第4話

 どっちみち、玄関に風で、何かが飛ばされてきたんだろう…

老人は、そう思っていた。

だが、孫がいつになくしつこく言うので、しぶしぶ玄関のカギを

開ける。

すぐに、扉のすぐ側に、何かが置いてあるのに気が付いた。

「じいちゃん、何か、ある」

一緒に玄関に飛び出して来た孫が、下を見ている。

「ネコだろ?」

 この家は、海岸のすぐ近くにあるので、時々車で犬や猫を捨てて行く

者が、未だにいるのだ。

(人の家を、何だと思っているのだ?

 確かに、ここはあばら家だが…

 ここは、犬猫の捨て場でもなければ、動物病院でも、保護猫カフェでも

 ないんだぞ)

いつも苦々しく、思っているのだ。


 少年は、カゴに近付くと…体をかがめて、中をのぞき込む。

一瞬、ヒュッと喉の奥から音がすると、

「人間の子供だ…」

少年は、祖父の顔を見上げた。

「えっ?」

 捨て子?

 こんな所に?

少年の言葉に、老人はすぐに、バスケットに近付く。

「何てことだ…」

 老人はあわてて、赤ちゃんを抱き上げる。

わずかにフニャフニャと、かすれた声で泣いている。

「身体が…こんなに、冷たい」

可哀想にと、あわてて家の中に飛び込む。

「じいちゃん、待って!」

少年は急いで、バスケットを持ち上げると、中に入る。

「カギをかけて」

すぐさまじいちゃんが、少年にひと声かけると、スタスタと中に

入って行く。

少年も、じいちゃんの様子を見て、何かを察したのか、おとなしく

従う。

「医者に、電話を…」と言いかけて、

「こんな台風の夜に、来てくれるわけがないかぁ」

そうつぶやくと、どこかに電話をかけ始めた。

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