」


 「やあー、これは綺麗な眼だね」


 「えっ……」


 俺は一条 香澄似の子の話に、ついかぶせ気味に言ってしまった……それぐらい綺麗な瞳だった。

 右の瞳が宝石のトパーズのような黄色、左の瞳がまるで深海のような深い青。


 「『オッドアイ』って言うんだっけ?俺のいる現実世界でも、稀にいるって聞いたことがあるよ。実際に見るのは俺も初めてだけど」


 「ギガンティックマスター様、この眼を見ても嫌な顔をしないんですか?

 き、綺麗な眼って……」


 一条 香澄似の子は、信じられないって顔で俺の事を見てる。

 この眼のせいでいろんな嫌なことがあったんだろう、褒めてくれるなんて思いもしなかったはずだ。


 俺はこれと似たようなことが現実世界にもあることを知っている……『アルビノ』だ。


 先天的にメラニンが欠乏して起こる遺伝子疾患のことで、肌も髪の毛も真っ白な人。

 アルビノの体には特別な力があるという迷信があり、盗賊などに襲われ、体の一部を切断されたり、臓器なども高額で取引されたりした。


 この災厄眼も、これだけ珍しくて綺麗なものなら、高値でも欲しがる人は多いだろう。

 この不幸になる話もおそらく、野盗達が災厄眼持ちを孤立させるため、わざと噂を流したのではないかと予想している……実際に野盗とかには襲われやすいだろうからね。


 「ギガンティックマスター様、その反応は……私達を貴方の奴隷にして下さるのですか?」


 天王寺 涼似の子が嬉しそうに涙目で訴えてくる。


 「いや、断る」


 「そ、そうです、よね……」


 「奴隷としては、ね」


 「え……」


 「俺の仲間としてなら受け入れる、俺の『異世界あいどる24』としてならね」


 四人の女性奴隷達はみんなパアーっと顔が明るくなり、みんな泣き出した。

 一条 香澄似の子が泣きながら、すがるように話してくる。


 「でも、でも……私達がそばにいると、不幸になりますよ……いいのですか」


 「不幸って、野盗とかに襲われるかもしれないってやつだろ?町での俺の噂とか聞いたことある?」


 「……はい」


 「俺の目的は『この世界から奴隷の人や盗賊や殺し屋などを根絶する』こと……

 盗賊に襲われるなんて、そっちから来てくれるとか俺にとっては願ったり叶ったり、全部返り討ちにできるよ」


 「そ、それじゃあ……」


 アナライズでお前の心は見えているよ。

 自分は何も悪いことはしていないのに、なぜこんな目に合うのか……そう思っていた。誰かのそばにいたい。誰かに必要とされたい、そう願っていた。


 「これでお前達四人は正式に俺の『異世界あいどる24』の一員だ。

 ずっと一生、俺のそばにいろ、これは命令だ」


 「はい!……はい!」


 四人共泣きながら返事してる……後で名前も付けさせてもらおう。


 「ワン!」


 「おお、忘れてた。モチロンお前も今日から俺達の仲間だ、よろしくなベロス」



 ☆今回の成果

  カスミ(20)が仲間に

  リョウ(21)が仲間に 装備『床落とし』を手に入れた

  マコト(21)が仲間に

  スミレ(20)が仲間に


  ケルベロスのベロスがペットに

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