第5話

「カギは閉めたか?」

「うん」

 老人は湯を沸かし、物置きからタライを引っ張り出してきた。

せっせとタオルを引っ張り出したり、何かを探しているようだ。

アオイは、そんなじいちゃんの様子を見守る。

「じいちゃん、ボク…何をしたらいい?」

アオイは、自分も何か手伝えないか…と考えた。

すると老人は、自分の孫を振り返ると

「いいから、この子を見てくれ」

 オムツ、オムツはまだ、あったかなぁ?

ゴソゴソと押し入れを、ひっくり返している。

「ねぇ、じいちゃん、この子、どうするの?」

内心…うちの子に、なったらいいのになぁ~

アオイはそう思っている。


 母さんがいなくなってから、ずっと…少年は老人と二人暮らしなのだ。

この赤ちゃんが、うちの子になったら、にぎやかになって、楽しい

だろうなぁ?

そうしたら、じいちゃんの言うことも聞くし、なんでも手伝う!

そうひそかに、アオイは思っていた。

「どうするも何も…

 しばらく、うちで預かるしかないだろ?」

この子を、放り出すなんてことは、あり得ない…

じいちゃんは、キッパリとそう言う。

「ふぅーん」

やっぱり、じいちゃんだ!

アオイは、ちょっと安心した。

 ふふふ…

 うふふふふふ…

アオイは、嬉しくてたまらない。

「なんだ?どうした?

 ずいぶん、ご機嫌だなぁ」

 それでもじいちゃんは、アオイの昔使っていた、赤ちゃん用品の

入った箱を、引っ張り出す。

「果たして、うまく出来るだろうか?」

頭をひねっている。

ドンドンドン!

今度は、玄関のドアをたたく音がする。

「風?」

アオイが、じいちゃんを見る。

「思ったよりも、早く来てくれたんだなぁ」

じいちゃんは、急いで玄関の方へと走って行った。

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